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竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

拾遺和歌集 巻12 歌番号773から776まで

2025年02月10日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻12

歌番号 773 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 和比奴礼者 川祢者由々之幾 多奈者多毛 宇良也万礼奴留 毛乃尓曽安利个留

和歌 わひぬれは つねはゆゆしき たなはたも うらやまれぬる ものにそありける

読下 わひぬれはつねはゆゆしきたなはたもうらやまれぬる物にそ有りける

解釈 心が萎れてしまえば日常では辛いことです、あの年に一度しか逢わない七夕の牽牛と織姫さえも羨ましく思える、貴女との関係です。

 

歌番号 774

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 川由多尓毛 奈可良末之可八 安幾乃世尓 堂礼止於幾為天 比止遠満多末之

和歌 つゆたにも なからましかは あきのよに たれとおきゐて ひとをまたまし

読下 露たにもなからましかは秋の夜に誰とおきゐて人をまたまし

解釈 せめて露だけでも無かったなら、秋の夜に誰と起き居て、家の門の外で来ぬ人を待てばいいのでしょうか。

注意 万葉の世界では月と共に家の門で娘が恋人を待つことになっています。

 

歌番号 775

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 以満左良尓 止不部幾比止毛 於毛本恵寸 也部武久良之天 加止左世利天部

和歌 いまさらに とふへきひとも おもほえす やへむくらして かとさせりてへ

読下 今更にとふへき人もおもほえすやへむくらしてかとさせりてへ

解釈 今になっては妻問いするような貴方とは思えません、屋敷は八重葎するほどに荒れて屋敷の門を閉ざしていると言って下さい。

注意 新日本古典文学大系では、末句「てへ」は「といへ」の省略とします。

 

歌番号 776

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 安幾者和可 己々呂乃川由尓 安良祢止毛 々乃奈个可之幾 己呂尓毛安留可奈

和歌 あきはわか こころのつゆに あらねとも ものなけかしき ころにもあるかな

読下 秋はわか心のつゆにあらねとも物なけかしきころにもあるかな

解釈 秋、それ自体により私の心の内に不思議に涙の露を置くではありませんが、貴女を思うともの嘆かわしく感じる季節でもあるようです。

 

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拾遺和歌集 巻12 歌番号768から772まで

2025年02月07日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻12

歌番号 768 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 みつね

原文 於不礼止毛 己満毛春左女奴 安也女久左 加利尓毛比止乃 己奴可和日之左

和歌 おふれとも こまもすさへぬ あやめくさ かりにもひとの こぬかわひしさ

読下 おふれともこまもすさめぬあやめ草かりにも人のこぬかわひしさ

解釈 生えたとしても馬も食べない菖蒲草を刈る、その言葉の響きではないが、仮初の恋の相手としても、やって来ないのが辛いことです。

 

歌番号 769

詞書 かやり火を見侍りて

詠人 よしのふ

原文 加也里火者 毛乃遠毛飛比止乃 己々呂可毛 奈川乃与寸可良 志多尓毛由良无

和歌 かやりひは ものおもふひとの こころかも なつのよすから したにもゆらむ

読下 かやり火は物思ふ人の心かも夏のよすからしたにもゆらん

解釈 蚊遣火は、物を思う人の気持ちを示すのでしょう、夏の夜闇に下に燻ぶり燃えています。

 

歌番号 770 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 勝観法師

原文 志乃布礼者 久累之可利个利 志乃寸々幾 安幾乃佐可利尓 奈利也之奈末之

和歌 しのふれは くるしかりけり しのすすき あきのさかりに なりやしなまし

読下 しのふれはくるしかりけりしのすすき秋のさかりになりやしなまし

解釈 恋心を表に出さずに忍ぶのは辛いことです、篠薄、秋の盛りになって穂が出るように、はっきりと思いを示すことが出来ないでしょうか。

 

歌番号 771 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 於毛飛幾也 和可末川比止者 与曽奈可良 多奈者多川女乃 安不遠美武止八

和歌 おもひきや わかまつひとは よそなから たなはたつめの あふをみむとは

読下 思ひきやわかまつ人はよそなからたなはたつめのあふを見むとは

解釈 このようになるとは思ってもいなかった、私が待つ人は遠く離れて、他人事のように織姫が牽牛に年に一度だけ逢うのを見る、それとなるとは。

注意 恋人が地方官に任じられたと思われます。

 

歌番号 772 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 遣不左部也 与曽尓美留部幾 飛己保之乃 多知奈良寸良无 安万乃加者奈三

和歌 けふさへや よそにみるへき ひこほしの たちならすらむ あまのかはなみ

読下 けふさへやよそに見るへきひこほしのたちならすらんあまのかはなみ

解釈 七夕の今日でさえ、私は恋人の逢瀬を他人事と見るべきでしょうか、あの彦星が織姫に逢うために渡り立ち起こすでしょう天の河の河浪を。

 

