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竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌4513から集歌4516まで

2023年05月24日 | 新訓 万葉集
集歌4513 伊蘇可氣乃 美由流伊氣美豆 氏流麻埿尓 左家流安之婢乃 知良麻久乎思母
訓読 礒影の見ゆる池(いけ)水(みず)照るまでに咲ける馬酔木(あしび)の散らまく惜しも
私訳 磯岩の影が水面に見える池の水面を輝かすほどに咲いた馬酔木の花が散っていくことが惜しいことです。
右一首、大蔵大輔甘南備伊香真人
注訓 右の一首は、大蔵大輔甘南備伊香真人

二月十日、於内相宅餞渤海大使小野田守朝臣等宴謌一首
標訓 二月十日に、内相の宅(いへ)にして渤海大使小野田守朝臣等に餞(はなむけ)して宴(うたげ)せし謌一首
集歌4514 阿乎宇奈波良 加是奈美奈妣伎 由久左久佐 都々牟許等奈久 布祢波々夜家無
訓読 青海原(あおうなはら)風波(かぜなみ)靡き行くさ来さつつむことなく船は速けむ
私訳 青海原は風に波が靡き、貴方が行くも帰るも差し障りもなく、船足は速いでしょう。
右一首、右中辨大伴宿祢家持 (未誦之)
注訓 右の一首は、右中辨大伴宿祢家持 (未だこれを誦(よ)まず)

七月五日、於式部少輔大原今城真人宅、餞因幡守大伴宿祢家持宴謌一首
標訓 七月五日に、式部少輔大原今城真人の宅(いへ)にして、因幡守大伴宿祢家持を餞(はなむけ)して宴(うたげ)せし謌一首
集歌4515 秋風乃 須恵布伎奈婢久 波疑能花 登毛尓加射左受 安比加和可礼牟
訓読 秋風の末吹き靡く萩の花ともにかざさず相(あひ)か別れむ
私訳 秋風が枝先に吹いて靡く萩の花、その花枝を共にかざしましょう。これから互いに別れて行くのだから。
右一首、大伴宿祢家持作之
注訓 右の一首は、大伴宿祢家持の之を作れり

三年春正月一日、於因幡國廳、賜饗國郡司等之宴謌一首
標訓 三年春正月一日に、因幡國(いなばのくに)の廳(ちやう)にして、饗(あへ)を國郡(くにのこほり)の司等(つかさたち)に賜(たま)はりて宴(うたげ)せし謌一首
集歌4516 新 年乃始乃 波都波流能 家布敷流由伎能 伊夜之家餘其騰
訓読 新しき年の始(はじめ)の初春の今日降る雪のいやしけ吉事(よこと)
私訳 新しい年の始めの初春の今日、その今日に降るこの雪のように、たくさん積もりあがれ、吉き事よ。
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万葉集 集歌4508から集歌4512まで

2023年05月23日 | 新訓 万葉集
集歌4508 多可麻刀能 努敝波布久受乃 須恵都比尓 知与尓和須礼牟 和我於保伎美加母
訓読 高円(たかまと)の野辺延ふ葛(くず)の末つひに千代に忘れむ我が王(おほきみ)かも
私訳 高円の野辺に生える葛の蔓が長く延びるように千代の後に忘れられるような我が王の御名でしょうか。
右一首、主人中臣清麿朝臣

集歌4509 波布久受能 多要受之努波牟 於保吉美乃 賣之思野邊尓波 之米由布倍之母
訓読 延ふ葛(くず)の絶えず偲はむ王(おほきみ)の見しし野辺には標(しめ)結ふべしも
私訳 野辺に延びる葛の蔓が絶えないように御偲びする王が眺められた高円の野辺に農民に荒らされないように禁制の標を結ぶべきでしょう。
右一首、右中辨大伴宿祢家持

