竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

後撰和歌集 巻1 歌番号11から15まで

2023年05月31日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻1
歌番号一一
原文 者川者留乃宇多止天
読下 はつ春の歌とて

原文 幾乃止毛乃利
読下 紀友則

原文 三川乃於毛尓安也布幾美多留者留可世也以介乃己保利遠个不者止久良无
和歌 みつのおもに あやふきみたる はるかせや いけのこほりを けふはとくらむ
読下 水の面にあや吹きみだる春風や池の氷を今日は解くらん
解釈 水面の綾織のような波紋が風に吹き乱している春風のためなのか、池に張った氷を今日は解かしたようだ。

歌番号一二
原文 可武部為乃於保武止幾々左以乃美也乃宇多安者世乃宇多
読下 寛平御時后の宮の歌合の歌

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 布久可世也者留堂知幾奴止川遣川良无衣多尓己毛礼留者奈左幾尓个里
和歌 ふくかせや はるたちきぬと つけつらむ えたにこもれる はなさきにけり
読下 吹く風や春立ち来ぬと告げつらん枝にこもれる花咲きにけり
解釈 吹く風によって立春になったと告げたのだろうか。(積もった雪ですが)枝の中に籠っていた花が咲いたようです。

歌番号一三
原文 志者寸許尓也満止部己止尓徒幾天万可利个留本止
尓也止利天者部留个留比止乃以部乃武寸免遠於毛比可个天
波部礼个礼止也武己止奈幾己止尓与利天満可利乃
本里尓个利安久留者留於也乃毛止尓川可者之个留
読下 師走ばかりに、大和へ事につきてまかりける
ほどに、宿りて侍りける人の家のむすめを
思ひかけて侍りけれど、やむごとなきこと
によりて、まかり上りにけり。あくる春、親
のもとにつかはしける

原文 美川祢
読下 みつね(凡河内躬恒)

原文 加春可野尓於不留和可奈遠三天之与利己々呂遠川祢尓於毛比也留可奈
和歌 かすかのに おふるわかなを みてしより こころをつねに おもひやるかな
読下 春日野に生ふる若菜を見てしより心をつねに思ひやるかな
解釈 春日野に生えた若菜を見る、そのような若い貴女の体を知ってからは、私の気持ちは常にその時の出来事を思っています。

歌番号一四
原文 加礼尓遣流於止己乃毛止尓曽乃春美个留可多乃
尓者乃幾乃加礼多利个留衣多遠於利天川可八之个留
読下 かれにける男のもとにその住みける方の庭
の木の枯れたりける枝を折りてつかはしける

原文 加祢三乃於保幾三乃武須女
読下 兼覧王女

原文 毛衣以川留己乃女遠三天毛祢遠曽奈久加礼尓之衣多乃者留遠之良祢者
和歌 もえいつる このめをみても ねをそなく かれにしえたの はるをしらねは
読下 萌え出づる木の芽を見ても音をぞ泣く枯れにし枝の春を知らねば
解釈 若芽が萌え出て来る、その木の芽を見ても声を上げて泣けてしまいます。枯れてしまった枝は新しい春を知らないように、貴方との縁が切れてしまった私には、もう、貴方との出会いが無いのかと思うと。

歌番号一五
原文 遠无奈乃美也徒可部尓満可利以天々者部利个留尓
女川良之幾保止者己礼可礼毛乃以飛奈止之者部利
个留遠本止毛奈久比止利尓安飛者部利尓个礼者
武川幾乃徒以多知者可利尓以比川可者之遣留
読下 女の宮仕へにまかり出でて侍りけるに、
めづらしきほどは、これかれ物言ひなどし侍りけ
るを、ほどもなく一人に逢ひ侍りにければ、
正月の一日ばかりに、言ひつかはしける

原文 与美比止之良寸
読下 よみしらす

原文 伊川乃満尓可須三多川良无加寸可乃々由幾多尓止計奴布由止三之満尓
和歌 いつのまに かすみたつらむ かすかのの ゆきたにとけぬ ふゆとみしまに
読下 いつのまに霞立つらん春日野の雪だに融けぬ冬と見しまに
解釈 いつの間にかに霞が立つようになった、その言葉ではありませんが恋の噂が立つ、その言葉の響きのような新年が立つ正月一日なので、まだ、春日野の雪が融けない冬のことと思っていましたが、もう、貴女の心は噂の男に融けてしまったようですね。

