竹取翁と万葉集のお勉強

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記紀歌謡 (原文、読み下し、訓じ付) 古事記歌謡 前半部

2016年04月11日 | 資料書庫
記紀歌謡 (原文、読み下し、訓じ付)附続日本紀

古事記 歌謡 前半部 歌謡歌番 一~五十


 はじめに、「記紀歌謡」とは古事記と日本書紀に載る歌謡を示し、それを柬めたものを「記紀歌謡集」と云います。この資料はその「記紀歌謡集」を紹介するものですが、その内容は正統な教育を受けていない者が『万葉集』を鑑賞する時の補助資料として整備したものです。つまり、学問はありません。従いまして、この資料を参照される場合は、補助資料としてのみご利用下さい。それ以外の使用は推薦致しません。附として日本書紀歌謡の後に続日本紀歌謡を載せますが、これは「記紀歌謡」には含まれないものです。
さて、『万葉集』を鑑賞するときに同時代性を考えますと『古事記』や『日本書紀』に載る一字一音の万葉仮名と云う表記スタイルでのみ表記された歌謡、所謂、「記紀歌謡」を合わせて鑑賞することは有意義なことです。他方、『万葉集』は詩体歌、非詩体歌、常体歌、一字一音万葉仮名歌の四区分に代表される表記スタイルで表記された詩歌集です。原万葉集と称されるもの成立が奈良時代後期としますと、数十年も先行する『古事記』や『日本書紀』に載る歌謡の表記が一字一音万葉仮名歌だけであることは非常に興味が湧くところです。
 ただ、残念なことにインターネット上では、参考に出来るような「記紀歌謡」の資料ははありません。ほぼ、印刷・出版物を紹介するものがほとんどですし、「記紀歌謡」と云うものに対して原歌、その読み下し、さらに読み下しに対する解釈文を総合的に紹介するものはありません。つまり、歌の表記スタイルの比較を一覧できるものはインターネット上で探すことは困難です。そのため趣味の世界ではありますが、ここに個人の作業で整備した「記紀歌謡」を資料として紹介いたします。
 注意事項として、紹介する「記紀歌謡」での歌番号は『記紀歌謡集(武田祐吉校注 岩波文庫)』に従っています。そのため、『古事記』の歌謡では紹介する歌番号が『古事記(倉野憲司校注 岩波文庫)』などの標準のものと相違している可能性があります。また、資料は万葉集好きの個人が行う趣味が由来ですので、紹介する原歌の表記においてその漢字文字が新字や通字になっているものがあります。さらに解釈文についても素人でも手頃に入手が出来る『古事記(倉野憲司校注 岩波文庫)』、『日本書紀(坂本太郎他校注 岩波文庫)』、『記紀歌謡集(武田祐吉校注 岩波文庫)』などと相違するものがあります。つまり、紹介するものはこれらの写しではありません。改めてのお願いですが、趣味で行う『万葉集』の読解での参考には向きますが、他への引用や参照には推薦しません。
 また、ブログ資料庫への紹介は、ブログ文字数制限のため、記紀歌謡は古事記歌謡と日本書紀歌謡とに分け、さらにともに前半・後半に分けています。不便ではありますが、ご来場者のお手によりコピペして記紀歌謡の形でご利用いただければ幸いです。
 追記して、続日本紀の歌謡も補足して日本書紀の後半部の後に収容しました。なお、歌謡五は天平勝宝元年四月甲午朔に東大寺で為された詔から歌謡相当部分を弊ブログの責任で抜き出したものです。このため専門図書での確認を推薦致します。

記紀歌謡(及び続日本紀歌謡)
古事記 歌謡 
前半部 歌謡歌番 一~五九
後半部 歌謡歌番 六〇~百一三
日本書紀 歌謡
前半部 歌謡歌番 一~六六
後半部 歌謡歌番 六六~百二八
続日本紀 歌謡 歌謡番号 一~八

参照先資料;
・古事記(倉野憲司校注 岩波文庫)
・日本書紀(坂本太郎他校注 岩波文庫)
・古事記(維基文庫 データベース:https://zh.wikisource.org/wiki/古事記)
・日本書紀(朝日新聞社 データベース:http://www.j-texts.com/sheet/shoki.html)
・続日本紀(朝日新聞社 データベース:http://www.j-texts.com/sheet/shoki.html)
・記紀歌謡集(武田祐吉校注 岩波文庫)


古事記 歌謡 
前半部 歌謡歌番 一~五十

古事記 歌謡一
原歌 夜久毛多都 伊豆毛夜幣賀岐 都麻碁尾爾 夜幣賀岐都久流 曾能夜幣賀岐袁
読下 やくもたつ いづもやへがき つまごみに やへがきつくる そのやへがきを
解釈 八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を

