竹取翁と万葉集のお勉強

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古今和歌集 原文推定 巻二十

2020年04月19日 | 古今和歌集 原文推定 藤原定家伊達本
者多末幾仁安多留未幾
はたまきにあたるまき
巻二十

於保宇多止己呂乃於保武宇多
大哥所御哥
大哥所御哥

於保奈本比乃宇多
おほなほひのうた
大直日哥

歌番号一〇六九
原文 安多良之幾止之乃始尓加久之己曽知止世遠可祢天多乃之幾遠川女
定家 あたらしき年の始にかくしこそちとせをかねてたのしきをつめ
解釈 新しき年の始めにかくしこそ千歳をかねてたのしきを積め

日本紀尓八川可部万川良女与呂川与万天二
日本紀にはつかへまつらめよろつよまてに

歌番号一〇七〇
布留幾也万止末比乃宇多
ふるきやまとまひのうた
古大和舞哥

原文 志毛止由不加川良幾夜万尓布留由幾乃万奈久止幾奈久於毛本由留可奈
定家 しもとゆふかつらき山にふる雪のまなく時なくおもほゆる哉
解釈 しもとゆふ葛城山に降る雪の間なく時なく思ほゆるかな

歌番号一〇七一
安不美布利
あふみふり
近江振

原文 安不美与利安左多知久礼八宇祢乃々尓多川曽奈久奈留安計奴己乃与八
定家 近江よりあさたちくれはうねのゝにたつそなくなるあけぬこのよは
解釈 近江より朝立ち来ればうねの野に田鶴ぞ鳴くなる明けぬこの世は

歌番号一〇七二
美川久幾布利
みつくきふり
水茎振

原文 美川久幾乃遠可乃也可多尓以毛止安礼止祢天乃安左个乃之毛乃布利者毛
定家 水くきのをかのやかたにいもとあれとねてのあさけのしものふりはも
解釈 水茎の岡の屋形に妹と我れと寝ての朝けの霜の降りはも

歌番号一〇七三
志者川夜万布利
しはつ山ふり
四極山振

原文 之者川夜万宇知以天々美礼八加左由日乃志万己幾加久留多奈々之遠不祢
定家 しはつ山うちいてゝ見れはかさゆひのしまこきかくるたなゝしをふね
解釈 しはつ山うち出でて見れば笠ゆひの島漕ぎ隠る棚無し小舟

加美安曽比乃宇多
神あそひのうた
神遊哥

歌番号一〇七四
止利毛乃々宇多
とりものゝうた
採物哥

原文 加美可幾乃美武呂乃夜万乃左可幾者々加美乃見末部尓之个利安日尓遣利
定家 神かきのみむろの山のさかきはゝ神のみまへにしけりあひにけり
解釈 神垣の三室の山の榊葉は神の御前に繁りあひにけり

歌番号一〇七五
原文 志毛也多日遠个止加礼世奴左可幾者乃多知左可由部幾加美乃幾祢可毛
定家 しもやたひをけとかれせぬさかきはのたちさかゆへき神のきねかも
解釈 霜八度置けど枯れせぬ榊葉の立ち栄ゆべき神のきねかも

歌番号一〇七六
原文 満幾毛久乃安奈之乃夜万乃夜万比止々比止毛美留可尓夜万可川良世与
定家 まきもくのあなしの山の山人と人も見るかに山かつらせよ
解釈 巻向の穴師の山の山人と人も見るがに山かづらせよ

歌番号一〇七七
原文 美夜万尓者安良礼布留良之止也万奈留末左幾乃可川良以呂川幾尓个利
定家 み山にはあられふるらしとやまなるまさきのかつらいろつきにけり
解釈 深山には霰降るらし外山なるまさきの葛色づきにけり

歌番号一〇七八
原文 見知乃久乃安多知乃万由美和可比可者寸恵左部与利己志乃日/\尓
定家 みちのくのあたちのまゆみわかひかはすゑさへよりこしのひ/\に
解釈 陸奥の安達のまゆみ我が引かば末さへ寄り来しのびしのびに

歌番号一〇七九
原文 和可己止乃以多為乃之美川左止々遠美比止之久万祢八美久左於日尓个利
定家 わかゝとのいたゐのし水さとゝをみ人しくまねはみくさおひにけり
解釈 我が門の板井の清水里遠み人し汲まねば水久左生ひにけり

歌番号一〇八〇
飛累女乃宇多
ひるめのうた
日女哥

原文 佐々乃久万飛乃久満可者尓己万止女天志波之美川可部加計遠多尓美武
定家 さゝのくまひのくま河にこまとめてしはし水かへかけをたに見む
解釈 笹の隈桧の隈川に駒止めてしばし水飼へ影をだに見む

歌番号一〇八一
加部之毛乃々宇多
かへしものゝうた
返物哥

原文 安遠也幾遠加多以止尓与利天宇久比寸乃奴不部不可佐八武女乃者那可左
定家 あをやきをかたいとによりて鴬のぬふてふ笠は梅の花かさ
解釈 青柳を片糸によりて鴬の縫ふてふ笠は梅の花笠

歌番号一〇八二
原文 満可祢布久幾比乃奈可夜万於比尓世留本曽多尓加者乃遠止乃左也个左
定家 まかねふくきひの中山おひにせるほそたに河のをとのさやけさ
解釈 まがねふく吉備の中山帯にせる細谷川の音のさやけさ

己乃宇多八承和乃美部乃幾日乃久尓乃宇多
この哥は承和の御へのきひのくにの哥
この哥は承和の御辺の吉備の国の哥

歌番号一〇八三
原文 三未左可也久女乃左良夜万佐良/\尓和可奈八多天之与呂川与万天二
定家 美作やくめのさら山さら/\にわかなはたてしよろつよまてに
解釈 美作や久米の佐良山さらさらに我が名は立てじよろづ世までに

己礼八美川乃於乃美部乃三万佐可乃久尓乃宇多
これはみつのおの御へのみまさかのくにのうた
これは水の尾の御辺の美作の国の哥

歌番号一〇八四
原文 美乃々久尓世幾乃布知加者堂衣寸之天幾三尓川可部武与呂川与万天尓
定家 みのゝくに関のふち河たえすして君につかへむよろつよまてに
解釈 美濃の国関の淵河絶えずして君に仕へむよろづ代までに

己礼八元慶乃美部乃美乃々宇多
これは元慶の御へのみのゝうた
これは元慶の御辺の美濃の哥

歌番号一〇八五
原文 幾美可世八加幾利毛安良之奈可者万乃末左己乃可寸八与美川久寸止毛
定家 きみか世は限もあらしなかはまのまさこのかすはよみつくすとも
解釈 君が代は限りもあらじ長浜の真砂の数はよみ尽くすとも

己礼八尓无奈乃美部乃以世乃久尓乃宇多
これは仁和の御へのいせのくにの哥
これは仁和の御辺の伊勢の国の哥

歌番号一〇八六
於本止毛乃久呂奴之
大伴くろぬし
大伴黒主

原文 安不美乃也加々美乃夜万遠多天多礼八加祢天曽美由留幾三可知止世八
定家 近江のやかゝみの山をたてたれはかねてそ見ゆる君かちとせは
解釈 近江のや鏡の山をたてたればかねてぞ見ゆる君が千歳は

己礼八幾武之宇乃美部乃安不三乃宇多
これは今上の御へのあふみのうた
これは今上の御辺の近江の哥


安徒万宇多
東哥
東哥

美知乃久乃宇多
みちのくのうた
陸奥哥

歌番号一〇八七
原文 安不久満尓幾利多知久毛利安計奴止毛幾三遠者也良之末天八寸部奈之
定家 あふくまに霧立くもりあけぬとも君をはやらしまてはすへなし
解釈 阿武隈に霧立ち曇り明けぬとも君をばやらじ待てばすべなし

歌番号一〇八八
原文 美知乃久者以川久八安礼止之本可万乃宇良己久舟乃川奈天可奈之毛
定家 みちのくはいつくはあれとしほかまの浦こく舟のつなてかなしも
解釈 陸奥はいづくはあれど塩釜の浦漕ぐ舟の綱手かなしも

歌番号一〇八九
原文 和可世己遠美也己尓也利天志本可万乃末可幾乃之万乃末川曽己日之幾
定家 わかせこを宮こにやりてしほかまのまかきのしまの松そこひしき
解釈 我が背子を都にやりて塩釜のまがきの島の待つぞ恋しき

歌番号一〇九〇
原文 於久呂左幾美川乃己之満乃比止奈良八美也己乃川止尓以左止以者万之遠
定家 おくろさきみつのこしまの人ならは宮このつとにいさといはましを
解釈 おぐろ崎みつの小島の人ならば都のつとにいざと言はましを

歌番号一〇九一
原文 美左不良比見可左止毛布世美也幾乃々己乃之多川由者安女尓万左礼利
定家 みさふらひみかさと申せ宮木のゝこのしたつゆはあめにまされり
解釈 みさぶらひ御笠とまうせ宮城野の木の下露は雨にまされり

歌番号一〇九二
原文 毛可美加者乃本礼者久多留以奈舟乃以奈尓八安良寸己乃川幾者可利
定家 もかみ河のほれはくたるいな舟のいなにはあらすこの月許
解釈 最上河上れば下る稲舟のいなにはあらずこの月ばかり

歌番号一〇九三
原文 幾三遠々幾天安多之己々呂遠和可毛多八寸恵乃末川夜万奈美毛己衣奈武
定家 君をゝきてあたし心をわかもたはすゑの松山浪もこえなむ
解釈 君を置きてあだし心を我が持たば末の松山浪も越えなむ


左可美宇多
さかみうた
相模哥

歌番号一〇九四
原文 己与呂幾乃以曽多知奈良之以曽奈川武女左之奴良寸奈於幾尓遠礼奈美
定家 こよろきのいそたちならしいそなつむめさしぬらすなおきにをれ浪
解釈 こよろぎの磯たちならし磯菜摘むめざし濡らすな沖にをれ浪


飛多知宇多
ひたちうた
常陸哥

歌番号一〇九五
原文 徒久者祢乃己乃毛加乃毛尓可計八安礼止幾三可美可个尓万寸加遣者奈之
定家 つくはねのこのもかのもに影はあれと君かみかけにますかけはなし
解釈 筑波嶺のこのもかのもに影はあれど君が御影にます影はなし

歌番号一〇九六
原文 川久波祢乃峯乃毛美知八於知川毛利之留毛志良奴毛奈部天加奈之毛
定家 つくはねの峯のもみちはおちつもりしるもしらぬもなへてかなしも
解釈 筑波嶺の峰のもみぢ葉落ち積もり知るも知らぬもなべてかなしも


加飛宇多
かひうた
甲斐哥

歌番号一〇九七
原文 加飛可祢遠左也尓毛美之可遣々礼奈久与己本利布世留佐也乃中夜万
定家 かひかねをさやにも見しかけゝれなくよこほりふせるさやの中山
解釈 甲斐が嶺をさやにも見しかけけれなく横ほり臥せる小夜の中山

歌番号一〇九八
原文 可比加子遠祢己之夜万己之布久可世遠比止尓毛可毛也己止川天也良武
定家 かひかねをねこし山こし吹風を人にもかもや事つてやらむ
解釈 甲斐が嶺をねこじ山越し吹く風を人にもがもや言伝てやらむ


以世宇多
伊勢うた
伊勢哥

歌番号一〇九九
原文 於不乃宇良仁加多衣左之於保比奈留奈之乃奈利毛奈良寸毛祢天可多良波武
定家 おふのうらにかたえさしおほひなるなしのなりもならすもねてかたらはむ
解釈 おふの浦に片枝さしおほひなる梨のなりもならずも寝て語らはむ

布由乃可毛乃末川利乃宇多
冬の賀茂のまつりのうた
冬の賀茂の祭哥

歌番号一一〇〇
布知八良乃止之由幾安曽无
藤原敏行朝臣
藤原敏行朝臣

原文 知者也布累加毛乃也之呂乃飛免己万川与呂徒世不止毛以呂者可波良之
定家 ちはやふるかものやしろのひめこまつよろつ世ふともいろはかはらし
解釈 ちはやぶる賀茂の社の姫小松よろづ世経とも色は変らじ























家々称証本之本乍書入以墨滅哥

巻第十
毛乃奈乃布
物名部
物名部

歌番号一一〇一
飛久良之   川良由幾
ひくらし   つらゆき
蜩  紀貫之

原文 曽万比止者美也幾比久良之安之比幾乃夜万乃夜万比己与日止与武奈利
定家 そま人は宮木ひくらしあしひきの山の山ひこよひとよむなり
解釈 そま人は宮木引くらしあしひきの山の山彦呼びとよむなり

在保止々幾須   可良世三
在郭公   空蝉
在郭公  空蝉

歌番号一一〇二
加知遠武
勝臣
藤原勝臣

原文 加遣利天毛奈尓遠可多万乃幾天毛美武加良八本乃本止奈利尓之毛乃遠
定家 かけりてもなにをかたまのきても見むからはほのほとなりにしものを
解釈 かけりても何をか魂の来ても見む殻は炎となりにしものを

遠可多万乃幾   止毛乃利
をかたまの木   友則
小賀玉木  紀友則

歌番号一一〇三
久礼乃於毛   川良由幾
くれのおも   つらゆき
くれのおも  紀貫之

原文 己之止幾止己日川々遠礼八由不久礼乃於毛可个尓乃三美衣和多留可奈
定家 こし時とこひつゝをれはゆふくれのおもかけにのみ見えわたる哉
解釈 来し時と恋ひつつをれば夕暮れの面影にのみ見えわたるがな

志乃日久左 止之左多  遠幾乃為 三也己之満
忍草 利貞  をきの井 みやこしま

歌番号一一〇四
遠乃々己万知
をのゝこまち
小野小町

原文 越幾乃井天三遠也久与利毛加奈之幾者美也己之満部乃和可礼奈利个利
定家 をきのゐて身をやくよりもかなしきは宮こしまへのわかれなりけり
解釈 をきのゐて身を焼くよりもかなしきはみやこ島への別れなりけり

加良己止   幾与由幾
からこと   清行
からこと  安倍清行

歌番号一一〇五
曽女止乃安者多   安也毛知
そめとのあはた   あやもち

原文 宇幾女遠八与曽女止乃美曽乃可礼由久久毛乃安者多川夜万乃不毛止尓
定家 うきめをはよそめとのみそのかれゆく雲のあはたつ山のふもとに
解釈 憂きめをばよそ目とのみぞ逃れ行く雲のあはたつ山の麓に

己乃宇多美川乃遠乃美可止乃曽女止乃与利安者多部宇川利多万宇个留止幾尓与女留
このうた水の尾のみかとのそめとのよりあはたへうつりたまうける時によめる

可川良美也
桂宮



巻第十一
とをまりひとまき

歌番号一一〇六
於久寸可乃祢之乃幾布留由幾乃
奥菅の根しのきふる雪

原文 个不比止遠己不留己々呂者多保為加者奈可留々美川尓於止良佐利个利
定家 けふ人をこふる心は大井河なかるゝ水におとらさりけり
解釈 今日人を恋ふる心は大井川流るる水に劣らざりけり

歌番号一一〇七
原文 和幾毛己尓安不左可夜万乃之乃寸々幾本尓八伊天寸毛己比和多留可那
定家 わきもこにあふさか山のしのすゝきほにはいてすもこひわたるかな
解釈 我妹子に逢坂山のしのすすき穂には出でずも恋ひわたるかな


巻第十三
とをまりみまきにあたるまき

歌番号一一〇八
己比之久八之多尓遠於毛部武良佐幾乃
こひしくはしたにを思へ紫の

原文 以奴可美乃止己乃夜万奈留奈止利加者以左止己多部与和可奈毛良寸奈
定家 いぬかみのとこの山なるなとり河いさとこたへよわかなもらすな
解釈 犬上のとこの山なる名取川いさと答へよ我が名漏らすな

己乃宇多安留比止安女乃美可止乃安不三乃宇祢女尓多万部留止
この哥ある人あめのみかとのあふみのうねめにたまへると

歌番号一一〇九
可部之    宇祢女乃多天万川礼留
返し    うねめのたてまつれる

原文 夜万之奈乃遠止八乃多幾乃遠止尓乃美比止乃之留部久和可己日女也毛
定家 山しなのをとはのたきのをとにのみ人のしるへくわかこひめやも
解釈 山科の音羽の滝の音にだに人の知るべく我が恋ひめやも


巻第十四
とをまりよまきにあたるまき

歌番号一一一〇
於毛不天不己止乃者乃三也安幾遠部天下曽止本利比女乃比止利為天
思ふてふことのはのみや秋をへて下そとほりひめのひとりゐて

美可止遠己比多天万川利天
みかとをこひたてまつりて

原文 和可世己可久部幾与為也佐々可尓乃久毛乃不留万比加祢天之留之毛
定家 わかせこかくへきよゐ也さゝかにのくものふるまひかねてしるしも
解釈 我が背子が来べき宵なりささがにの蜘蛛の振る舞ひかねてしるしも

布可也不己比之止八多可奈川計々武己止奈良武
深養父こひしとはたかなつけゝむことならむ

歌番号一一一一
川良由幾
つらゆき

原文 美知之良八川美尓毛由可武寸三乃衣乃幾之尓於不天不己日和寸礼久左
定家 みちしらはつみにもゆかむすみのえの岸におふてふこひわすれくさ
解釈 道知らば摘みにも行かむ住の江の岸に生ふてふ恋忘れ草
コメント

古今和歌集 原文推定 巻十九

2020年04月12日 | 古今和歌集 原文推定 藤原定家伊達本
止遠末利己々乃末幾仁安多留未幾
とをまりここのまきにあたるまき
巻十九

久左/\乃天以
雑躰
雑躰

美之可宇多
短哥
短哥

歌番号一〇〇一
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良須
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 安不己止乃末礼奈留以呂尓於毛日曽女和可三八川祢尓
定家 あふことのまれなるいろにおもひそめわか身はつねに
解釈 逢ふことの稀なる色に思ひそめ我が身は常に

