竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

再読、今日のみそひと謌 金

2018年11月30日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 金

集歌2997 石上 振之高橋 高々尓 妹之将待 夜曽深去家留
訓読 石上(いそのかみ)布留(ふる)し高橋高々に妹し待つらむ夜(よ)ぞ更(ふ)けにける
私訳 石上の布留にある高橋、その言葉ではないが、高々と背伸びして遠くを見つめて愛しい貴女が私を待っているでしょう、その夜が更けてしまった。

集歌2998 湊入之 葦別小船 障多 今来吾乎 不通跡念莫
訓読 湊入(みなとり)し葦別け小舟(をふね)障(さは)り多(おほ)み今来む吾を淀(よど)むと思ふな
私訳 湊に入るに葦を別ける小舟に支障が多いように様に、差し障りがあって、今、貴女に許にやって来る私を、ためらっていると思わないでくれ。
左注 或本歌曰、湊入尓 蘆別小船 障多 君尓不相而 年曽經来
注訓 或る本の歌に曰はく、
訓読 湊入に葦別け小船障り多み君に逢はずに年そ経にけり
私訳 湊に入るに葦を別ける漕ぐ小舟に支障が多いように様に差し障りがあり、貴女に逢わないうちにこの年が経ってしまった。

集歌2999 水乎多 上尓種蒔 比要乎多 擇擢之業曽 吾獨宿
訓読 水を多(た)み上(うへ)に種蒔き稗(ひえ)を多(た)み択擢(えら)えし業(わざ)ぞ吾しひとり寝(ね)る
私訳 水が多い、「たみうへ」という言葉の訛りではないが田植えの田に稲種を蒔く、その田に稗が多いと抜き捨てる。そのように捨てられた結果です。今、私が独りで寝ている。
注意 一般に初句・二句は「水を多み高田(あげ)に」と訓じますが、ここでは言葉遊びの可能性で訓じています。

集歌3000 霊合者 相宿物乎 小山田之 鹿猪田禁如 母之守為裳
訓読 魂(たま)合(あ)へば相寝(あひね)るものを小山田(をやまだ)し鹿猪田(しした)禁(も)る如(ごと)母し守(も)らすも
私訳 心が通えば二人は共寝をするのですが、山にある田の鹿や猪が荒らす田を見張るように、その母親が監視しているよ。
左注 一云 母之守之師
注訓 一は云はく、
訓読 母し守らしし
私訳 その母親が監視しなさる。

集歌3001 春日野尓 照有暮日之 外耳 君乎相見而 今曽悔寸
訓読 春日野に照れる夕日(ゆふひ)し外(よそ)のみし君を相見に今ぞ悔しき
私訳 春日野に輝き照る夕日のように、遠くからだけほのかに貴女と見つめ合った。それだけだったことが、今は残念です。

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再読、今日のみそひと謌 木

2018年11月29日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 木

集歌2992 玉手次 不懸者辛苦 懸垂者 續手見巻之 欲寸君可毛
訓読 玉襷(たまたすき)懸(か)けねば苦し懸けたれば続(つ)ぎて見まくし欲(ほ)しき君かも
私訳 玉襷を懸けるように貴方に気を懸けないと辛い、お姿を見て気を懸けるといつも私を抱いてほしいと願う貴方です。

集歌2993 紫 綵色之蘰 花八香尓 今日見人尓 後将戀鴨
訓読 紫しまだらし蘰(かづら)はなやかに今日見し人に後(のち)恋ひむかも
私訳 紫色にまだらに染めたような藤蘰。その藤の花がはなやかであるように、艶やかな今日逢ったあの人に、この後も、恋い焦がれるでしょう。

集歌2994 玉蘰 不懸時無 戀支 何如妹尓 相時毛名寸
訓読 玉蘰(たまかつら)懸(か)けぬ時なく恋(こふ)るしき何しか妹に逢ふ時もなき
私訳 美しい蘰を髪に懸けないことがないように恋い焦がれている。それなのにどうした訳か、愛しい貴女に逢える機会がありません。

集歌2995 相因之 出来左右者 疊薦 重編數 夢西将見
訓読 逢ふよしし出でくるさへは畳(たたみ)薦(こも)重(かさ)ね編(あ)む数(かず)夢(いめ)にし見えむ
私訳 貴方に逢える機会が出来るようになるまでは、畳を薦の茎を重ね重ねして編む、そんなたくさん網目の数ほどに夢の中だけでも逢いましょう。