古事記 歌謡二
原歌 夜知富許能 迦微能美許登波 夜斯麻久爾 都麻麻岐迦泥弖 登富登富斯 故志能久邇邇 佐加志賣袁 阿理登岐加志弖 久波志賣遠 阿理登伎許志弖 佐用婆比邇 阿理多多斯 用婆比邇 阿理迦用婆勢 多知賀遠母 伊麻陀登加受弖 淤須比遠母 伊麻陀登加泥婆 遠登賣能 那須夜伊多斗遠 淤曾夫良比 和何多多勢禮婆 比許豆良比 和何多多勢禮婆 阿遠夜麻邇 奴延波那伎奴 佐怒都登理 岐藝斯波登與牟 爾波都登理 迦祁波那久 宇禮多久母 那久那留登理加 許能登理母 宇知夜米許世泥 伊斯多布夜 阿麻波勢豆加比 許登能 加多理其登母 許遠婆
読下 やちほこの かみのみことは やしまくに つままきかねて とほとほし こしのくにに さかしめを ありときかして くはしめを ありときこして さよばひに ありたたし よばひに ありかよはせ たちがをも いまだとかずて おすひをも いまだとかねば をとめの なすやいたとをおそぶらひわがたたせればひこづらひ わがたたせればあをやまにぬえはなきぬさのつとりきぎしはとよむにはつとりかけはなくうれたくもなくなるとりかこのとりもうちやめこせねいしたふやあまはせつかひことのかたりこともこをば
解釈 八千矛の 神の命は 八島国 妻枕きかねて 遠遠し 高志の国に 賢し女を 有りと聞かして 麗し女を 有りと聞こして さ婚ひに あり立たし 婚ひに あり通はせ 大刀が緒も いまだ解かずて 襲をも いまだ解かねば 嬢子の 寝すや板戸を押そぶらひ 我が立たせれば 引こづらひ 我が立たせれば青山に 鵺は鳴きぬ さ野つ鳥 雉はとよむ 庭つ鳥 鶏は鳴く 心痛くも 鳴くなる鳥か この鳥も 打ち止めこせね いしたふや 天馳使 事の 語り言も 是をば

古事記 歌謡三
原歌 夜知富許能 迦尾能美許等 奴延久佐能 賣邇志阿礼婆 和何許許呂 宇良須能登理叙 伊麻許曾婆 和杼理邇阿良米 能知波 那杼理爾阿良牟遠 伊能知波 那志勢多麻比曾 伊斯多布夜 阿麻波世豆迦比 許登能 加多理碁登母 許遠婆
読下 やちほこの かみのみこと ぬえくさの めにしあれば わがこころ うらすのとりそ いまこそはわどりにあらめ のちは などりにあらむを いのちは なしせたまひそ いしたふや あまはせつかひ ことのかたりことも こをば
解釈 八千矛の 神の命 ぬえ草の 女にしあれば 我が心 浦渚の鳥ぞ 今こそは 我鳥にあらめ 後は 汝鳥にあらむを 命は な殺せたまひそ いしたふや 天馳使 事の 語言も 是をば

古事記 歌謡四
原歌 阿遠夜麻邇 比賀迦久良婆 奴婆多麻能 用波伊伝那牟 阿佐比能 恵美佐加延岐弖 多久豆怒能 斯路岐多陀牟岐 阿和由岐能 和加夜流牟泥遠 曾陀多岐 多多岐麻那賀理 麻多麻伝 多麻伝佐斯麻岐 毛毛那賀爾 伊波那佐牟遠 阿夜爾 那古斐支許志 夜知富許能 迦尾能美許登 許登能 迦多理碁登母 許遠婆
読下 あをやまに ひがかくらば ぬばたまの よはいでなむ あさひの ゑみさかえきて たくつなの しろきただむき あわゆきの わかやるむねを そだたき たたきまながり またまで たまでさしまき ももながに いはなさむを あやに なこひきこし やちほこの かみのいのち ことのかたりことも こをば
解釈 青山に 日が隠らば ぬばたまの 夜は出でなむ 朝日の 笑み栄え来て 栲綱の 白き腕 沫雪の 若やる胸を そだたき たたきまながり 真玉手 玉手さし枕き 百長に 寝は寝さむを あやに な恋ひ聞こし 八千矛の 神の命 事の 語り言も 是をば

