竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌1323から集歌1327まで

2020年12月31日 | 新訓 万葉集
集歌一三二三 
原文 海之底 奥津白玉 縁乎無三 常如此耳也 戀度味試
訓読 海(わた)し底(そこ)沖つ白玉よしをなみ常かくのみや恋ひわたりなむ
私訳 海の底深く隠れている白玉よ。それを採る方法がなくて、いつもこのように恋い焦がれる思いだけが続いていく。

集歌一三二四 
原文 葦根之 懃念而 結義之 玉緒云者 人将解八方
試訓 葦(あし)し根しねもころ念(も)ひて結(ゆ)ひ期しし玉し緒と云はば人解(と)かめやも
試訳 葦の根のように心を尽くして恋い慕って結び誓った玉の紐の緒ですと云ったなら、他の人があえてその紐を解くでしょうか。
注意 原文の「結義之」の「義之」は、標準解釈では王羲之を意味し、書の師から「手師」として「てし」と訓じます。この「結義之」と集歌一三二一の歌の「結大王」とを類似の表記と見なします。また、王羲之・王献之の親子関係から綽名として大王・小王と称します。ただし、ここでは原文のままに訓じています。

集歌一三二五 
原文 白玉乎 手者不纒尓 匣耳 置有之人曽 玉令泳流
訓読 白玉を手には纏(ま)かずに匣(はこ)のみに置(お)けりし人ぞ玉泳(およ)がする
私訳 白玉を肌身である己が手に巻かずに、大切なものとして箱の中にしまって置いた人こそは、その玉を水の流れに漂わせてしまう。

集歌一三二六 
原文 照左豆我 手尓纒古須 玉毛欲得 其緒者替而 吾玉尓将為
訓読 照左豆(てりさづ)が手に纏(ま)き古(ふる)す玉もがもその緒は替(か)へて吾が玉にせむ
私訳 照左豆が手に巻いて古くなった玉であってもその玉が欲しい。その紐の緒を替えて私の玉にしたい。

集歌一三二七 
原文 秋風者 継而莫吹 海底 奥在玉乎 手纒左右二
訓読 秋風は継ぎてな吹きそ海(わた)し底(そこ)奥(おき)なる玉を手し纏(ま)くさへに
私訳 秋風は次々と吹き続くな、せめて海の底の奥深くにある玉を採って手に巻くだけまでは。

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万葉集 集歌1318から集歌1322まで

2020年12月30日 | 新訓 万葉集
集歌一三一八 
原文 底清 沈有玉乎 欲見 千遍曽告之 潜為白水郎
訓読 底(そこ)清(きよ)し沈(しづ)ける玉を見まく欲(ほ)り千遍(ちたび)ぞ告(の)りし潜(かづ)きする白水郎(あま)
私訳 海の底が清らかで底深く沈んでいる玉を見つけてみたいと、千遍も願って海に潜る海人よ。

集歌一三一九 
原文 大海之 水底照之 石著玉 齊而将採 風莫吹行年
訓読 大海(おほうみ)し水底(みなそこ)照らし沈(しづ)く玉(たま)斎(いは)ひて採(と)らむ風な吹きそね
私訳 大海の水底を照り輝かせて海底深くに沈んでいる玉を、神に願って取ろうと思う。風よ吹かないでくれ。

集歌一三二〇 
原文 水底尓 沈白玉 誰故 心盡而 吾不念尓
訓読 水底(みなそこ)に沈(しづ)く白玉誰が故(ゆゑ)し心尽して吾が念(おも)はなくに
私訳 水底に沈む白玉よ、誰のためでしょう、これほど心を尽くして私が恋い慕うことはありません。

集歌一三二一 
原文 世間 常如是耳加 結大王 白玉之緒 絶樂思者
試訓 世間(よのなか)し常かくのみか結(ゆ)ひし大王(きみ)白玉し緒し絶(た)ゆらく思へば
試訳 世の中とはこんなものでしょうか。私と契りを結ばれた貴方様。その言葉のひびきではありませんが、結んだ白玉の紐の緒が切れるように、貴方様との縁も絶えてしまうと思うと。
注意 原文の「結大王」の「大王」は王羲之からの洒落として「てし」と訓じますが、ここでは律令天皇制の時代背景から「大王」は戯訓対象には成らないとして、原文を尊重して訓じています。

集歌一三二二 
原文 伊勢海之 白水郎之嶋津我 鰒玉 取而後毛可 戀之将繁
訓読 伊勢(いせ)海(うみ)し白水郎(あま)し島津(しまつ)が鰒(あはび)玉(たま)採りに後(のち)もか恋し繁けむ
私訳 伊勢の海の海人のいる島の入り江のアワビの中の玉よ。それを採った後にも、恋する心は一層増すでしょう。

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万葉集 集歌1313から集歌1317まで

2020年12月29日 | 新訓 万葉集
集歌一三一三 
原文 紅之 深染之衣 下著而 上取著者 事将成鴨
訓読 紅(くれなゐ)し深(こ)染(そめ)し衣(ころも)下し着て上し取り着ば事(こと)なさむかも
私訳 貴女の紅に深く染めた衣を下着に着て、それを改めて恋人として人目に付くようにと上着として着たら、貴女は結婚してくれるでしょうか。

集歌一三一四 
原文 橡 解濯衣之 恠 殊欲服 此暮可聞
訓読 橡(つるばみ)し解(と)き濯(あら)ひ衣(きぬ)しあやしくも殊(こと)し着(き)欲(ほ)しきこの暮(ゆふへ)かも
私訳 橡染めの服を解いて洗って、そして縫い直した衣を、不思議なことに無性に着てみたいと思う、この夕暮れです。

