竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

拾遺和歌集 巻4 歌番号255から259まで

2024年09月13日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻4

歌番号 255 拾遺抄記載

詞書 屏風に

詠人 よしのふ

原文 安多良之幾 者留左部知可久 奈利由个者 布利乃美万佐留 止之乃由幾可奈

和歌 あたらしき はるさへちかく なりゆけは ふりのみまさる としのゆきかな

読下 あたらしきはるさへちかくなりゆけはふりのみまさる年の雪かな

解釈 新しい年の、その春の季節さえも近くなって来たので、降るだけで積もらない年の瀬の雪模様です。

 

歌番号 256

詞書 屏風に

詠人 右衛門督公任

原文 武女可衛尓 布利川武由幾八 比止々世尓 布多々比左个留 者奈可止曽美留

和歌 うめかえに ふりつむゆきは ひととせに ふたたひさける はなかとそみる

読下 梅かえにふりつむ雪はひととせにふたたひさける花かとそ見る

解釈 梅の枝に降り積もる雪は一年の内に再び咲いた花なのかと見間違える。

 

歌番号 257

詞書 屏風のゑに、仏名の所

詠人 よしのふ

原文 越幾安可寸 之毛止々毛尓也 計左者美奈 布由乃世布可幾 川美毛遣奴良无

和歌 おきあかす しもとともにや けさはみな ふゆのよふかき つみもけぬらむ

読下 おきあかす霜とともにやけさはみな冬の夜ふかきつみもけぬらん

解釈 寝ないままに起きて夜を明かすその日、霜とともに、今朝は冬の夜深き、その言葉の響きではありませんが、世の深き罪も念仏とともに消えていくでしょうか。

注意 年の瀬に行われる夜通しの仏名を声明する法会の様子の屏風画を詠うものです。

 

歌番号 258 拾遺抄記載

詞書 延喜の御時の屏風に

詠人 つらゆき

原文 止之乃宇知尓 徒毛礼留川美八 加幾久良之 布留之良由幾止 々毛尓幾恵奈无

和歌 としのうちに つもれるつみは かきくらし ふるしらゆきと ともにきえなむ

読下 年の内につもれるつみはかきくらしふる白雪とともにきえなん

解釈 年の内に積もった罪は、このように暮らしたもの、その言葉の響きではありませんが、空を掻き暗らす雲から降る白雪とともに、消えてしまって欲しいものです。

注意 年の瀬に行われる夜通しの仏名を声明する法会の様子の屏風画を詠うものです。

 

歌番号 259 拾遺抄記載

詞書 屏風のゑに、仏名のあしたに、梅の木のもとに導師とあるしと、かはらけとりてわかれをしみたる所

詠人 よしのふ

原文 由幾布可幾 也万地尓奈尓々 加部留良无 者留末川者奈乃 加遣尓止万良天

和歌 ゆきふかき やまちになにに かへるらむ はるまつはなの かけにとまらて

読下 雪ふかき山ちになににかへるらん春まつ花のかけにとまらて

解釈 雪深い山路にどうしてすぐに帰って行くのだろう、春を待つ花の風情を楽しむこともなく。

 

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拾遺和歌集 巻4 歌番号250から254まで

2024年09月12日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻4

歌番号 250 拾遺抄記載

詞書 入道摂政の家の屏風に

詠人 かねもり

原文 美和多世八 万川乃者之呂幾 与之乃也万 以久与川毛礼留 由幾尓可安留良无

和歌 みわたせは まつのはしろき よしのやま いくよつもれる ゆきにかあるらむ

読下 見わたせは松のはしろきよしの山いくよつもれる雪にかあるらん

解釈 見渡すと松の葉が白い吉野の山、幾夜、その言葉の響きではないが、幾代、久しき時経て積もった雪なのだろうか。

 

歌番号 251 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 かねもり

原文 也万佐止者 由幾布利川美天 美知毛奈之 遣不己武比止遠 安者礼止八美武

和歌 やまさとは ゆきふりつみて みちもなし けふこむひとを あはれとはみむ

読下 山さとは雪ふりつみて道もなしけふこむ人をあはれとは見む

解釈 山里は雪が降り積もって道もありません、今日、ここにやってくる人を、大変なご苦労と思います。

 

歌番号 252 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 人まろ

原文 安之比幾乃 也万地毛志良寸 志良可之乃 衛多尓毛者尓毛 由幾乃布礼々八

和歌 あしひきの やまちもしらす しらかしの えたにもはにも ゆきのふれれは

読下 あしひきの山ちもしらすしらかしの枝にもはにも雪のふれれは

解釈 足を曳くような険しい山の山路も判らない、白樫の枝にも葉にも雪が降り積もると。

 

