竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌1103から万葉集1107まで

2020年10月30日 | 新訓 万葉集巻七
集歌一一〇三 
原文 今敷者 見目屋跡念之 三芳野之 大川余杼乎 今日見鶴鴨
訓読 今しくは見(み)めやと念(も)ひしみ吉野し大川(おほかは)淀(よど)を今日(けふ)見つるかも
私訳 今はもう見ることが出来ないと思っていた美しい吉野の吉野川の、その大きな川淀(大淀町北六田付近)を今日眺めました。

集歌一一〇四 
原文 馬並而 三芳野河乎 欲見 打越来而曽 瀧尓遊鶴
訓読 馬並(な)めにみ吉野川を見まく欲(ほ)りうち越え来てそ瀧(たぎ)に遊びつる
私訳 馬を連ね立てて美しい吉野川を眺めたいと思い、山を越えて来て吉野の急流に風流を楽しんだ。

集歌一一〇五 
原文 音聞 目者末見 吉野川 六田之与杼乎 今日見鶴鴨
訓読 音(おと)し聞き目にはいまだ見ぬ吉野川六田(むた)し淀を今日(けふ)見つるかも
私訳 噂には聞いても目では未だに見たことのない吉野川の六田の淀(大淀町北六田付近)を、今日眺めました。

集歌一一〇六 
原文 河豆鳴 清川原乎 今日見而者 何時可越来而 見乍偲食
訓読 かはづ鳴く清(きよ)き川原を今日(けふ)見(み)にはいつか越え来て見つつ偲(しの)はむ
私訳 カジカ蛙の鳴く清らかな川原を今日眺めたからには、さて、今度はいつ山を越えて来てこの景色を眺めながら愛でましょうか。

集歌一一〇七 
原文 泊瀬川 白木綿花尓 堕多藝都 瀬清跡 見尓来之吾乎
訓読 泊瀬川(はつせかは)白木綿(しらゆふ)花に落ち激(たぎ)つ瀬し清(さや)けしと見に来(こ)し吾を
私訳 泊瀬川に白い木綿の花が落ちたようなしぶきをあげる激流を「清らかだ」と云うので、眺めにやって来た私です。
注意 木綿は古語では「ゆふ」と訓じ、楮(こうぞ)や麻の晒して白くなった繊維を示し、そこから神事で使う玉串や大麻の麻苧を木綿(ゆう)と呼びます。白木綿花はその白い繊維で作った造花ではないかとします。
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万葉集 集歌1098から集歌1102まで

2020年10月30日 | 新訓 万葉集巻七
集歌一〇九八 
原文 木道尓社 妹山在云櫛上 二上山母 妹許曽有来
訓読 紀道(きぢ)にこそ妹山(いもやま)ありいふ櫛(くし)上(かみ)し二上山も妹こそありけれ
私訳 紀国への道には妹山があると云うが、丸い櫛の形をした二上山も雄岳と雌岳の二山があり、同じようにここにも妹山があります。

詠岳
標訓 岳を詠める
集歌一〇九九 
原文 片岡之 此向峯 椎蒔者 今年夏之 陰尓将比疑
訓読 片岡(かたおか)しこの向(むこ)つ峯(を)に椎(しひ)蒔(ま)かば今年し夏し蔭(かげ)に比疑(なそ)へむ
私訳 片側が切り立った丘の、この向こうの峰に椎を今、蒔いたならば、きっと若芽が育ち、それを今年の夏の面影(=思い出)としましょう。
注意 原文の「陰尓将比疑」を、標準解釈では「陰尓将化疑」と校訂して「陰(かげ)にならむか」と訓じます。歌を比喩を見ますと「椎蒔」は乙女への恋の芽生えとなりますが、標準解釈では表記そのままに植林の歌とします。

詠河
標訓 河を詠める
集歌一一〇〇
原文 巻向之 病足之川由 往水之 絶事無 又反将見
訓読 巻向し痛足し川ゆ往く水し絶ゆること無くまたかへり見む
私訳 巻向の痛足川を流れ往く水が絶えることがないように、なんどもなんども、その痛足川を振り返り眺めましょう。