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拾遺和歌集 巻12 歌番号763から767まで

2025年02月06日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻12

歌番号 763

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 己呂毛遠也 奴幾天也良満之 奈美堂乃三 加々利个利止毛 比止乃美留部久

和歌 ころもをや ぬきてやらまし なみたのみ かかりけりとも ひとのみるへく

読下 衣をやぬきてやらまし涙のみかかりけりとも人の見るへく

解釈 この衣を脱いで貴女に送りましょう、恋の苦しみで流す涙だけが懸かっていると、きっと、貴女は気付くでしょうから。

 

歌番号 764

詞書 しのひて物いひ侍りける人の、ひとしけき所に侍りけれは

詠人 実方朝臣

原文 比止女遠毛 徒々万奴毛乃止 於毛飛世者 曾天乃奈美堂乃 加々良万之也八

和歌 ひとめをも つつまぬものと おもひせは そてのなみたの かからましやは

読下 人めをもつつまぬ物と思ひせは袖の涙のかからましやは

解釈 他人の目をはばからずに恋の思いを出して良いものと思うのなら、このように袖に恋に苦しみ泣く涙は懸からないでしょうに。

 

歌番号 765 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 大伴方見

原文 以曽乃加美 布留止毛安女尓 佐者良女也 安者武止以毛尓 以比天之毛乃遠

和歌 いそのかみ ふるともあめに さはらめや あはむといもに いひてしものを

読下 礒神ふるとも雨にさはらめやあはむといもにいひてしものを

解釈 石上の布留の里、その言葉ではありませんが、降ったとしても雨が私が逢いに行くことに障るでしょうか、(そのようなことはありません、)私は逢う、と恋する貴女に言いましたから。

 

歌番号 766 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 もとよしのみこ

原文 和飛奴礼者 以満者多於奈之 奈尓者奈留 三遠徒久之天毛 安者武止曽遠毛飛

和歌 わひぬれは いまはたおなし なにはなる みをつくしても あはむとそおもふ

読下 わひぬれは今はたおなしなにはなる身をつくしてもあはむとそ思ふ

解釈 気持ちが落ち込んでいると、今、何があっても同じこと、難波にある水脈つ串、その言葉ではありませんが、我が身を尽くし滅ぼしても、貴女にどうにかして逢おうと思います。

 

歌番号 767 拾遺抄記載

詞書 五月五日、ある女のもとにつかはしける

詠人 よみ人しらす

原文 以徒可止毛 於毛者奴左波乃 安也女久左 堂々川久/\止 祢己曽奈可留礼

和歌 いつかとも おもはぬさはの あやめくさ たたつくつくと ねこそなかるれ

読下 いつかともおもはぬさはのあやめ草たたつくつくとねこそなかるれ

解釈 五月五日、その言葉の響きではありませんが、いつかにか逢えると期待が出来ない、沢の菖蒲草が、ただ、すくすくと育つ、その菖蒲草の根、その言葉の響きのように、声を上げて泣いてしまいます。

 

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拾遺和歌集 巻12 歌番号758から762まで

2025年02月05日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻12

歌番号 758

詞書 侍従に侍りける時、むらかみの先帝の御めのとに、しのひて物ののたうひけるに、つきなき事なりとて、さらにあはす侍りけれは

詠人 一条摂政

原文 加久礼奴乃 曽己乃己々呂曽 宇良女之幾 以可尓世与止天 徒礼奈可留良无

和歌 かくれぬの そこのこころそ うらめしき いかにせよとて つれなかるらむ

読下 かくれぬのそこの心そうらめしきいかにせよとてつれなかるらん

解釈 人が気が付かない隠れ沼の底の人知れず深く淀んだ気持ちで、実に恨らましい気持ちです、さて、どのようにせよと言って、このような冷淡な振る舞いをするのですか。

注意 詞書「つきなき事なり」は、相手が相応しくないとの意味合いがあります。

 

歌番号 759

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 和礼奈可良 佐毛々止可之幾 己々呂可奈 於毛者奴比止者 奈尓可己比之幾

和歌 われなから さももとかしき こころかな おもはぬひとは なにかこひしき

読下 我なからさももとかしき心かなおもはぬ人はなにかこひしき

解釈 私自身のことではあるが、なんとまぁ、もどかしい心持ちです、私のことを気に留めてくれない貴女が、なぜか、恋焦がれます。

 

