竹取翁と万葉集のお勉強

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新撰萬葉集(新撰万葉集)原文 和歌及び漢詩 上

2013年11月23日 | 資料書庫
新撰萬葉集 上

 以下に『新撰萬葉集』を載せます。紹介する目的は『万葉集』を鑑賞する折に参照資料とするもので、この『新撰萬葉集』を鑑賞するというものではありません。そのため、序漢文には訓読み、万葉仮名和歌には読み下しを付けますが、漢詩には訓読みはありません。また、現代語訳はありません。

 この資料を読文する上での注意事項を最初に紹介します。
 初めに、ここで使用する『新撰萬葉集』の序文及び万葉仮名和歌と漢詩は、HP「久遠之絆」に載るものを底本し、適宜、台湾繁字体漢字を日本字体漢字としています。また、そのHP「久遠之絆」の注釈によると『新撰萬葉集』を掲載するに使用した底本は次のもので、それからの校合と紹介されています。
 『新撰万葉集』京大図書館藏
 『新撰万葉集』谷本藏
 『新撰萬葉集注釋』和泉書店
 『新撰萬葉集諸本與研究』和泉書店
 この掲載に於いて、HP「久遠之絆」のものを基本データとして、改めて、『新撰万葉集 校本篇』(浅見徹・木下正俊)を使い、点検・校合を行っています。そのため、付けられた歌番号が歌番179以降についてはHP「久遠之絆」のものとは一致していません。さらに、序漢文においても文中の句切れや句読点などは解釈により、改めて私見で行っています。このため、HP「久遠之絆」のものとは相違しています。さらに、万葉仮名和歌の読み下しはHP「久遠之絆」のものではなく、寛永七年版本を底本とする『新撰万葉集 校本篇』(浅見徹・木下正俊)を使用しています。従いまして、和歌とその読み下しにおいて相違が生じている可能性があります。
 また、和歌と漢詩とを一対一首として歌番号を振っています。その歌番号179の和歌については底本と異伝本では相違をしていますが、対となる漢詩は一詩しかありません。そのため、漢詩との対を尊重して、底本を正とし、異伝本は紛れの挿入と考えます。ここにHP「久遠之絆」や『新撰万葉集 校本篇』との歌番号の相違が生じます。
 次に、序漢文の訓読については正規の教育と訓練を受けていない者が行った私的なものです。従いまして、正統な指摘・指導を受けたものではなく、紹介するものの正誤は不明です。序漢文への訓読は「読み物」のレベルでの使用を推薦いたします。引用等を行う場合は、引用者による十二分な検討が必要です。
 その序文訓読での注意事項として、文中「偷」の文字は字義からの解釈が難しく、「愈」の通字と解釈しています。そのため、訓読での解釈が違う可能性があります。さらに「新撰萬葉集序」において「聞説」の言葉が掛かる位置を「古者」から「唯�込非凡眼之所可及」までと考えています。一般の解釈では「古者」から「觸聆而感自生」までとしますので、本文解釈の根本が違っていることを了解願います。当然、本文解釈の根本的相違から『萬葉集』を撰集した時代が変わります。ここでの解釈は平城天皇です。

 『新撰萬葉集』への解説として、序文から推定しますと、宇多天皇の寛平年間初頭、菅原道真一門によってこの『新撰万葉集』が編まれ、寛平五年九月二十五日に成立しています。この時の『新撰萬葉集』の姿は、漢文による序文、「寛平御時后宮歌合」の和歌を使用して奈良時代の万葉和歌表記に翻訳したものとその和歌が詠う世界を漢詩で表したものを対とする上下二巻の歌集となっています。この上下二巻では「寛平御時后宮歌合」での「左」の歌を上巻に、「右」の歌を下巻に納め、左右上下の対称軸を形成しています。この『新撰萬葉集』の編纂では、菅原道真は数首の万葉和歌への翻訳とその漢詩を寄せただけと序文では記していますから、彼は門弟の行う歌集編纂の理解者の立場であって、編纂者ではありません。
 その後、延喜十三年八月廿一日になって上下二巻左右上下の対称軸の姿を、より鮮明にする意図なのか、下巻に序文が追記されています。ただし、下巻序文に「前人」という言葉を使いますから、寛平五年の序の作者と延喜十三年の下巻序の作者とは別人であることが判ります。
 ここで、この『新撰萬葉集』の本編構成で、上巻には春歌廿一首、夏歌廿一首、秋歌卅六首、冬歌廿一首、戀歌廿首を載せ、下巻には春歌廿一首、夏歌廿二首、秋歌卅六首、冬歌廿二首、戀歌卅一首を載せています。異伝本ではさらに下巻に女郎花歌廿五首を載せた姿となっています。
 さて、最初に付けられた「序文」では、「仍左右上下両軸、惣二百有首」と述べていますが、現在の『新撰萬葉集』ではそれに反し上下巻の構成は紹介しましたように対称を為していません。また、歌数も上巻が一一九首、下巻が一三二首(女郎花歌を含めると一五七首)であり、対称とは云えないものです。さらに部立に於いても「序文」では「四時之歌」に「戀思之二詠」を加えたものとしていますが、現在に伝わる『新撰萬葉集』はそのような姿ではありません。
 推定で、寛平五年に成った「原新撰萬葉集」は春夏秋冬の四季の歌に戀歌と述思歌とを加えた六部の部立が為された上下巻であったと考えられます。その後、「原新撰萬葉集」を入手したある人物が、延喜十三年になってその人物の感性で現在に伝わる『新撰萬葉集』の再編纂を行ったものと想像されます。個人の感想ですが、延喜十三年に再編纂を行った人物の技量は、相当程度、「原新撰萬葉集」を編纂した人物に比べると落ちると思われます。従いまして、『新撰萬葉集』の歌を研究される場合、一度、「原新撰萬葉集」の六部立、上下巻二百有首の姿を探り、その後に削除・追加されたものとの相違を認識するのが良いと考えます。特に漢詩研究を行う場合、平五年と延喜十三年とでは漢詩作歌能力が相当に違うと想像されますので、同一に扱うことは危険ではないでしょうか。
 以上、『万葉集』は数次に渡る編纂過程を経て現在の『廿巻本万葉集』が成立していますが、この『新撰萬葉集』もまた数次に渡る編纂を経て成立したものですあることに注意をお願いします。これは従来の解説とは大きく違います。