阿万久毛能者留々止幾奈久布之乃祢乃毛衣川々止波仁
あまくものはるゝ時なくふしのねのもえつゝとはに
天雲の晴るる時なく富士の嶺の燃えつつ永久に

於毛部止毛阿不己止可多之奈尓之可毛比止遠宇良見無
おもへともあふことかたしなにしかも人をうらみむ
思へども逢ふことかたし何しかも人を恨みむ

和多川三乃於幾遠布可女天於毛日天之於毛日者以万八
わたつみのおきをふかめておもひてしおもひはいまは
わたつみの沖を深めて思ひてし思ひは今は

以多川良尓奈利奴部良奈利由久美川乃堂由留止幾奈久
いたつらになりぬへらなりゆく水のたゆる時なく
いたづらになりぬべらなり行く水の絶ゆる時なく

加久奈和尓於毛日見多礼天布留由幾乃計奈八計奴部久
かくなわにおもひみたれてふるゆきのけなはけぬへく
かくなわに思ひ乱れて降る雪の消なば消ぬべく

於毛部止毛衣不乃三奈礼八奈遠也万寸於毛日八布可之
おもへともえふの身なれはなをやますおもひはふかし
思へども閻浮の身なればなほ止まず思ひは深し

安之比幾乃夜万之多美川乃己可久礼天多幾川己々呂遠
あしひきの山した水のこかくれてたきつ心を
あしひきの山下水の木隠れてたぎつ心を

堂礼尓可毛安比加多良波武以呂尓以天八比止志利奴部三
たれにかもあひかたらはむいろにいては人しりぬへみ
誰れにかもあひ語らはむ色に出でば人知りぬべみ

寸美曽女乃由不部尓奈礼八飛止利為天安八礼/\止
すみそめのゆふへになれはひとりゐてあはれ/\と
染めの夕べになれば一人居てあはれあはれと

奈个幾安万利世武寸部奈美尓仁者尓以天々多知也寸良部八
なけきあまりせむすへなみににはにいてゝたちやすらへは
嘆きあまりせむすべなみに庭に出でてちやすらへば

志呂多部乃己呂毛乃曽天仁遠久川由乃計奈八計奴部久
しろたへの衣のそてにをくつゆのけなはけぬへく
白妙の衣の袖に置く露の消なば消ぬべく

於毛部止毛奈遠奈个可礼奴者留可寸三与曽尓毛比止尓
おもへともなをなけかれぬはるかすみよそにも人に
思へどもなほ嘆かれぬ春霞よそにも人に

安者武止於毛部八
あはむとおもへは
逢はむと思へば

歌番号一〇〇二
布留宇多々天万川利之止幾乃毛久呂久乃曽乃奈可宇多
ふるうたゝてまつりし時のもくろくのそのなかうた
古哥奉りし時の目録のその長哥

徒良由幾
つらゆき
紀貫之

原文 知者也布留加美乃美与々利久礼多計乃世々尓毛多衣寸
定家 ちはやふる神のみよゝりくれ竹の世ゝにもたえす
解釈 ちはやぶる神の御世より呉竹の世々にも絶えず

安末比己乃遠止八乃夜万乃者留可寸三於毛日見多礼天
あまひこのをとはの山のはるかすみ思ひみたれて
天彦の音羽の山の春霞思ひ乱れて

佐美多礼乃曽良毛止々呂尓左与不計天夜万本止々幾須
さみたれのそらもとゝろにさよふけて山ほとゝきす
五月雨の空もとどろに小夜更けて山郭公

奈久己止仁堂礼毛祢左女天加良尓之幾堂川多乃夜万乃
なくことにたれもねさめてからにしきたつたの山の
鳴くごとに誰れも寝覚めて唐錦竜田の山の

毛美知八遠美天乃美之乃不加美奈川幾志久礼/\天
もみちはを見てのみしのふ神な月しくれ/\て
もみぢ葉を見てのみ偲ぶ神無月時雨しぐれて

布由乃与乃尓者毛者多礼尓不留由幾乃奈保幾衣可部利
冬の夜の庭もはたれにふるゆきの猶きえかへり
冬の夜の庭もはだれに降る雪のなほ消えかへり

止之己止仁止幾尓川个川々安八礼天不己止遠以日川々
年ことに時につけつゝあはれてふことをいひつゝ
年ごとに時につけつつあはれてふことを言ひつつ

幾美遠乃美知与尓止以者不世乃比止乃於毛日寸留可乃
きみをのみちよにといはふ世の人のおもひするかの
君をのみ千代にと祝ふ世の人の思ひ駿河の

布之乃祢能毛由留於毛日毛安可寸之天和可留々奈三多
ふしのねのもゆる思ひもあかすしてわかるゝなみた
富士の嶺の燃ゆる思ひもあかずして別るる涙

藤己呂毛遠礼留己々呂毛也知久左乃己止乃波己止仁
藤衣をれる心もやちくさのことのはことに
藤衣織れる心も八千草の言の葉ごとに

寸部良幾乃於保世可之己美万幾/\乃中尓川久寸止
すへらきのおほせかしこみまき/\の中につくすと
すべらきの仰せかしこみ巻々の中につくすと

以世乃宇美乃宇良乃志本可比飛呂日安川女止礼利止寸礼止
いせの海のうらのしほかひひろひあつめとれりとすれと
伊勢の海の浦の潮貝拾ひ集め取れりとすれど

多万乃遠乃美之可幾己々呂於毛日安部須奈保安良多万乃
たまのをのみしかき心思あへす猶あらたまの
玉の緒の短き心思ひあへずなほあら玉の

止之遠部天大美也尓乃美比左可多乃比留与留和可寸
年をへて大宮にのみひさかたのひるよるわかす
年を経て大宮にのみひさかたの昼夜分かず

徒可不止天加部利美毛世奴和可也止乃志乃不久左於不留
つかふとてかへり見もせぬわかやとのしのふくさおふる
仕ふとて顧みもせぬ我が宿の忍草生ふる

以多万安良三布留者留左女乃毛利也之奴良武
いたまあらみふる春さめのもりやしぬらむ
板間粗み降る春雨の漏りやしぬらむ

歌番号一〇〇三
布留宇多尓久者部天多天万川礼留奈可宇多
ふるうたにくはへてたてまつれるなかうた
古哥に加はへて奉れる長哥

美不乃多々三祢
壬生忠岑
壬生忠岑

原文 久礼多計乃世々乃布留己止奈可利世八伊可本乃奴万乃
定家 くれ竹の世ゝのふることなかりせはいかほのぬまの
解釈 呉竹の世々の古る言なかりせば伊香保の沼の

以可尓之天於毛不己々呂遠乃者部万之安者礼武可之部
いかにして思ふ心をのはへましあはれむかしへ
いかにして思ふ心をのばへましあはれ昔へ

安利幾天不比止末呂己曽八宇礼之个礼三者之毛奈可良
ありきてふ人まろこそはうれしけれ身はしもなから
ありきてふ人麿こそはうれしけれ身は下ながら

己止乃波遠安末川曽良万天幾己江安計寸恵乃与万天乃
ことのはをあまつそらまてきこえあけすゑのよまての
言の葉を天つ空まで聞こえ上げ末の世までの

安止々奈之以万毛於保世乃久多礼留八知利尓川个止也
あとゝなし今もおほせのくたれるはちりにつけとや
跡となし今も仰せの下れるは塵に継げとや

知利乃三尓川毛礼留己止遠止者留良武己礼遠於毛部八
ちりの身につもれる事をとはるらむこれをおもへは
塵の身に積もれる事を問はるらむこれを思へば

遣多毛乃々久毛尓保衣个武己々呂地之天知々乃奈左个毛
けたものゝくもにほえけむ己々知してちゝのなさけも
けだものの雲に吠えけむ心地して千々のなさけも

於毛保衣寸飛止川己々呂曽保己良之幾加久波安礼止毛
おもほえすひとつ心そほこらしきかくはあれとも
思ほえず一つ心ぞ誇らしきかくはあれども

天累飛可利知可幾万毛利乃三奈利之遠多礼可八安幾乃
てるひかりちかきまもりの身なりしをたれかは秋の
照る光近き衛りの身なりしを誰れかは秋の

久留可多尓安左武幾以天々美可幾与利止乃部毛留三乃
くる方にあさむきいてゝみかきよりとのへもる身の
来る方に欺き出でて御垣より外重守る身の

美可幾毛利於佐/\之久毛於毛保衣寸己々乃可佐祢乃
みかきもりおさ/\しくもおもほえすこゝのかさねの
御垣守長々しくも思ほえず九重ねの

奈可尓天者安良之乃可世毛幾可佐利幾以万八乃夜万之
なかにてはあらしの風もきかさりき今はの山し
中にては嵐の風も聞かざりき今は野山し

知可个礼八者留八可寸美尓多奈比可礼奈徒八宇川世三
ちかけれは春は霞にたなひかれ夏はうつせみ
近ければ春は霞にたなびかれ夏はうつせみ

奈幾久良之安幾者志久礼仁曽天遠可之布由者之毛尓曽
なきくらし秋は時雨に袖をかし冬はしもにそ
鳴き暮らし秋は時雨に袖をかし冬は霜にぞ

世免良留々加々留和日之幾三奈可良仁川毛礼留止之遠
せめらるゝかゝるわひしき身なからにつもれるとしを
責めらるるかかる侘びしき身ながらに積もれる年を

志留世礼八以川々乃武川尓奈利尓个利己礼尓曽八礼留
しるせれはいつゝのむつになりにけりこれにそはれる
記せれば五つの六つになりにけりこれに添はれる

和多久之乃於以乃可寸左部也与个礼八三者以也之久天
わたくしのおいのかすさへやよけれは身はいやしくて
私の老いの数さへやよければ身は卑しくて

止之多可幾己止乃久留之左加久之川々奈可良乃八之乃
年たかきことのくるしさかくしつゝなからのはしの
年高きことの苦しさかくしつつ長柄の橋の

奈可良部天奈尓者乃宇良仁堂川奈美乃奈美乃之和尓也
なからへてなにはのうらにたつ浪の浪のしわにや
ながらへて難波の浦に立つ浪の浪の皺にや

於保々礼武佐寸可尓以乃知於之个礼八己之乃久尓奈留
おほゝれむさすかにいのちおしけれはこしのくになる
おぼほれむさすがに命惜しければ越の国なる

志良夜万乃加之良八之呂久奈利奴止毛遠止八乃多幾能
しら山のかしらはしろくなりぬともをとはのたきの
白山の頭は白くなりぬとも音羽の滝の

遠止尓幾久於以寸之奈寸乃久寸利可毛幾三可也知与遠
をとにきくおいすしなすのくすりかも君かやちよを
音に聞く老いず死なずの薬もが君が八千代を

和可衣川々美武
わかえつゝ見む
若えつつ見む

歌番号一〇〇四
原文 幾三可世尓安不左可夜万乃以者之美川己可久礼多利止於毛日个留可奈
定家 君か世にあふさか山のいはし水こかくれたりと思ひける哉
解釈 君が世に逢坂山の岩清水木隠れたりと思ひけるかな

歌番号一〇〇五
布由乃奈可宇多
冬のなかうた
冬の長哥

於保可宇知乃美川祢
凡河内躬恒
凡河内躬恒

原文 知者也布留加美奈川幾止也遣左与利八久毛利毛安部寸
定家 ちはやふる神な月とやけさよりはくもりもあへす
解釈 ちはやぶる神無月とや今朝よりは曇りもあへず

者川志久礼毛美知止々毛尓布留左止乃与之乃々夜万乃
はつ時雨紅葉とゝもにふるさとのよしのゝ山の
初時雨紅葉と共に古里の吉野の山の

夜万安良之毛佐武久比己止仁奈利由个八多末乃遠止个天
山あらしもさむく日ことになりゆけはたまのをとけて
山嵐も寒く日ごとになりゆけば玉の緒とけて

己幾知良之安良礼見多礼天志毛己保利以也可多万礼留
こきちらしあられみたれてしも氷いやかたまれる
こき散らしあられ乱れて霜氷いや固まれる

尓者乃於毛尓武良/\美由留布由久左乃宇部尓布利之久
にはのおもにむら/\見ゆる冬草のうへにふりしく
庭の面にむらむら見ゆる冬草の上に降りしく

之良由幾乃徒毛利/\天安良多万能止之遠安万多毛
白雪のつもり/\てあらたまのとしをあまたも
白雪の積もり積もりてあら玉の年をあまたも

寸久之川留可奈
すくしつる哉
過ぐしつるかな

歌番号一〇〇六
之知天宇乃幾左幾宇世多万日尓个留乃知尓与三个留
七条のきさきうせたまひにけるのちによみける
七条后うせたまひにける後に詠みける

以世
伊勢
伊勢

原文 於幾川奈美安礼乃美万左留美也乃宇知八止之部天寸三之
定家 おきつなみあれのみまさる宮のうちはとしへてすみし
解釈 沖つ浪荒れのみまさる宮の内は年経て住みし

以世乃安万毛舟奈可之多留己々知之天与良武可多奈久
いせのあまも舟なかしたる心地してよらむ方なく
伊勢の海人も舟流したる心地して寄らむ方なく

加奈之幾尓奈美多乃以呂乃久礼奈為八和礼良可奈可乃
かなしきに涙の色のくれなゐは我らかなかの
悲しきに涙の色の紅は我らがなかの

志久礼尓天安幾乃毛美知止比止/\者 遠乃可知利/\
時雨にて秋のもみちと人/\はをのかちり/\
時雨にて秋の紅葉と人びとは己が散り散り

和可礼奈八堂乃武可个奈久奈利八天々止末留毛乃止八
わかれなはたのむかけなくなりはてゝとまる物とは
別れなば頼む蔭なくなりはてて止まる物とは

者那寸々幾幾美奈幾尓者尓武礼多知天曽良遠万祢可者
花すゝききみなき庭にむれたちてそらをまねかは
花薄君なき庭に群れ立ちて空を招かば

者川可利乃奈幾和多利川々与曽尓己曽美女
はつかりのなき渡りつゝよそにこそ見め
初雁の鳴き渡りつつよそにこそ見め

世武堂宇乃宇多
旋頭哥
旋頭哥

歌番号一〇〇七
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 宇知和多寸遠知可多比止尓毛乃末宇寸和礼曽乃曽己仁
定家 うちわたすをち方人に物まうすわれそのそこに
解釈 うち渡す遠方人にもの申す我れそのそこに

之呂久左个留者奈尓乃者那曽毛
しろくさけるはなにの花そも
白く咲けるは何の花ぞも

歌番号一〇〇八
可部之
返し
返し

原文 者留左礼盤乃部尓末川佐久美礼止安可奴者那末比奈之尓
定家 春されはのへにまつさく見れとあかぬ花まひなしに
解釈 春されば野辺にまづ咲く見れどあかぬ花まひなしに

堂々奈乃留部幾者那乃奈々礼也
たゝなのるへき花のなゝれや
ただ名のるべき花の名なれや

歌番号一〇〇九
多以之良須
題しらす
題しらす

原文 者川世加者布留可者乃部尓布多毛止安留寸幾止之遠部天
定家 はつせ河ふるかはのへにふたもとあるすき年をへて
解釈 初瀬川ふるかはのへに二本あるすき年を経て

万多毛安比美武不多毛止安留寸幾
又もあひ見むふたもとあるすき
またもあひ見む二本ある杉

歌番号一〇一〇
徒良由支
つらゆき
紀貫之

原文 幾美可左寸美可左乃夜万乃毛三知八乃以呂加美奈川幾
定家 きみかさすみかさの山のもみちはのいろ神な月
解釈 君がさす三笠の山のもみぢ葉の色神無月

志久礼乃安女乃曽女留奈利个利
しくれのあめのそめるなりけり
時雨の雨の染めるなりけり

堂八布礼乃宇多
誹諧哥
誹諧哥

歌番号一〇一一
多以志良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良須
み人しらす
詠み人知らず

原文 武女乃者那美尓己曽幾川礼宇久比寸乃比止久/\止以止比之毛遠留
定家 梅花見にこそきつれ鴬の人く/\といとひしもをる
解釈 梅の花見にこそ来つれ鴬のひとくひとくといとひしもをる

歌番号一〇一二
曽世以保宇之
素性法師
素性法師

原文 夜万布幾乃者那以呂己呂毛奴之也多礼止部止己多部寸久知奈之尓之天
定家 山吹の花色衣ぬしやたれとへとこたへすくちなしにして
解釈 山吹の花色衣主や誰れ問へど答へずくちなしにして

歌番号一〇一三
布知八良乃止之由幾安曽无
藤原敏行朝臣
藤原敏行朝臣

原文 以久者久乃多遠川久礼者可保止々幾須志天乃多遠左遠安左奈/\与不
定家 いくはくの田をつくれはか郭公してのたをさをあさな/\よふ
解釈 いくばくの田を作ればか郭公しての田長を朝な朝な呼ぶ

歌番号一〇一四
布美川幾乃武比可多奈八多乃己々呂遠与三个留
七月六日たなはたの心をよみける
七月六日七夕の心を詠みける

布知八良乃加祢寸个乃安曽无
藤原かねすけの朝臣
藤原兼輔朝臣

原文 伊川之可止末多久己々呂遠者幾尓安个天安万乃可八良遠个不也和多良武
定家 いつしかとまたく心をはきにあけてあまのかはらをけふやわたらむ
解釈 いつしかとまたぐ心をはぎにあげて天の川原を今日や渡らむ

歌番号一〇一五
多以之良寸
題しらす
題知らず

於保可宇知乃美川祢
凡河内みつね
凡河内躬恒

原文 武川己止毛末多徒幾奈久尓安遣奴女利以川良八安幾乃奈可之天不与八
定家 むつこともまたつきなくにあけぬめりいつらは秋のなかしてふよは
解釈 睦言もまだ尽きなくに明けぬめりいづらは秋の長してふ夜は

歌番号一〇一六
曽宇志也宇部无世宇
僧正へんせう
僧正遍照

原文 安幾乃々尓奈万女幾多天留遠三奈部之安奈可之可満之者那毛比止止幾
定家 秋のゝになまめきたてるをみなへしあなかしかまし花もひと時
解釈 秋の野になまめき立てる女郎花あなかしがまし花も一時

歌番号一〇一七
与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 安幾久礼者乃部尓多者留々遠三奈部之以川礼乃比止可川末天美留部幾
定家 あきくれはのへにたはるゝ女郎花いつれの人かつまて見るへき
解釈 秋来れば野辺にたはるる女郎花いづれの人か摘まで見るべき

歌番号一〇一八
原文 安幾幾利乃者礼天久毛礼八遠三奈部之者那乃寸可多曽美衣可久礼寸留
定家 秋きりのはれてくもれはをみなへし花のすかたそ見えかくれする
解釈 秋霧の晴れて曇れば女郎花花の姿ぞ見え隠れする