歌番号 760

詞書 ふるく物いひ侍りける人に

詠人 もとすけ

原文 久左加久礼 加礼尓之美川者 奴留久止毛 武寸比之曽天者 以満毛加者加春

和歌 くさかくれ かれにしみつは ぬるくとも むすひしそては いまもかわかす

読下 草かくれかれにし水はぬるくともむすひしそては今もかわかす

解釈 草に埋もれて隠れ枯れてしまった井戸の水は清く冷たいはずが温くとも、手を結んで水を掬ったときに濡れた袖は、今も乾きません。(通った路も草に隠れ、枯れてしまった貴女との出会いは間遠くなってしまっても、貴女が後朝の別れで結んだ衣の袖の思いでは、今でも新鮮です。)

 

歌番号 761

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 和可遠毛不 比止者久左者乃 川由奈礼也 加久礼者曾天乃 万川曽本川良无

和歌 わかおもふ ひとはくさはの つゆなれや かくれはそての まつそほつらむ

読下 わか思ふ人は草葉のつゆなれやかくれは抽のまつそほつらむ

解釈 私が恋慕う貴女、草の葉の露のようなものなのでしょうか、貴女へ思いを懸ければ、私の袖が恋焦がれて流す涙で、朝露の中を歩いたかのように、真っ先に濡れてしまいます。

 

歌番号 762 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 堂毛止与利 於川留奈美堂者 美知乃久乃 己呂毛可者止曽 以不部可利个累

和歌 たもとより おつるなみたは みちのくの ころもかはとそ いふへかりける

読下 たもとよりおつる涙はみちのくの衣河とそいふへかりける

解釈 袂から零れ落ちる涙のために、陸奥の衣川、その言葉ではありませんが、衣が濡れて川のようだと言うほどです。

 

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拾遺和歌集 巻12 歌番号753から757まで

2025年02月04日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻12

歌番号 753 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 己比春留者 久累之幾毛乃止 志良寸部久 比止遠和可身尓 志波之奈左者也

和歌 こひするは くるしきものと しらすへく ひとをわかみに しはしなさはや

読下 恋するはくるしき物としらすへく人をわか身にしはしなさはや

解釈 人を恋することはどれほどに辛いことかと気付かせるように、私が恋したあの人を私と、しばしの間、置き換えてみたいものです。

 

歌番号 754 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 志累也幾美 志良寸八伊可尓 徒良可良无 和可々久者可利 於毛飛己々呂遠

和歌 しるやきみ しらすはいかに つらからむ わかかくはかり おもふこころを

読下 しるや君しらすはいかにつらからむわかかくはかり思ふ心を

解釈 気が付いているでしょうか、貴女、貴女に気付いて貰うことが、どれほどに大変なのか、私がこのようにと貴女のことを恋焦がれている気持ちを。

 

歌番号 755 拾遺抄記載

詞書 けさうし侍りける女の、五月夏至日なりけれは、うたかひなく思ひたゆみてものいひ侍りけるに、したしきさまになりにけれは、いみしくうらみわひて、のちにさらにあはしといひ侍りけれは

詠人 よしのふ

原文 安春之良奴 和可身奈利止毛 宇良三遠加武 己乃与尓天乃美 也万之止遠毛部八

和歌 あすしらぬ わかみなりとも うらみおかむ このよにてのみ やましとおもへは

読下 あすしらぬわか身なりとも怨みおかむこの世にてのみやましと思へは

解釈 明日のことも判らない我が身であっても、人の恨みをこの世に残すことは致しません、この世だけでは止まじ、その響きではありませんが、この夜にお逢いすれば、貴女の私への期待を裏切った恨みが収まるでしょうと思いますので。

注意 五句目の「やまし」を「止まじ」と「や+まし」との両方の意味合いで解釈しています。

 

歌番号 756

詞書 題しらす

詠人 人麿

原文 於毛不奈止 幾美者以部止毛 安不己止遠 以徒止之里天可 和可己比左良无

和歌 おもふなと きみはいへとも あふことを いつとしりてか わかこひさらむ

読下 思ふなと君はいへともあふ事をいつとしりてかわかこひさらん

解釈 恋焦がれて思い詰めるなと貴方は言いますが、でも、私は次に貴方に逢える時がいつと、はっきり知って、貴方への恋をしているのじゃありません。(じゃ、次はいつ逢えるの、ここではっきり約束をして)

 

歌番号 757 拾遺抄記載

詞書 万葉集和し侍りけるに

詠人 源順

原文 於毛不良无 己々呂乃宇知遠 志良奴美者 志奴者可利尓毛 安良志止曽遠毛飛

和歌 おもふらむ こころのうちを しらぬみは しぬはかりにも あらしとそおもふ

読下 おもふらむ心の内をしらぬ身はしぬはかりにもあらしとそ思ふ

解釈 貴女が恋焦がれる気持ちの心の中を気が付かない我が身では、恋した人が恋して死ぬことは無いだろうと思ってしまいます。

注意 歌番号756の歌に応じたもの。

 

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