古事記 歌謡五
原歌 奴婆多麻能 久路岐美祁斯遠 麻都夫佐爾 登理與曾比 淤岐都登理 牟那美流登岐 波多多藝母 許禮婆布佐波受 幣都那美 曾邇奴岐宇弖 蘇邇杼理能 阿遠岐美祁斯遠 麻都夫佐邇 登理與曾比 於岐都登理 牟那美流登岐 波多多藝母 許母布佐波受 幣都那美 曾邇奴棄宇弖 夜麻賀多爾 麻岐斯 阿多尼都岐 曾米紀賀斯流邇 斯米許呂母遠 麻都夫佐邇 登理與曾比 淤岐都登理 牟那美流登岐 波多多藝母 許斯與呂志 伊刀古夜能 伊毛能美許等 牟良登理能 和賀牟禮伊那婆 比氣登理能 和賀比氣伊那婆 那迦士登波 那波伊布登母 夜麻登能 比登母登須須岐 宇那加夫斯 那賀那加佐麻久 阿佐阿米能 佐疑理邇多多牟敍 和加久佐能 都麻能美許登 許登能 加多理碁登母 許遠婆
読下 ぬばたまの くろきみねしを まつふさに とりよそひ をきつとり むなみるとき はたたぎも こればふさはず へつなみ そにぬきうて そにとりの あをきみねしを まつふさに とりよそひ をきつとり むなみるとき はたたぎも こもふさはず へつなみ そにぬきうて やまがたに まきしあたねつき そめきがしるに しめころもを まつふさに とりよそひ をきつとり みなみるとき はたたぎも こしよろし いとこやの いものみこと むらとりの わがぬれいなば ひけとりの わがひけいなば なかしとは なはいふとも やまとの ひともとすすき うなかふし なかなかさまく あさあめの さぎちにたたぬそ わかくさの つまのみこと ことの かたりごとも こをば
解釈 ぬばたまの 黒く御衣を まつぶさに 取り装ひ 沖つ鳥 胸見る時 はたたぎも これは適さず 辺つ波 そに脱き棄て そに鳥の 青き御衣を まつぶさに 取り装ひ 沖つ鳥 胸見る時 はたたぎも こも適はず 辺つ波 そに脱き棄て 山県に 蒔きし あたね舂き 染木が汁に 染め衣を まつぶさに 取り装ひ 沖つ鳥 胸見る時 はたたぎも 此し宜し いとこやの 妹の命 群鳥の 我が群れ往なば 引け鳥の 我が引け往なば 泣かじとは 汝は言ふとも 山処の 一本薄 項傾し 汝が泣かさまく 朝雨の 霧に立たむぞ 若草の 妻の命 事の 語り言も 是をば

古事記 歌謡六
原歌 夜知富許能 加尾能美許登夜 阿賀淤富久邇奴斯 那許曾波 遠邇伊麻世婆 宇知尾流 斯麻能佐岐耶岐 加岐尾流 伊蘇能佐岐淤知受 和加久佐能 都麻母多勢良米 阿波母與 賣邇斯阿礼婆 那遠岐弖 遠波那志 那遠岐弖 都麻波那斯 阿夜加岐能 布波夜賀斯多爾 牟斯夫須麻 爾古夜賀斯多爾 多久夫須麻 佐夜具賀斯多爾 阿和由岐能 和加夜流牟泥遠 多久豆怒能 斯路岐多陀牟岐 曾陀多岐 多多岐麻那賀理 麻多麻伝 多麻伝佐斯麻岐 毛毛那賀邇 伊遠斯那世 登與美岐 多弖麻都良世
読下 やちほこの かみのみことや わがをふくにぬし なこそは をにいませば うちみる しまのさきさき かきみる いそのさきをちず つまもたせらめ あはもよ めにしあれば なをきて をはなし なをきて つまはなし あやかきの ふはやがしたに むきふすま にこやかしたに たくふすま さやぐかしたに あわゆきの わかやるむねを たくずぬの しろきただむき そだたき たたきまなかり またまて たまてさしまき ももなかに いをしなせ とよみき たてまつらせ
解釈 八千矛の 神の命や 吾が大国主 汝こそは 男に坐せば 打ち廻る 島の埼埼 かき廻る 磯の埼落ちず 若草の 妻持たせらめ 吾はもよ 女にしあれば 汝を除て 男は無し 汝を除て 夫は無し 綾垣の ふはやが下に 苧衾 柔やが下に 栲衾 さやぐが下に 沫雪の 若やる胸を 栲綱の 白き腕 そだたき たたきまながり 真玉手 玉手さし枕き 百長に 寝をし寝せ 豊御酒 奉らせ

古事記 歌謡七
原歌 阿米那流夜 淤登多那婆多能 宇那賀世流 多麻能美須麻流 美須麻流邇 阿那陀麻波夜 美多邇 布多和多良須 阿治志貴多迦比古泥能迦尾曾
読下 あめなるや をとたなばたの うなかせる たまのみすまる みすまるに あなだなはや みたに ふたわたらす あじしきたかひこねのかみそ
解釈 天なるや 弟棚機の 項がせる 玉の御統 御統に 足玉はや み谷 二渡らす 阿遲志貴高日子根のぞ

古事記 歌謡八
原歌 阿加陀麻波 袁佐閇比迦禮杼 斯良多麻能 岐美何余曾比斯 多布斗久阿理祁理
読下 あかだまは をさへひかれど しらたまの きみかよそひし たふとくありけり
解釈 赤玉は 緒さへ光れど 白玉の 君が装し 貴くありけり

古事記 歌謡九
原歌 意岐都登理 加毛度久斯麻邇 和賀韋泥斯 伊毛波和須禮士 余能許登碁登邇
読下 をきつとり かもつくしまに わかいねし いもはわすれし よのことごとに
解釈 沖つ鳥 鴨著く島に 我が率寝し 妹は忘れじ 世のことごとに