集歌一三一五 
原文 橘之 嶋尓之居者 河遠 不曝縫之 吾下衣
訓読 橘(たちばな)し島にし居(を)れば川(かは)遠(とほ)み曝(さら)さず縫(ぬ)ひし吾が下衣(したころも)
私訳 布を裁ったまま、その言葉のひびきのような橘の茂る島に居るので、川が遠くて水に曝すことなく縫った私の下衣です。

寄絲
標訓 絲に寄せる
集歌一三一六 
原文 河内女之 手染之絲乎 絡反 片絲尓雖有 将絶跡念也
訓読 河内(かふち)女(め)し手(て)染(そ)めし糸を絡(く)り反(かへ)し片糸(かたいと)にあれど絶えむと念(おも)へや
私訳 河内の女の手染めの糸を何度も枠に掛けて撚り操り返した一片の糸ですが、それが切れると思いますか。

寄玉
標訓 玉に寄せる
集歌一三一七 
原文 海底 沈白玉 風吹而 海者雖荒 不取者不止
訓読 海(わた)し底(そこ)沈(しづ)く白玉風吹きて海(うみ)は荒るとも取らずはやまじ
私訳 海の底深くに沈む白玉を、風が吹いて海が荒れるとしても、それを取ることは止めません。
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万葉集 集歌1308から集歌1312まで

2020年12月28日 | 新訓 万葉集
寄海
標訓 海に寄せたる
集歌一三〇八 
原文 大海 候水門 事有 従何方君 吾率凌
訓読 大海(おほうみ)しさもらふ水門(みなと)事あらば何方(いくへ)ゆ君し吾を率(ひき)凌(の)がむ
私訳 大海を航行する船の湊で、事件が起きたらどこへ貴方は私を連れて逃れるのでしょうか。

集歌一三〇九 
原文 風吹 海荒 明日言 應久 公随
訓読 風吹きし海し荒りし明日と言ふ久しかるべし君しまにまに
私訳 風が吹いて海が荒れて、明日逢いましょうと貴方は云う。それは待ち通しいことです。でも、貴方の御気に召すままに。

集歌一三一〇 
原文 雲隠 小嶋神之 恐者 目間 心間哉
訓読 雲隠る小島し神しかしこけば目こそは隔(へだ)て心隔てや
私訳 雲間に隠れる吉備の小島の神が恐れ多いので逢うことは出来ないが、貴女への恋心は離れてはいません。
左注 右十五首、柿本朝臣人麿之歌集出
注訓 右の十五首は、柿本朝臣人麿の歌集に出づ。

寄衣
標訓 衣に寄せる
集歌一三一一 
原文 橡 衣人者 事無跡 曰師時従 欲服所念
訓読 橡(つるばみ)し衣(ころも)し人は事(こと)無しと云ひし時より着(き)欲(ほ)しく念(おも)ほゆ
私訳 「橡染めの衣を着た人は、事件を起こすような不誠実な人ではない」と貴女が語ったときから、その橡染めの衣を着たく思いました。

集歌一三一二 
原文 凡尓 吾之念者 下服而 穢尓師衣乎 取而将著八方
訓読 凡(おほ)ろかに吾し念(おも)はば下し着て穢(な)れにし衣(きぬ)を取りて着めやも
私訳 いい加減に私が貴女を慕っているのでしたら、服の下に着てくたびれてしまった貴女との思い出の衣を、このように取り出して着ているでしょうか。

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万葉集 集歌1303から集歌1307まで

2020年12月25日 | 新訓 万葉集
集歌一三〇三 
原文 潜為 海子雖告 海神 心不得 所見不云
訓読 潜(かづき)する海人(あま)し告るとも海神(わたつみ)し心し得じし見ゆといはなくに
私訳 潜水して玉を採ろうとする海人は宣言しますが、海神の許しを得ないと逢ったと宣言することは出来ません。

寄木
標訓 木に寄せたる
集歌一三〇四 
原文 天雲 棚引山 隠在 吾忘 木葉知
訓読 天雲し棚引く山し隠りたる吾し忘れし木し葉知るらむ
私訳 天雲が棚引いている山のように、姿を隠し籠って、忘れられてしまった私。その山の木の葉のことを知っていますか。
注意 原文の「吾忘」は、標準解釈では「吾下心」と校訂して「わが下こころ」と訓じます。ここでは原文のままに訓じています。

集歌一三〇五 
原文 雖見不飽 人國山 木葉 己心 名着念
訓読 見れど飽ず人国山し木し葉し己(おの)が心し懐しみ思ふ
私訳 見つめても見飽きぬ人、その言葉のひびきのような、人国山の木の葉。その木の葉だけが、私は心の底から心惹かれて恋い焦がれます。

寄花
標訓 花に寄せたる
集歌一三〇六 
原文 是山 黄葉下 花牟我 小端見 反戀
訓読 この山し黄葉(もみぢは)下(した)し花を我はつはつに見てなほ恋ひにけり
私訳 この山の黄葉の木の下に咲く花を、私はちらりと見て、反って恋しくなりました。

寄川
標訓 川に寄せたる
集歌一三〇七 
原文 従此川 船可行 雖在 渡瀬別 守人有
訓読 この川ゆ船し行くべくあり云へど渡り瀬ごとに守(まも)る人あり
私訳 この川から船で行くことが出来ると云いますが、船で渡る瀬毎にその瀬を管理する人がいますね。貴女。

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