新撰萬葉集



夫萬葉集者、古歌之流也。非未嘗稱警策之名焉、況復不屑鄭衛之音乎。
聞説、古者、飛文染翰之士、興詠吟嘯之客、青春之時、玄冬之節、隨見而興既作、觸聆而感自生。凡、厥所草稿、不知幾千。漸尋筆墨之跡、文句錯亂、非詩非賦、字對雜揉、雖入難悟。所謂仰彌高、鑽彌堅者乎。然而、有意者進、無智者退而已。於是奉綸、�囹�紵綜緝之外、更在人口、盡以撰集、成數十卷。裝其要妙、�艾匱待價。唯、�込非凡眼之所可及。
當今寛平聖主、萬機餘暇、舉宮而方、有事合歌。後進之詞人、近習之才子、各獻四時之歌、初成九重之宴。又有餘興、同加戀思之二詠。倩見歌體、雖誠見古知今、而以今比古。新作花也、舊製實也。以花比實、今人情彩剪錦、多述可憐之句、古人心緒織素、少綴不整之艷。仍左右上下両軸、惣二百有首、號曰、新撰萬葉集。先生、非啻賞倭歌之佳麗、兼亦綴一絶之詩、插數首之左。
庶幾使、家家好事、常有梁塵之動、處處遊客、鎮作行雲之遏。
于時寛平五載秋九月廿五日、偷盡前視之美、而解後世之願云爾。

<訓読>
夫れ萬葉集は、古歌の流なり。未だ嘗って警策(けいさく)の名を稱えざるにあらざり、況(いはん)や復、鄭衛(ていえい)の音を屑(いさぎよ)しとせず。
説を聞くに、「古には、飛文染翰の士、興詠吟嘯の客、青春の時、玄冬の節、見るに隨(したが)ひて既に作を興し、聆(き)くを觸れるに感は自(おのづ)から生まれる。凡そ、厥(そ)の草稿は、幾千を知らず。漸(やくや)く筆墨の跡を尋ねるに、文句錯亂、詩に非ず賦に非ず、字對は雜揉し、雖(ただ)、入るに悟り難き。所謂、彌高(いやたか)を仰ぎ、鑽(きわめ)るに彌(いやいや)堅き者か。然而(しかるに)、意有る者は進み、智無き者は退き已(や)む。是に於いて綸を奉じ、�囹�紵(ふつさく)綜緝(そうしゅう)の外、更に人の口に在るを、盡(ことごと)く以つて撰集し、數十卷と成す。其の要妙(ようみょう)を裝ひ、匱(ひつ)に�艾(おさ)め價を待たん。唯、凡眼の及ぶべき所に非ずを�込(とがめ)む」と。
當今(とうきん)の寛平聖主、萬機(まんき)餘暇(よか)、宮の方を舉げ、事有るに歌を合す。後進の詞人、近習の才子、各(おのおの)、四時の歌を獻じ、初めて九重の宴を成す。又、餘興の有りて、同(ひと)しく戀と思の二詠を加ふ。倩(つらつら)、歌體(かたい)を見るに、雖(ただ)、誠(まこと)は古(いにしへ)に見み、今に知る。而して今を以ちて古(いにしへ)に比(なぞ)ふ。新(あらた)は花を作り、舊(ふるき)は實(み)を製(な)す。花を以ちて實に比ふ。今の人は情(こころ)を彩(いろ)り錦を剪(き)り、可憐の句を多述し、古(いにしへ)の人は心緒(こころを)を素(すなお)に織り、不整の艷を少綴す。仍ち、左右上下の両軸、惣ち二百有首、號して曰はく「新撰萬葉集」と。先生、啻(ただ)、倭歌の佳麗を賞(めで)るのみにあらず、兼ねて亦(また)一絶の詩を綴り、數首を左に插(はさ)む。
庶幾(しょき)家家の好事を使(もち)ひ、常に梁塵の動有りて、處處の遊客、行雲の遏を作し鎮(とど)めむ。
于時(とき)、寛平五載秋九月廿五日、愈(いよいよ)、前視の美を盡(つく)し、而して後世の願ひを解くと、云爾(しかいふ)。


春歌廿一首
歌番1 伊勢
和歌 水之上 丹文織紊 春之雨哉 山之緒 那倍手染濫
読下 みつのうへに あやおりみたる はるのあめや やまのみとりを なへてそむらむ
漢詩 春来天氣有何力 細雨濛濛水面穀 忽忘遲遲暖日中 山河物色染深

歌番2 素性法師
和歌 散砥見手 可有物緒 梅之花 別樣匂之 袖丹駐禮留
読下 ちるとみて あるへきものを うめのはな うたてにほひの そてにとまれる
漢詩 春風觸處物皆樂 上苑梅花開也落 淑女偷攀堪作簪 殘香勾袖拂難卻

歌番3 佚名
和歌 淺 野邊之霞者 裹鞆 己保禮手匂布 花櫻鉋
読下 あさみとり のへのかすみは つつめとも こほれてにほふ はなさくらかな
漢詩 色淺深野外盈 雲霞片片錦帷成 殘嵐輕簸千匂散 自此櫻花傷客情

歌番4 素性法師
和歌 花之樹者 今者不堀殖 立春者 移徙色丹 人習藝里
読下 はなのきは いまはほりうゑし はるたては うつろふいろに ひとならひけり
漢詩 花樹栽来幾適情 立春遊客愛林亭 西施潘岳情千萬 雨意如花尚似輕

歌番5 佚名
和歌 春霞 網丹張牢 花散者 可移徙 鶯將駐
読下 はるかすみ あみにはりこめ はなちらは うつろひぬへき うくひすとよめ
漢詩 春嶺霞低�墸幕張 百花零處似燒香 艷陽氣若有留術 無惜鶯聲與暮芳

歌番6 紀友則
和歌 花之香緒 風之便丹 交倍手曾 鶯倡 指南庭遣
読下 はなのかを かせのたよりに ましへてそ うくひすさそふ しるへにはやる
漢詩 頻遣花香遠近賒 家家處處匣中加 黄鶯出谷無媒介 唯可梅風為指車

歌番7 佚名
和歌 駒那倍手 目裳春之野丹 交南 若菜摘久留 人裳有哉砥
読下 こまなへて めもはるののに ましりなむ わかなつみくる ひともありやと
漢詩 綿綿曠野策驢行 目見山花耳聽鶯 駒犢累累趁苜蓿 春孃採蕨又盈�苦