歌番号一〇一九
原文 者那止美天於良武止寸礼八遠三奈部之宇多々安留左万乃奈尓己曽安利个礼
定家 花と見ておらむとすれはをみなへしうたゝあるさまの名にこそ有けれ
解釈 花と見て折らむとすれば女郎花うたたあるさまの名にこそありけれ

歌番号一〇二〇
可无部以乃於保无止幾々左以乃美也乃宇多安者世乃宇多
寛平御時きさいの宮の哥合のうた
寛平御時后宮の哥合の哥

安利八良乃武祢也奈
在原むねやな
在原棟梁

原文 安幾可世尓保己呂日奴良之布知者可万川々利左世天不幾利/\寸奈久
定家 秋風にほころひぬらしふちはかまつゝりさせてふ蟋蟀なく
解釈 秋風にほころびぬらし藤袴つづりさせてふきりぎりす鳴く

歌番号一〇二一
安寸者留多々武止之个留比止奈利乃以部乃可多与利可世乃由幾遠
あすはるたゝむとしける日となりの家のかたより風の雪を
明日春立たむとしける日となりの家のかたより風の雪を

布幾己之个留遠美天曽乃止奈利部与美天川可八之遣累
ふきこしけるを見てそのとなりへよみてつかはしける
吹き越しけるを見てその隣へ詠みて遣はしける

清原布可也不
清原ふかやふ
清原深養父

原文 布由奈可良者留乃止奈利乃知可个礼者奈可々幾与利曽者那八知利个留
定家 冬なから春の隣のちかけれはなかゝきよりそ花はちりける
解釈 冬ながら春の隣の近ければ中垣よりぞ花は散りける

歌番号一〇二二
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 以曽乃加美布利尓之己比乃加美左日天多々留尓和礼者以曽祢可祢川留
定家 いその神ふりにしこひの神さひてたゝるに我はいそねかねつる
解釈 石上古りにし恋の神さびてたたるに我は寝ぞねかねつる

歌番号一〇二三
原文 末久良与利安止与利己比乃世女久礼者世武可多奈美曽止己奈可尓遠留
定家 枕よりあとよりこひのせめくれはせむ方なみそとこなかにをる
解釈 枕よりあとより恋のせめくればせむ方なみぞ床中にをる

歌番号一〇二四
原文 己飛之幾可可多毛可多己曽安利止幾計多礼遠礼止毛奈幾己々呂知可奈
定家 こひしきか方も方こそ有ときけたれをれともなき心ち哉
解釈 恋しきが方もかたこそありと聞け立てれをれどもなき心地かな

歌番号一〇二五
原文 安里奴也止己々呂美可天良安飛美祢八堂者不礼尓久幾万天曽己日之幾
定家 ありぬやと心見かてらあひ見ねはたはふれにくきまてそこひしき
解釈 ありぬやと心見がてらあひ見ねばたはぶれにくきまでぞ恋しき

歌番号一〇二六
原文 美々奈之乃夜万乃久知奈之衣天之可奈於毛日乃以呂乃之多曽女尓世武
定家 みゝなしの山のくちなしえてし哉思ひの色のしたそめにせむ
解釈 耳成の山のくちなし得てしがな思ひの色の下染めにせむ

歌番号一〇二七
原文 安之比幾乃夜万多乃曽保川遠乃礼左部和礼於本之天不宇礼八之幾己止
定家 葦引の山田のそほつをのれさへ我おほしてふうれはしきこと
解釈 あしひきの山田のそほづ己さへ我おほしてふ憂はしきこと

歌番号一〇二八
幾乃女乃止
きのめのと
紀乳母

原文 布之乃祢乃奈良奴於毛比尓毛衣八毛衣加美多尓个多奴武奈之个不利遠
定家 ふしのねのならぬおもひにもえはもえ神たにけたぬむなしけふりを
解釈 富士の嶺のならぬ思ひに燃えば燃え神だに消たぬ空し煙を

歌番号一〇二九
幾乃安利止毛
きのありとも
紀有朋

原文 安飛美末久星八加寸奈久安利奈可良比止尓川幾奈三迷己曽寸礼
定家 あひ見まく星はかすなく有なから人に月なみ迷こそすれ
解釈 あひ見まくほしは数なくありながら比止に月なみまどひこそすれ

歌番号地〇三〇
遠乃々己万知
小野小町
小野小町

原文 比止尓安者武川幾乃奈幾尓八於毛日遠幾天武祢者之利火尓己々呂也計遠利
定家 人にあはむ月のなきには思ひをきてむねはしり火に心やけをり
解釈 人に逢はむ月のなきには思ひ置きて胸走り火に心焼けをり

歌番号一〇三一
可无部以乃於保无止幾々左以乃美也乃宇多安者世乃宇多
寛平御時きさいの宮の哥合のうた
寛平御時后宮の哥合の哥

布知八良乃於幾可世
藤原おきかせ
藤原興風

原文 者留可寸美多奈比久乃部乃和可奈尓毛奈利美天之可奈比止毛川武也止
定家 春霞たなひくのへのわかなにもなり見てし哉人もつむやと
解釈 春霞たなびく野辺の若菜にもなり見てしがな人も摘むやと

歌番号一〇三二
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良須
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 於毛部止毛奈保宇止万礼奴者留可寸美加々良奴夜万毛安良之止於毛部八
定家 おもへとも猶うとまれぬ春霞かゝらぬ山もあらしとおもへは
解釈 思へどもなほ疎まれぬ春霞かからぬ山もあらじと思へば

歌番号一〇三三
多比良乃左多不无
平貞文
平貞文

原文 者留乃野々志个幾久左者乃川末己日仁止比多川幾之乃本呂々止曽奈久
定家 春の野ゝしけき草はのつまこひにとひたつきしのほろゝとそなく
解釈 春の野の繁き草葉の妻恋ひに飛び立つ雉子のほろろとぞ鳴く

歌番号一〇三四
幾乃与之比止
きのよしひと
紀淑人

原文 安幾乃々尓徒万奈幾之可乃止之遠部天奈曽和可己日乃加比与止曽奈久
定家 秋のゝにつまなきしかの年をへてなそわかこひのかひよとそなく
解釈 秋の野に妻なき鹿の年を経てなぞ我が恋のかひよとぞ鳴く

歌番号一〇三五
美川子
みつね
凡河内躬恒

原文 世三乃羽乃比止部尓宇寸幾奈徒己呂毛奈礼八与利奈武毛乃尓也八安良奴
定家 蝉の羽のひとへにうすき夏衣なれはよりなむ物にやはあらぬ
解釈 蝉の羽のひとへに薄き夏衣なればよりなむ物にやはあらぬ

歌番号一〇三六
堂々美祢
たゝみね
壬生忠岑

原文 加久礼奴乃志多与利於不留祢奴奈八乃祢奴奈八多天之久留奈以止日曽
定家 かくれぬのしたよりおふるねぬなはのねぬなはたてしくるないとひそ
解釈 隠れ沼の下より生ふるねぬなはの寝ぬ名は立てじ来るな厭ひそ

歌番号一〇三七
与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 己止奈良八於毛者寸止也八伊日者天奴奈曽与乃奈可乃多万多寸幾奈留
定家 ことならは思はすとやはいひはてぬなそ世中のたまたすきなる
解釈 ことならば思はずとやは言ひはてぬなぞ世の中の玉だすきなる

歌番号一〇三八
原文 於毛不天不比止乃己々呂乃久末己止尓多知可久礼川々美留与之毛可奈
定家 おもふてふ人の心のくまことにたちかくれつゝ見るよしも哉
解釈 思ふてふ人の心の隈ごとに立ち隠れつつ見るよしもがな

歌番号一〇三九
原文 於毛部止毛於毛八寸止乃美以不奈礼者以奈也於毛者之於毛不可日奈之
定家 思へともおもはすとのみいふなれはいなやおもはし思ふかひなし
解釈 思へども思はずとのみ言ふなれば否や思はじ思ふかひなし

歌番号一〇四〇
原文 和礼遠乃美於毛不止以者々安留部幾遠以天也己々呂八於保奴左尓之天
定家 我をのみ思ふといはゝあるへきをいてや心はおほぬさにして
解釈 我をのみ思ふと言はばあるべきをいでや心は大幣にして

歌番号一〇四一
原文 和礼遠於毛不比止遠於毛八奴武久日尓也和可於毛不比止乃和礼遠於毛八奴
定家 われを思ふ人をおもはぬむくひにやわか思ふ人の我をおもはぬ
解釈 我を思ふ人を思はぬむくいにや我が思ふ人の我を思はぬ

歌番号一〇四二
布可也不
深養父
清原深養父

原文 於毛日个武比止遠曽止毛尓於毛者末之万左之也武久日奈可利个利也八
定家 思ひけむ人をそともにおもはましまさしやむくひなかりけりやは
解釈 思ひけむ人をぞともに思はまし正しやむくいなかりけりやは

歌番号一〇四三
与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 以天々由可武比止遠止々女武与之奈幾尓止奈利乃可多尓者奈毛比奴可奈
定家 いてゝゆかむ人をとゝめむよしなきにとなりの方にはなもひぬ哉
解釈 出でて行かむ人を留めむよしなきに隣の方に鼻もひぬかな

歌番号一〇四四
原文 久礼奈為尓曽女之己々呂毛堂乃万礼寸比止遠安久尓八宇川留天不奈利
定家 紅にそめし心もたのまれす人をあくにはうつるてふなり
解釈 紅に染めし心も頼まれず人をあくには移るてふなり

歌番号一〇四五
原文 以止者留々和可三八々留乃己万奈礼也乃可日可天良尓者那知寸天川々
定家 いとはるゝわか身はゝるのこまなれやのかひかてらにはなちすてつゝ
解釈 厭はるる我が身は春の駒なれや野飼ひがてらに放ち捨てつつ

歌番号一〇四六
原文 宇久比寸乃己曽乃也止利乃布留寸止也和礼尓八比止乃川礼奈可留良武
定家 鴬のこそのやとりのふるすとや我には人のつれなかる覧
解釈 鴬の去年の宿りの古巣とや我には人のつれなかるらん

歌番号一〇四七
原文 佐可之良尓奈徒者比止万祢左々乃八乃左也久之毛与遠和可比止利奴留
定家 さかしらに夏は人まねさゝのはのさやくしもよをわかひとりぬる
解釈 さかしらに夏は人まね笹の葉のさやぐ霜夜を我が一人寝る

歌番号一〇四八
多比良乃奈加幾
平中興
平中興

原文 安不己止乃以万者々川可尓奈利奴礼者与布可々良天八川幾奈可利个利
定家 逢事の今はゝつかになりぬれは夜ふかゝらては月なかりけり
解釈 逢ふことの今ははつかになりぬれば夜深からでは月なかりけり

歌番号一〇四九
飛多利乃於保以末宇知幾三
左のおほいまうちきみ
左大臣

原文 毛呂己之乃与之乃々夜万尓己毛留止毛遠久礼武止於毛不和礼奈良奈久仁
定家 もろこしのよしのゝ山にこもるともをくれむと思我ならなくに
解釈 唐土の吉野の山に籠もるとも遅れむと思ふ我ならなくに

歌番号一〇五〇
奈可幾
なかき
平中興

原文 久毛者礼奴安左万乃夜万乃安左末之也比止乃己々呂遠美天己曽也万女
定家 雲はれぬあさまの山のあさましや人の心を見てこそやまめ
解釈 雲晴れぬ浅間の山のあさましや人の心を見てこそ止まめ

歌番号一〇五一
以世
伊勢
伊勢

原文 奈尓者奈留奈可良乃者之毛川久留奈利以万八和可三遠奈尓々多止部武
定家 なにはなるなからのはしもつくるなり今はわか身をなにゝたとへむ
解釈 難波なる長柄の橋も尽くるなり今は我が身を何にたとへむ

歌番号一〇五二
与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 万免奈礼止奈尓曽八与計久加留可也乃見多礼天安礼止安之計久毛奈之
定家 まめなれとなにそはよけくかるかやのみたれてあれとあしけくもなし
解釈 まめなれど何ぞなは良けく刈る萱の乱れてあれど悪しけくもなし

歌番号一〇五三
於幾可世
おきかせ
藤原興風

原文 奈尓可曽乃奈乃多川己止乃於之可良武之利天万止不八和礼比止利可八
定家 なにかその名の立事のおしからむしりてまとふは我ひとりかは
解釈 何かその名の立つことの惜しからむ知りてまどふは我一人かは

歌番号一〇五四
以止己奈利个留於止己尓与曽部天比止乃以日个礼八
いとこなりけるおとこによそへて人のいひけれは
いとこなりける男によそへて人の謂ひけれは

久曽
くそ
久曽

原文 与曽奈可良和可三尓以止乃与留止以部者多々以川八利尓寸久者可利奈利
定家 よそなからわか身にいとのよるといへはたゝいつはりにすく許也
解釈 よそながら我が身に糸のよると言へばただ偽りに過ぐばかりなり

歌番号一〇五五
多以之良寸
題しらす
題知らず

左奴幾
さぬき
讃岐

原文 祢幾己止遠左乃美幾々計武也之呂己曽者天八奈个幾乃毛利止奈留良女
定家 ねき事をさのみきゝけむやしろこそはてはなけきのもりとなるらめ
解釈 ねぎ言をさのみ聞きけむ社こそはては嘆きの森となるらめ

歌番号一〇五六
多以布
大輔
大輔

原文 奈計幾己留夜万止之多可久奈利奴礼者川良川恵乃美曽万川々可礼个留
定家 なけきこる山としたかくなりぬれはつらつゑのみそまつゝかれける
解釈 投げ木こる山とし高くなりぬればつらづゑのみぞまづ突かれける

歌番号一〇五七
与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 奈計幾遠八己利乃美川美天安之比幾乃夜万乃可日奈久奈利奴部良奈利
定家 なけきをはこりのみつみてあしひきの山のかひなくなりぬへら也
解釈 投げ木をばこりのみ積みてあしひきの山のかひなくなりぬべらなり

歌番号一〇五八
原文 比止己不累己止遠々毛尓止仁奈日毛天安不己奈幾己曽和日之可利个礼
定家 人こふる事をゝもにとになひもてあふこなきこそわひしかりけれ
解釈 人恋ふる事を重荷と担ひもてあふごなきこそ侘びしかりけれ

歌番号一〇五九
原文 与為乃末尓以天々以利奴留美可川幾乃和礼天毛乃毛不己呂尓毛安留可奈
定家 夜ゐのまにいてゝいりぬるみか月のわれて物思ころにもある哉
解釈 宵の間に出でて入りぬる三日月のわれて物思ふころにもあるかな

歌番号一〇六〇
原文 曽部尓止天止寸礼者可々利加久寸礼八安奈以比之良寸安不左幾留左二
定家 そへにとてとすれはかゝりかくすれはあないひしらすあふさきるさに
解釈 そゑにとてとすればかかりかくすればあな言ひ知らずあふさきるさに

歌番号一〇六一
原文 与乃奈可乃宇幾多比己止尓三遠奈个者布可幾多尓己曽安左久奈利奈免
定家 世中のうきたひことに身をなけはふかき谷こそあさくなりなめ
解釈 世の中の憂き度ごとに身を投げば深き谷こそ浅くなりなめ

歌番号一〇六二
安利八良乃毛止可多
在原元方
在原元方

原文 与乃奈可者以可尓久留之止於毛不良武己々良乃比止尓宇良美良留礼八
定家 よのなかはいかにくるしと思覧こゝらの人にうらみらるれは
解釈 世の中はいかに苦しと思ふらんここらの人に恨みらるれば

歌番号一〇六三
与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 奈尓遠之天三乃以多川良尓於以奴良武止之乃於毛者武己止曽也左之幾
定家 なにをして身のいたつらにおいぬ覧年のおもはむ事そやさしき
解釈 何をして身のいたづらに老いぬらむ年の思はむ事ぞやさしき

歌番号一〇六四
於幾可世
おきかせ
藤原興風

原文 三者寸天徒己々呂遠多尓毛波不良左之川為尓者以可々奈留止之累部久
定家 身はすてつ心をたにもはふらさしつゐにはいかゝなるとしるへく
解釈 身は捨てつ心をだにもはふらさじつひにはいかがなると知るべく

歌番号一〇六五
知左止
千さと
大江千里

原文 之良由幾乃友尓和可三八布利奴礼止己々呂者幾衣奴毛乃尓曽安利个留
定家 白雪の友にわか身はふりぬれと心はきえぬ物にそありける
解釈 白雪のともに我が身は古りぬれど心は消えぬ物にぞありける

歌番号一〇六六
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 武女乃者那佐幾天乃々知乃三奈礼者也寸幾毛乃止乃美比止乃以不良武
定家 梅花さきてのゝちの身なれはやすき物とのみ人のいふ覧
解釈 梅の花咲きての後の身なればやすき物とのみ人の言ふらん

歌番号一〇六七
保宇於宇仁之加者尓於八之末之多利个留比左累夜万乃可比尓左个不止以不己止遠
法皇にし河におはしましたりける日さる山のかひにさけふといふことを
法皇西川におはしましたりける日 猿山の峡に叫ぶといふことを

多以尓天与万世多万宇个留
題にてよませたまうける
題にして詠ませたまうける

美川祢
みつね
凡河内躬恒

原文 和飛之良尓満之良奈々幾曽安之比幾乃夜万乃可比安留个不尓也八安良奴
定家 わひしらにましらなゝきそあしひきの山のかひあるけふにやはあらぬ
解釈 侘びしらに猿な鳴きそあしひきの山の峡ある今日にやはあらぬ

歌番号一〇六八
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 世遠以止日己乃毛止己止尓多知与利天宇川布之曽女乃安左乃幾奴奈利
定家 世をいとひこのもとことにたちよりてうつふしそめのあさのきぬなり
解釈 世を厭ひ木の下ごとに立ち寄りてうつぶし染めの麻の衣なり
コメント

古今和歌集 原文推定 巻十八

2020年04月05日 | 古今和歌集 原文推定 藤原定家伊達本
止遠末利也末幾仁安多留未幾
をまりやまきにあたるまき
巻十八

久左/\乃宇多之多
雑哥下
雑哥下

歌番号九三三
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良寸
読人しらす
詠み人知らず

原文 与乃奈可者奈尓可川祢奈留安寸可々波幾乃不乃布知曽个不者世尓奈留
定家 世中はなにかつねなるあすかゝはきのふのふちそけふはせになる
解釈 世の中は何か常なる飛鳥川昨日の淵ぞ今日は瀬になる

