菜の花座所属の役者二人と高校演劇部時代の教え子が出る舞台、そりゃ見に行かなくっちゃ。こっちの台本書けてなくてもさ。
レッサーファーストペンギンって劇団名なんだけど、キャストもスタッフもいろんな劇団の寄せ集め?うーん、こういう合わせ技みたいなことできるのが、若さでもあり、山形市でもあるよなぁ。羨ましい。
ホールの扉を開くと、なんと客席は空っぽ!中央に舞台に向けてムーンロード?が一筋、おっ、案内役は全身電飾で浮かび上がった。
舞台上に客席設えるる趣向といい、こりゃ若さ全開の激しく難解な作品に違いない、って身構えた。明るくなった6畳ほどの演技空間にはベンチが一脚。うーん、なんか前衛的?
身構えたところで展開したのは、意外にも極めてオーソドックスなお芝居だった。安心した?まぁな。
なんたって分かり易い。
男二人の『オムライス』は男の料理教室に出かけて出会った男二人の会話劇。一人は妻に逃げられた男、もう一方は未婚のまま老母の介護に疲れ果てた男。現実世界ではみ出した男たちの饒舌の先にほのかな友情の兆しが現れるって話しだ。
やけに距離感無視した男の語り掛けの強引さと次々あちこちに飛ぶ話題のナンセンスは大いに楽しめた。上手く生き切れない男二人の心の闇が現れるあたり緊張感もあり、迫るものがあったな。
女3人芝居は、3姉妹の仲たがいと和解の物語。久しぶりに会う母の3回忌の法事、という設定はわりとよく見聞きするものじゃあるし、長女だけが父親の連れ子で母親違い、でも、亡き母は3人ともども大切にしていたことがわかって、改めて3人の絆を確かめ合うって設定も、まぁ、見て聞いて納得、安心ってところだな。
よくできてるし、役者三人の実力も確かだ。何より3人の役柄がぴたりのずばりだな。ほろりとさせるところはしっかり涙を誘えていたし、女3人の姉妹ってあんな感じなのか、へぇ、って思いつつ見せてもらった。
まっ、裏切らない1時間、ってことじゃあったんだけど、なんか、オーソドックスすぎねえか?ぴたりとお客さんのニーズ?に合わせ過ぎちゃいねえか?
小さくまとまっていて、うーん、今時の若者は保守的だって言うけど、本当だなぁ、もっと違和感撒き散らして観客と対峙するような舞台でもいいんじゃないのかな?って物足りなさは残ったなぁ。
社会性の希薄さってとこも、今の俺からするとなんとかしろよ、って感じがする。今時、こういうホームドラマ作ってていいの?ってことさ。いや、エンタメはいつだって必要かつ不可欠なんだけど。
もう少し時代の生臭さやヤバさを敏感に感じ取った舞台作ってもいいんじゃないかな。たとえ、観客はそっぽ向いたとしても。たとえ、未熟で失敗したとしても。
で、改めて思ったんだが、俺が書くものってその未熟でぶきっちょな作品ばかりだよなってこと。
戦時の逃亡兵とか、朝鮮人の皇国兵士とか、慰安婦とか、組合活動家とか、時代といざこざ抱え続けた者たちばかり書いている。
今の時代を書けって言われて書いた前作『悪人なおもて』は少し砕けて笑いを狙ったものだが、悪辣で図々しい政治家たちの悪業の数々だっりした。
時代認識の違いだってこともあるが、それ以前に俺の生い立ちが、こういう予定調和のホームドラマを拒絶してるってことは大きいって感じるのよ。
だって、俺も腹違いの兄弟だし置かれた環境はもっとうんざりのものだったから。まっ、今言う親ガチャに親近感感じる育ちをしたのさ。
なんてことは、作品の陰で貼りついちゃいても、作品の良し悪しとは全然関係ない。
あっ、それともっと羽目外しの面白さとか工夫とか、エンタメ性とか、つまりダンスや音楽とか、はちゃめちに楽しんで欲しいってのも、勝手な無いものねだりなのかもな。