歌番号 253

詞書 右大将定国家の屏風に

詠人 つらゆき

原文 之良由幾乃 布利之久止幾者 三与之乃々 也万之多可世尓 者奈曽知利个留

和歌 しらゆきの ふりしくときは みよしのの やましたかせに はなそちりける

読下 白雪のふりしく時はみよしのの山した風に花そちりける

解釈 この都で白雪が降り敷く時には、きっと、み吉野の山のその山を吹く下ろす風に雪花が舞い散っているでしょう。

 

歌番号 254 拾遺抄記載

詞書 冷泉院の屏風に

詠人 かねもり

原文 比止之礼寸 者留遠己曽万天 波良不部幾 比止奈幾也止尓 布礼留之良由幾

和歌 ひとしれす はるをこそまて はらふへき ひとなきやとに ふれるしらゆき

読下 人しれす春をこそまてはらふへき人なきやとにふれるしらゆき

解釈 人に気付かれることなく春を待ちなさい、雪払いをするはずの、その人の気配も見えない屋敷に降れる白雪よ。

 

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拾遺和歌集 巻4 歌番号245から249まで

2024年09月11日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻4

歌番号 245 拾遺抄記載

詞書 山あひに雪のふりかかりて侍りけるを

詠人 伊勢

原文 安之比幾乃 也万為尓布礼留 之良由幾八 寸礼留己呂毛乃 己々地己曽寸礼

和歌 あしひきの やまゐにふれる しらゆきは すれるころもの ここちこそすれ

読下 あしひきの山ゐにふれる白雪はすれる衣の心地こそすれ

解釈 足を曳くような険しい山々の間に降れる白雪は、山藍でまだら模様に刷り染めた衣のように見える気持ちがします。

 

歌番号 246

詞書 斎院の屏風に

詠人 つらゆき

原文 与留奈良波 川幾止曽美末之 和可也止乃 尓者之呂多部尓 布礼留之良由幾

和歌 よるならは つきとそみまし わかやとの にはしろたへに ふれるしらゆき

読下 よるならは月とそ見ましわかやとの庭しろたへにふれるしらゆき

解釈 夜であったなら月だと眺めたでしょう、我が屋敷の庭の丸く選定した木の上に白妙の柔らかな布のように降り積もる白雪です。

 

歌番号 247

詞書 題しらす

詠人 よしのふ

原文 和可也止乃 由幾尓川个天曽 布留佐止乃 与之乃々也万八 遠毛飛也良留々

和歌 わかやとの ゆきにつけてそ ふるさとの よしののやまは おもひやらるる

読下 わかやとの雪につけてそふるさとのよしのの山は思ひやらるる

解釈 私の屋敷に降り積もる雪を眺めるにつけて、古い里の吉野の山は、もっと、雪が降り積もっているだろうと思いやられます。

 

歌番号 248 拾遺抄記載

詞書 屏風のゑに、こしのしら山かきて侍りける所に

詠人 藤原佐忠朝臣

原文 和礼比止利 己之乃也万地尓 己之可止毛 由幾布利尓个留 安止遠美留可奈

和歌 われひとり こしのやまちに こしかとも ゆきふりにける あとをみるかな

読下 我ひとりこしの山ちに来しかとも雪ふりにける跡を見るかな

解釈 私一人、越の国の山路に来たのでしょうか、雪が降り積もった、その山路を歩く人の足跡を眺めています。

 

歌番号 249 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 たたみ

原文 止之布礼盤 己之乃志良也万 於以尓个利 於本久乃布由乃 由幾川毛利川々

和歌 としふれは こしのしらやま おいにけり おほくのふゆの ゆきつもりつつ

読下 年ふれはこしのしら山おいにけりおほくの冬の雪つもりつつ

解釈 年が過ぎ行けば越の国の白山も白髪の老人のように老いてしまった、過ぎて行った多くの冬の、その季節に雪を降り積もらせながら。

 

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拾遺和歌集 巻4 歌番号240から244まで

2024年09月10日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻4

歌番号 240

詞書 廉義公家の障子

詠人 もとすけ

原文 布由乃世乃 以計乃己保利乃 左也个幾者 川幾乃比可利乃 美可久奈利个利

和歌 ふゆのよの いけのこほりの さやけきは つきのひかりの みかくなりけり

読下 冬の夜の池の氷のさやけきは月の光のみかくなりけり

解釈 冬の夜の池の氷が清らかなのは、月の光が磨いているからなのでしょう。

 

歌番号 241 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 布由乃以計乃 宇部者己保利尓 止知良礼天 以可天可川幾乃 曽己尓以留良无

和歌 ふゆのいけの うへはこほりに とちられて いかてかつきの そこにいるらむ

読下 ふゆの池のうへは氷にとちられていかてか月のそこに入るらん

解釈 冬の池の水面は氷に閉じられていて、どうやって、その中に月が入ったのでしょうか。

 

歌番号 242 拾遺抄記載

詞書 月を見てよめる

詠人 恵慶法師

原文 安万乃者良 曽良佐部左衛也 和多留良无 己保利止美由留 布由乃世乃川幾

和歌 あまのはら そらさへさえや わたるらむ こほりとみゆる ふゆのよのつき

読下 あまの原そらさへさえや渡るらん氷と見ゆる冬の夜の月

解釈 天の原、空まで冴え渡っているようです、氷と見間違えるような冷え冷えとした冬の夜の月です。

 

歌番号 243 拾遺抄記載

詞書 はつ雪をよめる

詠人 源景明

原文 美也己尓天 女川良之止美留 者川由幾者 与之乃々也万尓 布利也之奴良无

和歌 みやこにて めつらしとみる はつゆきは よしののやまに ふりやしぬらむ

読下 宮こにてめつらしと見るはつ雪はよしのの山にふりやしぬらん

解釈 都にあっては珍しいと思える初雪は、吉野の山に降れば毎度のこととするのでしょうか。

 

歌番号 244 拾遺抄記載

詞書 女をかたらひ侍りけるか、年ころになり侍りにけれと、うとく侍りけれは、ゆきのふり侍りけるに

詠人 もとすけ

原文 布累本止毛 者可奈久美由留 安者由幾乃 宇良也万之久毛 宇知止久留可奈

和歌 ふるほとも はかなくみゆる あはゆきの うらやましくも うちとくるかな

読下 ふるほともはかなく見ゆるあはゆきのうら山しくも打ちとくるかな

解釈 降るほどにも儚く見える淡雪、残念なことに、すぐに打ち融けるようです。

裏歌 関係が古くなるほど、虚しく思える貴女に逢いに行くこと、残念なことに、今ではもう貴女は馴れ馴れしい態度を見せて来ます。

注意 表の歌の風流と裏の歌の苦言では歌意は大きく違います。

 

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拾遺和歌集 巻4 歌番号235から239まで

2024年09月09日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻4

歌番号 235 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 布由佐武三 己保良奴美川者 奈个礼止毛 与之乃々太幾者 多由留与毛奈之

和歌 ふゆさむみ こほらぬみつは なけれとも よしののたきは たゆるよもなし

読下 冬さむみこほらぬ水はなけれとも吉野のたきはたゆるよもなし

解釈 冬が寒いので凍らない水は無いのですが、それでも吉野の激流は凍り付いて途絶えるようなことはありません。

 

歌番号 236

詞書 恒徳公家の屏風に

詠人 よしのふ

原文 布由左礼者 安良之乃己恵毛 堂可佐己乃 万川尓川个天曽 幾久部可利个留

和歌 ふゆされは あらしのこゑも たかさこの まつにつけてそ きくへかりける

読下 ふゆされは嵐のこゑもたかさこの松につけてそきくへかりける

解釈 冬が彼方からやって来ると嵐の声も高い、その言葉の響きのような高砂の松、その待つの言葉の響きに付けても、冬の嵐の声を聴くべきですよ。

 

歌番号 237 拾遺抄記載

詞書 恒徳公家の屏風に

詠人 もとすけ

原文 多可左己乃 万川尓寸武川留 布由久礼者 遠乃部乃之毛也 於幾万佐留良无

和歌 たかさこの まつにすむつる ふゆくれは をのへのしもや おきまさるらむ

読下 高砂の松にすむつる冬くれはをのへの霜やおきまさるらん

解釈 高砂の松に住む、その鶴、冬がやって来ると高砂の尾上に霜が置き、一層に鶴の白さがまさるようです。

 

歌番号 238 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 紀とものり

原文 由不左礼者 左本乃加者良乃 可者幾利尓 止毛万止者世留 知止利奈久奈利

和歌 ゆふされは さほのかはらの かはきりに ともまとはせる ちとりなくなり

読下 ゆふされはさほのかはらの河きりに友まとはせる千鳥なくなり

解釈 夕方がやって来ると、佐保の河原の川霧に友が探し求めるはぐれた千鳥が一人で鳴いています。

 

歌番号 239

詞書 題しらす

詠人 人麿

原文 宇良知可久 布利久留由幾者 志良奈美乃 寸恵乃万川也万 己須可止曽美留

和歌 うらちかく ふりくるゆきは しらなみの すゑのまつやま こすかとそみる

読下 浦ちかくふりくる雪はしら浪の末の松山こすかとそ見る

解釈 海岸付近まで降り来る雪は、まるで白浪が頂を越えたことが無いと言う末の松山を越えたかのように見えます。

注意 古今和歌集「君をおきてあだし心を我が持たば末の松山波も越えなむ」を踏まえる。

 

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