古事記 歌謡十
原歌 宇陀能多加紀爾 志藝和那波留 和賀麻都夜 志藝波佐夜良受 伊須久波斯 久治良佐夜流 古那美賀 那許波佐婆 多知曾婆能 尾能那祁久袁 許紀志斐惠泥 宇波那理賀 那許婆佐婆 伊知佐加紀 尾能意富祁久袁 許紀陀斐惠泥 畳畳(音引) 志夜胡志夜 此者伊能碁布曾(此五字以音) 阿阿(音引) 志夜胡志夜 此者嘲咲者也
読下 うだの たかきに しぎわなはる わがまつや しぎはさやらず いすくはし くぢらさやる こなみか なこはさば たちそばの みのなけくを こきしひゑね うはなりが なこばさば いちさかき みのをふけくを こきだひゑね ええ しやこしや こはいのごふそ ああ しやこしや こはちさはや
解釈 宇陀の 高城に 鴫罠張る 我が待つや 鴫は障らず いすくはし 鯨障る 古妻が 肴乞はさば たちそばの 実の無けくを こきしひゑね 後妻が 肴乞はさば いちさかき 実の多けくを こきだひゑね ええ しやこしや こはいのごふそ ああ しやこしや こは嘲咲ふぞ

古事記 歌謡十一
原歌 意佐賀能 意富牟廬夜爾 比登佐波爾 岐伊理袁理 比登佐波爾 伊理袁理登母 美都美都斯 久米能古賀 久夫都都伊 伊斯都都伊母知 宇知弖斯夜麻牟 美都美都斯 久米能古良賀 久夫都都伊 伊斯都都伊母知 伊麻宇多婆余良斯
読下 をさかの をふむろやに ひとさはに きいりをり ひとさはに いりをりとも みつみつし くめのこが くふつつい いしつついもち うちてしやまむ みつみつし くめのこらか くふつつい いしつついもち いまうたばよらし
解釈 忍坂の 大室屋に 人多に 来入り居り 人多に 入り居りとも みつみつし 久米の子が 頭椎い 石椎いもち 撃ちてしやまむ みつみつし 久米の子らが 頭椎い 石椎いもち 今撃たば宣し

古事記 歌謡十二
原歌 美都美都斯 久米能古良賀 阿波布爾波 賀美良比登母登 曾泥賀母登 曾泥米都那藝弖 宇知弖志夜麻牟
読下 みつみつしくめのこらがあはふにはかみらひともとそねがもとそねめつなぎてうちてしやまむ
解釈 厳々し 久米の子らが 粟生には 臭韮一本 そねが本 そね芽繋ぎて 撃ちてしやまむ

古事記 歌謡十三
原歌 美都美都斯 久米能古良賀 加岐母登爾 宇惠志波士加美 久知比比久 和禮波和須禮志 宇知弖斯夜麻牟
読下 みつみつしくめのこらがかきもとにうゑしはしかみくちひひくわれはわすれしうちてしやまむ
解釈 厳々し 久米の子らが 垣下に 植ゑし椒 口ひひく 吾は忘れじ 撃ちてしやまむ

古事記 歌謡十四
原歌 加牟加是能 伊勢能宇美能 意斐志爾 波比母登富呂布 志多陀美能 伊波比母登富理 宇知弖志夜麻牟
読下 かみかせのいせのうみのおひしにはひもとほろふしただみのいはひもとほりうちてしやまむ
解釈 神風の 伊勢の海に 生石に 這ひもとほろふ 細螺の い這ひもとほり 撃ちてしやまむ

古事記 歌謡十五
原歌 多多那米弖 伊那佐能夜麻能 許能麻用母 伊由岐麻毛良比 多多加閇婆 和禮波夜惠奴 志麻都登理 宇上加比賀登母 伊麻須氣爾許泥
読下 たたなめて いなさのやまを このまよも いゆきまもらひ たたかへば われはゑぬ しまつとりうかかひがとも いますけにこね
解釈 楯並めて 伊耶佐の山の 木の間よも い行きまもらひ 戦へば 吾はや飢ぬ 島つ鳥 鵜養が伴 今助けに来ぬ

古事記 歌謡十六
原歌 夜麻登能 多加佐士怒袁 那那由久 袁登賣杼母 多禮袁志摩加牟
読下 やまとの たかさじのを ななゆく をとめとも たれをしまかむ
解釈 倭の 高佐士野を 七行く 媛女ども 誰をしまかむ

古事記 歌謡十七
原歌 賀都賀都母 伊夜佐岐陀弖流 延袁斯麻加牟
読下 かつかつも いやさきだてる えをしまはむ
解釈 かつがつも いや先立てる 兄をしまかむ

古事記 歌謡十八
原歌 阿米都都 知杼理麻斯登登 那杼佐祁流斗米
読下 あめつつ ちどりましとと などさけるとめ
解釈 天地 千鳥真鵐 など裂ける利目

古事記 歌謡十九
原歌 袁登賣爾 多陀爾阿波牟登 和加佐祁流斗米
読下 をとめに ただにあはむと わかさけるとめ
解釈 媛女に 直に逢はむと 我が黥ける利目

古事記 歌謡二〇
原歌 阿斯波良能 志祁志岐袁夜邇 須賀多多美 伊夜佐夜斯岐弖 和賀布多理泥斯
読下 あしはらの しねしきをやに すかたたみ いやさやしきて わかふたりねし
解釈 葦原の 穢しき小屋に 菅畳 いやさや敷きて 我が二人寝し

