歌番号 255 拾遺抄記載
詞書 屏風に
詠人 よしのふ
原文 安多良之幾 者留左部知可久 奈利由个者 布利乃美万佐留 止之乃由幾可奈
和歌 あたらしき はるさへちかく なりゆけは ふりのみまさる としのゆきかな
読下 あたらしきはるさへちかくなりゆけはふりのみまさる年の雪かな
解釈 新しい年の、その春の季節さえも近くなって来たので、降るだけで積もらない年の瀬の雪模様です。
歌番号 256
詞書 屏風に
詠人 右衛門督公任
原文 武女可衛尓 布利川武由幾八 比止々世尓 布多々比左个留 者奈可止曽美留
和歌 うめかえに ふりつむゆきは ひととせに ふたたひさける はなかとそみる
読下 梅かえにふりつむ雪はひととせにふたたひさける花かとそ見る
解釈 梅の枝に降り積もる雪は一年の内に再び咲いた花なのかと見間違える。
歌番号 257
詞書 屏風のゑに、仏名の所
詠人 よしのふ
原文 越幾安可寸 之毛止々毛尓也 計左者美奈 布由乃世布可幾 川美毛遣奴良无
和歌 おきあかす しもとともにや けさはみな ふゆのよふかき つみもけぬらむ
読下 おきあかす霜とともにやけさはみな冬の夜ふかきつみもけぬらん
解釈 寝ないままに起きて夜を明かすその日、霜とともに、今朝は冬の夜深き、その言葉の響きではありませんが、世の深き罪も念仏とともに消えていくでしょうか。
注意 年の瀬に行われる夜通しの仏名を声明する法会の様子の屏風画を詠うものです。
歌番号 258 拾遺抄記載
詞書 延喜の御時の屏風に
詠人 つらゆき
原文 止之乃宇知尓 徒毛礼留川美八 加幾久良之 布留之良由幾止 々毛尓幾恵奈无
和歌 としのうちに つもれるつみは かきくらし ふるしらゆきと ともにきえなむ
読下 年の内につもれるつみはかきくらしふる白雪とともにきえなん
解釈 年の内に積もった罪は、このように暮らしたもの、その言葉の響きではありませんが、空を掻き暗らす雲から降る白雪とともに、消えてしまって欲しいものです。
注意 年の瀬に行われる夜通しの仏名を声明する法会の様子の屏風画を詠うものです。
歌番号 259 拾遺抄記載
詞書 屏風のゑに、仏名のあしたに、梅の木のもとに導師とあるしと、かはらけとりてわかれをしみたる所
詠人 よしのふ
原文 由幾布可幾 也万地尓奈尓々 加部留良无 者留末川者奈乃 加遣尓止万良天
和歌 ゆきふかき やまちになにに かへるらむ はるまつはなの かけにとまらて
読下 雪ふかき山ちになににかへるらん春まつ花のかけにとまらて
解釈 雪深い山路にどうしてすぐに帰って行くのだろう、春を待つ花の風情を楽しむこともなく。