歌番8 佚名
和歌 吹風哉 春立来沼砥 告貫牟 枝丹牢禮留 花拆丹藝里
読下 ふくかせや はるたちきぬと つけつらむ えたにこもれる はなさきにけり
漢詩 寒灰警節早春来 梅柳初萌自欲開 上苑百花今已富 風光處處此傷哉

歌番9 佚名
和歌 真木牟具之 日原之霞 立還 見鞆花丹 被驚筒
読下 まきもくの ひはらのかすみ たちかへり みれともはなに おとろかれつつ
漢詩 倩見天隅千片霞 宛如萬朵滿園奢 遊人記取圖屏障 想像桃源両岸斜

歌番10 在原棟梁
和歌 春立砥 花裳不匂 山里者 懶輕聲丹 鶯哉鳴
読下 はるたてと はなもにほはぬ やまさとは ものうかるねに うくひすやなく
漢詩 �固埆幽亭豈識春 不�徊絶域又無匂 花貧樹少鶯慵囀 本自山人意未申

歌番11 佚名
和歌 梅之香緒 袖丹寫手 駐手者 春者過鞆 片身砥將思
読下 うめのかを そてにうつして ととめては はるはすくとも かたみとおもはむ
漢詩 無限遊人愛早梅 花花樹樹傍籬栽 自攀自翫堪移袂 惜矣三春不再来

歌番12 佚名
和歌 鶯者 郁子牟鳴濫 花櫻 拆砥見芝間丹 且散丹藝里
読下 うくひすは うへもなくらむ はなさくら さくとみしはに かつちりにけり
漢詩 誰道春天日此長 櫻花早綻不留香 高低鶯囀林頭聒 恨使良辰獨有量

歌番13 藤原興風
和歌 春霞 色之千種丹 見鶴者 棚曳山之 花之景鴨
読下 はるかすみ いろのちくさに みえつるは たなひくやまの はなのかけかも
漢詩 霞光片片錦千里 未辨名花五彩斑 遊客迴眸猶誤道 應斯丹穴聚�譚鸞

歌番14 佚名
和歌 春霞 起手雲路丹 鳴還 雁之酬砥 花之散鴨
読下 はるかすみ たちてくもちに なきかへる かりのたむけと はなのちるかも
漢詩 霞天歸雁翼遙遙 雲路成行文字昭 若汝花時知去意 三秋係札早應朝

歌番15 在原元方
和歌 霞立 春之山邊者 遠藝禮砥 吹来風者 花之香曾為
読下 かすみたつ はるのやまへは とほけれと ふきくるかせは はなのかそする
漢詩 花花數種一時開 芬馥從風遠近来 嶺上花繁霞泛灩 可憐百感毎春催

歌番16 佚名
和歌 霞起 春之山邊丹 開花緒 不飽散砥哉 鶯之鳴
読下 かすみたつ はるのやまへに さくはなを あかすちるとや うくひすのなく
漢詩 霞彩班班五色鮮 山桃灼灼自然燃 鶯聲緩急驚人聽 應是年光趁易遷

歌番17 佚名
和歌 鶯之 破手羽裹 櫻花 思隈無 早裳散鉋
読下 うくひすの われてはくくむ さくらはな おもひくまなく とくもちるかな
漢詩 紅櫻本自作鶯栖 高�嫋華終日啼 獨向風前傷幾許 芬芳零處徑應迷

歌番18 佚名
和歌 乍春 年者暮南 散花緒 將惜砥哉許許良 鶯之鳴
読下 はるなから としはくれなむ ちるはなを をしむとやここら うくひすのなく
漢詩 縱使三春良久留 雖希風景此誰憂 上林花下匂皆盡 遊客鶯兒痛未休

歌番19 佚名
和歌 如此時 不有芝鞆倍者 一年緒 惣手野春丹 成由裳鉋
読下 かかるとき あらしともおもへは ひととせを すへてのはるに なすよしもかな
漢詩 偷見年前風月奇 可憐三百六旬期 春天多感招遊客 攜手攜觴送一時

歌番20 佚名
和歌 鶯之 陬之花哉 散沼濫 侘敷音丹 折蠅手鳴
読下 うくひすの すみかのはなや ちりぬらむ わひしきこゑに うちはへてなく
漢詩 殘春欲盡百花貧 寂寞林亭鶯囀頻 放眼雲端心尚冷 從斯處處樹陰新

歌番21 素性法師
和歌 春来者 花砥哉見濫 白雪之 懸禮留柯丹 鶯之鳴
読下 はるくれは はなとやみらむ しらゆきの かかれるえたに うくひすのなく
漢詩 嗤見深春帶雪枝 黄鶯出谷始馴時 初花初鳥皆堪翫 自此春情可得知

夏歌廿一首
歌番22 紀友則
和歌 蝉之音 聞者哀那 夏衣 薄哉人之 成砥思者
読下 せみのこゑ きけはかなしな なつころも うすくやひとの ならむとおもへは
漢詩 �恐�恐蝉聲入耳悲 不知齊后化何時 �囂衣初製幾千襲 咲殺伶倫竹與絲

歌番23 佚名
和歌 夏之夜之 霜哉降禮留砥 見左右丹 荒垂屋門緒 照栖月影
読下 なつのよの しもやふれると みるまてに あれたるやとを てらすつきかけ
漢詩 夜月凝来夏見霜 �稿娥觸處翫清光 荒涼院裏終宵讌 白兔千群人幾堂

歌番24 紀友則
和歌 沙亂丹 物思居者 郭公鳥 夜深鳴手 五十人槌往濫
読下 さみたれに ものおもひをれは ほとときす よふかくなきて いつちゆくらむ
漢詩 �捐賓怨婦両眉低 耿耿閨中待曉�胯 粉黛壞来收涙處 郭公夜夜百般啼

歌番25 紀友則
和歌 初夜之間裳 葬處無見湯留 夏蟲丹 迷禮留 戀裳為鉋
読下 よひのまも はかなくみゆる なつむしに まとひまされる こひもするかな
漢詩 好女係心夜不眠 終宵臥起涙連連 贈花贈札迷情切 其奈遊蟲入夏燃

歌番26 紀貫之
和歌 夏之夜之 臥歟砥為禮者 郭公 鳴人音丹 明留篠之目
読下 なつのよの ふすかとすれは ほとときす なくひとこゑに あくるしののめ
漢詩 日常夜短懶晨興 夏漏遲明聽郭公 嘯取詞人偷走筆 文章氣味與春同