集歌一一〇一 
原文 黒玉之 夜去来者 巻向之 川音高之母 荒足鴨疾
訓読 ぬばたまし夜さり来れば巻向し川音(かはと)高しも嵐かも疾き
私訳 星明かりも隠す漆黒の闇夜がやって来るからか、巻向の川音が高いようだ。嵐かのように風足が疾い。
左注 右二首、柿本朝臣人麿之謌集出
注訓 右の二首は、柿本朝臣人麿の歌集に出づ。

集歌一一〇二 
原文 大王之 御笠山之 帶尓為流 細谷川之 音乃清也
訓読 大王(おほきみ)し三笠し山し帯(おび)にせる細谷川(ほそたにかわ)し音の清(さや)けさ
私訳 大王がお使いになる御笠のような、その三笠山を取り巻く帯のような細谷川のせせらぎの音のさやけさよ。

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万葉集 集歌1093から集歌1097まで

2020年10月29日 | 新訓 万葉集巻七
集歌一〇九三 
原文 三毛侶之 其山奈美尓 兒等手乎 巻向山者 継之宣霜
訓読 三諸しその山並に子らが手を巻向山は継しよろしも
私訳 神が宿ると云う御室(みむろ)の、その山波に愛しい我が子が手を合わせ向ける、そのような名を持つ巻向山は山波の継づきが良いようです。

集歌一〇九四 
原文 我衣 色服染 味酒 三室山 黄葉為在
訓読 我が衣色つけ染めむ味酒三室し山は黄葉(もみち)しにけり
私訳 私の衣を色染めましょう。美味しい噛み酒を神に奉げる、その神が宿る御室(みむろ)の山は黄葉しました。
左注 右三首、柿本朝臣人麿之謌集出
注訓 右の三首は、柿本朝臣人麿の歌集に出づ。
注意 原文の「色服染」は、標準解釈では「色取染」に校訂して「色とり染めむ」と訓じますが、ここでは原文のままに訓しています。なお、一部に「我衣服 色染」とし「我が衣にほひぬべくも」と訓じるものもあります。

集歌一〇九五 
原文 三諸就 三輪山見者 隠口乃 始瀬之檜原 所念鴨
訓読 三諸(みもろ)つく三輪山見れば隠口(こもくり)の泊瀬(はつせ)し檜原(ひはら)そ念(おも)ほゆるかも
私訳 神々が宿る御室(みむろ)として三輪山を眺めると、その奥にある隠口の泊瀬にある檜原をも偲ばれます。
注意 飛鳥時代以降の三輪は、大三輪寺を中心とする仏教寺院が立ち並ぶ仏教の聖地です。また、三輪山は神道の聖地でもあります。そこで原文の「三諸就」を解釈しました。

集歌一〇九七 
原文 吾勢子乎 乞許世山登 人者雖云 君毛不来益 山之名尓有之
訓読 吾が背子を乞ふ巨勢山(こせやま)と人は云へど君も来まさず山し名にあらし
私訳 「請う背(=女子から恋人を乞い求めても良い)」と、その巨勢山の地名の由来を人々は話すが、それなのに便りも貴方もやってこない。ただ、それは山の名だけなのでしょう。
注意 歌順に乱れがあります。西本願寺本では集歌一〇九六の歌は集歌一〇九七の後に置きます。

集歌一〇九六 
原文 昔者之 事波不知乎 我見而毛 久成奴 天之香具山
訓読 いにしはしことは知らぬを我(われ)見(み)にも久しくなりぬ天し香具山
私訳 昔の人々の物語(=出来事)は知らないのですが、私が眺めることも、久しくなりました。天の香具山よ。
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万葉集 集歌1088から集歌1092まで

2020年10月28日 | 新訓 万葉集巻七
集歌一〇八八 
原文 足引之 山河之瀬之 響苗尓 弓月高 雲立渡
訓読 あしひきし山川し瀬し響るなへに弓月が嶽に雲立ち渡る
私訳 足を引きずるような険しい山の、その川の瀬音が激しくなるにつれて、弓月が嶽に雲が立ち渡っていく。
左注 右二首、柿本朝臣人麿之謌集出
注訓 右の二首は、柿本朝臣人麿の歌集に出づ。

