歌番号 686 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 源経基
原文 安者礼止之 幾美多尓以者々 己比和日天 志奈无以乃知毛 於之加良奈久尓
和歌 あはれとし きみたにいはは こひわひて しなむいのちも をしからなくに
読下 あはれとしきみたにいははこひわひてしなんいのちもをしからなくに
解釈 貴方が気にかかる、それだけでも貴女が言えば、恋焦がれて死んでしまいそうな我が命も惜しくはありません。
歌番号 687
詞書 けさうし侍りける女の家のまへをわたるとて、いひいれ侍りける
詠人 よみ人しらす
原文 飛止之礼寸 於毛飛己々呂遠 止々女川々 以久多比幾美可 也止遠春久良无
和歌 ひとしれす おもふこころを ととめつつ いくたひきみか やとをすくらむ
読下 ひとしれす思ふ心をととめつついくたひ君かやとをすくらん
解釈 貴女に気付かれることも無く、恋焦がれる気持ちを心の内に留めながら、何度も貴女の屋敷の前を通り過ぎました。
歌番号 688
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 志久礼尓毛 安女尓毛安良天 幾美己不留 止之乃布留尓毛 曾天八奴礼个利
和歌 しくれにも あめにもあらて きみこふる としのふるにも そてはぬれけり
読下 しくれにも雨にもあらて君こふる年のふるにも袖はぬれけり
解釈 時雨でも雨でもありません、貴女に恋焦がれて年月を過ごすと、辛い恋の思いに流す涙で袖は濡れたのです。
歌番号 689
詞書 ちきりけることありける女につかはしける
詠人 菅原輔昭
原文 川由者可利 堂乃女之本止乃 寸幾由个者 幾恵奴者可利乃 己々地己曽寸礼
和歌 つゆはかり たのめしほとの すきゆけは きえぬはかりの ここちこそすれ
読下 露はかりたのめしほとのすきゆけはきえぬはかりの心地こそすれ
解釈 露、ほんのつゆほどに、私を頼りにするとの約束事の期日が過ぎて行くと、儚く露が消えるように、貴女との縁が立ち消えてしまうような気分になります。
歌番号 690
詞書 返し
詠人 よみ人しらす
原文 徒由者可利 太乃武留己止毛 奈幾毛乃遠 安也之也奈尓々 於毛飛遠幾个无
和歌 つゆはかり たのむることも なきものを あやしやなにに おもひおきけむ
読下 つゆはかりたのむることもなきものをあやしやなにに思ひおきけん
解釈 露、ほんのつゆほどにも、貴方を頼りにするとの約束事などありませんが、不思議なことに、貴方は何を勘違いしたのですか。