歌番27 佚名
和歌 五十人沓夏 鳴還濫 足彈之 山郭公 老牟不死手
読下 いつとなく なきかへるらむ あしひきの やまほとときす おいもしなすて
漢詩 夏枕驚眠有妬聲 郭公夜叫忽過庭 一留一去傷人意 珍重今年報舊鳴

歌番28 佚名
和歌 �捐賓俟 野之側之 菖蒲草 香緒不飽砥哉 鶴歟音為
読下 さつきまつ のへのほとりの あやめくさ かをあかすとや たつかこゑする
漢詩 菖蒲一種滿洲中 五月尤繁魚虌通 盛夏芬芬漁父翫 栖来鶴翔叫無窮

歌番29 壬生忠岑
和歌 暮歟砥 見禮者明塗 夏之夜緒 不飽砥哉鳴 山郭公
読下 くるるかと みれはあけぬる なつのよを あかすとやなく やまほとときす
漢詩 難暮易明五月時 郭公緩叫又高飛 一宵鐘漏盡尤早 想像閨筵怨婦悲

歌番30 佚名
和歌 郭公 鳴立夏之 山邊庭 沓直不輸 人哉住濫
読下 ほとときす なきたつはるの やまへには くつていたさぬ ひとやすむらむ
漢詩 山下夏来何事悲 郭公處處數鳴時 幽人聽取堪憐翫 況復家家音不希

歌番31 佚名
和歌 菖蒲草 五十人沓之五月 逢沼濫 毎来年 稚見湯禮者
読下 あやめくさ いくつのせちに あさぬらむ くるとしことに わかくみゆれは
漢詩 五月菖蒲素得名 毎逢五日是成靈 年年服者齡還幼 鶣鵲嘗来味尚平

歌番32 佚名
和歌 去年之夏 鳴舊手芝 郭公鳥 其歟不歟 音之不變沼
読下 こそのなつ なきふるしてし ほとときす それかあらぬか こゑのかはらぬ
漢詩 去歳今年不變何 郭公曉枕駐聲過 窗間側耳憐聞處 遮莫殘鶯舌尚多

歌番33 凡河内躬恒
和歌 疎見筒 駐牟留鄉之 無禮早 山郭公 浮宕手者鳴
読下 うとみつつ ととむるさとの なかれはや やまほとときす うかれてはなく
漢詩 郭公一叫誤閨情 怨女偷聞惡鬧聲 飛去飛来無定處 或南或北幾門庭

歌番34 佚名
和歌 脱蝉之 侘敷物者 夏草之 露丹懸禮留 身許曾阿里藝禮
読下 うつせみの わひしきものは なつくさの つゆにかかれる みにこそありけれ
漢詩 蝉人運命惣相同 含露殉�菷暫養躬 三夏優遊林樹裏 四時喘息此寰中

歌番35 紀友則
和歌 夕去者 自螢異丹 燃禮鞆 光不見早 人之都禮無杵
読下 ゆふされは ほたるよりけに もゆれとも ひかりみねはや ひとのつれなき
漢詩 怨深喜淺此閨情 夏夜胸燃不異螢 書信休来年月暮 千般其奈望門庭

歌番36 紀有岑
和歌 夏山丹 戀敷人哉 入丹兼 音振立手 鳴郭公鳥
読下 なつやまに こひしきひとや いりにけむ こゑふりたてて なくほとときす
漢詩 一夏山中驚耳根 郭公高響入禪門 適逢知己相憐處 恨有清談無酒

歌番37 佚名
和歌 琴之聲丹 響通倍留 松風緒 調店鳴 蝉之音鉋
読下 ことのねに ひひきかよへる まつかせを しらへてもなく せみのこゑかな
漢詩 �瘢郎死後罷琴聲 可賞松蝉両混井 一曲彈来千緒亂 萬端調處八音清

歌番38 紀友則
和歌 夜哉暗杵 道哉迷倍留 郭公鳥 吾屋門緒霜 難過丹鳴
読下 よやくらき みちやまよへる ほとときす わかやとをしも すきかてになく
漢詩 月入西嵫杳冥霄 郭公五夜叫飄�菎 夏天處處多撩亂 曉�返家家音不遙

歌番39 佚名
和歌 都禮裳無杵 夏之草葉丹 置露緒 命砥恃 蝉之葬處無佐
読下 つれもなき なつのくさはに おくつゆを いのちとたのむ せみのはかなさ
漢詩 鳴蝉中夏汝如何 草露作�菷樹作家 響處多疑琴瑟曲 遊時最似錦綾�几

歌番40 佚名
和歌 夏草之 繁杵思者 蚊遣火之 下丹而已許曾 燃亘藝禮
読下 なつくさの しけきおもひは かやりひの したにのみこそ もえわたりけれ
漢詩 一生燃念暫無休 刀火如炎不可留 �跼塞来斯盛夏 許由洗耳永離憂

歌番41 佚名
和歌 誰里丹 夜避緒為手鹿 郭公鳥 只於是霜 寢垂音為
読下 たかさとに よかれをしてか ほとときす たたここにしも ねたるこゑする
漢詩 郭公本自意浮華 四遠無栖汝最奢 性似蕭郎令女怨 操如蕩子尚迷他

歌番42 佚名
和歌 人不識沼 思繁杵 郭公鳥 夏之夜緒霜 鳴明濫
読下 ひとしれぬ おもひやしけき ほとときす なつのよをしも なきあかすらむ
漢詩 三夏鳴禽號郭公 從来狎媚叫房櫳 一聲觸處萬恨苦 造化功尤任汝躬

秋歌卅六首
歌番43 在原棟梁
和歌 秋風丹 綻沼良芝 藤袴 綴刺世砥手 蛬鳴
読下 あきかせに ほころひぬらし ふちはかま つつりさせとて きりきりすなく
漢詩 商飆颯颯葉輕輕 壁蛬流音數處鳴 曉露鹿鳴花始發 百般攀折一枝情

歌番44 文室朝康
和歌 白露丹 風之吹敷 秋之野者 貫不駐沼 玉曾散藝留
読下 しらつゆに かせのふきしく あきののは しらぬきとめぬ たまそちりける
漢詩 秋風扇處物皆奇 白露繽紛亂玉飛 好夜月来添助潤 嫌朝日往望為晞

歌番45 素性法師
和歌 吾而已哉 憐砥思 蛬 鳴暮景之 倭瞿麥
読下 われのみか あはれとおもふ きりきりす なくゆふくれの やまとなてしこ
漢詩 秋来曉暮報吾聲 蟋蟀高低壁下鳴 耿耿長宵驚睡處 誰言愛汝最丁寧

