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竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

拾遺和歌集 巻1 歌番号76から78まで

2024年07月25日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻1

歌番号 76 拾遺抄記載

詞書 延喜御時の春宮の御屏風に

詠人 つらゆき

原文 可世布遣者 可多毛佐多女寸 知留者奈遠 以徒可多部由久 者留止可八美武

和歌 かせふけは かたもさためす ちるはなを いつかたへゆく はるとかはみむ

読下 風ふけは方もさためすちる花をいつ方へゆくはるとかは見む

解釈 風が吹くと、方向も定めずに散って逝く花を、どちらの方向へと行く、そのような春として眺めましょうか。

 

歌番号 77 拾遺抄記載

詞書 おなし御時の月次の御屏風に

詠人 つらゆき

原文 者奈毛三那 知利奴留也止者 由久者留乃 布留佐止々己曽 奈利奴部良祢礼

和歌 はなもみな ちりぬるやとは ゆくはるの ふるさととこそ なりぬへらなれ

読下 花もみなちりぬる宿は行く春のふるさととこそなりぬへらなれ

解釈 花もみんな散ってしまった屋敷は、過ぎ行く春の故郷とばかりになってしまいそうです。

 

歌番号 78 拾遺抄記載

詞書 閏三月侍りけるつこもりに

詠人 みつね

原文 徒祢与利毛 乃止遣可利川留 者累奈礼止 个不乃久累々者 安可数曽安利个累

和歌 つねよりも のとけかりつる はるなれと けふのくるるは あかすそありける

読下 つねよりものとけかりつるはるなれと今日のくるるは飽かずそありける

解釈 閏三月のある年は常の年よりも気分が穏やかな春ではありますが、月末の今日の暮れは、それでも春の季節への飽き足りない気分がします。

 

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拾遺和歌集 巻1 歌番号71から75まで

2024年07月24日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻1

歌番号 71 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 佐者美川尓 加者徒奈久奈利 也万不久乃 宇川呂不可个也 曽己尓美由良无

和歌 さはみつに かはつなくなり やまふきの うつろふかけや そこにみゆらむ

読下 沢水にかはつなくなり山吹のうつろふ影やそこに見ゆらん

解釈 沢の小川に蛙が鳴いています、山吹の花が時と共にしだれ変わって行く、その姿が小川に映って見えたのでしょうか。(名残惜しいと。)

 

歌番号 72 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 和可也止乃 也部也万不久者 飛止部多尓 知利乃己良奈无 者留乃可多美尓

和歌 わかやとの やへやまふきは ひとへたに ちりのこらなむ はるのかたみに

読下 わかやとのやへ山吹はひとへたにちりのこらなんはるのかたみに

解釈 私の屋敷の八重の山吹の花は、その一重だけでも散り残って欲しい、春の思い出として。

 

歌番号 73 拾遺抄記載

詞書 亭子院の歌合に

詠人 坂上是則

原文 者奈乃衣呂遠 宇徒之止々女与 可々美也万 者留与利乃知乃 可个也美由留止

和歌 はなのいろを うつしととめよ かかみやま はるよりのちの かけやみゆると

読下 花の色をうつしととめよ鏡山春よりのちの影や見ゆると

解釈 花の色を映して、留めてください、鏡よ。その鏡という名を持つ鏡山、春の季節が過ぎた後にも、花の盛りの姿を見えるものかと。

 

歌番号 74 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 者留可須美 堂知和可礼由久 也万美知者 々奈己曽奴左止 知利万可日个礼

和歌 はるかすみ たちわかれゆく やまみちは はなこそぬさと ちりまかひけれ

読下 春霞たちわかれゆく山みちは花こそぬさとちりまかひけれ

解釈 春霞が立ち、山際を分けて流れ行く、その山路は花が神を祝う白き幣のように散り交がっていました。

 

歌番号 75 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 止之乃宇知者 美奈者留奈可良 久礼奈々无 者奈美天多尓毛 宇幾与寸久左无

和歌 としのうちは みなはるなから くれななむ はなみてたにも うきよすくさむ

読下 年の内はみな春なからくれななん花見てたにもうきよすくさん

解釈 二十四節季では年内に既に春となっていますが、それでも暦での年は暮れて行くでしょう、せめて、花を眺めることだけでも、憂き世の言葉の響きではありませんが、浮き余った日々を過ごしましょう。