古事記 歌謡二一
原歌 佐韋賀波用 久毛多知和多理 宇泥備夜麻 許能波佐夜藝奴 加是布加牟登須
読下 さゐかはよ くもたちわたり うねびやま このはさやげぬ かせふかむとす
解釈 狭井河よ 雲立ちわたり 畝傍山 木の葉さやぎぬ 風吹かむとす

古事記 歌謡二二
原歌 宇泥備夜麻 比流波久毛登韋 由布佐禮婆 加是布加牟登曾 許能波佐夜牙流
読下 うねびやま ひるはくもとゐ ゆふされば かせふかむとそ このはさやげる
解釈 畝傍山 昼は雲とゐ 夕されば 風吹かぬとそ 木の葉さやげる

古事記 歌謡二三
原歌 古波夜 美麻紀伊理毘古波夜 美麻紀伊理毘古波夜 意能賀袁袁 奴須美斯勢牟登 斯理都斗用 伊由岐多賀比 麻幣都斗用 伊由岐多賀比 宇迦迦波久 斯良爾登 美麻紀伊理毘古波夜
読下 こはや みまきいりひこはや みまきいりひこはや をのかをを ぬすみしせむと しりつとよ いゆきたかひ まへつとよ いゆきたかひ うかかはく しらにと みまきいりひこはや
解釈 此はや 御真木入彦はや 御真木入彦はや おのが緒を 盗み殺せむと 後つ戸よ い行きたがひ 前つ戸よ い行きたがひ うかかはく 知らにと 御真木入彦はや

古事記 歌謡二四
原歌 夜都米佐須 伊豆毛多祁流賀 波祁流多知 都豆良佐波麻岐 佐味那志爾 阿波禮
読下 やつめさす いずもたけるか はけるたち つずらさはまき さみなしに あはれ
解釈 やつめさす 出雲建が 佩ける大刀 葛多卷き さ身無しに あはれ

古事記 歌謡二五
原歌 佐泥佐斯 佐賀牟能袁怒邇 毛由流肥能 本那迦邇多知弖 斗比斯岐美波母
読下 さねさし さかむのをのに もゆるひの ほなかにたちて とひしきみはも
解釈 さねさし 相模の小野に 燃ゆる火の 火中に立ちて 問ひし君はも

古事記 歌謡二六
原歌 邇比婆理 都久波袁須疑弖 伊久用加泥都流
読下 にひばり つくはをすぎて いくよかねつる
解釈 新治 筑波を過ぎて 幾夜か寝つる

古事記 歌謡二七
原歌 迦賀那倍弖 用邇波許許能用 比邇波登袁加袁
読下 かがなひて よにはここのよ にひはとをかを
解釈 日々並べて 夜には九夜 日には十日を

古事記 歌謡二八
原歌 比佐迦多能 阿米能迦具夜麻 斗迦麻邇 佐和多流久毘 比波煩曾 多和夜賀比那袁 麻迦牟登波 阿礼波須禮杼 佐泥牟登波 阿礼波意母閇杼 那賀祁勢流 意須比能須蘇爾 都紀多知邇祁理
読下 ひさかたの あめのかくやま とかまに さわたるくひ ひはほそ たわやかひなを まかむとは あれはすれど さねむとは あれはをもへど なかけせる をすひのすそに つきたちにけり
解釈 ひさかたの 天の香具山 とかまに さ渡る鵠 弱細 手弱腕を 枕かむとは 吾はすれど さ寝むとは 吾は思へど 汝が着せる 襲の裾に 月たちにけり

古事記歌謡二九
原歌 多迦比迦流 比能美古 夜須美斯志 和賀意富岐美 阿良多麻能 登斯賀岐布禮婆 阿良多麻能 都紀波岐閇由久 宇倍那宇倍那 岐美麻知賀多爾 和賀祁勢流 意須比能須蘇爾 都紀多多那牟余
読下 たかひかる ひのみこ やすみしし わかをふきみ あらたまの としかきふれば あらたまの つきはきへゆく うへな うへな きみまちかたに わかけせる をすひのすそに つきたたなむと
解釈 高光る 日の御子 やすみしし 我が大君 あらたまの 年が来経れば あらたまの 月は来経行く うべな うべな 君待ち難に 我が着せる 襲の裾に 月たたなむよ

古事記 歌謡三〇
原歌 袁波理邇 多陀邇牟迦幣流 袁都能佐岐那流 比登都麻都 阿勢袁 比登都麻都 比登邇阿理勢婆 多知波氣麻斯袁 岐奴岐勢麻斯袁 比登都麻都 阿勢袁
読下 をはりに ただにむかへる をつのさきなる ひとつまつ あせを ひとつまつ ひとにありせば たちはけましを きぬきせましを ひとるまつ あせを
解釈 尾張に 直に向かへる 尾津の前なる 一つ松 吾兄を 一つ松 人にありせば 大刀佩けましを 衣着せましを 一つ松 吾兄を

古事記 歌謡三一
原歌 夜麻登波 久爾能麻本呂婆 多多那豆久 阿袁加岐 夜麻碁母禮流 夜麻登志宇流波斯
読下 やまとは くにのまほろば たたなずく あをかき やまごもれる やまとしうるはし
解釈 大和は 国のまほろば たたなづく 青垣 山ごもれる 大和しうるはし