歌番46 紀友則
和歌 秋風丹 鳴雁歟聲曾 響成誰歟 玉梓緒 懸手来都濫
読下 秋かせに なくかりかねそ ひひくなる たかたまつさを かけてきつらむ
漢詩 聽得歸鴻雲裏聲 千般珍重遠方情 �壓書入手開緘處 錦字一行涙數行

歌番47 小野美材
和歌 女倍芝 匂倍留野邊丹 宿勢者 無綾泛之 名緒哉立南
読下 をみなへし にほへるのへに やとりせは あやなくあたの なをやたてなむ
漢詩 女郎花野宿羈夫 不許繁花負號區 蕩子從来無定意 未嘗苦有得羅敷

歌番48 佚名
和歌 秋之夜之 天照月之 光丹者 置白露緒 玉砥許曾見禮
読下 あきのよの あまてるつきの ひかりには おくしらつゆを たまとこそみれ
漢詩 秋天明月照無私 白露庭前似亂�目 卞氏謝来應布地 四知廉正豈無知

歌番49 佚名
和歌 白露之 織足須芽之 下黄葉 衣丹遷 秋者来藝里
読下 しらつゆの おりたすはきの したもみち ころもにうつる あきはきにけり
漢詩 秋芽一種最須憐 半萼殷紅半萼遷 落葉風前碎錦播 垂枝雨後亂絲牽

歌番50 機織女
和歌 鴈歟聲之 羽風緒寒美 促織之 管子纏音之 切切砥為
読下 かりかねの はかせをさむみ はたおりの くたまくおとの きりきりとする
漢詩 爽候催来両事悲 秋鴻鼓翼與蟲機 含毫朗詠依人處 專夜閑居賞一時

歌番51 在原棟梁
和歌 花薄 曾與鞆為禮者 秋風之 吹歟砥曾聞 無衣身者
読下 はなすすき そよともすれは あきかせの ふくかとそきく ころもなきかな
漢詩 蘆花日日得風鳴 更訝金商入律聲 從此擣衣砧響聒 千家裁縫婦功成

歌番52 在原棟梁
和歌 秋之野野 草之袂歟 花薄 穗丹出手招 袖砥見湯濫
読下 あきののの くさのたもとか はなすすき ほにいててまねく そてとみゆらむ
漢詩 秋日遊人愛遠方 逍遙野外見蘆芒 白花搖動似招袖 疑是鄭生任氏孃

歌番53 佚名
和歌 不散鞆 兼手曾惜敷 黄葉者 今者限之 色砥見都例者
読下 ちらねとも かねてそをしき もみちはは いまはかきりの いろとみつれは
漢詩 野樹班班紅錦裝 惜来爽候欲闌光 年前 黄葉再難得 争使涼風莫吹傷

歌番54 佚名
和歌 雁之聲 風丹競手 過禮鞆 吾歟待人之 言傳裳無
読下 かりかねは かせにきそひて すくれとも わかまつひとの ことつてもなし
漢詩 秋雁�脉�脉叫半天 雲中見月素驚弦 微禽汝有知来意 問道丁寧早可傳

歌番55 佚名
和歌 秋之蝉 寒音丹曾 聞湯那留 木之葉之衣緒 風哉脱鶴
読下 あきのせみ さむきこゑにそ きこゆなる このはのきぬを かせやぬきつる
漢詩 寒�柝亂響惣秋林 黄葉飄飄混數音 一一流聞�瘢子瑟 閨中自此思�縄�縄

歌番56 佚名
和歌 日夕芝丹 秋之野山緒 別来者 不意沼 錦緒曾服
読下 ひくらしに あきののやまを わけくれは こころにもあらぬ にしきをそきる
漢詩 終日遊人入野山 紛紛葉錦衣戔戔 登峰望壑回眸切 石硯濡毫樂萬端

歌番57 佚名
和歌 奧山丹 黄葉蹈別 鳴麋之 音聽時曾 秋者金敷
読下 おくやまに もみちふみわけ なくしかの こゑきくときそ あきはかなしき
漢詩 秋山寂寂葉零零 麋鹿鳴音數度聆 勝地尋来遊宴處 無朋無酒意猶冷

歌番58 佚名
和歌 雁之聲丹 管子纏於砥之 夜緒寒美 蟲之織服 衣緒曾假
読下 かりかねに くたまくおとの よをさむみ むしのおりきる ころもをそかる
漢詩 鳴雁鳴蟲一一清 秋花秋葉斑斑聲 誰知両興無飽足 山室�縄吟獨作情

歌番59 藤原菅根
和歌 秋風丹 音緒帆丹舉手 来船者 天之外亘 雁丹曾阿里藝留
読下 あきかせに こゑをほにあけて くるふねは あまのとわたる かりにそありける
漢詩 唳唳秋雁亂碧空 濤音櫓響響相同 羈人舉楫櫂歌處 海上悠悠四遠通

歌番60 佚名
和歌 秋山丹 戀為麋之 音立手 鳴曾可為岐 君歟不来夜者
読下 あきやまに こひするしかの こゑたてて なきそしぬへき きみかこぬよは
漢詩 獨臥多年婦意�露 秋閨帳裏舉音啼 生前不幸悉恩愛 願教蕭郎抂馬啼

歌番61 佚名
和歌 唐衣 乾鞆袖之 燥沼者 吾身之秋丹 成者成藝里
読下 からころも ほせともそての かわかぬは わかみのあきに なれはなりけり
漢詩 曩時恩幸絶今悲 雙袖雙眸両不晞 戶�返荒涼蓬草亂 毎秋鎮待雁書遲

歌番62 佚名
和歌 秋之月 叢斧栖 照勢早 宿露佐倍 玉砥見湯濫
読下 あきのつき くさむらかけす てらせるは やとるつゆさへ たまとみゆらむ
漢詩 秋月玲瓏不別叢 叢間白露與珠同 終宵對翫凝思處 一段清光照莫窮

歌番63 佚名
和歌 卒爾裳 風之涼 吹塗鹿 立秋日砥者 郁子裳云藝里
読下 にはかにも かせのすすしく ふきぬるか たつあきひとは うへもいひけり
漢詩 涼飆急扇物先哀 應是為秋氣早来 壁蛬家家音始亂 叢芽處處萼初開