集歌一〇八九 
原文 大海尓 嶋毛不在尓 海原 絶塔浪尓 立有白雲
訓読 大海(おほうみ)に島もあらなくに海原(うなはら)したゆたふ浪に立てる白雲
私訳 大海に島もないのに海原のゆらゆらと揺れ漂う浪の上に、立ち上る白雲よ。
左注 右一首、伊勢従駕作。
注訓 右の一首は、伊勢の駕(いでま)しに従ひて作れる

詠雨
標訓 雨を詠める
集歌一〇九〇 
原文 吾妹子之 赤裳裙之 将染埿 今日之霡霂尓 吾共所沾者
訓読 吾妹子し赤(あか)裳(も)し裾しひづちなむ今日し霡霂(こさめ)に吾(われ)とそ濡れは
私訳 私の愛しい貴女の赤い裳の裾もぬかるみに汚れるでしょう。後朝の送りで今日の小雨に私と共に濡れてしまうと。

集歌一〇九一 
原文 可融 雨者莫零 吾妹子之 形見之服 吾下尓著有
訓読 通(とほ)るべく雨はな降りそ吾妹子し形見し衣吾下に着(け)り
私訳 衣を濡れ通るほどに雨よ降るな。私の愛しい貴女の面影としてその下着を私は下に着けているから。

詠山
標訓 山を詠める
集歌一〇九二 
原文 動神之 音耳聞 巻向之 檜原山乎 今日見鶴鴨
訓読 動神(とよかみ)し音のみ聞きし巻向し檜原し山を今日見つるかも
私訳 雷神が起こす遠雷を聞くようにはるかに噂に聞いた。その巻向の檜原の山を今日はっきりと眺めました。

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万葉集 集歌1083から集歌1087まで

2020年10月27日 | 新訓 万葉集巻七
集歌一〇八三 
原文 霜雲入 為登尓可将有 久堅之 夜度月乃 不見念者
訓読 霜(しも)曇(くも)り為(す)とにかあるらむ久方(ひさかた)し夜渡(わた)る月の見えなく念(おも)へば
私訳 天の原に霜が降り月を包んで白く曇ったのでしょうか。遥か彼方の夜に渡って行く月が見えないことを思うと。

集歌一〇八四 
原文 山末尓 不知夜經月乎 何時母 吾待将座 夜者深去乍
訓読 山し末(は)にいさよふ月をいつとかも吾は待ち居(を)らむ夜は深(ふ)けにつつ
私訳 山の際に出るのをためらう月を、いつ出るのでしょうかと私はここに待ち続ける。その夜は更けて行く。

集歌一〇八五 
原文 妹之當 吾袖将振 木間従 出来月尓 雲莫棚引
訓読 妹しあたり吾が袖振らむ木(こ)し間より出(い)で来る月に雲な棚引そ
私訳 愛しい貴女が住むあたりに向かって、私が貴女の心を引き寄せると云う霊振りの、そのまじないの袖を振ろう。その木々の間から出て来る恋人の面影を見せるその月に、雲よ、決して棚引くではないぞ。

集歌一〇八六 
原文 靱懸流 伴雄廣伎 大伴尓 國将榮常 月者照良思
訓読 靫(ゆき)懸(か)くる伴し男(を)広き大伴に国栄えむと月は照るらし
私訳 矢を収める靱を背に負う大王の伴を務める男がひしめく大伴の御津にある難波の国が栄えるでしょうと、月は清く照っているのでしょう。

詠雲
標訓 雲を詠める
集歌一〇八七 
原文 痛足河 河浪立奴 巻目之 由槻我高仁 雲居立有良志
訓読 痛足川川波立ちぬ巻目し由槻が嶽に雲居立てるらし
私訳 穴師川には川波が騒ぎ立って来た。巻向の弓月が岳に雲が湧き起こっているらしい。
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