歌番号 298 拾遺抄記載
詞書 かかみいさせ侍りけるうらに、つるのかたをいつけさせ侍りて
詠人 伊勢
原文 千止世止毛 奈尓可以乃良无 宇良尓寸武 太川乃宇部遠曽 美留部加利个留
和歌 ちとせとも なにかいのらむ うらにすむ たつのうへをそ みるへかりける
読下 千とせともなにかいのらんうらにすむたつのうへをそ見るへかりける
解釈 最初からの千歳の寿命としても、何かに祈りましょうか、鏡の裏に鋳た、浦に住む鶴の姿にあやかって、千歳の鶴に千歳の命を見るべきなのでしょう。
歌番号 299 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 幾美可世者 安満乃者己呂毛 万礼尓幾天 奈徒止毛徒幾奴 以者本奈良奈无
和歌 きみかよは あまのはころも まれにきて なつともつきぬ いはほならなむ
読下 きみか世はあまのは衣まれにきて撫づともつきぬ巌ならなん
解釈 君の世の長さ(寿命)は、天の羽衣も天女が稀に降り来て、優しく撫でるともすり減り尽きることが無い、巌のようであります。
歌番号 300
詞書 賀の屏風に
詠人 もとすけ
原文 宇己幾奈幾 以者本乃者天毛 幾美曽美武 遠止女乃曽天乃 奈天徒久寸万天
和歌 うこきなき いはほのはても きみそみむ をとめのそての なてつくすまて
読下 うこきなきいはほのはてもきみそ見むをとめのそてのなてつくすまて
解釈 動くことの無い巌が消え果てるまでも、君だけは見るでしょう、羽衣の天女の乙女がその巌を撫で尽くす様を。