歌番64 藤原敏行
和歌 秋芽之 花開丹藝里 高猿子之 尾上丹今哉 �趾之鳴濫
読下 あきはきの はなさきにけり たかさこの をのへにいまや しかのなくらむ
漢詩 三秋有蕊號芽花 �趾子鳴時此草香 雨後紅匂千度染 風前錦色自然多

歌番65 壬生忠岑
和歌 松之聲緒 風之調丹 任手者 龍田姫子曾 秋者彈良
読下 まつのねを かせのしらへに まかせては たつたひめこそ あきはひくらめ
漢詩 翠嶺松聲似雅琴 秋風和處聽徽音 伯牙輟手幾千歳 想像古調在此林

歌番66 藤原敏行
和歌 白露之 色者一緒 何丹為手 秋之山邊緒 千丹染濫
読下 しらつゆの いろはひとつを いかにして あきのやまへを ちちにそむらむ
漢詩 白露從来莫染功 何因草木葉先紅 三秋垂暮趁看處 山野斑斑物色匆

歌番67 佚名
和歌 秋霧者 今朝者那起曾 龍田山 婆婆曾之 黄葉 與曾丹店將見
読下 あききりは けさはなたちそ たつたやま ははそのもみち よそにてもみむ
漢詩 山谷幽閑秋霧深 朝陽不見幾千尋 杳冥若有天容出 霽後偷看錦葉林

歌番68 壬生忠岑
和歌 雨降者 笠取山之 秋色者 往買人之 袖佐倍曾照
読下 あめふれは かさとりやまの あきのいろは ゆきかふひとの そてさへそてる
漢詩 名山秋色錦斑斑 落葉繽紛客袖爛 終日回眸無倦意 一時風景誰人�殃

歌番69 藤原敏行
和歌 何人鹿 来手脱係芝 藤袴 秋毎来 野邊緒匂婆須
読下 なにひとか きてぬきかけし ふちはかま あきくることに のへをにほはす
漢詩 秋来野外莫人家 藤袴締懸玉樹柯 借問遊仙何處在 誰知我乘指南車

歌番70 紀友則
和歌 音立手 鳴曾可為岐 秋之野丹 朋迷勢留 蟲庭不有砥
読下 こゑたてて なきそしぬへき あきののに ともまとはせる むしにはあらねと
漢詩 愁人慟哭類蟲聲 落涙千行意不平 枯槁形容何日改 通宵抱膝百憂成

歌番71 壬生忠岑
和歌 甘南備之 御室之山緒 秋往者 錦裁服 許許知許曾為禮
読下 かみなひの みむろのやまを あきゆけは にしきたちきる ここちこそすれ
漢詩 試入秋山遊覽時 自然錦�墸換單衣 戔戔新服風前艷 咲殺女牀鳳羽儀

歌番72 紀貫之
和歌 名西負者 強手將恃 女倍芝 人之心丹 秋者来鞆
読下 なにしおはは しひてたのまむ をみなへし ひとのこころに あきはくるとも
漢詩 秋嶺有花號女郎 野庭得所汝孤光 追名遊客猶尋到 本自慇懃子尚強

歌番73 佚名
和歌 秋風之 吹立沼禮者 蛬 己歟綴砥 木之葉緒曾刺
読下 あきかせの ふきたてぬれは きりきりす おのかつつりと このはをそさす
漢詩 秋風觸處蛬鳴寒 木葉零惟衣一單 夜夜愁音侵客耳 朝朝餘響滿庭壇

歌番74 佚名
和歌 希丹来手 不飽別留 織女者 可立還�等 路無唐南
読下 まれにきて あかすわかるる たなはたは たちかへるへき なみちなからなむ
漢詩 七夕佳期易別時 一年再會此猶悲 千般怨殺鵲橋畔 誰識二星涙未晞

歌番75 壬生忠岑
和歌 山田守 秋之假廬丹 置露者 稻負鳥之 涙那留倍芝
読下 やまたもる あきのかりほに おくつゆは いなおほせとりの なみたなるへし
漢詩 稼田上上此秋登 �傀稻離離九穗同 股腹堯年今亦鼓 農夫扣角舊謳通

歌番76 佚名
和歌 秋之野之 千種之匂 吾而已者 見砥價無 獨砥思者
読下 あきののの ちくさのにほひ われのみは みれとかひなし ひとりとおもへは
漢詩 野外千匂秋始裝 風前獨坐翫芬芳 回眸感歎無知己 終日貪来對艷昌

歌番77 柿本人麻呂
和歌 夜緒寒美 衣借金 鳴苗丹 芽之下葉裳 移徙丹藝里
読下 よをさむみ ころもかりかね なくなへに はきのしたはも うつろひにけり
漢詩 寒露初降秋夜冷 芽花艷艷葉零零 雁音頻叫銜蘆處 幽感相干傾�磊

歌番78 佚名
和歌 言之葉緒 可恃八者 秋来 五十人禮歟色之 不變藝留
読下 ことのはを たのむへしやは あきくれは いつれかいろの かはらさりける
漢詩 秋来變改併依人 草木榮枯此尚均 昨日怨言今日否 愧来世上背吾身

冬歌廿一首
歌番79 佚名
和歌 堀手置芝 池者鏡砥 凍禮鞆 影谷不見手 年曾歴藝留
読下 ほりておきし いけはかかみと こほれとも かけたにみえて としそへにける
漢詩 眼前貯水號瑤池 手溉手穿送送歳時 冬至毎朝凍作鏡 春来終日浪成�般

歌番80 紀友則
和歌 小竹之葉丹 置自霜裳 獨寢留 吾衣許曾 冷藝禮
読下 ささのはに おくしもよりも ひとりぬる わかころもこそ さえまさりけれ
漢詩 玄冬季月景猶寒 露往霜来被似單 松柏凋殘枝慘冽 竹叢變色欲枯殫

歌番81 佚名
和歌 光俟 柯丹懸禮留 雪緒許曾 冬之花砥者 可謂狩藝禮
読下 ひかりまつ えたにかかれる ゆきをこそ ふゆのはなとは いふへかりけれ
漢詩 三冬柯雪忽驚眸 歎殺非時見御溝 柳絮梅花兼記取 矜如春日入林頭

歌番82 佚名
和歌 霜枯之 柯砥那侘曾 白雪緒 花砥雇手 見砥不被飽
読下 しもかれの えたとなわひそ しらゆきを はなとやとして みれとあかれぬ
漢詩 試望三冬見玉塵 花林假翫數花新 終朝惜殺須臾艷 日午寒條蕊尚貧

