歌番号 76 拾遺抄記載
詞書 延喜御時の春宮の御屏風に
詠人 つらゆき
原文 可世布遣者 可多毛佐多女寸 知留者奈遠 以徒可多部由久 者留止可八美武
和歌 かせふけは かたもさためす ちるはなを いつかたへゆく はるとかはみむ
読下 風ふけは方もさためすちる花をいつ方へゆくはるとかは見む
解釈 風が吹くと、方向も定めずに散って逝く花を、どちらの方向へと行く、そのような春として眺めましょうか。
歌番号 77 拾遺抄記載
詞書 おなし御時の月次の御屏風に
詠人 つらゆき
原文 者奈毛三那 知利奴留也止者 由久者留乃 布留佐止々己曽 奈利奴部良祢礼
和歌 はなもみな ちりぬるやとは ゆくはるの ふるさととこそ なりぬへらなれ
読下 花もみなちりぬる宿は行く春のふるさととこそなりぬへらなれ
解釈 花もみんな散ってしまった屋敷は、過ぎ行く春の故郷とばかりになってしまいそうです。
歌番号 78 拾遺抄記載
詞書 閏三月侍りけるつこもりに
詠人 みつね
原文 徒祢与利毛 乃止遣可利川留 者累奈礼止 个不乃久累々者 安可数曽安利个累
和歌 つねよりも のとけかりつる はるなれと けふのくるるは あかすそありける
読下 つねよりものとけかりつるはるなれと今日のくるるは飽かずそありける
解釈 閏三月のある年は常の年よりも気分が穏やかな春ではありますが、月末の今日の暮れは、それでも春の季節への飽き足りない気分がします。