集歌4510 於保吉美乃 都藝弖賣須良之 多加麻刀能 努敝美流其等尓 祢能未之奈加由
訓読 王(おほきみ)の継ぎて見すらし高円(たかまと)の野辺見るごとに哭(ね)のみし泣かゆ
私訳 葬られた場所から王が今も見ていられるでしょう。高円の野辺を見るたびに亡くなられたことを怨みながら泣けてしまう。
右一首、大蔵大輔甘南備伊香真人

属目山齊作謌三首
標訓 山齊(しま)を属目(み)て作れる謌三首
集歌4511 乎之能須牟 伎美我許乃之麻 家布美礼婆 安之婢乃波奈毛 左伎尓家流可母
訓読 鴛鴦(おしとり)の住む君がこの山斎(しま)今日見れば馬酔木(あしび)の花も咲きにけるかも
私訳 おしどりが棲む、私の大切な貴方のこの庭園を今日見ると、馬酔木の花も咲いていることです。
右一首、大監物御方王
注訓 右の一首は、大監物御方王(みかたのおほきみ)

集歌4512 伊氣美豆尓 可氣左倍見要氏 佐伎尓保布 安之婢乃波奈乎 蘇弖尓古伎礼奈
訓読 池(いけ)水(みず)に影さへ見えて咲きにほふ馬酔木(あしび)の花を袖に扱入(こき)れな
私訳 池の水面に影までも映して咲き誇る馬酔木の花を袖にしごき取って入れましょう。
右一首、右中辨大伴宿祢家持
注訓 右の一首は、右中辨大伴宿祢家持

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万葉集 集歌4503から集歌4507まで

2023年05月22日 | 新訓 万葉集
集歌4503 伎美我伊敝能 伊氣乃之良奈美 伊蘇尓与世 之婆之婆美等母 安加無伎弥加毛
訓読 君が家の池の白波礒に寄せしばしば見とも飽かむ君かも
試訳 中臣清麿様のお宅の池の白波が池の島の岩に寄せ返すように、何度も何度も繰り返し見たとしても見飽きることのない「宇梅乃波奈」である歌集本ですね。
右一首、右中辨大伴宿祢家持

集歌4504 宇流波之等 阿我毛布伎美波 伊也比家尓 伎末勢和我世古 多由流日奈之尓
訓読 うるはしと我が思ふ君はいや日(ひ)異(け)に来ませ我が背子絶ゆる日なしに
試訳 立派な方と私が思う貴方は、毎日でもおいでいただきたい。私の大切な「宇梅乃波奈」の歌集の世界が、一日でも絶える日がないように。
右一首、主人中臣清麿朝臣

集歌4505 伊蘇能宇良尓 都祢欲比伎須牟 乎之杼里能 乎之伎安我未波 伎美我末仁麻尓
訓読 礒の浦に常夜日も来住む鴛鴦の惜しき我が身は君がまにまに
試訳 中臣清麿様のお宅の池の岸に毎日のように来て住む鴛鴦を口惜しく思う私の心は、貴方の御心のままにしてください。お許しあれば、毎日のように通って来て、私が見たい「宇梅乃波奈」です。
右一首、治部少輔大原今城真人

依興各思高圓離宮處作謌五首
標訓 興に依りて各(おのがじし)高円の離宮(とつみや)処(ところ)を思(しの)ひて作れる歌五首
集歌4506 多加麻刀能 努乃宇倍能美也波 安礼尓家里 多々志々伎美能 美与等保曽氣婆
訓読 高円(たかまと)の野の上の宮は荒れにけり立たしし君の御代(みよ)遠そけば
私訳 高円の野の高台にある宮の屋敷は荒れてしまったようだ。屋敷を建てられた皇子の生前の時代は遠くなったので。
右一首、右中辨大伴宿祢家持

集歌4507 多加麻刀能 乎能宇倍乃美也波 安礼奴等母 多々志々伎美能 美奈和須礼米也
訓読 高円(たかまと)の峰の上の宮は荒れぬとも立たしし君の御名忘れめや
私訳 高円の高台にある宮の屋敷は荒れ果てたとしても皇子のお名前は忘れるでしょうか。
右一首、治部少輔大原今城真人

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万葉集 集歌4498から集歌4502まで

2023年05月19日 | 新訓 万葉集
集歌4498 波之伎余之 家布能安路自波 伊蘇麻都能 都祢尓伊麻佐祢 伊麻母美流其等
訓読 はしきよし今日の主人は礒松の常にいまさね今も見るごと
試訳 麗しいこの日の主人である「宇梅乃波奈」の歌集本よ、この屋敷の主人である中臣清麿様の磯の松が常緑であるように、これからも、末長く、変わらなく在ってください。今、見ている姿のように。
右一首、右中辨大伴宿祢家持

集歌4499 和我勢故之 可久志伎許散婆 安米都知乃 可未乎許比能美 奈我久等曽於毛布
訓読 我が背子しかくし聞こさば天地の神を乞(こ)ひ祈(の)み長くとぞ思ふ
試訳 私の大切な「宇梅乃波奈」である歌集本のあなたが、このようにいらっしゃるのならば、私は天地の神に乞い願い、末世までもあなたが長くあって欲しいと願います。
右一首、主人中臣清麿朝臣

集歌4500 宇梅能波奈 香乎加具波之美 等保家杼母 己許呂母之努尓 伎美乎之曽於毛布
訓読 梅の花香をかぐはしみ遠けども心もしのに君をしぞ思ふ
試訳 歌集「宇梅乃波奈」が格調高く麗しいので、和歌の世界からは縁遠い私ですが、心から「宇梅乃波奈」を大切に思います。
右一首、治部大輔市原王

集歌4501 夜知久佐能 波奈波宇都呂布 等伎波奈流 麻都能左要太乎 和礼波牟須婆奈
訓読 八千種(やちくさ)の花は移ろふ常盤(ときは)なる松のさ枝を我れは結ばな
試訳 世の移り変わりにつれて、さまざまに美しい歌の花は移り変わっていきます。この屋敷の中臣清麿様の磯の常緑の松の枝に宇梅乃波奈が永遠でありますようにと願いを込めて、私はそのを誓いを結びましょう。
右一首、右中辨大伴宿祢家持

集歌4502 烏梅能波奈 左伎知流波流能 奈我伎比乎 美礼杼母安加奴 伊蘇尓母安流香母
訓読 梅の花咲き散る春の長き日を見れども飽かぬ礒にもあるかも
試訳 大伴旅人の大宰での「烏梅の宴」を想い起こす、この屋敷の庭の梅の花が咲いて散る春の長い一日に「宇梅乃波奈」は、一日中、見ていても見飽きことがないほどにすばらしい。その「宇梅乃波奈」である歌集が中臣清麿様の屋敷にありますね。
右一首、大蔵大輔甘南備伊香真人

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万葉集 集歌4493から集歌4497まで

2023年05月18日 | 新訓 万葉集
二年正月三日、召侍従竪子王臣等、令侍於内裏之東屋垣下、即賜玉箒肆宴。于時内相藤原朝臣奉勅、宣諸王卿等、随堪、任意作謌并賦詩。仍應詔旨、各陳心緒作謌賦詩。 未得諸人之賦詩并作謌也
標訓 二年の正月三日に、侍従(じじゆう)・竪子(じゆし)・王臣等(わうしんたち)を召して、内裏(うち)の東(ひむがし)の屋の垣下に侍(さむら)はしめ、即ち玉箒(たまはばき)を賜ひて肆宴(とよのほあかり)す。時に内相藤原朝臣の勅(みことのり)を奉(たてまつ)りて、宣(のりたま)はく「諸(もろもろの)王卿等(おほきみたち)、堪(あ)ふるまにま、意(こころ)に任(まか)せて謌を作り并せて詩を賦」と。仍(よ)りて詔旨(みことのり)に應(こた)へ、各(おのおの)心緒(おもひ)を陳べて謌を作り詩を賦む。
補訓 未だ諸人(もろひと)の賦(よ)める詩并せて作れる謌とを得ず
集歌4493 始春乃 波都祢乃家布能 多麻婆波伎 手尓等流可良尓 由良久多麻能乎
訓読 始(はつ)春(はる)の初子(はつね)の今日の玉(たま)箒手(はばき)に取るからに揺らく玉の緒
私訳 始春の初子の今日の玉箒は、手に取るだけで揺れる玉の緒よ。
右一首、右中辨大伴宿祢家持作。但依大蔵政不堪奏之也
注訓 右の一首は、右中辨大伴宿祢家持の作れり。但し大蔵(おほくら)の政(まつりごと)に依りて之を奏(まを)し堪(あ)へざりき。

集歌4494 水鳥乃 可毛羽能伊呂乃 青馬乎 家布美流比等波 可藝利奈之等伊布
訓読 水鳥の鴨羽(かもは)の色の青馬(あおむま)を今日見る人は限りなしといふ
私訳 水鳥の鴨の羽の色のような青馬を今日見る人は、その命に限りがないと云います。
右一首、為七日侍宴、右中辨大伴宿祢家持、預作此謌。但依仁王會事、却以六日、於内裏召諸王卿等賜酒肆宴、給祿。因斯不奏也
注訓 右の一首は、七日に宴(うたげ)に侍(はべ)るために、右中辨大伴宿祢家持の、預(あらか)じめ此の謌を作れり。但し、仁王會(にわうゑ)の事に依りて、却(かへ)りて六日を以ちて、内裏(うち)に諸(もろもろの)王卿等(おほまえつきみたち)を召して酒を賜ひて肆宴(とよのあかり)し、祿を給ひき。これに因りて奏(もを)さざりき。

六日、内庭假植樹木、以作林帷而為肆宴謌
標訓 六日に、内(うち)の庭に假(かり)に樹木を植ゑ、以ちて林帷(かきしろ)と作(な)して、肆宴(とよのあかり)せる謌
集歌4495 打奈婢久 波流等毛之流久 宇具比須波 宇恵木之樹間乎 奈伎和多良奈牟
訓読 うち靡く春ともしるく鴬は植木の木間(このま)を鳴き渡らなむ
私訳 風に木葉が靡く春だとはっきり知られるように、鶯は植木の木々の間を啼き渡るでしょう。
右一首、右中辨大伴宿祢家持 (不奏)
注訓 右の一首は、右中辨大伴宿祢家持 (奏(もを)さず)

二月、於式部大輔中臣清麿朝臣之宅宴謌十首
標訓 二月に、式部大輔の中臣清麿朝臣の宅(いへ)にして宴(うたげ)せる歌十首
集歌4496 宇良賣之久 伎美波母安流加 夜度乃烏梅能 知利須具流麻弖 美之米受安利家流
訓読 恨めしく君はもあるか宿の梅の散り過ぐるまで見しめずありける
試訳 あなたは、何と、うらめしい人でしょう。梅の花が咲き散って実を結ぶように、お宅で保管してあった大伴旅人の「烏梅の花の宴」の歌集が、このように「宇梅乃波奈(うめのはな)」と云う歌集して実を結ぶまで見せてくださらなかったのですね。
右一首、治部少輔大原今城真人

集歌4497 美牟等伊波婆 伊奈等伊波米也 宇梅乃波奈 知利須具流麻弖 伎美我伎麻左奴
訓読 見むと言はば否と言はめや梅の花散り過ぐるまで君が来まさぬ
試訳 そうではありません。貴方が「宇梅乃波奈」を見たいとおっしゃれば、どうしていやだといいましょう。梅の花が咲き散り実になるように「宇梅乃波奈」の完成まで、あなたがおいでにならなかっただけですよ。
右一首、主人中臣清麿朝臣

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