古事記 歌謡三二
原歌 伊能知能 麻多祁牟比登波 多多美許母 幣具理能夜麻能 久麻加志賀波袁 宇受爾佐勢曾能古
読下 いのちの またけむひとは たたみこも へくりのやまの くまかしかはを うずにさせそのこ
解釈 命の 全けむ人は 畳薦 平群の山の 熊樫が葉を 髻華に挿せその子

古事記 歌謡三三
原歌 波斯祁夜斯 和岐幣能迦多用 久毛韋多知久母
読下 はしけやし わきへのかたよ くもゐたちくも
解釈 愛しけやし 吾家の方よ 雲居たち来も

古事記 歌謡三四
原歌 袁登賣能 登許能辨爾 和賀淤岐斯 都流岐能多知 曾能多知波夜
読下 をとめの とこのへに わかwきし つるきのたち そのたちはや
解釈 乙女の 床の辺に 我が置きし 剣の大刀 その大刀はや

古事記 歌謡三五
原歌 那豆岐能多能 伊那賀良邇 伊那賀良爾 波比母登富呂布 登許呂豆良
読下 なずきのたの いなからに いなからに はひもとほろふ ところずら
解釈 那豆岐の田の 稲殻に 稲殻に 這ひ廻ろふ 野老鬘

古事記 歌謡三六
原歌 阿佐士怒波良 許斯那豆牟 蘇良波由賀受 阿斯用由久那
読下 あさしのはら しきなずむ そらはゆかず あしよゆくな
解釈 浅小竹原 腰沈む 空は行かず 足よ行くな

古事記 歌謡三七
原歌 宇美賀由氣婆 許斯那豆牟 意富迦波良能 宇惠具佐 宇美賀波 伊佐用布
読下 うみかゆけば こしなずむ をふかはらの うゑぐさ うみかは いさよふ
解釈 海処行けば 腰なづむ 大河原の 植え草 海処は いさよふ

古事記 歌謡三八
原歌 波麻都知登理 波麻用波由迦受 伊蘇豆多布
読下 はまつちとり はまよはゆかず いそづたふ
解釈 浜つ千鳥 浜よは行かず 磯伝ふ

古事記 歌謡三九
原歌 伊奢阿藝 布流玖麻賀 伊多弖淤波受波 邇本杼理能 阿布美能宇美邇 迦豆岐勢那和
読下 いさあぎ ふるくまか いたてをはずは にほとりの あふみのうみに かづきせなわ
解釈 いざ吾君 振熊が 痛手負はずは 鳰鳥の 淡海の海に 潜きせなわ

古事記 歌謡四〇
原歌 許能美岐波 和賀美岐那良受 久志能加美 登許余邇伊麻須 伊波多多須 須久那美迦尾能 加牟菩岐 本岐玖琉本斯 登余本岐 本岐母登本斯 麻都理許斯 美岐敍 阿佐受袁勢 佐佐
読下 このみきは わかみきならず くしのかみ とこよにいます いはたたす すくなみかみの かむすき ほきくるほし とよほき ほきもとほし まつりこし みきそ あさずをせ ささ
解釈 この御酒は わが御酒ならず 酒の司 常世に坐す 石立たす 少御の 噛む醸き 壽き来る欲し 豊壽ぎ 壽き廻し 奉り来し 御酒ぞ 飽さず食せ 酒

古事記 歌謡四一
原歌 許能美岐袁 迦美祁牟比登波 曾能都豆美 宇須邇多弖弖 宇多比都都 迦美祁禮迦母 麻比都都 迦美祁禮加母 許能美岐能 美岐能 阿夜邇宇多陀怒斯 佐佐
読下 このみきを かみけむひとは そのつづみ うすにたてて うたひつつ かみけれかも まひつつ かみけれかも このみきの みきの あやにうただのし ささ
解釈 この御酒を 釀みけむ人は その鼓 臼に立てて 歌ひつつ 釀みけれかも 舞ひつつ 釀みけれかも この御酒の 御酒の あやに歌楽し 酒

古事記 歌謡四二
原歌 知婆能 加豆怒袁美禮婆 毛毛知陀流 夜邇波母美由 久爾能富母美由
読下 ちばの かづのをみれば ももちたる やにはもみゆ くにのほもみゆ
解釈 千葉の 葛野を見れば 百千足る 家庭も見ゆ 国の秀も見ゆ