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後撰和歌集 巻1 歌番号6から10まで

2023年05月30日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻1
歌番号六
原文 為无乃於保武可者之
読下 院御返し

原文 寸左久為无
読下 朱雀院

原文 末川尓久累比止志奈遣礼者者留乃々乃和可奈毛奈尓毛加比奈可利个利
和歌 まつにくる ひとしなけれは はるののの わかなもなにも かひなかりけり
読下 松に来る人しなければ春の野の若菜も何もかひなかりけり
解釈 待っていても、この正月初子の日の小松を引き若菜を摘む行事に貴方がいないものだから、その若菜を摘む行事はつまらないものになりました。

歌番号七
原文 祢乃比尓於止己乃毛止与利遣不者己万川比幾尓奈无
満可利以川留止以部里个礼者
読下 子日に男のもとより、今日は小松引きになん
まかり出づると言へりければ

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 幾美乃美也乃部尓己万川遠比幾尓由久和礼毛加多美尓川末武和可奈遠
和歌 きみのみや のへにこまつを ひきにゆく われもかたみに つまむわかなを
読下 君のみや野辺に小松を引きに行く我もかたみに摘まむ若菜を
解釈 無病長寿を願う正月初子の日の小松を引き若菜を摘む行事、その願いは貴方だけではありません。私も無病長寿の証として若菜を摘みましょう。

歌番号八
原文 多以之良須
読下 題知らす

原文 可寸美多川加寸可乃々部乃和可奈尓毛奈利見天之哉比止毛川武也止
和歌 かすみたつ かすかののへの わかなにも なりみてしかな ひともつむやと
読下 霞立つ春日の野辺の若菜にもなり見てしがな人も摘むやと
解釈 霞が棚引く春日の野辺の若菜にでもなれないでしょうか。そうすればあの人が若菜として、この初々しい私を摘む(=愛人にする)と思うと。

歌番号九
原文 祢乃比之尓満可利个留比止尓遠久礼天川可者之个留
読下 子日しにまかりける人に、後れてつかはしける

原文 美川祢
読下 みつね(凡河内躬恒)

原文 者留乃々尓己々呂遠多尓毛也良奴三者和可奈者川万天止之遠己曽川女
和歌 はるののに こころをたにも やらぬみは わかなはつまて としをこそつめ
読下 春の野に心をだにもやらぬ身は若菜は摘まで年をこそつめ
解釈 春の野で行われる正月初子の日の小松を引き若菜を摘む行事に呼ばれることが無かったので、心だけでなく身も参加できない私は、行事で若菜は摘めないで、ただ、年だけを積んでいる。

歌番号一〇
原文 宇多為无尓祢乃比世武止安利个礼者乃利乃川加佐乃加美乃美己遠佐曽不止天
読下 宇多院に子日せむとありけれ、式部卿の親王を誘ふとて

原文 由幾安幾良乃美己
読下 行明親王

原文 布累佐止乃々部見尓由久止以布女留遠以左毛呂止毛尓和可奈川美天无
和歌 ふるさとの のへみにゆくと いふめるを いさもろともに わかなつみてむ
読下 ふるさとの野辺見に行くといふめるをいざもろともに若菜摘みてん
解釈 宇多(うた)院、その言葉の響きではありませんが、奈良の里である宇陀(うた)の、その野辺を見に行くと言うことなので、さぁ、一緒に無病長寿を願う若菜を摘みに行きましょう。

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後撰和歌集 巻1 歌番号1から5まで

2023年05月29日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻1
後撰和歌集 現代語訳 原文付 巻1

原文 比止末幾仁安多留未幾
読下 巻一

原文 者留乃宇多宇部
読下 春歌上

歌番号一
原文 武川幾乃川以多知尓天宇乃幾左以乃美也尓天
志呂幾於保宇知幾遠堂末者里天
読下 正月一日、二条の后宮にて、
白き大袿をたまはりて

原文 布知八良乃止之由幾安曽无
読下 藤原敏行朝臣

原文 布累由幾乃美能之呂己呂毛宇知幾川々者留幾尓个利止於止呂可礼奴留
和歌 ふるゆきの みのしろころも うちきつつ はるきにけりと おとろかれぬる
読下 降る雪の蓑代衣うち着つつ春来にけりとおどろかれぬる
解釈 降る雪、その言葉の響きのような古い=年老いた私は雪除けの蓑代わりのような粗末な衣を着ておりましたが、(白き大袿を賜り、そのぬくもりで)、まるで春が来たかのように驚いています。