集歌2996 白香付 木綿者花物 事社者 何時之真枝毛 常不所忘
訓読 白香(しらか)つく木綿(ゆふ)は花物(はなもの)事(こと)こそば何時(いつ)し纏(まき)しも常忘らえね
私訳 純白に整えられた木綿はその時に造られる花です。でも、貴方との出来事だけは、何時に、貴方に私が抱かれたことも、絶対、忘れないでください。
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再読、今日のみそひと謌 水

2018年11月28日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 水

集歌2987 梓弓 引而不縦 大夫哉 戀云物乎 忍不得牟
試訓 梓弓(あづさゆみ)引きに縦(ゆる)へぬ大夫(ますらを)や恋といふものを忍(しの)びかねてむ
試訳 梓弓の弦を引いて放てないような、決心が定まらない。人の上に立つような立派な男子が、貴女への恋と云うものを堪えられないでいる。
注意 原文の「引而不縦」の「縦」は、一般に「緩」の誤字とします。ここでは原文のままに「縦」で訓みました。そこから「弓を引きて放たず」の解釈が可能になります。

集歌2988 梓弓 末中一伏三起 不通有之 君者會奴 嗟羽将息
試訓 梓弓(あづさゆみ)末(すゑ)なか弛(た)めて淀(よど)めりし君には逢ひぬ嘆きは息(や)めむ
試訳 梓弓の末の中弭(なかはず)、その言葉ではないが、弦が緩むように怠けて訪れが間遠のいていた、その貴方にお逢いした。もう、嘆くのは止むでしょう。
注意 原文の「一伏三起」は、チョボ博打の出目にちなんで「コロ」と呼びます。そこで一般には「末中一伏三起」を「末の中ころ」と訓みます。一方、古典では同じチョボ博打の出目の呼び名なのですが「タメ」とも訓みます。そこで古典に従って「タメ」を採用します。その時、表記が「弛め」ですと、古語では「怠ける」と云う意味があります。

集歌2989 今更 何壮鹿将念 梓弓 引見縦見 縁西鬼乎
訓読 今さらに何をか思はむ梓弓(あづさゆみ)引きみ縦(ゆる)へみ寄りにしものを
私訳 今さら何を思い悩むでしょう。梓弓の弦を引いて放ったように、きっぱりと貴方に心を寄せ靡いたのですから。

集歌2990 感嬬等之 漬麻之多思有 打麻 續時無二 戀度鴨 (感は女+感の当字)
試訓 官女(をとめ)らし漬麻(ひづを)し悩み打つ麻(あさ)し績(う)む時なみに恋ひわたるかも
試訳 公に勤める娘たちが水に漬けた麻を難儀して打ちほぐし、その麻を績(う)む、その言葉ではないが、倦(う)むことなく貴女に恋い焦がれます。
注意 ここでは「漬麻之多思有 打麻」は、原文のままに訓んでいます。一般には原文意味不明として「績麻之多田有打麻懸」と別句を作り「績麻(うみを)の絡垜(たたり)打麻(うちそ)懸(か)け」と訓みます。当然、別句創作のために歌意は違います。

集歌2991 垂乳根之 母我養蚕乃 眉隠 馬聲蜂音石花蜘厨荒鹿 異母二不相而  (厨は、虫+厨の当字)
訓読 たらちねし母が養(か)ふ蚕の繭(まゆ)隠(こも)りいぶせくもあるか妹に逢はずしに
私訳 乳を与えてくれた実母が養う蚕が繭に籠るように、想いが籠り、気が晴れない。愛しい貴女に逢えないので。
注意 原文の「馬聲(い)蜂音(ぶ)石花(せ)蜘厨(くも)荒鹿(あるか)」と「異母(いも)」は有名な戯訓です。
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再読、今日のみそひと謌 火

2018年11月27日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 火

集歌2982 針者有杼 妹之無者 将著哉跡 吾乎令煩 絶紐之緒
訓読 針はあれど妹しなければ着(つ)けめやと吾を煩(なやま)し絶ゆる紐し緒
私訳 「縫い針はあるのだけど、肝心の愛しい貴女が居なければ、縫い付けられるのか」とばかりに、私を煩わす、千切れてしまった紐の緒よ。