古事記 歌謡四三
原歌 許能迦邇夜 伊豆久能迦邇 毛毛豆多布 都奴賀能迦邇 余許佐良布 伊豆久邇伊多流 伊知遲志麻 美志麻邇斗岐 美本杼理能 迦豆伎伊岐豆岐 志那陀由布 佐佐那美遲袁 須久須久登 和賀伊麻勢婆夜 許波多能美知邇 阿波志斯袁登賣 宇斯呂伝波 袁陀弖呂迦母 波那美波 志比比斯那須 伊知比韋能 和邇佐能邇袁 波都邇波 波陀阿可良氣美 志波邇波 邇具漏岐由惠 美都具理能 曾能那迦都爾袁 加夫都久 麻肥邇波阿弖受 麻用賀岐 許邇加岐多禮 阿波志斯袁美那 迦母賀登 和賀美斯古良 迦久母賀登 阿賀美斯古邇 宇多多氣陀邇 牟迦比袁流迦母 伊蘇比袁流迦母
読下 このかにや いづくのかに ももづたふ つのかのかに よこさらふ いづくにいたる いちぢしま みしまにつき みほとりの かづきいきづき しなだゆふ ささなみぢを すくすくと わかいませばや こはたのみちに あはししをとめ うしろては をたてろかも はなみは しひひしなす いちひゐの わにさのにを はつには はたあからけみ しはには にくろきゆゑ みつくりの そのなかつにを かふつく まひにはあてず こにかきたれ あはししをみな かむかとわかみしこら かくもかと あかみしこに うたたけたに むかひをるかも いそひをるかも
解釈 この蟹や 何処の蟹 百伝ふ 角鹿の蟹 横去らふ 何処に到る 伊知遲島 美島に著き 鳰鳥の 潜き息づき しなだゆふ 佐佐那美路を すくすくと 我が行ませばや 木幡の道に 遇はしし嬢子 後姿は 小盾ろかも 歯並みは 椎菱如す 櫟井の 丸邇坂の土を 初土は 膚赤らけみ 底土は 丹き故 三つ栗の その中つ土を かぶつく 真火には當てず 眉書き 濃に書き垂れ 遇はしし女人 かもがと 我が見し子ら かくもがと 我が見し子に うたたけだに 對ひ居るかも い副ひ居るかも

古事記 歌謡四四
原歌 伊耶古杼母 怒毘流都美邇 比流都美邇 和賀由久美知能 迦具波斯 波那多知婆那波 本都延波 登理韋賀良斯 支豆延波 比登登理賀良斯 美都具理能 那迦都延能 本都毛理 阿加良袁登賣袁 伊耶佐佐婆 余良斯那
読下 いさことも のひるつみに ひるつみに わかゆくみちの かくはし はなたちばなは ほつえは とりゐからし しづえは ひととりからし みつくりの なかつえの ほつもり あからをとめを いなささば よらしな
解釈 いざ子供 野蒜摘みに 蒜摘みに 我が行く道の 香ぐはし 花橘は 上枝は 鳥居枯らし 下枝は 人取り枯らし 三つ栗の 中つ枝の ほつもり 赤ら孃子を いなささは 良らしな

古事記 歌謡四五
原歌 美豆多麻流 余佐美能伊氣能 韋具比宇知賀 佐斯祁流斯良邇 奴那波久理 波閇祁久斯良邇 和賀許許呂志叙 伊夜袁許邇斯弖 伊麻叙久夜斯岐
読下 みづたまる よさみのいけの ゐくひうちか さしけるしらに のなはくり はへけくしらに わかこころしそ いやをこにして いまそくやしき
解釈 水溜まる 依網の池の 堰杙打ちが 挿しける知らに 蓴繰り 延へけく知らに 我が心しぞ いや愚にして 今ぞ悔しき

古事記 歌謡四六
原歌 美知能斯理 古波陀袁登賣袁 迦尾能碁登 岐許延斯迦杼母 阿比麻久良麻久
読下 みちのしり こはだをとめを かみのごと きこえしかとも あひまくらまく
解釈 道の後 古波陀孃子を 雷の如 聞こえしかども 相枕枕く

古事記 歌謡四七
原歌 美知能斯理 古波陀袁登賣波 阿良蘇波受 泥斯久袁斯叙母 宇流波志美意母布
読下 みちのしり こはだをとめは あらそはず ねしくをしそも うるはしみをもふ
解釈 道の後 古波陀孃子は 争そはず 寝しくをしぞも 麗しみ思ふ

古事記 歌謡四八
原歌 本牟多能 比能美古 意富佐耶岐 意富佐耶岐 波加勢流多知 母登都流藝 須惠布由 布由紀能 須 加良賀志多紀能 佐夜佐夜
読下 ほむたの ひのみこ をふささき をふささき はかせるたち もとつるぎ すゑふゆ ふゆきの すからかしたきの さよさよ
解釈 誉田の 日の御子 大雀 大雀 佩かせる御刀 本吊ぎ 末振ゆ 冬木の 素幹が下木の さやさや

古事記 歌謡四九
原歌 加志能布邇 余久須袁都久理 余久須邇 迦美斯意富美岐 宇麻良爾 岐許志母知袁勢 麻呂賀知
読下 かしのふに よくすをつくり よくすに かみしをふきみ うまらに きこしもちをせ まろかち
解釈 白檮の生に 横臼を作り 横臼に 釀みし大御酒 美味らに 聞こしもち飲せ まろが父

古事記 歌謡五〇
原歌 須須許理賀 迦美斯美岐邇 和禮惠比邇祁理 許登那具志 惠具志爾 和禮惠比邇祁理
読下 すすこりか かみしみきに われゑひにけり ことなくし ゑくしに われゑひにけり
解釈 須須許理が 釀みし御酒に 我酔ひにけり ことなくし ゑくしに 我酔ひにけり