歌番号二
原文 者留多川比与女留
読下 春立つ日よめる

原文 於保可宇知乃美川祢
読下 凡河内躬恒

原文 者留多川止幾々徒留加良尓加寸可也末幾衣安部奴由幾乃者奈止三由良无
和歌 はるたつと ききつるからに かすかやま きえあへぬゆきの はなとみゆらむ
読下 春立つと聞きつるからに春日山消えあへぬ雪の花と見ゆらん
解釈 暦では立春になったと聞いたからでしょうか、春の日の山と表す、あの春日山に消えずに残っている雪が、まるで、花が咲いているように見えるのでしょう。

歌番号三
原文 加祢毛利乃於保幾三
読下 兼盛王

原文 遣不与利八者幾乃也个者良加幾和个天和可奈徒三仁止多礼遠佐曽者武
和歌 けふよりは をきのやけはら かきわけて わかなつみにと たれをさそはむ
読下 今日よりは荻の焼け原かきわけて若菜摘みにと誰を誘はむ
解釈 立春になった今日からは野遊びの季節ですが、萩の名所の高円山(春日山)、その野焼きの焼けた野原をかき分けて、若菜を摘みに行こうと、さて、だれを誘いましょうか。

歌番号四
原文 安累比止乃毛止尓仁飛万以利乃遠无奈乃者布利个留可川幾比
飛佐之久部天武川幾乃川以多知己呂尓満部由留左礼太
里遣累尓安女能布留遠三天
読下 ある人のもとに、新参りの女の侍りけるが、月日
久しくへて、正月のついたちごろに、前ゆるされた
りけるに、雨の降るを見て

原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 志良久毛乃宇部志累个不曽者留左女乃布留尓加比安留三止者志利奴留
和歌 しらくもの うへしるけふそ はるさめの ふるにかひある みとはしりぬる
読下 白雲のうへしるけふそ春雨のふるにかひある身とはしりぬる
解釈 白雲が棚引く甲斐の国の、その白雲の上を知る富士山ではありませんが、高みの殿上に上がることを許された今日からは、春雨が降る、その言葉の響きではありませんが、年古=年老いた身ではありますが、久しくお仕えして来た甲斐があった我が身と知りました。

歌番号五
原文 寸左久為无乃祢乃比尓於者之末之个留尓佐者留
己止者布利天衣川可宇万川良天乃保三川安曽无尓
川可者之个流
読下 朱雀院の子日におはしましけるに、障る
こと侍りて、え仕うまつらで、延光朝臣に
つかはしける

原文 飛多利乃於保以末宇知幾美
読下 左大臣

原文 末川毛比幾和可奈毛川万寸奈利奴留遠以徒之可左久良者也毛佐可奈武
和歌 まつもひき わかなもつます なりぬるを いつしかさくら はやもさかなむ
読下 松も引き若菜も摘まずなりぬるをいつしか桜はやも咲かなむ
解釈 待つの処罰の差支えがあり、この正月初子の日の小松を引き若菜を摘む行事には参加が出来なくなってしまいましたが、差支えがなくなる季節、その時が来て、桜は早く咲かないものでしょうか。

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万葉集 集歌4513から集歌4516まで

2023年05月24日 | 新訓 万葉集
集歌4513 伊蘇可氣乃 美由流伊氣美豆 氏流麻埿尓 左家流安之婢乃 知良麻久乎思母
訓読 礒影の見ゆる池(いけ)水(みず)照るまでに咲ける馬酔木(あしび)の散らまく惜しも
私訳 磯岩の影が水面に見える池の水面を輝かすほどに咲いた馬酔木の花が散っていくことが惜しいことです。
右一首、大蔵大輔甘南備伊香真人
注訓 右の一首は、大蔵大輔甘南備伊香真人

二月十日、於内相宅餞渤海大使小野田守朝臣等宴謌一首
標訓 二月十日に、内相の宅(いへ)にして渤海大使小野田守朝臣等に餞(はなむけ)して宴(うたげ)せし謌一首
集歌4514 阿乎宇奈波良 加是奈美奈妣伎 由久左久佐 都々牟許等奈久 布祢波々夜家無
訓読 青海原(あおうなはら)風波(かぜなみ)靡き行くさ来さつつむことなく船は速けむ
私訳 青海原は風に波が靡き、貴方が行くも帰るも差し障りもなく、船足は速いでしょう。
右一首、右中辨大伴宿祢家持 (未誦之)
注訓 右の一首は、右中辨大伴宿祢家持 (未だこれを誦(よ)まず)