 

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拾遺和歌集 巻1 歌番号66から70まで

2024年07月23日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻1

歌番号 66 拾遺抄記載

詞書 天暦御時の歌合に

詠人 小弐命婦

原文 安之飛幾乃 也万可久礼奈留 佐久良者奈 知利乃己礼利止 可世尓志良留奈

和歌 あしひきの やまかくれなる さくらはな ちりのこれりと かせにしらるな

読下 あしひきの山かくれなるさくら花ちりのこれりと風にしらるな

解釈 葦や檜の茂る深い山に隠れている桜の花、まだ散り残っていると、風に気付かれないでくれ。(風が花を散らすだろうから。)

 

歌番号 67 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 伊者満遠毛 和計久累堂幾乃 美川遠以可天 知利川武者奈乃 世幾止々武良无

和歌 いはまをも わけくるたきの みつをいかて ちりつむはなの せきととむらむ

読下 岩間をもわけくるたきの水をいかてちりつむ花のせきととむらん

解釈 岩の間を分けて流れる急流の水を、どのようにして散り積もる花びらは堰き止めるのだろうか。(岩間の水面に桜の花びらが留まっています。)

 

歌番号 68 拾遺抄記載

詞書 天暦御時の歌合に

詠人 源したかふ

原文 者留布可美 為天乃加者奈美 堂知可部利 美天己曽由可免 也万不久乃者奈

和歌 はるふかみ ゐてのかはなみ たちかへり みてこそゆかめ やまふきのはな

読下 春ふかみゐてのかは浪たちかへり見てこそゆかめ山吹の花

解釈 春の季節が深まったので、井手(山城)の川の水面が氷も解けて波立つ、その言葉の響きではありませんが、立ち帰りながら眺めて行きなさい、この山吹の花を。

注意 貫之集「音に聞く井手の山吹見つれども蛙の声は変らざりけり」を参考とする。

 

歌番号 69 拾遺抄記載

詞書 ゐてといふ所に、山吹の花のおもしろくさきたるを見て

詠人 恵慶法師

原文 也万不久乃 者奈乃佐可利尓 為天尓幾天 己乃佐止比止尓 奈利奴部幾可奈

和歌 やまふきの はなのさかりに ゐてにきて このさとひとに なりぬへきかな

読下 山吹の花のさかりにゐてにきてこのさと人になりぬへきかな

解釈 (この美しい花模様を見ると、確かに)山吹の花の盛りに井手(山城)に来て、この里人になった方が良いのでしょうか。(と思います。)

 

歌番号 70

詞書 屏風に

詠人 もとすけ

原文 毛乃毛以者天 奈可免天曽布留 也万不久乃 者奈尓己々呂曽 宇川呂日奴良无

和歌 ものもいはて なかめてそふる やまふきの はなにこころそ うつろひぬらむ

読下 物もいはてなかめてそふる山吹の花に心そうつろひぬらん

解釈 物も言わないで、ただ、眺めて時を過ごしてしまう、この山吹の花に、私の気持ちは乗り移ってしまいそうです。

 

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拾遺和歌集 巻1 歌番号61から65まで

2024年07月22日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻1

歌番号 61 拾遺抄記載

詞書 延喜の御時、ふちつほの女御歌合のうたに

詠人 よみ人しらす

原文 安佐己止尓 和可波久也止乃 尓八佐久良 者奈知留本止者 天毛布礼天美武

和歌 あさことに わかはくやとの にはさくら はなちるほとは てもふれてみむ

読下 朝毎に我が掃く宿の庭桜花ちるほとは手もふれで見む

解釈 朝毎に私が掃き清める屋敷の庭ですが、その庭に桜の花が散る間だけは掃き清める手も入れずにその花散る庭の風情を眺めましょう。

 

歌番号 62 拾遺抄記載

詞書 あれはてて人も侍らさりける家に、さくらのさきみたれて侍りけるを見て

詠人 恵慶法師

原文 安左知波良 奴之奈幾也止乃 左久良者奈 己々呂也寸久也 可世尓知留良无

和歌 あさちはら ぬしなきやとの さくらはな こころやすくや かせにちるらむ

読下 浅茅原主なき宿の桜花心やすくや風にちるらん

解釈 浅茅の原になってしまった屋敷の桜の花は、散る様にそわそわする人もいないので、心やすく風に散って行くのでしょうか。

 

