歌番号 1060
詞書 屏風のゑに、花のもとにあみひく所
詠人 菅原輔昭
原文 宇良比止者 加寸美遠安美尓 武寸部者也 奈美乃者奈於毛 止女天比久良无
和歌 うらひとは かすみをあみに むすへはや なみのはなをも とめてひくらむ
読下 浦人はかすみをあみにむすへはや浪の花をもとめてひくらん
解釈 入り江の浜の漁師は霞を網として刺し結ぶのだろうか、浪の花も留めて引き寄せるようです。
歌番号 1061
詞書 延喜御時、御屏風に
詠人 つらゆき
原文 也奈美礼者 可者可世以多久 布久止幾曽 奈美乃者奈左部 於知万佐利个留
和歌 やなみれは かはかせいたく ふくときそ なみのはなさへ おちまさりける
読下 やな見れは河風いたくふく時そ浪の花さへおちまさりける
解釈 魚を獲る簗の様子を見ると、河風が激しく吹いている時には、浪の花までが一層に落ちて簗に掛かるようです。
歌番号 1062
詞書 亭子院京極のみやす所にわたらせたまうて、ゆみ御覧してかけ物いたさせ給ひけるに、ひけこに花をこきいれて、さくらをとくらにして、山すけをうくひすにむすひすゑて、かくかきてくはせたりける
詠人 一条のきみ
原文 己乃満与利 知里久留者奈遠 安徒左由美 恵也八止々女奴 者留乃加多美尓
和歌 このまより ちりくるはなを あつさゆみ えやはととめぬ はるのかたみに
読下 このまよりちりくる花をあつさゆみえやはととめぬはるのかたみに
解釈 木の間から散り来る花、梓弓は獲物を仕留めると言う、その言葉の響きではありませんが、どうにかして留められないか、この春の思い出として。
歌番号 1063 拾遺抄記載
詞書 ひえの山にすみ侍りけるころ、人のたき物をこひて侍りけれは、侍りけるままに、すこしを梅の花のわつかにちりのこりて侍るえたにつけてつかはしける
詠人 如覚法師
原文 者留寸幾天 知利者天尓个留 武女乃者奈 堂々加者可利曽 衛多尓乃己礼留
和歌 はるすきて ちりはてにける うめのはな たたかはかりそ えたにのこれる
読下 春すきてちりはてにける梅の花たたかはかりそ枝にのこれる
解釈 春が過ぎ去って散り果ててしまった梅の花よ、ただ、香りだけは枝に残っている。
歌番号 1064
詞書 右衛門督公任こもり侍りけるころ、四月一日にいひつかはしける
詠人 左大臣
原文 堂尓乃戸遠 止知也者天川留 宇久飛寸乃 満川尓遠止世天 者留毛寸幾奴留
和歌 たにのとを とちやはてつる うくひすの まつにおとせて はるもすきぬる
読下 谷の戸をとちやはてつる鴬のまつにおとせてはるもすきぬる
解釈 飛び来るはずの谷の戸を、すっかり閉じてしまったのか、鶯は、待っていても鳴き声もしません、春は過ぎて行くのに。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます