集歌4513 伊蘇可氣乃 美由流伊氣美豆 氏流麻埿尓 左家流安之婢乃 知良麻久乎思母
訓読 礒影の見ゆる池(いけ)水(みず)照るまでに咲ける馬酔木(あしび)の散らまく惜しも
私訳 磯岩の影が水面に見える池の水面を輝かすほどに咲いた馬酔木の花が散っていくことが惜しいことです。
右一首、大蔵大輔甘南備伊香真人
注訓 右の一首は、大蔵大輔甘南備伊香真人
二月十日、於内相宅餞渤海大使小野田守朝臣等宴謌一首
標訓 二月十日に、内相の宅(いへ)にして渤海大使小野田守朝臣等に餞(はなむけ)して宴(うたげ)せし謌一首
集歌4514 阿乎宇奈波良 加是奈美奈妣伎 由久左久佐 都々牟許等奈久 布祢波々夜家無
訓読 青海原(あおうなはら)風波(かぜなみ)靡き行くさ来さつつむことなく船は速けむ
私訳 青海原は風に波が靡き、貴方が行くも帰るも差し障りもなく、船足は速いでしょう。
右一首、右中辨大伴宿祢家持 (未誦之)
注訓 右の一首は、右中辨大伴宿祢家持 (未だこれを誦(よ)まず)
七月五日、於式部少輔大原今城真人宅、餞因幡守大伴宿祢家持宴謌一首
標訓 七月五日に、式部少輔大原今城真人の宅(いへ)にして、因幡守大伴宿祢家持を餞(はなむけ)して宴(うたげ)せし謌一首
集歌4515 秋風乃 須恵布伎奈婢久 波疑能花 登毛尓加射左受 安比加和可礼牟
訓読 秋風の末吹き靡く萩の花ともにかざさず相(あひ)か別れむ
私訳 秋風が枝先に吹いて靡く萩の花、その花枝を共にかざしましょう。これから互いに別れて行くのだから。
右一首、大伴宿祢家持作之
注訓 右の一首は、大伴宿祢家持の之を作れり
三年春正月一日、於因幡國廳、賜饗國郡司等之宴謌一首
標訓 三年春正月一日に、因幡國(いなばのくに)の廳(ちやう)にして、饗(あへ)を國郡(くにのこほり)の司等(つかさたち)に賜(たま)はりて宴(うたげ)せし謌一首
集歌4516 新 年乃始乃 波都波流能 家布敷流由伎能 伊夜之家餘其騰
訓読 新しき年の始(はじめ)の初春の今日降る雪のいやしけ吉事(よこと)
私訳 新しい年の始めの初春の今日、その今日に降るこの雪のように、たくさん積もりあがれ、吉き事よ。
訓読 礒影の見ゆる池(いけ)水(みず)照るまでに咲ける馬酔木(あしび)の散らまく惜しも
私訳 磯岩の影が水面に見える池の水面を輝かすほどに咲いた馬酔木の花が散っていくことが惜しいことです。
右一首、大蔵大輔甘南備伊香真人
注訓 右の一首は、大蔵大輔甘南備伊香真人
二月十日、於内相宅餞渤海大使小野田守朝臣等宴謌一首
標訓 二月十日に、内相の宅(いへ)にして渤海大使小野田守朝臣等に餞(はなむけ)して宴(うたげ)せし謌一首
集歌4514 阿乎宇奈波良 加是奈美奈妣伎 由久左久佐 都々牟許等奈久 布祢波々夜家無
訓読 青海原(あおうなはら)風波(かぜなみ)靡き行くさ来さつつむことなく船は速けむ
私訳 青海原は風に波が靡き、貴方が行くも帰るも差し障りもなく、船足は速いでしょう。
右一首、右中辨大伴宿祢家持 (未誦之)
注訓 右の一首は、右中辨大伴宿祢家持 (未だこれを誦(よ)まず)
七月五日、於式部少輔大原今城真人宅、餞因幡守大伴宿祢家持宴謌一首
標訓 七月五日に、式部少輔大原今城真人の宅(いへ)にして、因幡守大伴宿祢家持を餞(はなむけ)して宴(うたげ)せし謌一首
集歌4515 秋風乃 須恵布伎奈婢久 波疑能花 登毛尓加射左受 安比加和可礼牟
訓読 秋風の末吹き靡く萩の花ともにかざさず相(あひ)か別れむ
私訳 秋風が枝先に吹いて靡く萩の花、その花枝を共にかざしましょう。これから互いに別れて行くのだから。
右一首、大伴宿祢家持作之
注訓 右の一首は、大伴宿祢家持の之を作れり
三年春正月一日、於因幡國廳、賜饗國郡司等之宴謌一首
標訓 三年春正月一日に、因幡國(いなばのくに)の廳(ちやう)にして、饗(あへ)を國郡(くにのこほり)の司等(つかさたち)に賜(たま)はりて宴(うたげ)せし謌一首
集歌4516 新 年乃始乃 波都波流能 家布敷流由伎能 伊夜之家餘其騰
訓読 新しき年の始(はじめ)の初春の今日降る雪のいやしけ吉事(よこと)
私訳 新しい年の始めの初春の今日、その今日に降るこの雪のように、たくさん積もりあがれ、吉き事よ。