歌番号 63 拾遺抄記載

詞書 きたの宮のもきの屏風に

詠人 つらゆき

原文 者留布可久 奈利奴止遠毛不遠 佐久良者奈 知留己乃毛止八 満多由幾曽布留

和歌 はるふかく なりぬとおもふを さくらはな ちるこのもとは またゆきそふる

読下 春ふかくなりぬと思ふをさくら花ちるこのもとはまた雪そふる

解釈 春の季節が深くなったと思ったが、桜の花の散るこの木の根元は、まだ、雪がふっていますよ。

 

歌番号 64 拾遺抄記載

詞書 亭子院歌合に

詠人 つらゆき

原文 佐久良知留 己乃志多可世者 左武可良天 曽良尓志良礼奴 由幾曽布利个留

和歌 さくらちる このしたかせは さむからて そらにしられぬ ゆきそふりける

読下 さくらちるこのした風はさむからてそらにしられぬゆきそふりける

解釈 桜が散るこの木の根元、風が寒いからなのか、空には気が付かないが、その根元に雪が降りました。

 

歌番号 65 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 安之飛幾乃 也万地尓知礼留 左久良者奈 幾衣世奴者留乃 由幾可止曽美留

和歌 あしひきの やまちにちれる さくらはな きえせぬはるの ゆきかとそみる

読下 あしひきの山ちにちれる桜花きえせぬはるの雪かとそ見る

解釈 葦や檜の生える深い山路に散っている山桜の花、その姿はまだ消えぬ春の雪かと眺めました。

 

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拾遺和歌集 巻1 歌番号56から60まで

2024年07月19日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻1

歌番号 56

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 布留左止乃 可須美止比和遣 由久可利八 堂比乃曽良尓也 者留遠久良左武

和歌 ふるさとの かすみとひわけ ゆくかりは たひのそらにや はるをくらさむ

読下 ふるさとの霞とひわけゆくかりはたひのそらにやはるをくらさむ

解釈 故郷の野辺に立つ霞を飛び分けて行く雁は、北へ帰って行く旅の空で春の日々を暮らすのでしょうか。

 

歌番号 57 拾遺抄記載

詞書 天暦御時の御屏風に

詠人 藤原清正

原文 知里奴部幾 者奈美留止幾者 寸可乃祢乃 奈可幾者留比毛 美之可々利个利

和歌 ちりぬへき はなみるときは すかのねの なかきはるひも みしかかりけり

読下 ちりぬへき花見る時はすかのねのなかきはる日もみしかかりけり

解釈 今にも散ってしまいそうな花を見る時は、菅の根が長い、その言葉ではありませんが、長い春の日も短く感じます。

 

歌番号 58 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 徒遣也良无 満尓毛知利奈八 佐久良者奈 以川者利比止尓 和礼也奈利奈无

和歌 つけやらむ まにもちりなは さくらはな いつはりひとに われやなりなむ

読下 つけやらんまにもちりなはさくら花いつはり人に我やなりなん

解釈 もう花が散りますよと、告げてやりましょう、その告げようとする間にも散ってしまったら、桜の花よ、ウソつきの人に、私はなってしまうのでしょうか。

 

歌番号 59 拾遺抄記載

詞書 屏風に

詠人 よしのふ

原文 知利曽武留 者奈遠美寸天々 加部良女也 於保川可奈之止 以毛八末川止毛

和歌 ちりそむる はなをみすてて かへらめや おほつかなしと いもはまつとも

読下 ちりそむる花を見すててかへらめやおほつかなしといもはまつとも

解釈 散り始めた花を見捨てて帰ることが出来るでしょうか、貴方がいないと心細いと愛しい妻が家で待っていたとしても。

 

歌番号 60

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 美毛者天々 由久止於毛部者 知留者奈尓 川个天己々呂乃 曽良尓奈留可奈

和歌 みもはてて ゆくとおもへは ちるはなに つけてこころの そらになるかな

読下 見もはててゆくとおもへはちる花につけて心のそらになるかな

解釈 散る花の景色を眺めることを最後まで出来ないで帰って行くと思うと、散る花に想いが付いて、心が上の空になった気分です。

 

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