集歌2983 高麗劔 己之景迹故 外耳 見乍哉君乎 戀渡奈牟
試訓 高麗剣(こまつるぎ)汝(な)し影(かげ)ゆえに外(よそ)のみし見つつや君を恋ひわたりなむ
試訳 高麗剣の刃(な)、その言葉のひびきではないが、汝(な:貴女)の面影のために、ただ、遠くから見つめながら、貴女に恋い焦がれています。
注意 原文の「己之景迹故」は難訓です。「ナガココロカラ」、「オノガワザユエ」、「ワガココロカラ」などの諸訓があります。こでは漢字の語意を尊重して訓んでいます。なお、廣韻では景はki̯ɐŋで、迹はtsi̯ɛkですから「けせ」から訛りの「かけ」はあるとしています。

集歌2984 劔大刀 名之惜毛 吾者無 比来之間 戀之繁尓
訓読 剣太刀(つるぎたち)名し惜(を)しけくも吾は無みこのころし間(ま)し恋し繁きに
私訳 剣太刀の刃(な)、その言葉のひびきではないが、名(な:評判)は惜しいとは私は思わない。ここしばらくの間の恋の激しさに。

集歌2985 梓弓 末者師不知 雖然 真坂者吾尓 縁西物乎
訓読 梓弓(あづさゆみ)末(すゑ)はし知らずしかれどもまさかは吾に寄りにしものを
私訳 梓弓の弓末、その言葉のひびきではないが、二人の仲の末の行方だけは判りません。それでも、今のところは、貴方は私に心を寄せていらっしゃいますから。
左注 一本歌曰、梓弓 末乃多頭吉波 雖不知 心者君尓 因之物乎
注訓 一本の歌に曰はく、
訓読 梓弓末のたづきは知らねども心は君に寄りにしものを
私訳 梓弓の弓末、その言葉のひびきではないが、二人の仲の末の結末は判りませんが、私の気持ちは貴方に寄せてしまっています。

集歌2986 梓弓 引見縦見 思見而 既心齒 因尓思物乎
試訓 梓弓(あづさゆみ)引きみ縦(ゆる)へみ思ひ見にすでし心は寄りにしものを
試訳 梓弓の弦を引いて放つように、きっぱりと自分の気持ちを確認して、既に私の気持ちは貴女に寄り添っています。
注意 原文の「引見縦見」の「縦」は、一般に「緩」の誤字とします。ここでは原文のままに「縦」で訓みました。そこから「弓を引き放つ」の解釈が可能になります。当然、歌の解釈は変わります。なお、同じ表記を持つ集歌2989の歌も、原文の「引見縦見」は「緩」の誤字とはせずに、ままに扱います。
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再読、今日のみそひと謌 月

2018年11月26日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 月

集歌2977 何故可 不思将有 紐緒之 心尓入而 戀布物乎
訓読 何故(なにゆゑ)か思はずあらむ紐し緒し心に入りに恋しきものを
私訳 どうして貴方のことを恋い焦がれないでいられるでしょう。玉に紐の緒が貫くように、貴方の姿が私の心に貫き入って、恋しいのですから。

集歌2978 真十鏡 見座吾背子 吾形見 将持辰尓 将不相哉
訓読 真澄鏡(まそかがみ)見ませ吾が背子吾が形見待てらむ時に逢はざらめやも
私訳 望むと見たいものを見せると云う真澄鏡を見る。その鏡に願って見て下さい。私の愛しい貴方。私の思い出の品として鏡を持っている時に、私に逢えないことなどありません。

集歌2979 真十鏡 直目尓君乎 見者許増 命對 吾戀止目
訓読 真澄鏡(まそかがみ)直目(ただめ)に君を見てばこそ命し向ふ吾が恋(こひ)止(や)まめ
私訳 望むと見たいものを見せると云う真澄鏡。でも、じかに貴方のお顔を見られたならばこそ、命を懸けた私の恋心が鎮まるでしょう。

集歌2980 犬馬鏡 見不飽妹尓 不相而 月之經去者 生友名師
訓読 真澄鏡(まそかがみ)見(み)飽(あ)かぬ妹に逢はずしに月し経(へ)ゆけば生けりともなし
私訳 望むと見たいものを見せると云う真澄鏡を見る。その言葉のひびきではないが、何度、抱いても満ち足りない愛しい貴女に逢わないままに月が経つと、生きている甲斐が無い。

集歌2981 祝部等之 齊三諸乃 犬馬鏡 懸而偲 相人毎
訓読 祝部(ほふり)らし斎(いは)ふ三諸(みもろ)の真澄鏡(まそかがみ)懸(か)けに偲(しの)ひつ逢ふ人ごとし
私訳 神官たちが崇め祭る神の宿る山に望むと見たいものを見せると云う真澄鏡を懸け、貴方を偲びます。鏡に姿が映し出されるたびに。
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