古事記 歌謡五一
原歌 知波夜夫流 宇遲能和多理邇 佐袁斗理邇 波夜祁牟比登斯 和賀毛古邇許牟
読下 ちはやふる うぢのわたりに さをとりに はやけむひとし わかもこにこむ
解釈 ちはやぶる 宇治の渡りに 棹取りに 速けむ人し 我が仲間に来む

古事記 歌謡五二
原歌 知波夜比登 宇遲能和多理邇 和多理是邇 多弖流 阿豆佐由美麻由美 伊岐良牟登 許許呂波母閇杼 伊斗良牟登 許許呂波母閇杼 母登幣波 岐美袁淤母比伝 須惠幣波 伊毛袁淤母比伝 伊良那祁久 曾許爾淤母比伝 加那志祁久 許許爾淤母比伝 伊岐良受曾久流 阿豆佐由美麻由美
読下 ちはやひと うぢのわたりに わたりせに たてる あづさゆみまゆみ いきらむと こころはもへと いとろむと こころはもへと もとへは きみををもひて すゑへは いもををもひて いらなけく そこにをもひて かなしけく ここにをもひて いきらずそくる あづさゆみまゆみ
解釈 ちはや人 宇治の渡りに 渡り瀬に 立てる 梓弓檀 い伐らむと 心は思へど い取らむと 心は思へど 本方は 君を思ひ出 末方は 妹を思ひ出 苛けく 其処に思ひ出 愛しけく 此処に思ひ出 い伐らずそ来る 梓弓檀

古事記 歌謡五三
原歌 淤岐幣邇波 袁夫泥都羅羅玖 久漏耶夜能 摩佐豆古和藝毛 玖邇幣玖陀良須
読下 をきへには をふねつららく くろさやの まさづこわげも くにへくたらす
解釈 沖方には 小船連らく 鞘の まさづ子我妹 国へ下らす

古事記 歌謡五四
原歌 淤志弖流夜 那爾波能佐岐用 伊伝多知弖 和賀久邇美禮婆 阿波志摩 淤能碁呂志摩 阿遲摩佐能 志麻母美由 佐氣都志摩美由
読下 をしてるや なにはのさきよ いてたちて わかくにみれば あはしま をのごろしま あぢすさのしまもみゆ さけつしまみゆ
解釈 押し照るや 難波の崎よ 出で立ちて 我が国見れば 淡島 淤能碁呂島 檳椰の 島も見ゆ 離つ島見ゆ

古事記 歌謡五五
原歌 夜麻賀多邇 麻祁流阿袁那母 岐備比登登 等母邇斯都米婆 多怒斯久母阿流迦
読下 やまかたに まけるあをなも きびひとと ともにしつめば たのしくもあるか
解釈 山縣に 蒔ける青菜も 吉備人と 共にし摘めば 楽しくもあるか

古事記 歌謡五六
原歌 夜麻登幣邇 爾斯布岐阿宜弖 玖毛婆那禮 曾岐袁理登母 和禮和須禮米夜
読下 やまとへに にしふきあぎて くもばなれ そきをりとも われわすれめや
解釈 倭方に 西吹き上げて 雲離れ 退き居りとも 我忘れめや

古事記 歌謡五七
原歌 夜麻登幣邇 由玖波多賀都麻 許母理豆能 志多用波閇都都 由久波多賀都麻
読下 やまとへに ゆくはたがつま こもりづの したよはへつつ ゆくはたがつま
解釈 倭方に 行くは誰が妻 隠り処の 下よ延へつつ 行くは誰が妻

古事記 歌謡五八
原歌 都藝泥布夜 夜麻志呂賀波袁 迦波能煩理 和賀能煩禮婆 迦波能倍邇 淤斐陀弖流 佐斯夫袁 佐斯夫能紀 斯賀斯多邇 淤斐陀弖流 波毘呂 由都麻都婆岐 斯賀波那能 弖理伊麻斯 芝賀波能 比呂理伊麻須波 淤富岐美呂迦母
読下 つぎねふや やましろかはを かはのほり わかのほれば かはのへに をひたてる さしふを さしふのき しかしたに をひたてる はひろ ゆつまつばき しかはなの てりいまし しかはの ひろりいますは をほきみろかも
解釈 つぎねふや 山代河を 河上り我が上れば 河の上に 生い立てる 烏草樹を 烏草樹の木 其が下に生い立てる 葉広 斎つ真椿 其が花の 照り坐し 其が葉の 広り坐すは 大君ろかも

古事記 歌謡五九
原歌 都藝泥布夜 夜麻志呂賀波袁 美夜能煩理 和賀能煩禮婆 阿袁邇余志 那良袁須疑 袁陀弖 夜麻登袁須疑 和賀美賀本斯久邇波 迦豆良紀多迦美夜 和藝幣能阿多理
読下 つぎねふや やましろかはを みやのほり わかのほれば あをによし ならをすぎ をだて やまとをすぎ わかみかほしくには かづらきたかみや わぎへのあたり
解釈 つぎねふや 山代河を 宮上り 我が上れば あをによし 奈良を過ぎ 小楯 倭を過ぎ 我が 見がほし国は 葛城 高宮 我家の辺


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資料参照先 (作業員)
2018-08-30 19:14:38
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