歌番号 1020 拾遺抄記載
詞書 ひとに物いふとききて、とはさりけるをとこのもとに
詠人 中宮内侍
原文 加須可乃々 於幾乃也計者良 安左留止毛 美恵奴奈幾奈遠 於保寸奈留可那
和歌 かすかのの をきのやけはら あさるとも みえぬなきなを おほすなるかな
読下 かすかののをきのやけはらあさるとも見えぬなきなをおほすなるかな
解釈 春日の野の萩を野焼きした野原、探し求めても見つけることが出来ないと言う無き菜を生えさせる、その言葉のような、噂の正体が見えない私の無き名、その噂の仇名が生まれたようです。
歌番号 1021 拾遺抄記載
詞書 女のもとになつなの花につけてつかはしける
詠人 藤原長能
原文 由幾遠宇寸美 加幾祢尓川女留 加良奈川奈 々徒左者万久乃 保之幾々美可奈
和歌 ゆきをうすみ かきねにつめる からなつな なつさはまくの ほしききみかな
読下 雪をうすみかきねにつめるからなつななつさはまくのほしききみかな
解釈 雪が融けて薄くなったので、垣根の側で摘んだ唐ナズナ、その言葉の響きのように、なずむ仲でありたいとの思いがする、貴女であります。
歌番号 1022
詞書 東三条院御四十九日のうちに、子の日いてきたりけるに、宮の君といひける人の許につかはしける
詠人 右衛門督公任
原文 堂礼尓与利 万川於毛飛可无 宇久飛寸乃 者川祢可比奈幾 个不尓毛安留可奈
和歌 たれにより まつをもひかむ うくひすの はつねかひなき けふにもあるかな
読下 たれにより松をもひかん鴬のはつねかひなきけふにもあるかな
解釈 誰に託して子の日の松の根を引かせようか、例年なら目出度いはずの鶯の初音がしても、喪中なので甲斐がない、今日であります。
歌番号 1023
詞書 子の日
詠人 恵慶法師
原文 飛幾天美留 祢乃比乃万川者 本止奈幾遠 以可天己毛礼留 知与尓可安留良无
和歌 ひきてみる ねのひのまつは ほとなきを いかてこもれる ちよにかあるらむ
読下 ひきて見る子の日の松はほとなきをいかてこもれるちよにかあるらん
解釈 神事での引いて眺める子の日の松、小松で丈も余りないが、どうして、この小さな子の日の松に籠っているのでしょうか、千代の幸があるらしいが。
注意 神道神事に対する僧侶の立場です。
歌番号 1024
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 志免天己曽 知止世乃者留者 幾川々美女 万川遠天多由久 奈尓可飛久部幾
和歌 しめてこそ ちとせのはるは きつつみめ まつをてたゆく なにかひくへき
読下 しめてこそちとせの春はきつつ見め松をてたゆくなにかひくへき
解釈 禁制の場所を示すしめ縄を行うからこそ、そこに千年の寿命を祝う春はやって来るのを見なさい、それだからこそ、松を手をだるくするほどに、どうして、子の日の松の根を引くでしょうか。
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