歌番号九三四
原文 以久世之毛安良之和可三遠奈曽毛加久安末乃可留毛尓於毛日美多留々
定家 いく世しもあらしわか身をなそもかくあまのかるもに思みたるゝ
解釈 いく世しもあらじ我が身をなぞもかく海人の刈る藻に思ひ乱るる

歌番号九三五
原文 加利乃久留三祢乃安左幾利者礼寸乃美於毛日川幾世奴与乃奈可乃宇
定家 雁のくる峯の朝霧はれすのみ思ひつきせぬ世中のう
解釈 雁の来る峰の朝霧晴れずのみ思ひ尽きせぬ世の中の憂さ

歌番号九三六
遠乃々堂可武良乃安曽无
小野たかむらの朝臣
小野篁朝臣

原文 志可利止天曽武可礼奈久尓己止之安礼八万川奈个可礼奴安奈宇与乃奈可
定家 しかりとてそむかれなくに事しあれはまつなけかれぬあなう世中
解釈 しかりとて背かれなくに事しあればまづ嘆かれぬあな憂世の中

歌番号九三七
加比乃加美尓者部利个留止幾美也己部万可利乃本利个留
かひのかみに侍ける時京へまかりのほりける
甲斐守に侍ける時京へ参かり登りける

比止尓川可八之个留
人につかはしける
人に遣はしける

遠乃々左多幾
をのゝさたき
小野貞樹

原文 美也己比止以可々止々波々夜万堂可三者礼奴久毛為尓和不止己多部与
定家 宮こ人いかゝとゝはゝ山たかみはれぬくもゐにわふとこたへよ
解釈 都人いかがと問はば山高み晴れぬ雲居に侘ぶと答へよ

歌番号九三八
布无也乃也寸比天美可八乃曽宇尓奈利天安可多美尓八衣以天多々之也止
文屋のやすひてみかはのそうになりてあかた見にはえいてたゝしやと
文屋康秀三河の掾になりて県見にはえ出で立たしやと

以日也礼利个留可部之己止尓与女留
いひやれりける返事によめる
云ひ遣れりける返事に詠める

遠乃々己万知
小野小町
小野小町

原文 和飛奴礼者三遠宇幾久左乃祢遠多衣天左曽不美川安良波以奈武止曽於毛不
定家 わひぬれは身をうき草のねをたえてさそふ水あらはいなむとそ思
解釈 侘びぬれば身を浮草の根を絶えて誘ふ水あらば往なむとぞ思ふ

歌番号九三九
多以之良寸
題しらす
題知らず

原文 安者礼天不己止己曽宇多天与乃奈可遠於毛日者奈礼奴本多之奈利个礼
定家 あはれてふ事こそうたて世中を思はなれぬほたしなりけれ
解釈 あはれてふ事こそうたて世の中を思ひ離れぬほだしなりけれ

歌番号九四〇
与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 阿波連帝不己止乃波己止尓遠久川由八武可之遠己不留奈美多奈利个利
定家 あはれてふ事のはことにをくつゆは昔をこふる涙なりけり
解釈 あはれてふ言の葉ごとに置く露は昔を恋ふる涙なりけり

歌番号九四一
原文 与乃奈可乃宇幾毛川良幾毛徒遣奈久尓万川之留毛乃八奈美多奈利个利
定家 世中のうきもつらきもつけなくにまつしる物はなみたなりけり
解釈 世の中の憂きもつらきも告げなくにまづ知る物は涙なりけり

歌番号九四二
原文 与乃奈可者由女可宇川々可宇川々止毛由女止毛志良寸安利天奈个礼八
定家 世中は夢かうつゝかうつゝとも夢ともしらす有てなけれは
解釈 世の中は夢かうつつかうつつとも夢とも知らずありてなければ

歌番号九四三
原文 与乃奈可尓以川良和可三乃安利天奈志安者礼止也以者武安奈宇止也以者武
定家 よのなかにいつらわか身のありてなしあはれとやいはむあなうとやいはむ
解釈 世の中にいづら我が身のありてなしあはれとや言はむあな憂とや言はむ

歌番号九四四
原文 夜万左止者毛乃乃和比之幾己止己曽安礼世乃宇幾与利八寸見与可利个利
定家 山里は物の惨慄き事こそあれ世のうきよりはすみよかりけり
解釈 山里は物の侘びしき事こそあれ世の憂きよりは住みよかりけり

歌番号九四五
己礼多可乃美己
これたかのみこ
惟喬親王

原文 之良久毛乃多衣寸多奈比久岑尓多尓寸女八寸三奴留世尓己曽安利个礼
定家 白雲のたえすたなひく岑にたにすめはすみぬる世にこそ有けれ
解釈 白雲の絶えずたなびく峰にだに住めば住みぬる世にこそ有ありけれ

歌番号九四六
布留乃以末美知
ふるのいまみち
布留今道

原文 志利尓个武幾々天毛以止部与乃奈可者奈美乃左八幾尓可世曽之久女留
定家 しりにけむきゝてもいとへ世中は浪のさはきに風そしくめる
解釈 知りにけむ聞きても厭へ世の中は浪の騒ぎに風ぞしくめる

歌番号九四七
曽世以
そせい
素性法師

原文 以川己尓可世遠以止者武己々呂己曽能尓毛夜万尓毛万止不部良奈礼
定家 いつこにか世をいとはむ心こそのにも山にもまとふへらなれ
解釈 いづくにか世をば厭はむ心こそ野にも山にもまどふべらなれ

歌番号九四八
与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 与乃奈可者武可之与利也者宇可利个武和可三比止川乃多美尓奈礼留可
定家 世中は昔よりやはうかりけむわか身ひとつのためになれるか
解釈 世の中は昔よりやは憂かりけむ我が身一つのためになれるか

歌番号九四九
原文 与乃奈可遠以止不夜万部乃久左幾止也安奈宇乃者那乃以呂尓以天尓个武
定家 世中をいとふ山への草木とやあなうの花の色にいてにけむ
解釈 世の中を厭ふ山辺の草木とやあな卯の花の色に出でにけむ

歌番号九五〇
原文 三与之乃々夜万乃安奈多尓也止毛可奈世乃宇幾止幾乃加久礼可尓世武
定家 みよしのゝ山のあなたにやとも哉世のうき時のかくれかにせむ
解釈 み吉野の山のあなたに宿もがな世の憂き時の隠れがにせむ

歌番号九五一
原文 世尓布礼者宇左己曽万佐礼三与之乃々以者乃可个美知布三奈良之天無
定家 世にふれはうさこそまされみよしのゝいはのかけみちふみならしてむ
解釈 世に経れば憂さこそまされみ吉野の岩のかけ道踏みならしてむ

歌番号九五二
原文 以可奈良武以者本乃中尓寸万者可八世乃宇幾己止乃幾己衣己佐良武
定家 いかな覧巌の中にすまはかは世のうき事のきこ江こさらむ
解釈 いかならん巌の中に住まばかは世の憂き事の聞こえ来ざらん

歌番号九五三
原文 安之比幾乃夜万乃末尓/\加久礼奈无宇幾与乃奈可者安留可比毛奈之
定家 葦引の山のまに/\かくれ南うき世中はあるかひもなし
解釈 あしひきの山のまにまに隠れなん憂き世の中はあるかひもなし

歌番号九五四
原文 与乃奈可乃宇計久尓安幾奴於久夜万乃己乃波尓不礼留由幾也計奈末之
定家 世中のうけくにあきぬ奥山のこのはにふれる雪やけなまし
解釈 世の中の憂けくに飽きぬ奥山の木の葉に降れる雪や消なまし

歌番号九五五
於奈之毛之奈幾宇多
おなしもしなきうた
同じ文字無き哥

毛乃々部乃与之奈
ものゝへのよしな
物部吉名

原文 与乃宇幾女美衣奴夜万地部以良武尓八於毛不比止己曽保多之奈利个礼
定家 よのうきめ見えぬ山ちへいらむにはおもふ人こそほたしなりけれ
解釈 世の憂きめ見えぬ山路へ入らむには思ふ人こそほだしなりけれ

歌番号九五六
夜万乃保宇之乃毛止部徒可八之个留
山のほうしのもとへつかはしける
山の法師の許へ遣はしける

於保可宇知乃美川祢
凡河内みつね
凡河内躬恒

原文 世遠寸天々夜万尓以留比止夜万尓天毛奈保宇幾止幾者以川知由久良武
定家 世をすてゝ山にいる人山にても猶うき時はいつちゆく覧
解釈 世を捨てて山に入る人山にてもなほ憂き時はいづち行くらむ

歌番号九五七
毛乃於毛以个留止幾以止幾奈幾己遠美天与女留
物思いける時いときなきこを見てよめる
物思いける時いときなき子を見て詠める

原文 以万左良尓奈尓於比以川良武多計乃己乃宇幾布之々計幾世止八志良寸也
定家 今更になにおひいつ覧竹のこのうきふしゝけき世とはしらすや
解釈 今更になにおひいつらむ竹のこのうきふしゝけき世とはしらすや

歌番号九五八
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良須
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 世尓布礼者己止乃者之个幾久礼多計乃宇幾不之己止尓宇久比寸曽奈久
定家 世にふれは事のはしけきくれ竹のうきふしことに鴬そなく
解釈 世に経れば言の葉しげき呉竹の憂き節ごとに鴬ぞ鳴く

歌番号九五九
原文 幾仁毛安良寸久左尓毛安良奴多計乃与乃者之尓和可三八奈利奴部良奈利
定家 木にもあらす草にもあらぬ竹のよのはしにわか身はなりぬへら也
解釈 木にもあらず草にもあらぬ竹のよのはしに我が身はなりぬべらなり

安留比止乃以者久多可川乃美己乃宇多奈利
ある人のいはく高津のみこの哥也
ある人の曰はく高津内親王の哥なり

歌番号九六〇
原文 和可三可良宇幾与乃奈可止奈川个川々比止乃多女左部加奈之可留良武
定家 わか身からうき世中となつけつゝ人のためさへかなしかるらむ
解釈 我が身から憂き世の中と名づけつつ人のためさへ悲しかるらむ

歌番号九六一
於幾乃久尓々奈可佐礼天者部利个留止幾尓与女留
おきのくにゝなかされて侍ける時によめる
隠岐の国に流れて侍ける時に詠める

堂可武良乃安曽无
たかむらの朝臣
小野篁朝臣

原文 於毛日幾也飛奈乃和可礼尓於止呂部天安満乃奈者多幾以左利世武止八
定家 思きやひなのわかれにおとろへてあまのなはたきいさりせむとは
解釈 思ひきやひなの別れに衰へて海人の縄たき漁りせむとは

歌番号九六二
多武良乃於保无止幾尓己止尓安多利天徒乃久尓乃寸万止以不止己呂仁
田むらの御時に事にあたりてつのくにのすまといふ所
田村の御時に事にあたりて津国の須磨といふ所

己毛利者部利个留尓美也乃宇知尓者部利个留比止尓川可八之个留
にこもり侍けるに宮のうちに侍ける人につかはしける
に籠り侍けるに宮の内に侍ける人に遣はしける

安利八良乃由幾比良安曽无
在原行平朝臣
在原行平朝臣

原文 和久良者尓止不比止安良八寸万乃宇良尓毛之本多礼川々和不止己多部与
定家 わくらはにとふ人あらはすまの浦にもしほたれつゝわふとこたへよ
解釈 わくらばに問ふ人あらば須磨の浦に藻塩垂れつつ侘ぶと答へよ

歌番号九六三
宇己无乃之与宇个无止个天者部利个留止幾尓遠无奈乃止不良日尓
左近将監とけて侍ける時に女のとふらひに
左近将監解けて侍ける時に女の訪ふらひに

遠己世多利个留可部之己止尓与三天川可八之个留
をこせたりける返事によみてつかはしける
をこせたりける返事に詠みて遣はしける

遠乃々者留可世
をのゝはるかせ
小野春風

原文 安末比己乃遠止川礼之止曽以万八於毛不和礼可比止可止三遠多止留与二
定家 あまひこのをとつれしとそ今は思我か人かと身をたとるよに
解釈 天彦の訪づれじとぞ今は思ふ我か人かと身をたどる世に

歌番号九六四
徒可左止計天者部利个留止幾与女留
つかさとけて侍ける時よめる
官解けて侍ける時詠める

多比良乃左多不无
平さたふん
平貞文

原文 宇幾世尓八加止左世利止毛美衣奈久尓奈止可和可三乃以天可天尓寸留
定家 うき世にはかとさせりとも見えなくになとかわか身のいてかてにする
解釈 憂き世には門させりとも見えなくになどか我が身の出でがてにする

歌番号九六五
原文 安利者天奴以乃知万川万乃保止者可利宇幾己止之計久於毛八寸毛可奈
定家 有はてぬいのちまつまのほと許うきことしけくおもはすも哉
解釈 ありはてぬ命待つ間のほどばかり憂きことしげく思はずもがな

歌番号九六六
美己乃美也乃多知者幾尓者部利个留遠美也川可部徒可宇万川良寸止天止个天
みこの宮のたちはきに侍けるを宮つかへつかうまつらすとてとけて
皇太子の宮の帯刀に侍けるを宮仕へ仕う奉らすとて解けて

者部利个留止幾尓与女留
侍ける時によめる
侍ける時に詠める

美也知乃幾与幾
みやちのきよき
宮道潔興

原文 徒久者祢乃己乃毛止己止尓多知曽与留者留乃美夜万乃加計遠己日川々
定家 つくはねのこの本ことに立そよる春のみ山のかけをこひつゝ
解釈 筑波嶺の木のもとごとに立ちぞ寄る春のみ山の蔭を恋ひつつ

歌番号九六七
止幾奈利个留比止乃尓者可尓止幾奈久奈利天奈計久遠美天美川可良乃奈个幾毛
時なりける人のにはかに時なくなりてなけくを見てみつからのなけきも
時なりける人の俄かに時なくなりて嘆くを見て自らの嘆きも

奈久与呂己日毛奈幾己止遠於毛日天与女留
なくよろこひもなきことを思ひてよめる
なく喜びもなきことを思ひて詠める

幾与八良乃布可也不
清原深養父
清原深養父

原文 飛可利奈幾多尓尓者者留毛与曽奈礼者左幾天止久知留毛乃於毛日毛奈之
定家 ひかりなき谷には春もよそなれはさきてとくちる物思ひもなし
解釈 光なき谷には春もよそなれば咲きてとく散る物思ひもなし

歌番号九六八
加徒良尓者部利个留止幾尓之知天宇乃奈加乃美也乃止者世多万部利个留
かつらに侍ける時に七条の中宮のとはせ給へりける
桂に侍ける時に七条中宮の問はせ給へりける

於保无可部之己止尓多天万川礼利个留
御返事にたてまつれりける
御返事に奉るれりける

以世
伊勢
伊勢

原文 比左可多乃中尓於比多留左止奈礼者飛可利遠乃美曽多乃武部良奈留
定家 久方の中におひたるさとなれはひかりをのみそたのむへらなる
解釈 久方の中に生ひたる里なれば光をのみぞ頼むべらなる

歌番号九六九
幾乃止之佐多可安者乃寸个尓万可利个留止幾尓武万乃者奈武計世武止天
紀のとしさたか阿波のすけにまかりける時にむまのはなむけせむとて
紀利貞が阿波の介に任かりける時に餞別せむとて

个不止以比遠久礼利个留止幾尓己々加之己尓万可利安利幾天与布久留末天
けふといひをくれりける時にこゝかしこにまかりありきて夜ふくるまて
今日といひを暮れりける時にこゝかしこに参かり歩りきて夜ふくるまて

美衣左利个礼八川可八之个留
見えさりけれはつかはしける
見えざりけれは遣はしける

奈利比良乃安曽无
なりひらの朝臣
在原業平朝臣

原文 以万曽志留久累之幾毛乃止比止末多武左止遠八加礼寸止不部可利个利
定家 今そしるくるしき物と人またむさとをはかれすとふへかりけり
解釈 今ぞ知る苦しき物と人待たむ里をば離れず訪ふべかりけり

歌番号九七〇
己礼堂可乃美己乃毛止尓末可利加与日个留遠加之良於呂之天遠乃止以不
惟喬のみこのもとにまかりかよひけるをかしらおろしてをのといふ
惟喬親王の許に参かり通ひけるを頭下して小野といふ

止己呂尓者部利个留尓武川幾尓止不良八武止天万可利多利个留尓飛衣乃夜万乃
所に侍けるに正月にとふらはむとてまかりたりけるにひえの山の
所に侍けるに正月に訪ふらはむとて参かりたりけるに比叡の山の

布毛止奈利个礼八由幾以止布可々利个利志日天加乃武呂尓万可利以多利天
ふもとなりけれは雪いとふかゝりけりしひてかのむろにまかりいたりて
麓なりけれは雪いと深かりけり強ひてかの室に参かり至りて

於可三遣留尓川礼/\止之天以止毛乃可奈之久天加部利末宇天幾天与
おかみけるにつれ/\としていと物かなしくてかへりまうてきて
拝みけるに徒然としていと物悲しくて帰り参うて来て

美天遠久利个留
よみてをくりける
詠みて送りける

原文 和寸礼天者由女可止曽於毛不於毛比幾也由幾布美和計天幾三遠美武止八
定家 わすれては夢かとそ思おもひきや雪ふみわけて君を見むとは
解釈 忘れては夢かとぞ思ふ思ひきや雪踏み分けて君を見むとは

歌番号九七一
布可久左乃左止尓寸見者部利天美也己部末宇天久止天曽己奈利个留比止尓
深草のさとにすみ侍て京へまうてくとてそこなりける人に
深草の里に住み侍て京へ参うて来とてそこなりける人に

与美天遠久利个留
よみてをくりける
詠みて送りける

原文 止之遠部天寸美己之佐止遠以天々以奈者以止々布可久左乃止也奈利奈武
定家 年をへてすみこしさとをいてゝいなはいとゝ深草のとやなりなむ
解釈 年を経て住みこし里を出でていなばいとど深草の野とやなりなん

歌番号九七二
可部之
返し
返し

与美比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 乃止奈良波宇川良止奈幾天止之者部武加利尓多尓也八幾三可己左良武
定家 野とならはうつらとなきて年はへむかりにたにやは君かこさらむ
解釈 野とならば鶉と鳴きて年は経む狩りにだにやは君は来ざらむ

歌番号九七三
多以之良須
題しらす
題知らず

原文 和礼遠幾三奈尓者乃宇良尓安利之可八宇幾女遠美川乃安万止奈利尓幾
定家 我を君なにはの浦に有しかはうきめをみつのあまとなりにき
解釈 我を君難波の浦にありしかば憂きめを三津の尼となりにき

