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竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

拾遺和歌集 巻16 歌番号1080から1081まで

2025年05月08日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻16

歌番号 1080

詞書 一条摂政の北の方ほかに侍りけるころ、女御と申しける時

詠人 贈皇后宮

原文 志者之堂尓 加遣尓加久礼奴 止幾者奈本 宇奈多礼奴部幾 奈天之己乃者奈

和歌 しはしたに かけにかくれぬ ときはなほ うなたれぬへき なてしこのはな

読下 しはしたにかけにかくれぬ時は猶うなたれぬへきなてしこの花

解釈 しばしの間だけなのに、陰に隠れることが無い時は、心細さにうなだれてしまう撫子の花、その風情のように、貴女の庇護が無いと心細さに戸惑う、この私です。

 

歌番号 1081 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 躬恒

原文 伊堂川良尓 於以奴部良奈利 於保安良幾乃 毛利乃志多奈留 久左者奈良祢止

和歌 いたつらに おいぬへらなり おほあらきの もりのしたなる くさはならねと

読下 いたつらにおいぬへらなりおほあらきのもりのしたなる草葉ならねと

解釈 何もなくただ老いてしまいそうです、大荒木の杜の下草ではありませんが。

注意 古今和歌集の「大荒木のもりの下草おいぬれば駒もすさめずかる人もなし」を引用する歌です。「馬でさえも見向きもしない無駄に茂った草のような私」の意味合いです。

 

 

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拾遺和歌集 巻16 歌番号1075から1079まで

2025年05月07日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻16

歌番号 1075

詞書 廉義公家障子に

詠人 もとすけ

原文 加久者可利 万川止志良八也 本止々幾須 己須恵多可久毛 奈幾和多留可奈

和歌 かくはかり まつとしらはや ほとときす こすゑたかくも なきわたるかな

読下 かくはかりまつとしらはや郭公こすゑたかくもなきわたるかな

解釈 これほどまでに待つと知っていれば、(屋敷の庭を探さないのに、)ホトトギスが梢高くを啼き渡っています。

注意 障子に描かれたホトトギスが手前の木々の茂みではなく、後方の高い木の梢に居たのでしょう。

 

歌番号 1076 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 大中臣輔親

原文 安之飛幾乃 也万本止々幾須 佐止奈礼天 多曽可礼止幾尓 奈乃利寸良之毛

和歌 あしひきの やまほとときす さとなれて たそかれときに なのりすらしも

読下 あしひきの山郭公さとなれてたそかれ時になのりすらしも

解釈 葦や檜の生い茂る山に住むホトトギス、人里に馴れて黄昏時に名のりの声を上げて鳴いている。

 

歌番号 1077 拾遺抄記載

詞書 坂上郎女につかはしける

詠人 大伴像見

原文 布留左止乃 奈良之乃遠可尓 本止々幾須 己止川天也利幾 以可尓川个幾也

和歌 ふるさとの ならしのをかに ほとときす ことつてやりき いかにつけきや

読下 ふるさとのならしのをかに郭公事つてやりきいかにつけきや

解釈 古い里の平しの岡に住むホトトギス、言伝を付けて送ったが、どのように伝えたでしょうか。

注意 ホトトギスは中国風の名前は不如帰です。昔の奈良の繫栄に戻りたいのでしょうか。

 

歌番号 1078

詞書 ほたるをよみ侍りける

詠人 健守法師

原文 世毛須可良 毛由留保多留遠 遣左美礼者 久左乃者己止仁 川由曽遠幾个留

和歌 よもすから もゆるほたるを けさみれは くさのはことに つゆそおきける

読下 終夜もゆるほたるをけさ見れは草のはことにつゆそおきける

解釈 一晩中、燃えて飛ぶ蛍を今朝見てみると、草の葉ごとに蛍の代わりに玉のように光る露が置いていました。

 

歌番号 1079

詞書 延長七年十月十四日、もとよしのみこの四十賀し侍りける時の屏風に

詠人 つらゆき

原文 止己奈川乃 者奈遠之美礼者 宇知波部天 寸久留川幾比乃 加寸毛之良礼寸

和歌 とこなつの はなをしみれは うちはへて すくるつきひの かすもしられす

読下 とこ夏の花をし見れはうちはへてすくる月日のかすもしられす

解釈 常夏の異名を持つ撫子の花を見ると美しさが映えて、その常夏に見とれるうちに過ぎて行く月日の数も判らなくなります。

注意 常夏の花、年中、常夏だから季節の移ろいが判らないと言う考え落ちです。

 