歌番83 佚名
和歌 攪崩芝 雹降積 白玉之 鋪留�源鞆 人者見蟹
読下 かきくらし あられふりつめ しらたまの しけるにはとも ひとはみるかに
漢詩 冬天下雹玉�源新 潔白鋪来不見塵 千顆琉璃多誤月 可憐素色滿清晨

歌番84 佚名
和歌 冬寒美 簷丹懸垂 益鏡 迅裳破南 可老迷久
読下 ふゆさむみ のきにかかれる ますかかみ とくもわれなむ おいまとふへく
漢詩 冬来冰鏡據簷懸 一旦趁看未破前 嫗女�銀臨無粉黛 老来皺集幾迴年

歌番85 在原棟梁
和歌 白雪之 八重降敷留 還山 還還留丹 老丹藝留鉋
読下 しらゆきの やへふりしける かへるやま かへすかへすそ おいにけるかな
漢詩 白雪干頭八十翁 誰知屈指歳猶豐 星霜如箭居諸積 獨出人寰欲數冬

歌番86 佚名
和歌 冬成者 雪降積留 高杵嶺 立白雲丹 見江亘濫
読下 ふゆなれは ゆきふりつめる たかきみね たつしらくもに みえまかふらむ
漢詩 冬峰殘雪舉眸看 再三嗤来數疋�嗟 未辨白雲晴後聳 毎朝尋到望山顏

歌番87 佚名
和歌 松之葉丹 宿留雪者 四十人丹芝手 時迷勢留 花砥許曾見禮
読下 まつのはに やとれるゆきは よそにして ときまとはせる はなとこそみれ
漢詩 冬日舉眸望嶺邊 青松殘雪似花鮮 深春山野猶看誤 咲殺寒梅萬朵連

歌番88 佚名
和歌 白雲之 下居山砥 見鶴者 降積雪之 不消成藝里
読下 しらくもの おりゐるやまと みえつるは ふりつむゆきの きえぬなりけり
漢詩 四山霽後雪猶存 未辨白雲嶺上屯 終日看来無厭足 況乎牆�遮又敦敦

歌番89 佚名
和歌 大虚之 月之光之 寒藝禮者 影見芝水曾 先凍藝留
読下 おほそらの つきのひかりし さむけれは かけみしみつそ まつこほりける
漢詩 寒天月氣夜冷冷 池水凍来鏡面瑩 倩見年前風景好 玉壺晴後翫清清

歌番90 壬生忠岑
和歌 白雪之 降手積禮留 山里者 住人佐倍也 思銷濫
読下 しらゆきの ふりてつもれる やまさとは すむひとさへや おもひきゆらむ
漢詩 雪後朝朝興萬端 山家野室物斑斑 初銷粉婦泣来面 最感應驚月色

歌番91 紀友則
和歌 吾屋門之 菊之垣廬丹 置霜之 銷還店 將逢砥曾思
読下 わかやとの きくのかきほに おくしもの きえかへりても あはむとそおもふ
漢詩 清女觸来菊上霜 寒風寒氣蕊芬芳 王弘趁到提酒 終日遊遨陶氏莊

歌番92 佚名
和歌 三吉野野 山之白雪 踏別手 入西人之 音都禮裳勢沼
読下 みよしのの やまのしらゆき ふみわけて いりにしひとの おとつれもせぬ
漢詩 遊人絶跡入幽山 泥雪踏霜獨蔑寒 不識相逢何歳月 夷齊愛�始遂無還

歌番93 佚名
和歌 十月 �腋降良芝 山里之 正樹之 黄葉 色往
読下 かみなつき あられふるらし やまさとの まさきのもみち いろまさりゆく
漢詩 孟冬細雨足如絲 寒氣始来染葉時 一一流看山野裏 樹紅草亂參差

歌番94 佚名
和歌 雪降手 年之暮往 時丹許曾 遂之 松裳見江藝禮
読下 ゆきふりて としのくれゆく ときにこそ つひにみとりの まつもみえけれ
漢詩 松樹從来蔑雪霜 寒風扇處獨蒼蒼 奈何桑葉先零落 不屑槿花暫有昌

歌番95 佚名
和歌 涙河 身投量之 淵成砥 凍不�濡者 景裳不宿
読下 なみたかは みをなくはかりの ふちなれと こほりとけねは かけもやとらす
漢詩 怨婦泣来涙作淵 往年亘月臆揚烟 冬閨両袖空成河 引領望君幾數年

歌番96 佚名
和歌 為君 根刺將求砥 雪深杵 竹之園生緒 別迷鉋
読下 きみかため ねさしもとむと ゆきふかき たけのそのふを わけまとふかな
漢詩 雪中竹豈有萌芽 孝子祈天得筍多 殖物冬園何事苦 歸歟行客哭還歌

歌番97 佚名
和歌 攪崩芝 散花砥而已 降雪者 雲之城之 玉之散鴨
読下 かきちらし ちるはなとのみ ふるゆきは くものみやこの たまとちるかも
漢詩 素雪紛紛落蕊新 應斯白玉下天津 舉眸望處心如夢 霽後園中似見春

歌番98 佚名
和歌 霜枯丹 成沼砥雖思 梅花 拆留砥曾見 雪之照禮留者
読下 しもかれに なりぬとおもへと うめのはな さけるとそみる ゆきのてれるは
漢詩 寒風蕭蕭雪封枝 更訝梅花滿苑時 山野偷看堪奪眼 深春風景豈無知

歌番99 佚名
和歌 歴年砥 色裳不變沼 松之葉丹 宿留雪緒 花砥許曾見
読下 としふれと いろもかはらぬ まつのはに やとれるゆきを はなとこそみめ
漢詩 冬来松葉雪斑斑 素蕊非時枝上 山客回眸猶誤道 應斯白鶴未翩翩

戀歌廿首
歌番100 紀友則
和歌 紅之 色庭不出芝 隱沼之 下丹通手 戀者死鞆
読下 くれなゐの いろにはいてし かくれぬの したにかよひて こひはしぬとも
漢詩 閨房怨緒惣無端 萬事吞心不表肝 胸火燃来誰敢滅 紅深袖涙不應乾

歌番101 佚名
和歌 思筒 晝者如此店 名草都 夜曾侘杵 獨寢身者
読下 おもひつつ ひるはかくても なくさめつ よるそわひしき ひとりぬるみは
漢詩 寡婦獨居欲數年 容顏枯槁敗心由 日中怨恨猶應忍 夜半潸然涙作泉