歌番号九七四
己乃宇多八安留比止武可之於止己安利个留遠宇奈乃於止己
この哥はある人むかしおとこありけるをうなのおとこ
この哥はある人昔男ありける女の男

止者寸奈利尓个礼八奈尓八奈留美川乃天良尓万可利天安万尓奈利天与美天
とはすなりにけれはなにはなるみつのてらにまかりてあまになりてよみて
問わずなりにければ難波なる御津の寺に罷りて尼になりて詠みて

於止己尓川可八世利个留止奈武以部留可部之
おとこにつかはせりけるとなむいへる返し
男に遣はせりけるとなむ云へる返し

原文 奈尓者可多宇良武部幾万毛於毛保衣寸以川己遠見川乃安万止可者奈留
定家 なにはかたうらむへきまもおもほえすいつこをみつのあまとかはなる
解釈 難波潟恨むべき間も思ほえずいづこを三津の尼とかはなる

歌番号九七五
原文 以万佐良尓止不部幾比止毛於毛保衣寸也部武久良之天加止左世利天部
定家 今更にとふへき人もおもほえすやへむくらしてかとさせりてへ
解釈 今さらに訪ふべき人も思ほえず八重葎して門させりてへ

歌番号九七六
止毛多知乃比左之宇万宇天己左利个留毛止尓与美天川可八之个留
ともたちのひさしうまうてこさりけるもとによみてつかはしける
友達の久しう参うて来さりける許に詠みて遣はしける

美川祢
みつね
凡河内躬恒

原文 美川乃於毛尓於不留左川幾乃宇幾久左乃宇幾己止安礼也祢遠多衣天己奴
定家 水のおもにおふるさ月のうき草のうき事あれやねをたえてこぬ
解釈 水の面に生ふる五月の浮草の憂きことあれや根を絶えて来ぬ

歌番号九七七
比止遠止者天飛左之宇安利个留於利尓安日宇良美个礼八与女留
人をとはてひさしうありけるおりにあひうらみけれはよめる
人を問はで久しうありける折りにあひ恨みけれは詠める

原文 三遠寸天々由幾也之尓个武於毛不与利外奈留毛乃八己々呂奈利个利
定家 身をすてゝゆきやしにけむ思ふより外なる物は心なりけり
解釈 身を捨てて行きやしにけむ思よりほかなる物は心なりけり

歌番号九七八
武祢遠可乃於保与利可己之与利末宇天幾多利个留止幾尓由幾乃布利个留遠美天
むねをかのおほよりかこしよりまうてきたりける時に雪のふりけるを見て
宗岳大頼が越より参うで来たりける時に雪の降りけるを見て

遠乃可於毛比八己乃由幾能己止久奈武川毛礼留止以日个留於利尓与女留
をのかおもひはこのゆきのことくなむつもれるといひけるおりによめる
己が想ひはこの雪のごとくなむ積れると云ひける折りに詠める

原文 幾三可於毛日由幾止川毛良八多乃万礼寸者留与利乃知八安良之止於毛部八
定家 君か思ひ雪とつもらはたのまれす春よりのちはあらしとおもへは
解釈 君が思ひ雪と積もらば頼まれず春より後はあらじと思へば

歌番号九七九
可部之
返し
返し

武祢遠可乃於保与利
宗岳大頼
宗岳大頼

原文 幾三遠乃美於毛日己之地乃志良夜万者以川可者由幾乃幾由留止幾安留
定家 君をのみ思ひこしちのしら山はいつかは雪のきゆる時ある
解釈 君をのみ思ひ越路の白山はいつかは雪の消ゆる時ある

歌番号九八〇
己之奈利个留比止尓川可八之个留
こしなりける人につかはしける
越なりける人に遣はしける

幾乃川良由幾
きのつらゆき
紀貫之

原文 於毛日也累己之乃之良夜万志良祢止毛比止与毛由女尓己衣奴与曽奈幾
定家 思やるこしの白山しらねともひと夜も夢にこえぬよそなき
解釈 思ひやる越の白山知らねども一夜も夢に越えぬ夜ぞなき

歌番号九八一
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 以佐己々尓和可世者部奈武寸可波良也布知三乃左止乃安礼万久毛於之
定家 いさこゝにわか世はへなむ菅原や伏見の里のあれまくもおし
解釈 いざここに我が世は経なむ菅原や伏見の里の荒れまくも惜し

歌番号九八二
原文 和可以保八三和乃夜万毛止己比之久八止不良日幾万世寸幾多天留可止
定家 わかいほはみわの山もとこひしくはとふらひきませすきたてるかと
解釈 我が庵わは三輪の山本恋しくは訪らひ来ませ杉立てる門

歌番号九八三
幾世无保宇之
きせんほうし
喜撰法師

原文 王可伊本者美也己乃多川美志可曽寸武世遠宇地夜万止比止者以不奈利
定家 わかいほは宮このたつみしかそすむ世をうち山と人はいふ也
解釈 我が庵は都の巽しかぞ住む世を宇治山と人は言ふなり

歌番号九八四
与美比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 安礼尓个利安者礼以久与乃也止奈礼也寸三个武比止乃遠止川礼毛世奴
定家 あれにけりあはれいくよのやとなれやすみ釼人のをとつれもせぬ
解釈 荒れにけりあはれいく世の宿なれや住みけむ人の訪れもせぬ

歌番号九八五
奈良部万可利个留止幾尓安礼多留以部尓遠无奈乃琴比幾个留遠幾々天
ならへまかりける時にあれたる家に女の琴ひきけるをきゝて
奈良へ参かりける時に荒れたる家に女の琴ひきけるを聞きて

与美天以礼多利个留
よみていれたりける
詠みて入れたりける

与之三祢乃武祢左多
よしみねのむねさた
良岑宗貞

原文 和比々止乃寸武部幾也止々美留奈部尓奈个幾久者々留己止乃祢曽寸留
定家 わひゝとのすむへきやとゝ見るなへに歎くはゝることのねそする
解釈 侘び人の住むべき宿と見るなへに嘆き加はる琴の音ぞする

歌番号九八六
者川世尓末宇川留美知尓奈良乃美也己尓也止礼利个留止幾与女留
はつせにまうつる道にならの京にやとれりける時よめる
初瀬に参うつる道に奈良の京に宿れりける時詠める

尓天宇
二条
二条

原文 比止布留寸左止遠以止日天己之可止毛奈良乃美也己毛宇幾奈々利个利
定家 人ふるすさとをいとひてこしかともならの宮こもうきなゝりけり
解釈 人ふるす里を厭ひて来しかども奈良の都も憂き名なりけり

歌番号九八七
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 与乃奈可者以川礼可佐之天和可奈良武由幾止末留遠曽也止々佐多武留
定家 世中はいつれかさしてわかならむ行とまるをそやとゝさたむる
解釈 世の中はいづれかさして我がならむ行き止るをぞ宿と定むる

歌番号九八八
原文 安不佐可乃安良之乃可世者左武个礼止由久恵之良祢和日川々曽奴留
定家 相坂の嵐のかせはさむけれとゆくゑしらねはわひつゝそぬる
解釈 逢坂の嵐の風は寒けれど行方知らねば侘びつつぞ寝る

歌番号九八九
原文 可世乃宇部尓安利可佐多女奴知利乃三八由久恵毛志良寸奈利奴部良奈利
定家 風のうへにありかさためぬちりの身はゆくゑもしらすなりぬへら也
解釈 風の上にありか定めぬ塵の身は行方も知らずなりぬべらなり

歌番号九九〇
以部遠宇里天与女留
家をうりてよめる
家を売りて詠める

以世
伊勢
伊勢

原文 安寸可々八布知尓毛安良奴和可也止毛世尓加者利由久毛乃尓曽安利个留
定家 あすかゝはふちにもあらぬわかやともせにかはりゆく物にそ有ける
解釈 あすかかはふちにもあらぬ我が宿もせに変り行く物にぞありける

歌番号九九一
徒久之尓者部利个留止幾尓末可利加与比川々己宇知个累比止乃毛止尓
つくしに侍ける時にまかりかよひつゝこうちける人のもとに
筑紫に侍ける時に参かり通ひつゝ碁打ちける人の許に

美也己尓加部利末宇天幾天川可八之个留
京にかへりまうてきてつかはしける
京に帰り参うて来て遣はしける

幾乃止毛乃利
きのとものり
紀友則

原文 布累佐止者美之己止毛安良寸於乃々衣乃久知之止己呂曽己日之可利个留
定家 ふるさとは見しこともあらすおのゝえのくちし所そこひしかりける
解釈 古里は見しごともあらず斧の柄の朽ちし所ぞ恋しかりける

歌番号九九二
遠无奈止毛多知止毛乃可多利之天和可礼天乃知尓川可八之个留
女ともたちと物かたりしてわかれてのちにつかはしける
女友達と物語して別れて後に遣はしける

美知乃久
みちのく
陸奥

原文 安可佐利之曽天乃奈可尓也以利尓个武和可多万之日乃奈幾己々呂知寸留
定家 あかさりし袖のなかにやいりにけむわかたましひのなき心ちする
解釈 あかざりし袖のなかにや入りにけむ我が魂のなき心地する

歌番号九九三
可无部以乃於保无止幾尓毛呂己之乃者宇可武尓女左礼天者部利个留止幾尓
寛平御時にもろこしのはう官にめされて侍ける時に
寛平御時に唐の判官に召されて侍ける時に

止宇乃美也乃左不良日尓天遠乃己止毛左計堂宇部个留川以天尓与
東宮のさふらひにてをのこともさけたうへけるついてに
東宮の候ひにて男ども酒食うへけるついてに

三者部利个留
よみ侍ける
詠み侍ける

布知八良乃多々不左
ふちはらのたゝふさ
藤原忠房

原文 奈与多計乃与奈可幾宇部尓者川之毛乃於幾為天毛乃遠於毛不己呂可奈
定家 なよ竹のよなかきうへにはつしものおきゐて物を思ころ哉
解釈 なよ竹の夜長き上に初霜の起きゐて物を思ふころかな

歌番号九九四
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 可世布个者於幾川之良奈美堂川多夜万与者尓也幾三可飛止利己由良武
定家 風ふけはおきつ白浪たつた山よはにや君かひとりこゆ覧
解釈 風吹けば沖つ白浪竜田山夜半にや君が一人越ゆらん

歌番号九九五
安留比止己乃宇多者武可之也末止乃久尓奈利个留比止乃武寸女尓安留比止
ある人この哥はむかしやまとのくになりける人のむすめにある人
ある人この哥は昔大和の国なりける人の娘にある人

寸美和多利遣里己乃遠无奈於也毛奈久奈利天以部毛和留久奈利由久安比多尓
すみわたりけりこの女おやもなくなりて家もわるくなりゆくあひたに
住み渡りけりこの女親も亡くなりて家も悪くなりゆく間に

己乃於止己加宇知乃久尓々比止遠安日志利天加与比川々加礼也宇尓乃美
このおとこかうちのくにゝ人をあひしりてかよひつゝ
この男河内の国に人を相知りて通ひつゝ

加礼也宇尓乃美奈利由幾个利左利个礼止毛川良計奈留个之幾毛美衣天
かれやうにのみなりゆきけりさりけれともつらけなるけしきも見えて
離れやうにのみなりゆきけりさりけれども辛けなるけしきも見えで

加宇知部以久己止尓於止己乃己々呂乃己止久尓之徒々以多之
かうちへいくことにおとこの心のことくにしつゝいたし
河内へ行くことに男の心のごとくにしつゝいたし

也利个礼八安也之止於毛日天毛之奈幾万尓己止己々呂毛也安留止
やりけれはあやしと思ひてもしなきまにこと心もやあると
やりければあやしと思ひてもしなき間に異心もやあると

宇多可日天川幾乃於毛之呂加利个留与加宇知部以久万祢尓天
うたかひて月のおもしろかりける夜かうちへいくまねにて
疑ひて月のおもしろかりける夜河内へ行くまねにて

世无左以乃奈可尓加久礼天美个礼八与布久留末天己止遠加幾
せんさいのなかにかくれて見けれは夜ふくるまてことをかき
前栽の中に隠れて見ければ夜ふくるまで琴を掻き

奈良之川々宇知奈个幾天己乃宇多遠与美天祢尓个礼八己礼遠幾々天
ならしつゝうちなけきてこの哥をよみてねにけれはこれをきゝて
鳴らしつゝうち嘆きてこの哥を詠みて寝にければこれを聞きて

曽礼与利万多保可部毛万可良寸奈利尓个利止奈武以日川多部多留
それより又ほかへもまからすなりにけりとなむいひつたへたる
それよりまた他へも参からずなりにけりとなむ言ひ伝へたる

原文 堂可美曽幾由布川計止利可加良己呂毛堂川多乃夜万尓於利八部天奈久
定家 たかみそきゆふつけ鳥か唐衣たつたの山におりはへてなく
解釈 誰がみそぎ木綿つけ鳥か唐衣竜田の山にをりはへて鳴く

歌番号九九六
原文 和寸良礼武止幾之乃部止曽浜知止利由久恵毛志良奴安止遠止々武留
定家 わすられむ時しのへとそ浜千鳥ゆくゑもしらぬあとをとゝむる
解釈 忘られむ時偲べとぞ浜千鳥行方も知らぬ跡を留むる

歌番号九九七
志也宇可无乃於保无止幾満武衣宇之不者以川者可利川久礼留曽止々者世多万部个礼八
貞観御時万葉集はいつはかりつくれるそとゝはせ給へけれは
貞観御時万葉集はいつばかり作れるぞと問はせ給へければ

与美天多天万川利个留
よみてたてまつりける
詠みて奉りける

布无也乃安利寸恵
文屋ありすゑ
文屋有季

原文 加美奈川幾志久礼布利遠个留奈良乃八乃奈尓於不美也乃布留己止曽己礼
定家 神な月時雨ふりをけるならのはのなにおふ宮のふることそこれ
解釈 神無月時雨降り置ける楢の葉の名に負ふ宮の古る事ぞこれ

歌番号九九八
可无部以乃於保无止幾宇多多天万川利个留川以天尓多天万川利个留
寛平御時哥たてまつりけるついてにたてまつりける
寛平御時哥奉りけるついでに奉りける

於保衣乃知左止
大江千里
大江千里

原文 安之堂川乃飛止利遠久礼天奈久己恵者久毛乃宇部万天幾己衣川可奈武
定家 あしたつのひとりをくれてなくこゑは雲のうへまてきこえつかなむ
解釈 葦田鶴の一人遅れて鳴く声は雲の上まで聞こえ継がなむ

歌番号九九九
布知八良乃加知遠武
ふちはらのかちをむ
藤原勝臣

原文 飛止之礼寸於毛不己々呂者者留可寸美多知以天々幾美可女尓毛美衣奈武
定家 ひとしれす思ふ心は春霞たちいてゝきみかめにも見えなむ
解釈 人知れず思ふ心は春霞立ち出でて君が目にも見えなむ

歌番号一〇〇〇
宇多免之个留止幾尓堂天末川留止天与美天於久尓可幾川个天多天万川利个留
哥めしける時にたてまつるとてよみておくにかきつけてたてまつりける
哥召しける時に奉るとて詠みて奥に書き付けて奉りける

以世
伊勢
伊勢

原文 夜万加者乃遠止尓乃美幾久毛々之幾遠三遠者也奈可良美留与之毛可奈
定家 山河のをとにのみきくもゝしきを身をはやなから見るよしも哉
解釈 山川の音にのみ聞く百敷を身をはやながら見るよしもがな
コメント

古今和歌集 原文推定 巻十七

2020年03月29日 | 古今和歌集 原文推定 藤原定家伊達本
止遠末利奈々末幾仁安多留未幾
とをまりななまきにあたるまき
巻十七

久左/\乃宇多宇部
雑哥上
雑哥上

歌番号八六三
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 和可宇部尓川由曽遠久奈留安万乃加者止和多留舟乃加以乃志徒久可
定家 わかうへに露そをくなるあまの河とわたる舟のかいのしつくか
解釈 我が上に露ぞ置くなる天の河門わたる舟の櫂の雫か

歌番号八六四
原文 於毛不止知万止為世留与者加良尓之幾多々万久於之幾毛乃尓曽安利遣留
定家 思ふとちまとゐせる夜は唐錦たゝまくおしき物にそありける
解釈 思ふどち円居せる夜は唐錦たたまく惜しきものにぞありける

歌番号八六五
原文 宇礼之幾遠奈尓々川々末武加良己呂毛多毛止由多可尓多天止以者万之遠
定家 うれしきをなにゝつゝまむ唐衣たもとゆたかにたてといはましを
解釈 うれしきを何に包まむ唐衣袂豊かに裁てと言はましを

歌番号八六六
原文 加幾利奈幾幾三可多女尓止於累者那者止幾之毛和可奴毛乃尓曽安利个留
定家 限なき君かためにとおる花はときしもわかぬ物にそ有ける
解釈 限りなき君がためにと折る花は時しも分かぬ毛乃にぞありける

安留比止乃以者久己乃宇多者左幾乃於本以末宇知幾三乃奈利
ある人のいはくこの哥はさきのおほいまうち君の也
ある人の曰はくこの哥は前大臣のなり

歌番号八六七
原文 武良佐幾乃飛止毛止由部尓武左之乃々久左者美奈可良安者礼止曽美留
定家 紫のひともとゆへにむさしのゝ草はみなからあはれとそ見る
解釈 紫の一本ゆゑに武蔵野の草は見ながらあはれとぞ見る

歌番号八六八
女乃於止宇止遠毛天者部利个留比止尓宇部乃幾奴遠々久留止天
めのおとうとをもて侍ける人にうへのきぬをゝくるとて
妻の義弟をもて侍ける人に上の衣を贈るとて

与美天也利个留
よみてやりける
詠みて遣りける

奈利比良乃安曽无
なりひらの朝臣
在原業平朝臣

原文 武良佐幾乃以呂己幾止幾者女毛者留尓野奈留久左幾曽和可礼左利个留
定家 紫の色こき時はめもはるに野なる草木そわかれさりける
解釈 紫の色濃き時は目もはるに野なる草木ぞ別れざりける