七月五日、於式部少輔大原今城真人宅、餞因幡守大伴宿祢家持宴謌一首
標訓 七月五日に、式部少輔大原今城真人の宅(いへ)にして、因幡守大伴宿祢家持を餞(はなむけ)して宴(うたげ)せし謌一首
集歌4515 秋風乃 須恵布伎奈婢久 波疑能花 登毛尓加射左受 安比加和可礼牟
訓読 秋風の末吹き靡く萩の花ともにかざさず相(あひ)か別れむ
私訳 秋風が枝先に吹いて靡く萩の花、その花枝を共にかざしましょう。これから互いに別れて行くのだから。
右一首、大伴宿祢家持作之
注訓 右の一首は、大伴宿祢家持の之を作れり

三年春正月一日、於因幡國廳、賜饗國郡司等之宴謌一首
標訓 三年春正月一日に、因幡國(いなばのくに)の廳(ちやう)にして、饗(あへ)を國郡(くにのこほり)の司等(つかさたち)に賜(たま)はりて宴(うたげ)せし謌一首
集歌4516 新 年乃始乃 波都波流能 家布敷流由伎能 伊夜之家餘其騰
訓読 新しき年の始(はじめ)の初春の今日降る雪のいやしけ吉事(よこと)
私訳 新しい年の始めの初春の今日、その今日に降るこの雪のように、たくさん積もりあがれ、吉き事よ。
コメント (1)
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万葉集 集歌4508から集歌4512まで

2023年05月23日 | 新訓 万葉集
集歌4508 多可麻刀能 努敝波布久受乃 須恵都比尓 知与尓和須礼牟 和我於保伎美加母
訓読 高円(たかまと)の野辺延ふ葛(くず)の末つひに千代に忘れむ我が王(おほきみ)かも
私訳 高円の野辺に生える葛の蔓が長く延びるように千代の後に忘れられるような我が王の御名でしょうか。
右一首、主人中臣清麿朝臣

集歌4509 波布久受能 多要受之努波牟 於保吉美乃 賣之思野邊尓波 之米由布倍之母
訓読 延ふ葛(くず)の絶えず偲はむ王(おほきみ)の見しし野辺には標(しめ)結ふべしも
私訳 野辺に延びる葛の蔓が絶えないように御偲びする王が眺められた高円の野辺に農民に荒らされないように禁制の標を結ぶべきでしょう。
右一首、右中辨大伴宿祢家持

集歌4510 於保吉美乃 都藝弖賣須良之 多加麻刀能 努敝美流其等尓 祢能未之奈加由
訓読 王(おほきみ)の継ぎて見すらし高円(たかまと)の野辺見るごとに哭(ね)のみし泣かゆ
私訳 葬られた場所から王が今も見ていられるでしょう。高円の野辺を見るたびに亡くなられたことを怨みながら泣けてしまう。
右一首、大蔵大輔甘南備伊香真人

属目山齊作謌三首
標訓 山齊(しま)を属目(み)て作れる謌三首
集歌4511 乎之能須牟 伎美我許乃之麻 家布美礼婆 安之婢乃波奈毛 左伎尓家流可母
訓読 鴛鴦(おしとり)の住む君がこの山斎(しま)今日見れば馬酔木(あしび)の花も咲きにけるかも
私訳 おしどりが棲む、私の大切な貴方のこの庭園を今日見ると、馬酔木の花も咲いていることです。
右一首、大監物御方王
注訓 右の一首は、大監物御方王(みかたのおほきみ)

集歌4512 伊氣美豆尓 可氣左倍見要氏 佐伎尓保布 安之婢乃波奈乎 蘇弖尓古伎礼奈
訓読 池(いけ)水(みず)に影さへ見えて咲きにほふ馬酔木(あしび)の花を袖に扱入(こき)れな
私訳 池の水面に影までも映して咲き誇る馬酔木の花を袖にしごき取って入れましょう。
右一首、右中辨大伴宿祢家持
注訓 右の一首は、右中辨大伴宿祢家持

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