歌番102 佚名
和歌 鹿島成 筑波之山之 築築砥 吾身一丹 戀緒積鶴
読下 かしまなる つくはのやまの つくつくと わかみひとつに こひをつむかも
漢詩 馬蹄久絶不如何 戀暮此山涙此何 蕩客怨言常詐我 蕭君永去莫還家

歌番103 佚名
和歌 都例裳那杵 人緒待砥手 山彥之 音為左右 歎鶴鉋
読下 つれもなき ひとをまつとて やまひこの おとのするまて なけきつるかな
漢詩 千般怨殺厭吾人 何日相逢萬緒甲 歎息高低閨裏亂 含情泣血袖紅新

歌番104 佚名
和歌 戀亘 許呂裳之袖者 潮滿手 海松和布加津加沼 浪曾起藝留
読下 こひわたる ころものそては しほみちて みるめかつかぬ なみそたちける
漢詩 落涙成波不可乾 千行流處袖紅斑 平生昵近今都絶 寂寞閑居継瑟彈

歌番105 藤原敏行
和歌 戀侘手 打寢留中丹 往還留 夢之只徑者 宇都都那良南
読下 こひわひて うちぬるなかに ゆきかへる ゆめのたたちは うつつならなむ
漢詩 戀緒連綿無絶期 �鮭聲佩響聽何時 君吾相去程千里 連夜夢魂猶不稀

歌番106 佚名
和歌 懸都例者 千之金裳 數知沼 何吾戀之 逢量那岐
読下 かけつれは ちちのこかねも かすしりぬ なにわかこひの あふはかりなき
漢詩 年来積戀計無量 居指員多手算忙 一日不看如數月 慇懃相待隔星霜

歌番107 佚名
和歌 人緒念 心之熾者 身緒曾燒 煙立砥者 不見沼物幹
読下 ひとをおもふ こころのおきは みをそやく けふりたつとは みえぬものから
漢詩 胸中刀火例燒身 寸府心灰不舉煙 應是女郎為念匹 閨房獨坐面猶�銀

歌番108 藤原興風
和歌 戀芝砥者 今者不思 魂之 不相見程丹 成沼鞆倍者
読下 こひしとは いまはおもはぬ たましひの あひみるほとに なりぬともへは
漢詩 消息絶来幾數年 昔心忘卻不須憐 閨中寂寞蜘綸亂 粉黛長休鏡又捐

歌番109 佚名
和歌 被厭手 今者限砥 成西緒 更昔之 被戀鉋
読下 いとはれて いまはかきりと なりにしを さらにむかしの こひらるるかな
漢詩 被厭蕭郎永守貞 獨居獨寢涙零零 心中昔事雖忘卻 顧念閨房恩愛情

歌番110 佚名
和歌 戀敷丹 侘手魂 迷那者 空敷幹之 名丹哉立南
読下 こひしきに わひてたましひ まよひなは むなしきからの なにやたちなむ
漢詩 戀情無限匪須勝 生死慇懃尚在胸 君我昔時長契約 嗤来寒歳柏將松

歌番111 佚名
和歌 朝景丹 吾身成沼 白雲之 絶手不聞沼 人緒戀砥手
読下 あさかけに わかみはなりぬ しらくもの たえてきこえぬ ひとをこふとて
漢詩 恨来相別拋恩情 朝暮劬労體貌零 寂寂空房孤飲涙 時時引領望荒庭

歌番112 佚名
和歌 片絲丹 貫玉之 緒緒弱美 紊手戀者 人哉知南
読下 かたいとに つらぬくたまの ををよわみ みたれてこひは ひとやしりなむ
漢詩 誰識中心戀緒�壜 卞和泣處玉紛紛 千般歎息員難計 争使蕭郎一處群

歌番113 菅野忠臣
和歌 都例無緒 今者不戀砥 念倍鞆 心弱裳 落涙歟
読下 つれなきを いまはこひしと おもへとも こころよわくも おつるなみたか
漢詩 不枉馬蹄歳月拋 從休雁札望雲郊 戀情忍處寧應耐 落涙交潤斗�勹

歌番114 佚名
和歌 人不識 下丹流留 涙河 堰駐店 景哉見湯留砥
読下 ひとしれす したになかるる なみたかは せきととめてむ かけやみゆると
漢詩 毎宵流涙自然河 早旦臨如作鏡何 撫瑟�縄吟無異態 試追蕩客贈詞華

歌番115 佚名
和歌 涙河 流被店袖之 凍筒 佐夜深往者 身而已冷濫
読下 なみたかは なかれてそての こほりつつ さよふけゆけは みのみひゆらむ
漢詩 冬閨獨臥�墸衾單 流涙凍来夜半寒 想像蕭咸佳會夕 庶幾毎日有相看

歌番116 佚名
和歌 君戀砥 霜砥吾身之 成沼禮者 袖之滴曾 冴藝留
読下 きみこふと しもとわかみの なりぬれは そてのしつくそ さえまさりける
漢詩 與君相別幾星霜 疇昔言花�嘸不香 曉夕凍来冬泣血 高低嘆息滿閨房

歌番117 佚名
和歌 戀敷丹 金敷事之 副沼禮者 物者不被言手 涙而已許曾
読下 こひしきに かなしきことの そひぬれは ものはいはれて なみたのみこそ
漢詩 一悲一戀是平均 事事含情不可陳 流涙難留寧有耐 寂然靜室両眉�銀

歌番118 佚名
和歌 思侘 山邊緒而已曾 往手見留 不飽別芝 人哉見留砥
読下 おもひわひ やまへをのみそ ゆきてみる あかすわかれし ひとやみゆると
漢詩 思緒有餘心不休 偷看河海與山丘 四方千里求難得 借問人寰是有不

歌番119 佚名
和歌 千之色丹 移徙良砥 不知國 意芝秋之 不黄葉禰者
読下 ちちのいろに うつろふらめと しらなくに ここしあきの もみちならねは
漢詩 人情變改不須知 見説生涯離別悲 閑對秋林看落葉 何堪爽候索然時

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新撰万葉集、検索について (作業員)
2014-12-14 11:43:25
大学生レベルでネット検索で簡便に得られる「新撰万葉集」の原文及び読み下し文は、およそ、幣ブログ程度です。
そのため、ネット検索でヒットしやすいようにタイトルやキーワードを変更しました。

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