歌番号八六九
於保以毛乃末宇寸川加佐布知八良乃久尓川祢乃安曽无乃
大納言ふちはらのくにつねの朝臣の
大納言藤原国経朝臣の

於保末川利古止比止与利奈加乃毛乃末字寸川加佐尓奈利个留止幾
宰相より中納言になりける時
宰相より中納言になりける時

曽女奴宇部乃幾奴安也遠々久留止天与女留
そめぬうへのきぬあやをゝくるとてよめる
染ぬ上の絹綾を贈るとて詠める

己无為无乃美幾乃於保以末宇知幾美
近院右のおほいまうちきみ
近院右大臣

原文 以呂奈之止比止也美留良武武可之与利布可幾己々呂尓曽女天之毛乃遠
定家 色なしと人や見る覧昔よりふかき心にそめてしものを
解釈 色なしと人や見るらむ昔より深き心に染めてしもおのを

歌番号八七〇
以曽乃可美乃奈武末川可美也徒可部毛世天以曽乃加美止以不止己呂尓
いそのかみのなむまつか宮つかへもせていその神といふ所に
石上並松が宮仕へもせで石上といふ所に

己毛利者部利个留遠尓者可尓加宇不利多末者礼利个礼者与呂己日以日
こもり侍けるをにはかにかうふりたまはれりけれはよろこひいひ
籠り侍けるをにはかに被り給はれりけれは喜び云ひ

川可者寸止天与三天川可八之个留
つかはすとてよみてつかはしける
遣はすとて詠みて遣はしける

布留乃以万美知
ふるのいまみち
布留今道

原文 比乃飛可利也布之和可祢八伊曽乃加美布利尓之佐止尓者那毛左幾个利
定家 日のひかりやふしわかねはいその神ふりにしさとに花もさきけり
解釈 日の光薮し分かねば石上古りにし里に花も咲きけり

歌番号八七一
尓天宇乃幾左幾乃末多止宇乃美也乃美也寸无止己呂止
二条のきさきのまた東宮のみやすんところと
二条后のまだ東宮の御息所と

毛布寸个留止幾尓於保者良乃尓末宇天多万日个留比与女留
申ける時におほはらのにまうてたまひける日よめる
申ける時に大原野に参うで給ひける日詠める

奈利比良乃安曽无
なりひらの朝臣
在原業平朝臣

原文 於保者良也遠之保乃夜万毛遣布己曽八加美世乃己止毛於毛日以川良免
定家 おほはらやをしほの山もけふこそは神世の事も思いつらめ
解釈 大原や小塩の山も今日こそは神世の事も思ひ出づらめ

歌番号八七二
己世知乃末比々女遠美天与女留
五節のまひゝめを見てよめる
五節の舞姫を見て詠める

与之三祢乃武祢左多
よしみねのむねさた
良岑宗貞

原文 安満川可世久毛乃可与日知布幾止知与遠止免乃寸可多志波之止々女武
定家 あまつかせ雲のかよひち吹とちよをとめのすかたしはしとゝめむ
解釈 天つ風雲の通路吹き閉ぢよ乙女の姿しばし留めむ

歌番号八七三
己世知乃安之多尓加武左之乃多万能於知多利个留遠美天
五せちのあしたにかむさしのたまのおちたりけるを見て
五節の朝に簪の玉の落ちたりけるを見て

堂可奈良武止々不良日天与女留
たかならむとゝふらひてよめる
誰がならむと問ふらひて詠める

可波良乃飛多利乃於保以末宇知幾美
河原の左のおほいまうちきみ
河原左大臣

原文 奴之也堂礼止部止志良多万以者奈久尓佐良者奈部天也安者礼止於毛八武
定家 ぬしやたれとへとしら玉いはなくにさらはなへてやあはれとおもはむ
解釈 主や誰れ問へど白玉言はなくにさらばなべてやあはれと思はむ

歌番号八七四
可无部以乃於保无止幾宇部乃左不良飛尓者部利个留遠乃己止毛加免遠毛多世天
寛平御時うへのさふらひに侍けるをのこともかめをもたせて
寛平御時殿上の候ひに侍ける男ども甕を持たせて

幾左以乃美也乃於保武可多尓於保美幾乃於呂之止起己衣尓多天万川利多利个留遠
きさいの宮の御方におほみきのおろしときこえにたてまつりたりけるを
后宮の御方に大御酒の下しと聞こえに奉りたりけるを

久良比止止毛和良日天加女遠於末部尓毛天以天々止毛可久毛以者寸奈利
くら人ともわらひてかめをおまへにもていてゝともかくもいはすなり
蔵人ども笑ひて甕を御前に持て出でてともかくも云わずなり

尓个礼者徒可日乃加部利幾天左奈武安利川留止以日个礼八久良比止能
にけれはつかひのかへりきてさなむありつるといひけれはくら人の
逃げれば使ひの帰り来てさなむありつると云ひけれは蔵人の

奈可尓遠久利个留
なかにをくりける
中に贈りける

止之由幾乃安曽无
としゆきの朝臣
藤原敏行朝臣

原文 多万堂礼乃己可免也以川良己与呂幾乃以曽乃奈美和計於幾尓以天二个利
定家 玉たれのこかめやいつらこよろきのいその浪わけおきにいてにけり
解釈 玉垂れの小瓶やいづらこよろぎの磯の浪分け沖に出でにけり

歌番号八七五
遠无奈止毛乃美天和良日个礼者与女留
女ともの見てわらひけれはよめる
女どもの見て笑ひければ詠める

遣武个以本宇之
けむけいほうし
兼芸法師

原文 加多知己曽美夜万可久礼乃久知幾奈礼己々呂者者那尓奈左八奈利奈武
定家 かたちこそみ山かくれのくち木なれ心は花になさはなりなむ
解釈 かたちこそ深山隠れの朽木なれ心は花になさばなりなん

歌番号八七六
可多堂可部尓比止乃以部尓万可礼利个留止幾尓安留之乃幾奴遠
方たかへに人の家にまかれりける時にあるしのきぬを
方違えに人の家に招かれりける時に主人の衣を

幾世多利个留遠安之多尓加部寸止天与美个留
きせたりけるをあしたにかへすとてよみける
着せたりけるを朝に返すとて詠みける

幾乃止毛乃利
きのとものり
紀友則

原文 世三乃者乃与留乃己呂毛者宇寸个礼止宇川利加己久毛尓保日奴留可奈
定家 蝉のはのよるの衣はうすけれとうつりかこくもにほひぬる哉
解釈 蝉の羽の夜の衣は薄けれど移り香濃くも匂ひぬるかな

歌番号八七七
多以之良寸
題しらす
題知らず

与美比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 遠曽久以徒累川幾尓毛安留可奈安之比幾乃夜万乃安奈多毛於之武部良奈利
定家 をそくいつる月にもある哉葦引の山のあなたもおしむへら也
解釈 遅く出づる月にもあるかなあしひきの山のあなたも惜しむべらなり

歌番号八七八
原文 和可己々呂奈久佐女加祢川佐良之奈也遠者寸天夜万尓天留川幾遠美天
定家 わか心なくさめかねつさらしなやをはすて山にてる月を見て
解釈 我が心慰さめかねつ更級や姨捨山に照る月を見て

歌番号八七九
奈利比良乃安曽无
なりひらの朝臣
在原業平

原文 於保可多者川幾遠毛女天之己礼曽己乃徒毛礼八比止乃於以止奈留毛乃
定家 おほかたは月をもめてしこれそこのつもれは人のおいとなるもの
解釈 おほかたは月をも賞でじこれぞこの積もれば人の老いとなるもの

歌番号八八〇
川幾於毛之呂之止天於保可宇知乃美川祢可末宇天幾多利个留尓与女留
月おもしろしとて凡河内躬恒かまうてきたりけるによめる
月おもしろしとて凡河内躬恒が参うて来たりけるに詠める

幾乃川良由幾
きのつらゆき
紀貫之

原文 加徒美礼盤宇止久毛安留可奈川幾可計乃以多良奴左止毛安良之止於毛部八
定家 かつ見れはうとくもある哉月影のいたらぬさともあらしと思へは
解釈 かつ見れば疎くもあるかな月影のいたらぬ里もあらじと思へば

歌番号八八一
以个尓川幾乃美衣个留遠与免留
池に月の見えけるをよめる
池に月の見えけるを詠める

原文 布多川奈幾毛乃止於毛日之遠美奈曽己尓夜万乃者奈良天以川留川幾可遣
定家 ふたつなき物と思しをみなそこに山のはならていつる月かけ
解釈 二つなき物と思ひしを水底に山の端ならで出づる月影

歌番号八八二
多以之良須
題しらす
題知らず

与三比止之良須
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 安満乃加者久毛乃美於尓天者也个礼者飛可利止々女寸川幾曽奈可留々
定家 あまの河雲のみおにてはやけれはひかりとゝめす月そなかるゝ
解釈 天の河雲の水脈にて早ければ光留めず月ぞ流るる

歌番号八八三
原文 阿可寸之天川幾能加久留々夜万毛止八安奈多於毛天曽己日之可利个留
定家 あかすして月のかくるゝ山本はあなたおもてそこひしかりける
解釈 あかずして月の隠るる山本はあなたおもてぞ恋しかりける

歌番号八八四
己礼堂可乃美己乃加利之个留止毛尓末可利天也止利尓可部利天与比止与
これたかのみこのかりしけるともにまかりてやとりにかへりて夜ひとよ
惟喬親王の狩りしける伴に参かりて宿りに帰りて夜一夜

左个遠乃美毛乃可多利遠之个留尓十一比乃川幾毛加久礼奈武止之个留於利尓
さけをのみ物かたりをしけるに十一日の月もかくれなむとしけるをりに
酒を飲み物語をしけるに十一日の月も隠れなむとしける折りに

美己恵日天宇知部以里奈武止之个礼八与三者部利个留
みこゑひてうちへいりなむとしけれはよみ侍ける
親王酔ひて内へ入りなむとしけれは詠み侍ける

奈利比良乃安曽无
なりひらの朝臣
在原業平朝臣

原文 安可那久尓末多幾毛川幾乃加久留々可夜万乃者尓个天以礼寸毛安良奈武
定家 あかなくにまたきも月のかくるゝか山のはにけていれすもあらなむ
解釈 あかなくにまだきも月の隠るるか山の端逃げて入れずもあらなむ

歌番号八八五
多武良乃美可止乃於保无止幾尓以川幾乃為无尓者部利个留
田むらのみかとの御時に斎院に侍ける
田村の帝の御時に斎院に侍ける

安幾良計以己乃美己遠者々安也万知安利止以比天以川幾乃
あきらけいこのみこをはゝあやまちありといひて
慧子内親王を母過ち有りと云ひて

為无遠加部良礼武止之个留遠曽乃己止也見尓个礼八与女留
斎院をかへられむとしけるをそのことやみにけれはよめる
斎院を変へられむとしけるをその事止みにければ詠める

安万幾世之无
あま敬信
尼敬信

原文 於保曽良遠帝里由久川幾之幾与个礼者久毛加久世止毛飛可利遣奈久尓
定家 おほそらをてりゆく月しきよけれは雲かくせともひかりけなくに
解釈 大空を照り行く月し清ければ雲隠せども光消なくに

歌番号八八六
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良須
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 以曽乃加美布累可良遠乃々毛止可之波毛止乃己々呂者和寸良礼奈久尓
定家 いその神ふるからをのゝもとかしは本の心はわすられなくに
解釈 石上ふるから小野のもと柏本の心は忘られなくに

歌番号八八七
原文 伊尓之部乃野中乃志美川奴留个礼止毛止乃己々呂遠志留比止曽久武
定家 いにしへの野中のし水ぬるけれと本の心をしる人そくむ
解釈 いにしへの野中の清水ぬるけれど本の心を知る人ぞ汲む

歌番号八八八
原文 以仁志部能志徒乃遠多末幾以也之幾毛与幾毛左可利八安利之毛乃奈利
定家 いにしへのしつのをたまきいやしきもよきもさかりは有し物也
解釈 いにしへの倭文の苧環卑しきも良きも盛りはありしものなり

歌番号八八九
原文 以万己曽安礼和礼毛武可之者於止己夜万左可由久止幾毛安利己之毛乃遠
定家 今こそあれ我も昔はおとこ山さかゆく時も有こしものを
解釈 今こそあれ我も昔は男山栄行く時もありこしものを

歌番号八九〇
原文 与乃奈可尓布利奴留毛乃者徒乃久尓乃奈可良乃波之乃和礼止奈利个利
定家 世中にふりぬる物はつのくにのなからのはしと我となりけり
解釈 世の中にふりぬる物は津国の長柄の橋と我となりけり

歌番号八九一
原文 佐々乃者尓布利川武由幾乃宇礼遠々毛美毛止久多知由久和可左可利者毛
定家 さゝのはにふりつむ雪のうれをゝもみ本くたちゆくわかさかりはも
解釈 笹の葉に降り積む雪の末を重み本くたち行く我が盛りはも

歌番号八九二
原文 於保安良幾乃毛利乃志多久左於以奴礼者駒毛寸左女寸加留比止毛奈之
定家 おほあらきのもりのした草おいぬれは駒もすさめすかる人もなし
解釈 大荒木の森の下草老いぬれば駒もすさめず刈る人もなし

万多八左久良安左乃遠不乃之多久左於以奴礼八
又はさくらあさのをふのしたくさおいぬれは
または桜麻の麻生の下草老いぬれは

歌番号八九三
原文 加曽布礼者止万良奴毛乃遠止之止以日天己止之者以多久於以曽之尓个留
定家 かそふれはとまらぬ物を年といひてことしはいたくおいそしにける
解釈 数ふれば止まらぬものを年と言ひて今年はいたく老いぞしにける

歌番号八九四
原文 遠之天留也奈尓八乃美川尓也久之本乃加良久毛和礼者於以尓个留可奈
定家 をしてるやなにはの水にやくしほのからくも我はおいにける哉
解釈 おしてるや難波の水にやく塩のからくも我は老いにけるかな

万多者於本止毛乃美川乃者万部尓
又はおほとものみつのはまへに
または大伴の御津の浜辺に

歌番号八九五
原文 於以良久乃己武止志利世八加止佐之天奈之止己多部天安者左良万之遠
定家 おいらくのこむとしりせはかとさしてなしとこたへてあはさらましを
解釈 老いらくの来むと知りせば門さしてなしと答へて逢はざらましを

己乃美川乃宇多八武可之安利个留美多利乃於幾奈乃与女留止奈武
このみつの哥は昔ありけるみたりのおきなのよめるとなむ
この御津の哥は昔ありける三たりの翁の詠めるとなむ

歌番号八九六
原文 佐可左満尓止之毛由可奈武止利毛安部寸々久留与者日也止毛尓加部留止
定家 さかさまに年もゆかなむとりもあへすゝくるよはひやともにかへると
解釈 さかさまに年も行かなん取りもあへず過ぐる齢やともに帰ると

歌番号八九七
原文 止利止武累毛乃尓之安良祢八止之川幾遠安八礼安奈宇止寸久之川留可奈
定家 とりとむる物にしあらねは年月をあはれあなうとすくしつる哉
解釈 取りとむる物にしあらねば年月をあはれあな憂と過ぐしつるかな

歌番号八九八
原文 止々女安部寸武部毛止之止者以者礼个利志可毛川礼奈久寸久留与八日可
定家 とゝめあへすむへもとしとはいはれけりしかもつれなくすくるよはひか
解釈 留めあへずむべも年とは言はれけりしかもつれなく過ぐる齢か

歌番号八九九
原文 可々美夜万以左多知与利天美天由可武止之部奴留三八於以也之奴留止
定家 鏡山いさ立よりて見てゆかむ年へぬる身はおいやしぬると
解釈 鏡山いざ立ち寄りて見て行かむ年経ぬる身は老いやしぬると

己乃宇多八安留比止乃以者久於保止毛乃久呂奴之可也
この哥はある人のいはくおほとものくろぬしか也
この哥はある人の曰はく大伴黒主がなり

歌番号九〇〇
奈利比良安曽无乃者々乃美己奈可遠可尓寸見者部利个留止幾尓奈利比良
業平朝臣のはゝのみこ長岡にすみ侍ける時になりひら
業平朝臣の母の内親王長岡に住み侍ける時に業平

美也川可部寸止天止幾/\毛衣万可利止不良者寸者部利个礼者志者寸
宮つかへすとて時/\もえまかりとふらはす侍けれはしはす
宮仕えへすとて時々もえ参かり訪ふらはす侍ければ師走

者可利尓者々乃美己乃毛止与利止美乃己止止天布美遠毛天末宇天幾多利
許にはゝのみこのもとよりとみの事とてふみをもてまうてきたり
ばかりに母の内親王の許より急みの事とて文を持て参うて来たり

安遣天美礼者己止八々奈久天安利个留宇多
あけて見れはことはゝなくてありけるうた
開けて見れば言葉はなくてありける哥

原文 老奴礼者佐良奴別毛安利止以部者以与/\美万久保之幾幾三可奈
定家 老ぬれはさらぬ別もありといへはいよ/\見まくほしき君哉
解釈 老いぬればさらぬ別れもありと言へばいよいよ見まくほしき君かな

歌番号九〇一
可部之
返し
返し

奈利比良乃安曽无
なりひらの朝臣
在原業平朝臣

原文 与乃奈可尓左良奴別乃奈久毛可奈知世毛止奈个久比止乃己乃多女
定家 世中にさらぬ別のなくも哉千世もとなけく人のこのため
解釈 世の中にさらぬ別れのなくもがな千代もと嘆く人の子のため

歌番号九〇二
可无部以乃於保无止幾々左以乃美也乃宇多安者世乃宇多
寛平御時きさいの宮の哥合のうた
寛平御時后宮の哥合の哥

安利八良乃武祢也奈
在原むねやな
在原棟梁

原文 之良由幾乃也部布利志个留加部留夜万加部累/\毛於以尓个留可奈
定家 白雪のやへふりしけるかへる山かへる/\もおいにける哉
解釈 白雪の八重降りしけるかへる山かへるがへるも老いにけるかな

歌番号九〇三
於奈之於保无止幾乃宇部乃左不良比尓天遠乃己止毛尓於本美幾多万日天
おなし御時のうへのさふらひにてをのこともにおほみきたまひて
同じ御時の殿上の候ひにて男どもに大御酒賜ひて

於本見安曽比安利个留徒以天尓川可宇万川礼留
おほみあそひありけるついてにつかうまつれる
御遊ありけるついでにつかう奉れる

止之由幾乃安曽无
としゆきの朝臣
藤原敏行朝臣

原文 於以奴止天奈止可和可三遠世女幾个武於以寸八个不尓安者万之毛乃可
定家 おいぬとてなとかわか身をせめきけむおいすはけふにあはましものか
解釈 老いぬとてなどか我が身を責めきけむ老いずは今日に逢はましものか