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拾遺和歌集 巻16 歌番号1070から1074まで

2025年05月06日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻16

歌番号 1070

詞書 左大臣むすめの中宮のれうにてうし侍りける屏風に

詠人 読人しらす

原文 武良佐幾乃 恵呂之己个礼者 布知乃者奈 万川乃美止利毛 宇川呂比尓个利

和歌 むらさきの いろしこけれは ふちのはな まつのみとりも うつろひにけり

読下 むらさきの色しこけれはふちの花松のみとりもうつろひにけり

解釈 紫の色が濃いので、藤の花、長寿のシンボルである松の緑も色褪せて位負けします。

注意 初句と二句で濃紫の官位=臣下三位以上の身分を示し、無位から入台で三位以上になったことを意味します。

 

歌番号 1071

詞書 題しらす

詠人 人まろ

原文 本止々幾須 加与不加幾祢乃 宇乃者奈乃 宇幾己止安礼也 幾美可幾万左奴

和歌 ほとときす かよふかきねの うのはなの うきことあれや きみかきまさぬ

読下 郭公かよふかきねの卯の花のうきことあれや君かきまさぬ

解釈 ホトトギスが飛び通う垣根の卯の花、その言葉の響きではないが、なにか憂きことがあったのでしょうか、あの御方が私の許に来てくれません。

 

歌番号 1072

詞書 屏風のゑに

詠人 重之

原文 宇乃者奈乃 佐遣留加幾祢尓 也止利世之 祢奴尓安个奴止 於止呂加礼个利

和歌 うのはなの さけるかきねに やとりせし ねぬにあけぬと おとろかれけり

読下 卯の花のさけるかきねにやとりせしねぬにあけぬとおとろかれけり

解釈 卯の花が咲いている垣根の側に留まることはしないようにしよう、卯の花に見とれて寝てもいないのに夜が明けると、驚いてしまいますから。

 

歌番号 1073

詞書 みちのくににまかりくたりてのち、郭公のこゑをききて

詠人 実方朝臣

原文 止之遠部天 美也万可久礼乃 本止々幾須 幾久比止毛奈幾 祢遠乃美曽奈久

和歌 としをへて みやまかくれの ほとときす きくひともなき ねをのみそなく

読下 年をへてみ山かくれの郭公きく人もなきねをのみそなく

解釈 初夏から年を越して、山に隠れているホトトギスの鳴き声を聴く人もいない、その姿ではありませんが、地方に下り身を隠すような私の声を聴く都人もいないので、声を上げて鳴くばかりです。

 

歌番号 1074

詞書 女のもとに、しろきいとをさうふのねにして、くすたまをおこせ侍りて、あはれなることともを、あるをとこのいひおこせて侍りけれは

詠人 よみ人しらす

原文 己恵堂天々 奈久止以不止毛 本止々幾須 堂毛止者奴礼之 曽良祢奈利个利

和歌 こゑたてて なくといふとも ほとときす たもとはぬれし そらねなりけり

読下 声たててなくといふとも郭公たもとはぬれしそらねなりけり

解釈 声を上げて鳴くと言うホトトギス、その言葉の様ではありませんが、声を上げて泣くのに涙を拭う袂は濡れてはいない、きっと、作り物の空泣きなのでしょう。

 

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拾遺和歌集 巻16 歌番号1065から1069まで

2025年05月05日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻16

歌番号 1065

詞書 返し

詠人 公任朝臣

原文 由幾可部留 者留於毛志良寸 者奈左可奴 三也万可久礼乃 宇久比寸乃己恵

和歌 ゆきかへる はるをもしらす はなさかぬ みやまかくれの うくひすのこゑ

読下 ゆきかへる春をもしらす花さかぬみ山かくれのうくひすのこゑ

解釈 季節が行き返る、その春の訪れを知らないで花も咲かない奥深い山に隠れていている、鶯は声を上げて鳴きません。

注意 除目で遅れを取った公任が、不貞腐れて山に籠り、私には春が来ないと詠った歌と伝えられています。

 

歌番号 1066

詞書 四月朔日よみ侍りける

詠人 もとすけ

原文 者留波於之 本止々幾須者多 幾可万本之 於毛飛和川良不 志徒己々呂可奈

和歌 はるはをし ほとときすはた きかまほし おもひわつらふ しつこころかな

読下 春はをし郭公はたきかまほし思ひわつらふしつ心かな

解釈 春が過ぎ行くのは残念だが、ホトトギスの鳴き声をまた聞きたいと思う、そのように季節の移ろいに心が揺れる、風流の気持ちです。

 

歌番号 1067

詞書 延長四年九月廿八日、法皇六十賀、京極のみやす所のつかうまつりける、屏風の歌、ふちのはな

詠人 つらゆき

原文 万川可世乃 布可武可幾利者 宇知波部天 堂由部久毛安良寸 左个留布知奈三

和歌 まつかせの ふかむかきりは うちはへて たゆへくもあらす さけるふちなみ

読下 松風のふかむ限はうちはへてたゆへくもあらすさけるふちなみ

解釈 松風が吹いている限りは、当たり一面に途切れることもなく、咲いている藤波です。

 

