歌番号 773 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 和比奴礼者 川祢者由々之幾 多奈者多毛 宇良也万礼奴留 毛乃尓曽安利个留
和歌 わひぬれは つねはゆゆしき たなはたも うらやまれぬる ものにそありける
読下 わひぬれはつねはゆゆしきたなはたもうらやまれぬる物にそ有りける
解釈 心が萎れてしまえば日常では辛いことです、あの年に一度しか逢わない七夕の牽牛と織姫さえも羨ましく思える、貴女との関係です。
歌番号 774
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 川由多尓毛 奈可良末之可八 安幾乃世尓 堂礼止於幾為天 比止遠満多末之
和歌 つゆたにも なからましかは あきのよに たれとおきゐて ひとをまたまし
読下 露たにもなからましかは秋の夜に誰とおきゐて人をまたまし
解釈 せめて露だけでも無かったなら、秋の夜に誰と起き居て、家の門の外で来ぬ人を待てばいいのでしょうか。
注意 万葉の世界では月と共に家の門で娘が恋人を待つことになっています。
歌番号 775
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 以満左良尓 止不部幾比止毛 於毛本恵寸 也部武久良之天 加止左世利天部
和歌 いまさらに とふへきひとも おもほえす やへむくらして かとさせりてへ
読下 今更にとふへき人もおもほえすやへむくらしてかとさせりてへ
解釈 今になっては妻問いするような貴方とは思えません、屋敷は八重葎するほどに荒れて屋敷の門を閉ざしていると言って下さい。
注意 新日本古典文学大系では、末句「てへ」は「といへ」の省略とします。
歌番号 776
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 安幾者和可 己々呂乃川由尓 安良祢止毛 々乃奈个可之幾 己呂尓毛安留可奈
和歌 あきはわか こころのつゆに あらねとも ものなけかしき ころにもあるかな
読下 秋はわか心のつゆにあらねとも物なけかしきころにもあるかな
解釈 秋、それ自体により私の心の内に不思議に涙の露を置くではありませんが、貴女を思うともの嘆かわしく感じる季節でもあるようです。