歌番号九〇四
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良須
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 知者也布留宇知乃者之毛利奈礼遠之曽安八礼止八於毛不止之乃部奴礼八
定家 ちはやふる宇治の橋守なれをしそあはれとは思年のへぬれは
解釈 ちはやぶる宇治の橋守なれをしぞあはれとは思ふ年の経ぬれば

歌番号九〇五
原文 和礼美天毛飛左之久成奴寸三乃衣乃幾之乃飛女末川以久与部奴良武
定家 我見てもひさしく成ぬ住の江の岸の姫松いくよへぬ覧
解釈 我見ても久しくなりぬ住の江の岸の姫松いく世経らん

歌番号九〇六
原文 寸三与之乃幾之乃飛女末川比止奈良波以久世可部之止々八末之毛乃遠
定家 住吉の岸のひめ松人ならはいく世かへしとゝはまし物を
解釈 住吉の岸の姫松人ならばいく世か経しと問はましものを

歌番号九〇七
原文 安徒左由美以曽部乃己末川堂可世尓可与呂川世可祢天多祢遠万幾个武
定家 梓弓いそへのこ松たか世にかよろつ世かねてたねをまきけむ
解釈 梓弓磯辺の小松誰が世にかよろづ世かねて種をまきけむ

己乃宇多八安留比止乃以者久加幾乃毛止比止万呂可奈利
この哥はある人のいはく柿本人麿か也
この哥はある人の曰く柿本人麿がなり

歌番号九〇八
原文 加久之徒々世遠也川久佐武堂加左己乃於乃部尓多天留末川奈良奈久二
定家 かくしつゝ世をやつくさむ高砂のおのへにたてる松ならなくに
解釈 かくしつつ世をや尽くさむ高砂の尾上に立てる松ならなくに

歌番号九〇九
布知八良乃於幾可世
藤原おきかせ
藤原興風

原文 多礼遠可毛志留比止尓世武堂加左己乃末川毛武可之乃友奈良奈久二
定家 誰をかもしる人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに
解釈 誰れをかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに

歌番号九一〇
与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 和多川宇美乃於幾川之本安日尓宇可不安和乃幾衣奴毛乃可良与留可多毛奈之
定家 わたつ海のおきつしほあひにうかふあわのきえぬ物からよる方もなし
解釈 わたつ海の沖つ潮合に浮かぶ泡の消えぬものから寄る方もなし

歌番号九一一
原文 王堂徒宇美乃加左之尓左世留之良寸奈乃奈美毛天由部流安波之々万夜万
定家 わたつ海のかさしにさせる白砂の浪もてゆへる淡路しま山
解釈 わたつ海のかざしにさせる白砂の浪もて結へる淡路島山

歌番号九一二
原文 和太乃者良与世久累奈美乃志者/\毛美末久乃本之幾多万川之万可毛
定家 わたの原よせくる浪のしは/\も見まくのほしき玉津島かも
解釈 わたの原寄せ来る浪のしばしばも見まくのほしき玉津島かも

歌番号九一三
原文 奈尓者可多志本見知久良之安万己呂毛堂美乃々之万尓堂川奈幾和多留
定家 なにはかたしほみちくらしあま衣たみのゝ島にたつなき渡
解釈 難波潟潮満ち来らし海人衣田蓑の島に田鶴鳴きわたる

歌番号九一四
川良由幾可以川美乃久尓々者部利个留止幾尓也末止与利己衣末宇天幾天
貫之かいつみのくにゝ侍ける時にやまとよりこえまうてきて
貫之が和泉の国に侍ける時に大和より越え参うて来て

与美天川可八之个留
よみてつかはしける
詠みて遣はしける

布知八良乃堂々不左
藤原たゝふさ
藤原忠房

原文 幾三遠於毛日於幾川乃者万尓奈久多川乃多川祢久礼者曽安利止多尓幾久
定家 君を思ひおきつのはまになくたつの尋くれはそありとたにきく
解釈 君を思ひおきつの浜に鳴く田鶴の尋ね来ればぞありとだに聞く

歌番号九一五
可部之
返し
返し

川良由幾
つらゆき
紀貫之

原文 於幾川奈美堂可之乃者万乃者未々川乃奈尓己曽幾三遠万知和多利川礼
定家 おきつ浪たかしのはまの浜松の名にこそ君をまちわたりつれ
解釈 沖つ浪高しの浜の浜松の名にこそ君を待ちわたりつれ

歌番号九一六
奈尓者尓万可礼利个留止幾与女留
なにはにまかれりける時よめる
難波に任かれりける時詠める

原文 奈尓者可多於不留多万毛遠加利曽女乃安万止曽和礼者奈利奴部良奈留
定家 なにはかたおふるたまもをかりそめのあまとそ我はなりぬへらなる
解釈 難波潟生ふる玉藻をかりそめの海人とぞ我はなりぬべらなる

歌番号九一七
安飛之礼利个留比止乃寸三与之尓末宇天个留仁与美天徒可八之个留
あひしれりける人の住吉にまうてけるによみてつかはしける
相知れりける人の住吉に参うてけるに詠みて遣はしける

美不乃多々美祢
みふのたゝみね
壬生忠岑

原文 寸見与之止安満者川久止毛奈可為寸奈比止和寸礼久左於不止以不奈利
定家 すみよしとあまはつくともなかゐすな人忘草おふといふなり
解釈 住吉と海人は告ぐとも長居すな人忘草生ふと言ふなり

歌番号九一八
奈尓者部万可利个留止幾堂美乃々之満尓天安免尓安日天与女留
なにはへまかりける時たみのゝしまにて雨にあひてよめる
難波へ任かりける時田蓑の島にて雨に遇ひて詠める

徒良由幾
つらゆき
紀貫之

原文 安免尓与利堂美乃々志末遠个不由个止奈尓八加久礼奴毛乃尓曽安利个留
定家 あめによりたみのゝ島をけふゆけと名にはかくれぬ物にそ有ける
解釈 雨により田蓑島を今日行けど名には隠れぬ物にぞありける

歌番号九一九
保宇於宇仁之加者尓於者之末之多利个留比徒留寸尓堂天利止以不己止遠
法皇にし河におはしましたりける日つるすにたてりといふことを
法皇西川におはしましたりける日鶴洲に立てりと云ふことを

多以尓天与万世多万日个留
題にてよませたまひける
題にて詠ませ給ひける

原文 安之多川乃堂天留加者部遠布久可世尓与世天可部良奴奈美可止曽美留
定家 あしたつのたてる河辺を吹風によせてかへらぬ浪かとそ見る
解釈 葦田鶴の立てる河辺を吹く風に寄せて帰らぬ浪かとぞ見る

歌番号九二〇
奈加乃万川利己止乃美己乃以部乃以个尓舟遠川久利天於呂之
中務のみこの家の池に舟をつくりておろしはしめてあそひける日
中務親王の家の池に舟を作りて降ろし

者之女天安曽比个留比保宇於宇於保武美波之尓於波之末之多利个利
はしめてあそひける日法皇御覧しにおはしましたりけり
初めて遊びける日法皇御覧しにおはしましたりけり

由不左利川可多加部利於者之万左武止之个留於利尓与三天多天万川利个留
ゆふさりつかたかへりおはしまさむとしけるおりによみてたてまつりける
夕ふ去りつかた帰へりおはしまさむとしけるおりに詠みて奉りける

以世
伊勢
伊勢

原文 美川乃宇部尓宇可部留布祢乃幾三奈良八己々曽止万利止以者万之毛乃遠
定家 水のうへにうかへる舟の君ならはこゝそとまりといはまし物を
解釈 水の上に浮かべる舟の君ならばここぞ泊りと言はましものを

歌番号九二一
加良己止々以不止己呂尓天与女留
からことゝいふ所にてよめる
唐琴と云ふ所にて詠める

志无世以本宇之
真せいほうし
真静法師

原文 美也己万天飛々幾加与部留加良己止八奈美乃遠寸个天可世曽比幾个留
定家 宮こまてひゝきかよへるからことは浪のをすけて風そひきける
解釈 都まで響き通へるからことは浪の緒すげて風ぞ弾きける

歌番号九二二
奴乃比幾乃堂幾尓天与女留
ぬのひきのたきにてよめる
布引の瀧にて詠める

安利八良乃由幾比良安曽无
在原行平朝臣
在原行平朝臣

原文 己幾知良寸多幾乃之良多万飛呂日遠幾天世乃宇幾止幾乃奈美多尓曽可累
定家 こきちらす瀧の白玉ひろひをきて世のうき時の涙にそかる
解釈 こき散らす滝の白玉拾ひ置きて世の憂き時の涙にぞかる

歌番号九二三
奴乃比幾乃多幾乃毛止尓天比止/\安川万利天宇多与美个留止幾尓与免留
布引の瀧の本にて人/\あつまりて哥よみける時によめる
布引の瀧の許にて人々集まりて哥詠みける時に詠める

奈利比良乃安曽无
なりひらの朝臣
在原業平朝臣

原文 奴幾美多累比止己曽安留良之之良多万乃末奈久毛知留可曽天乃世八幾尓
定家 ぬきみたる人こそあるらし白玉のまなくもちるか袖のせはきに
解釈 抜き見たる人こそあるらし白玉のまなくも散るか袖の狭きに

歌番号九二四
与之乃々多幾遠美天与女留
よしのゝたきを見てよめる
吉野の瀧を見て詠める

曽宇久保宇之
承均法師
承均法師

原文 堂可多女尓飛幾天佐良世留安免奴乃奈礼也世遠部天美礼止々留比止毛奈幾
定家 たかためにひきてさらせる雨ぬのなれや世をへて見れとゝる人もなき
解釈 誰がために引きてさらせる布なれや世を経て見れど取る人もなき

歌番号九二五
多以之良寸
題しらす
題知らず

加美多以保宇之
神たい法し
神退法師

原文 幾与多幾乃世々乃之良以止久利多女天夜万和个己呂毛遠和天幾万之遠
定家 きよたきのせゝのしらいとくりためて山わけ衣をりてきましを
解釈 清滝の瀬々の白糸繰りためて山わけ衣織りて着ましを

歌番号九二六
利由宇毛无尓末宇天々多幾乃毛止尓天与女留
龍門にまうてゝたきのもとにてよめる
龍門に参うでて瀧の下にて詠める

以世
伊勢
伊勢

原文 堂知奴者奴幾奴幾之比止毛奈幾毛乃遠奈尓夜万比免乃奴乃左良寸良武
定家 たちぬはぬきぬきし人もなき物をなに山姫のぬのさらすらむ
解釈 裁ち縫はぬ衣着し人もなきものを何山姫の布晒すらむ

歌番号九二七
寸左久為无乃美可止奴乃比幾乃多幾於保武美波世武止天
朱雀院のみかとぬのひきのたき御覧せむとて
朱雀院の帝布引の瀧御覧せむとて

布无川幾乃奈奴可乃比於八之末之天安利个留止幾尓左布良布比止/\尓
ふん月のなぬかの日おはしましてありける時にさふらふ人/\に
文月の七日の日おはしましてありける時に候ふ人々に

宇多与万世多万日个留尓与女留
哥よませたまひけるによめる
哥詠ませ給ひけるに詠める

堂知八奈乃奈可毛利
たちはなのなかもり
橘長盛

原文 奴之奈久天佐良世留奴乃遠多奈者多尓和可己々呂止也个不八可左末之
定家 ぬしなくてさらせるぬのをたなはたにわか心とやけふはかさまし
解釈 主なくて晒せる布を棚機に我が心とや今日はかさまし

歌番号九二八
飛衣乃夜万奈留遠止八乃多幾遠美天与女留
ひえの山なるをとはのたきを見てよめる
比叡の山なる音羽の瀧を見て詠める

太々美祢
たゝみね
壬生忠岑

原文 於知多幾川多幾乃美奈可美止之川毛利於以尓个良之奈久呂幾寸知奈之
定家 おちたきつたきのみなかみとしつもりおいにけらしなくろきすちなし
解釈 落ちたぎつ滝の水神年積もり老いにけらしな黒き筋なし

歌番号九二九
於奈之多幾遠与女留
おなしたきをよめる
同じ瀧を詠める

美川祢
みつね
凡河内躬恒

原文 可世布遣止止己呂毛佐良奴之良久毛者与遠部天於川留美川尓曽安利个留
定家 風ふけと所もさらぬ白雲はよをへておつる水にそ有ける
解釈 風吹けど所もさらぬ白雲は世を経て落つる水にぞありける

歌番号九三〇
多武良乃於保无止幾尓々由布保宇乃左不良日尓天美飛也宇布乃恵
田むらの御時に女房のさふらひにて御屏風のゑ
田村の御時に女房の候ひにて御屏風の絵

於保武美波之个留尓太幾於知多利个留止己呂於毛之呂之己礼遠
御覧しけるにたきおちたりける所おもしろしこれを
御覧しけるに瀧落ちたりける所おもしろしこれを

多以尓天宇多与免止左布良不比止尓於保世良礼个礼八与女累
題にてうたよめとさふらふ人におほせられけれはよめる
題にて哥詠めと候ふ人におほせられけれは詠める

左无天宇乃万知
三条の町
三条町

原文 於毛比世久己々呂乃宇知乃多幾奈礼也於川止八美礼止遠止乃幾己衣奴
定家 おもひせく心の内のたきなれやおつとは見れとをとのきこえ江ぬ
解釈 思ひせく心の内の滝なれや落つとは見れど音の聞こえぬ

歌番号九三一
飛也宇布乃恵奈留者那遠与女留
屏風のゑなる花をよめる
屏風の絵なる花を詠める  紀貫之

徒良由幾
つらゆき
紀貫之

原文 佐幾曽免之止幾与利乃知者宇知波部天世者々留奈礼也以呂乃川祢奈留
定家 さきそめし時よりのちはうちはへて世は春なれや色のつねなる
解釈 咲きそめし時より後はうちはへて世は春なれや色の常なる

歌番号九三二
飛也宇布乃恵尓与美安八世天加幾个留
屏風のゑによみあはせてかきける
屏風の絵に詠み合せて書きける

佐可乃宇部乃己礼乃利
坂上これのり
坂上是則

原文 加利天保寸夜万多乃以祢乃己幾多礼天奈幾己曽和多礼安幾乃宇个礼盤
定家 かりてほす山田のいねのこきたれてなきこそわたれ秋のうけれは
解釈 刈りて干す山田の稲のこきたれて鳴きこそわたれ秋の憂ければ
コメント

古今和歌集 原文推定 巻十六

2020年03月22日 | 古今和歌集 原文推定 藤原定家伊達本
止遠末利武末幾仁安多留未幾
とをまりむまきにあたるまき
巻十六

可那之比乃宇多
哀傷哥
哀傷哥

歌番号八二九
以毛宇止乃三万可利个留止幾与見个留
いもうとの身まかりける時よみける
妹の身罷りける時詠みける

遠乃々堂可武良乃安曽无
小野たかむらの朝臣
小野篁朝臣

原文 奈久奈美多安免止布良武和多利加者美川万佐利奈八加部利久留可仁
定家 なく涙雨とふらむわたり河水まさりなはかへりくるかに
解釈 泣く涙雨と降らなん渡河水まさりなば帰り来るがに

歌番号八三〇
佐幾乃於保幾於本以万宇知幾美遠志良可八乃安多利尓
さきのおほきおほいまうちきみをしらかはのあたりに
前太政大臣を白河のあたりに

遠久利个留与々女留
をくりける夜よめる
送りける夜詠める

曽世以保宇之
そせい法し
師素性法師

原文 知乃奈美多於知天曽堂幾川之良加者々幾三可世万天乃奈尓己曽安利个礼
定家 ちの涙おちてそたきつ白河は君か世まての名にこそ有けれ
解釈 血の涙落ちてぞたぎつ白河は君が世までの名にこそありけれ

歌番号八三一
保利加者乃於保幾於本以末宇知幾三々万可利尓个留止幾尓
ほりかはのおほきおほいまうち君身まかりにける時に
堀川大臣身罷りにける時に

布可久左乃夜万尓於左女天个留乃知尓与三个留
深草の山におさめてけるのちによみける
深草の山に納めてける後に詠みける

曽宇寸志也宇衣无
僧都勝延
僧都勝延

原文 可良世三者加良遠美川々毛奈久左女徒布可久左乃夜万个不利多尓多天
定家 空蝉はからを見つゝもなくさめつ深草の山煙たにたて
解釈 空蝉はか殻を見つつも慰めつ深草の山煙だに立て

歌番号八三二
加武川計乃美祢遠
かむつけのみねを
上野岑雄

原文 布可久左乃々部乃佐久良之己々呂安良八己止之者可利八寸美曽女尓左計
定家 ふかくさのゝへの桜し心あらはことし許はすみそめにさけ
解釈 深草の野辺の桜し心あらば今年ばかりは墨染に咲け

歌番号八三三
布知八良乃敏行安曽无乃三万可利尓个留止幾尓与美天加乃以部尓
藤原敏行朝臣の身まかりにける時によみてかの家に
藤原敏行朝臣の身罷りにける時に詠みてかの家に

川可八之个留
つかはしける
遣はしける

幾乃止毛乃利
きのとものり
紀友則

原文 祢天毛美由祢天毛美衣个利於保可多者可良世三乃世曽由女尓八安利个留
定家 ねても見ゆねても見えけりおほかたは空蝉の世そ夢には有ける
解釈 寝ても見ゆ寝でも見えけりおほかたはうつせみの世ぞ夢にはありける

歌番号八三四
安比之乃利个留比止乃三万可利尓个礼八与女留
あひしれりける人の身まかりにけれはよめる
相知れりける人の身罷りにけれは詠める

幾乃川良由幾
紀つらゆき
紀貫之

原文 由女止己曽以布部可利个礼与乃奈可尓右川々安留毛乃止於毛日个留可奈
定家 夢とこそいふへかりけれ世中にうつゝある物と思ける哉
解釈 夢とこそ言ふべかりけれ世の中にうつつある物と思ひけるかな

歌番号八三五
安日之礼利遣累比止乃美満可利尓个留止幾尓与女留
あひしれりける人のみまかりにける時によめる
相知れりける人の見罷りにける時に詠める

美不乃多々美祢
みふのたゝみね
壬生忠岑

原文 奴累可宇知尓美留遠乃美也八由女止以者武者可奈幾世遠毛宇川々止者美寸
定家 ぬるかうちに見るをのみやは夢といはむはかなき世をもうつゝとは見す
解釈 寝るがうちに見るをのみやは夢と言はむはかなき世をもうつつとは見ず