歌番号 1068 拾遺抄記載

詞書 延喜御時、藤壷の藤の花宴せさせ給ひけるに、殿上のをのこともうたつかうまつりけるに

詠人 皇太后宮権大夫国章

原文 布知乃者奈 美也乃宇知尓者 武良左幾乃 久毛加止乃美曽 安也万多礼个留

和歌 ふちのはな みやのうちには むらさきの くもかとのみそ あやまたれける

読下 ふちの花宮の内には紫のくもかとのみそあやまたれける

解釈 藤の花、宮の内では紫の雲かとばかり、見間違えました。

注意 藤原氏に対する、よいしょの歌です。なお、詠人は藤原国章となっていますが、詞書の年代とは合わないので、別人の作品と推定されています。

 

歌番号 1069 拾遺抄記載

詞書 左大臣むすめの中宮のれうにてうし侍りける屏風に

詠人 右衛門督公任

原文 武良左幾乃 久毛止曽美由留 不知乃者奈 以可奈留也止乃 志留之奈留良无

和歌 むらさきの くもとそみゆる ふちのはな いかなるやとの しるしなるらむ

読下 紫の雲とそ見ゆる藤の花いかなるやとのしるしなるらん

解釈 紫の雲のように見える藤の花、どのようなお屋敷への瑞祥の予告なのでしょうか。

 

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拾遺和歌集 巻16 歌番号1060から1064まで

2025年05月02日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻16

歌番号 1060

詞書 屏風のゑに、花のもとにあみひく所

詠人 菅原輔昭

原文 宇良比止者 加寸美遠安美尓 武寸部者也 奈美乃者奈於毛 止女天比久良无

和歌 うらひとは かすみをあみに むすへはや なみのはなをも とめてひくらむ

読下 浦人はかすみをあみにむすへはや浪の花をもとめてひくらん

解釈 入り江の浜の漁師は霞を網として刺し結ぶのだろうか、浪の花も留めて引き寄せるようです。

 

歌番号 1061

詞書 延喜御時、御屏風に

詠人 つらゆき

原文 也奈美礼者 可者可世以多久 布久止幾曽 奈美乃者奈左部 於知万佐利个留

和歌 やなみれは かはかせいたく ふくときそ なみのはなさへ おちまさりける

読下 やな見れは河風いたくふく時そ浪の花さへおちまさりける

解釈 魚を獲る簗の様子を見ると、河風が激しく吹いている時には、浪の花までが一層に落ちて簗に掛かるようです。

 

歌番号 1062

詞書 亭子院京極のみやす所にわたらせたまうて、ゆみ御覧してかけ物いたさせ給ひけるに、ひけこに花をこきいれて、さくらをとくらにして、山すけをうくひすにむすひすゑて、かくかきてくはせたりける

詠人 一条のきみ

原文 己乃満与利 知里久留者奈遠 安徒左由美 恵也八止々女奴 者留乃加多美尓

和歌 このまより ちりくるはなを あつさゆみ えやはととめぬ はるのかたみに

読下 このまよりちりくる花をあつさゆみえやはととめぬはるのかたみに

解釈 木の間から散り来る花、梓弓は獲物を仕留めると言う、その言葉の響きではありませんが、どうにかして留められないか、この春の思い出として。

 

歌番号 1063 拾遺抄記載

詞書 ひえの山にすみ侍りけるころ、人のたき物をこひて侍りけれは、侍りけるままに、すこしを梅の花のわつかにちりのこりて侍るえたにつけてつかはしける

詠人 如覚法師

原文 者留寸幾天 知利者天尓个留 武女乃者奈 堂々加者可利曽 衛多尓乃己礼留

和歌 はるすきて ちりはてにける うめのはな たたかはかりそ えたにのこれる

読下 春すきてちりはてにける梅の花たたかはかりそ枝にのこれる

解釈 春が過ぎ去って散り果ててしまった梅の花よ、ただ、香りだけは枝に残っている。

 

歌番号 1064

詞書 右衛門督公任こもり侍りけるころ、四月一日にいひつかはしける

詠人 左大臣

原文 堂尓乃戸遠 止知也者天川留 宇久飛寸乃 満川尓遠止世天 者留毛寸幾奴留

和歌 たにのとを とちやはてつる うくひすの まつにおとせて はるもすきぬる

読下 谷の戸をとちやはてつる鴬のまつにおとせてはるもすきぬる

解釈 飛び来るはずの谷の戸を、すっかり閉じてしまったのか、鶯は、待っていても鳴き声もしません、春は過ぎて行くのに。

 

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