歌番号八三六
安祢乃三万可利尓个留止幾尓与女留
あねの身まかりにける時によめる
姉の身罷りにける時に詠める

原文 勢遠世計者布知止奈利天毛与止美个利和可礼遠止武留之可良美曽奈幾
定家 せをせけはふちとなりてもよとみけりわかれをとむるしからみそなき
解釈 瀬を塞けば淵となりても淀みけり別れを止むるしがらみぞなき

歌番号八三七
布知八良乃忠房可武可之安日之里天者部利个留比止乃
藤原忠房かむかしあひしりて侍ける人の
藤原忠房が昔相知りて侍ける人の

三万可利尓个留止幾尓止不良日尓川可八寸止天与女留
身まかりにける時にとふらひにつかはすとてよめる
身罷りにける時に弔ひに遣はすとて詠める

加武為无
閑院
閑院

原文 佐幾多々奴久日乃也知多日加奈之幾者奈可留々美川乃加部利己奴奈利
定家 さきたゝぬくひのやちたひかなしきはなかるゝ水のかへりこぬ也
解釈 先立たぬ悔いの八千たび悲しきは流るる水の帰り来ぬなり

歌番号八三八
幾乃止毛乃利可三万可利尓个留止幾与女留
きのとものりか身まかりにける時よめる
紀友則が身罷りにける時詠める

徒良由幾
つらゆき
紀貫之

原文 安寸之良奴和可三止於毛部止久礼奴万乃个不八比止己曽加奈之加利个礼
定家 あすしらぬわか身とおもへとくれぬまのけふは人こそかなしかりけれ
解釈 明日知らぬ我が身と思へど暮れぬ間の今日は人こそ悲しかりけれ

歌番号八三九
堂々見祢
たゝみね
壬生忠岑

原文 止幾之毛安礼安幾也者比止乃和可留部幾安留遠美留多尓己日之幾毛乃遠
定家 時しもあれ秋やは人のわかるへきあるを見るたにこひしきものを
解釈 時しもあれ秋やは人の別るべきあるを見るだに恋しきものを

歌番号八四〇
者々可於毛比尓天与女留
はゝかおもひにてよめる
母が想ひにて詠める

於保可宇知乃美川祢
凡河内みつね
凡河内躬恒

原文 加美奈川幾志久礼尓奴留々毛美知八々多々和比比止乃多毛止奈利个利
定家 神な月時雨にぬるゝもみちはゝたゝわひ人のたもとなりけり
解釈 神無月時雨に濡るるもみぢ葉はただ侘び人の袂なりけり

歌番号八四一
知々可於毛比尓天与女留
ちゝかおもひにてよめる
父が想ひにて詠める

多々見祢
たゝみね
壬生忠岑

原文 布知己呂毛者川累々以止者和比比止乃奈美多乃多万乃遠止曽奈利个留
定家 ふち衣はつるゝいとはわひ人の涙の玉のをとそなりける
解釈 藤衣はつるる糸は侘び人の涙の玉の緒とぞなりける

歌番号八四二
於毛比尓者部利个留止之乃安幾夜万天良部万可利个留美知尓天与女留
おもひに侍けるとしの秋山てらへまかりけるみちにてよめる
想ひに侍ける年の秋山寺へ参りける道にて詠める

徒良由幾
つらゆき
紀貫之

原文 安左川由乃於久天乃夜万多加利曽女尓宇幾与乃奈可遠於毛日奴留可奈
定家 あさ露のおくての山田かりそめにうき世中を思ひぬる哉
解釈 朝露のおくての山田かりそめに憂き世の中を思ひぬるかな

歌番号八四三
於毛比尓者部利个留比止遠止不良日尓万可利天与女留
おもひに侍ける人をとふらひにまかりてよめる
想ひに侍ける人を弔ひに参りて詠める

堂々三祢
たゝみね
壬生忠岑

原文 寸美曽女乃幾三可多毛止者久毛奈礼也多衣寸奈美多乃安免止乃美不留
定家 すみそめの君かたもとは雲なれやたえす涙の雨とのみふる
解釈 墨染の君が袂は雲なれや絶えず涙の雨とのみ降る

歌番号八四四
遠无奈乃於也乃於毛日尓天夜万天良尓者部利个留遠安留比止乃
女のおやのおもひにて山てらに侍けるをある人の
女の親の思ひにて山寺に侍けるをある人の

止不良比川可八世利个礼八可部之己止尓与女累
とふらひつかはせりけれは返事によめる
弔ひ遣はせりけれは返事に詠める

与美比止之良寸
よみ人しらす
詠む人知らず

原文 安之比幾乃夜万部尓以万八寸三曽女乃己呂毛乃曽天者飛留止幾毛奈之
定家 あしひきの山へに今はすみそめの衣の袖はひる時もなし
解釈 あしひきの山辺に今は墨染の衣の袖は干る時もなし

歌番号八四五
利与宇安无乃止之以个乃保止利乃者那遠美天与女留
諒闇の年池のほとりの花を見てよめる
諒闇の年池の辺の花を見て詠める

堂可武良乃安曽无
たかむらの朝臣
小野篁朝臣

原文 美川乃於毛尓志川久者那乃以呂左也可尓毛幾三可美可个乃於毛本由留可奈
定家 水のおもにしつく花の色さやかにも君かみかけのおもほゆる哉
解釈 水の面にしづく花の色さやかにも君がみ影の思ほゆるかな

歌番号八四六
布可久左乃美可止乃美己幾乃比与女留
深草のみかとの御国忌の日よめる
深草の帝の御国忌の日詠める

布无也乃也寸比天
文屋やすひて
文屋康秀

原文 久左布可幾可寸美乃多尓尓可計可久之天留日乃久礼之个不尓也八安良奴
定家 草ふかき霞の谷に影かくしてるひのくれしけふにやはあらぬ
解釈 草深き霞の谷に影隠し照る日の暮れし今日にやはあらぬ

歌番号八四七
布可久左乃美可止乃於保无止幾尓久良宇止可三尓天与留比留奈礼川可宇
ふかくさのみかとの御時に蔵人頭にてよるひるなれつかう
深草天皇の御時に蔵人頭にて夜昼なれ仕かう

万川利个留遠利与宇安无尓奈利尓个礼者佐良尓世尓毛末之良寸之天比衣乃
まつりけるを諒闇になりにけれはさらに世にもましらすしてひえの
まつりけるを諒闇になりにければさらに世にもまじらずして比叡の

夜万尓乃本利天加之良於呂之天个利曽乃万多乃止之美奈比止美布久奴幾天
山にのほりてかしらおろしてけりその又のとしみなひと御ふくぬきて
山に登りて頭を下ろしてけりそのまたの年皆人御服脱きて

安留者加宇不利多万者利奈止与呂己比个留遠幾々天与女留
あるはかうふりたまはりなとよろこひけるをきゝてよめる
あるはかうぶり賜りなと喜びけるを聞きて詠める

曽宇志也宇部无世宇
僧正偏昭
僧正偏昭

原文 美奈比止者者那乃己呂毛尓奈利奴奈利己計乃多毛止与加者幾多尓世与
定家 みな人は花の衣になりぬなりこけのたもとよかはきたにせよ
解釈 みな人は花の衣になりぬなり苔の袂よ乾きだにせよ

歌番号八四八
加者者良乃於保以末宇知幾三乃三万可利天乃安幾加乃以部乃
河原のおほいまうちきみの身まかりての秋かの家の
河原大臣の身罷りての秋かの家の

保止利遠万可利个留尓毛美知乃以呂末多布可久毛奈良左利个留遠
ほとりをまかりけるにもみちのいろまたふかくもならさりけるを
辺を参りけるに紅葉の色また深くもならざりけるを

美天与美天以礼多利个留
見てよみていれたりける
見て詠みていれたりける

己无為无美幾乃於保以末宇知幾三
近院右のおほいまうちきみ
近院右大臣

原文 宇知川个尓左比之久毛安留可毛美知八者奴之奈幾也止者以呂奈可利个利
定家 うちつけにさひしくもあるかもみちはもぬしなきやとは色なかりけり
解釈 うちつけに寂しくもあるかもみぢ葉も主なき宿は色なかりけり

歌番号八四九
布知八良乃堂可川祢乃安曽无乃三万可利天乃万多乃止之乃奈徒
藤原たかつねの朝臣の身まかりての又のとしの夏
藤原高経朝臣の身罷りてのまたの年の夏

保止々幾須乃奈幾个留遠幾々天与女留
ほとゝきすのなきけるをきゝてよめる
郭公の鳴きけるを聞きて詠める

徒良由幾
つらゆき
紀貫之

原文 保止々幾須計左奈久己恵尓於止呂計者幾三遠別之止幾尓曽安利个留
定家 郭公けさなくこゑにおとろけは君を別し時にそありける
解釈 郭公今朝鳴く声におどろけば君を別れし時にぞありける

歌番号八五〇
佐久良遠宇部天安利个留尓也宇也久者那左幾奴部幾止幾尓加乃雨部个留比止
さくらをうへてありけるにやうやく花さきぬへき時にかのうへける人
桜を植えてありけるにやうやく花咲きぬべき時にかの植へける人

三万可利尓个礼八曽乃者那遠美天与女留
身まかりにけれはその花を見てよめる
身罷りにければその花を見て詠める

幾乃毛知由幾
きのもちゆき
紀茂行

原文 者那与利毛比止己曽安多尓奈利尓个礼以川礼遠左幾尓己比武止可美之
定家 花よりも人こそあたになりにけれいつれをさきにこひむとか見し
解釈 花よりも人こそあだになりにけれいづれを先に恋ひむとか見し

歌番号八五一
安留之三万可利尓个留比止乃以部乃武女乃者那遠美天与女累
あるし身まかりにける人の家の梅花を見てよめる
主人身罷りにける人の家の梅の花を見て詠める

徒良由幾
つらゆき
紀貫之

原文 以呂毛加毛武可之乃己左尓々保部止毛宇部个武比止乃可計曽己日之幾
定家 色もかも昔のこさにゝほへともうへけむ人の影そこひしき
解釈 色も香も昔の濃さに匂へども植ゑけむ人の影ぞ恋しき

歌番号八五二
加者者良乃左乃於保以末宇知幾三乃三万可利天乃々知加乃以部尓万可利天
河原の左のおほいまうちきみの身まかりてのゝちかの家にまかりて
河原左大臣の身罷りての後かの家に参りて

安利个留尓志本可万止以不止己呂乃左末遠徒久礼利个留遠美天与女留
ありけるにしほかもといふ所のさまをつくれりけるを見てよめる
在りけるに塩釜といふ所の様を作れりけるを見て詠める

原文 幾三万左天个不利多衣尓之々保可万乃宇良左日之久毛美衣和多留可奈
定家 君まさて煙たえにしゝほかまの浦さひしくも見え渡かな
解釈 君まさで煙絶えにし塩釜の浦寂しくも見えわたるかな

歌番号八五三
布知八良乃乃止之毛止乃安曽无乃宇己无乃知由宇之世宇尓天寸三者
藤原のとしもとの朝臣の右近中将にてすみ
藤原利基朝臣の右近中将にてすみ

部利个留佐宇之乃三万可利天乃知比止毛寸万寸奈利尓个留遠
侍けるさうしの身まかりてのち人もすますなりにけるを
侍ける曹司の身罷りて後人も住ますなりにけるを

安幾乃与不个天毛乃与利末宇天幾个累徒以天尓美以礼个礼者
秋の夜ふけてものよりまうてきけるついてに見いれけれは
秋の夜更けてものより参う来けるついでに見いれければ

毛止安利之世无左以毛以止之个久安礼多利个留遠美天
もとありしせんさいもいとしけくあれたりけるを見て
元ありし前栽もいと茂げ荒れたるを見て

者也久曽己尓者部利个礼者武可之遠於毛也利天与美个留
はやくそこに侍けれはむかしを思やりてよみける
はやくそこに侍けれは昔を思やりて詠みける

美八留乃安利寸計
みはるのありすけ
御春有輔

原文 幾美可宇部之比止武良寸々幾武之乃祢乃志个幾乃部止毛奈利尓个留可奈
定家 きみかうへしひとむらすゝき虫のねのしけきのへともなりにける哉
解釈 君が植ゑし一群薄虫の音のしげき野辺ともなりにけるかな

歌番号八五四
己礼多可乃美己乃知々乃者部利个武止幾尓与女利个武宇多止毛止己比个礼者
これたかのみこのちゝの侍りけむ時によめりけむうたともとこひけれは
惟喬親王の父侍りけむ時に詠めりけむ哥どもと乞ひければ

加幾天遠久利个留於久尓与美天可个利个留
かきてをくりけるおくによみてかけりける
書き贈りける奥に詠みて書けりける

止毛乃利
とものり
紀友則

原文 己止奈良八己止乃波左部毛幾衣奈々武美礼者奈美多乃多幾万佐利个利
定家 ことならは事のはさへもきえなゝむ見れは涙のたきまさりけり
解釈 ことならば言の葉さへも消えななむ見れば涙のたぎまさりけり

歌番号八五五
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 奈幾比止乃也止尓加与者々保止々幾須加計天祢尓乃美奈久止川个奈武
定家 なき人のやとにかよはゝ郭公かけてねにのみなくとつけなむ
解釈 なき人の宿に通はば郭公かけて音にのみ鳴くと告げなん

歌番号八五六
原文 多礼美与止者那左个留良武之良久毛乃多川乃止者也久奈利尓之毛乃遠
定家 誰見よと花さける覧白雲のたつのとはやくなりにし物を
解釈 誰れ見よと花咲けるらん白雲の立つ野と早くなりにしものを

歌番号八五七
乃利乃川加佐乃加美乃美己加武為无乃以川乃美己尓寸見和多利个留遠
式部卿のみこ閑院の五のみこにすみわたりけるを
式部卿の親王閑院の五の内親王に住み渡りけるを

以久者久毛安良天遠无奈美己乃三万可利尓个留止幾尓加乃美己寸見个留
いくはくもあらて女みこの身まかりにける時にかのみこすみける
いくばくもあらで女親王の身罷りにける時にかの親王住みける

知与宇乃可多比良乃飛毛尓布三遠由比川計多利个留遠止利天美礼者
帳のかたひらのひもにふみをゆひつけたりけるをとりて見れは
帳の帷子の紐に文を結い付けたりけるを取りて見れば

武可之乃天尓天己乃宇多遠奈武加幾川个多利个留
むかしのてにてこのうたをなむかきつけたりける
昔の手にてこの哥をなむ書き付けたりける

原文 加寸/\尓和礼遠和寸礼奴毛乃奈良八夜万乃可寸美遠安八礼止者美与
定家 かす/\に我をわすれぬ物ならは山の霞をあはれとは見よ
解釈 かずかずに我を忘れぬものならば山の霞をあはれとは見よ

歌番号八五八
於止己乃比止乃久尓々万可礼利个留万尓遠无奈尓者可尓也万日遠之天
おとこの人のくにゝまかれりけるまに女にはかにやまひをして
男の人の国に任かれりける間に女にはかに病をして

以止与者久奈利尓个留止幾与三遠幾天三万可利尓个留
いとよはくなりにける時よみをきて身まかりにける
いと弱くなりにける時よみをきて身罷りにける

与美比止之良寸
よみ人しらす
詠む人知らず

原文 己恵遠多尓幾可天和可留々太万与利毛奈幾止己尓祢武幾三曽可奈之幾
定家 こゑをたにきかてわかるゝたまよりもなきとこにねむ君そかなしき
解釈 声をだに聞かで別るる魂よりもなき床に寝む君ぞ悲しき

歌番号八五九
也末比尓和川良日者部利个留安幾己々知乃多乃毛之計奈久於保衣个礼盤
やまひにわつらひ侍ける秋心地のたのもしけなくおほえけれは
病に患ひ侍ける秋心地のたのもしけなくおほえけれは

与美天比止乃毛止尓川可八之个留
よみて人のもとにつかはしける
詠みて人の許に遣はしける

於保衣乃知左止
大江千里
大江千里

原文 毛美知者遠可世尓万可世天美留与利毛者可奈幾毛乃八伊乃知奈利个利
定家 もみちはを風にまかせて見るよりもはかなき物はいのちなりけり
解釈 もみぢ葉を風にまかせて見るよりもはかなき物は命なりけり

歌番号八六〇
三万可利奈武止天与女留
身まかりなむとてよめる
身罷りなむとて詠める

布知八良乃己礼毛止
藤原これもと
藤原惟幹

原文 徒由遠奈止安多奈留毛乃止於毛日不个武和可三毛久左尓遠可奴者可利遠
定家 つゆをなとあたなる物と思けむわか身も草にをかぬ許を
解釈 露をなどあだなる物と思ひけむ我が身も草に置かぬばかりを

歌番号八六一
也末日之天与者久奈利尓个留止幾与女留
やまひしてよはくなりにける時よめる
病して弱くなりにける時詠める

奈利比良乃安曽无
なりひらの朝臣
在原業平

原文 徒為尓由久美知止者可祢天幾々之可止幾乃不个不止八於毛者左利之遠
定家 つゐにゆくみちとはかねてきゝしかときのふけふとはおもはさりしを
解釈 つひに行く道とはかねて聞きしかど昨日今日とは思はざりしを

歌番号八六二
加飛乃久尓々安比之利天者部利个留比止止不良者武止天万可利个留遠
かひのくにゝあひしりて侍ける人とふらはむとてまかりけるを
甲斐の国に相知りて侍ける人訪ふらはむとて参かりけるを

美知奈可尓天尓者可尓也万日遠之天以末/\止奈利尓个礼八与美天
みち中にてにはかにやまひをしていま/\となりにけれはよみて
道中にてにはかに病をして今々となりにけれは詠みて

美也己尓毛天万可利天者々尓美世与止以比天
京にもてまかりて母に見せよといひて
京に持て参かりて母に見せよと云ひて

比止尓川計者部利个留宇多
人につけ侍けるうた
人につけ侍ける哥

安利八良乃之計者累
在原しけはる
在原滋春

原文 加利曽免乃由幾可比知止曽於毛日己之以万八加幾利乃加止天奈利个利
定家 かりそめのゆきかひちとそ思こし今はかきりのかとてなりけり
解釈 かりそめの行きかひ路とぞ思ひ来し今は限りの門出なりけり
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