歌番号九八一
原文 越止己乃加礼者天奴尓己止於止己遠安飛之利天
者部利个留尓毛止乃於止己乃安川万部万可利个留遠幾々天
徒可者之个留
読下 男のかれ果てぬに、異男をあひ知りて
侍りけるに、元の男の東へまかりけるを聞きて
つかはしける
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 安利止多尓幾久部幾毛乃遠安不左可乃世幾乃安奈多曽者留計加利个留
和歌 ありとたに きくへきものを あふさかの せきのあなたそ はるけかりける
読下 有りとだに聞くべきものを相坂の関のあなたぞはるけかりける
解釈 都に居るとばかりに噂を聞くはずのものですが、東下りでの相坂の関の彼方である、東の国は遥かなのでしょう。(もう、噂も聞くことも出来ず、逢うための坂を急いた貴方は、もう、遥か彼方ですね。)
歌番号九八二
原文 可部之
読下 返し
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 世幾毛利可安良多万留天不安不左可乃由不川計止利者奈幾川々曽由久
和歌 せきもりか あらたまるてふ あふさかの ゆふつけとりは なきつつそゆく
読下 関守があらたまるてふ相坂のゆふつけ鳥は鳴きつつぞ行く
解釈 関守が新しい人に変わるらしい、相坂の関に神の木綿(ゆふ)を付けた鶏が居て鳴くように、私は、貴女には、もう、私と変わって身を守る人が居て、それを悲しみ泣きながら東に下って行きます。
注意 古今和歌集「相坂の木綿付け鶏も我がごとく人や恋しき音のみなくらむ」を引用している。
歌番号九八三
原文 満多於无奈乃川可者之个留
読下 又、女のつかはしける
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 由幾加部利幾天毛幾可奈无安不左可乃世幾尓加者礼留飛止毛安利也止
和歌 ゆきかへり きてもきなかむ あふさかの せきにかはれる ひともありやと
読下 行き帰り来ても聞かなん相坂の関にかはれる人も有りやと
解釈 泣き泣き行くと言いますが、東に行き、また、都に帰り来て、私に聞き尋ねてみたらどうですか、相坂の関守に新しく入れ替わった人が居たかどうかと。
歌番号九八四
原文 可部之
読下 返し
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 毛留飛止乃安留止八幾計止安不左可乃世幾毛止々女奴和可奈美多加奈
和歌 もるひとの あるとはきけと あふさかの せきもととめぬ わかなみたかな
読下 守る人のあるとは聞けど相坂の関も止めぬ我が涙かな
解釈 関守のように厳重に貴女の身を守る、私以外の人がいると噂に聞いていますが、その逢坂の堰も、止めることが出来ない私の別れの悲しみに泣く涙です。
歌番号九八五
原文 加礼尓个留於止己乃於毛比以天々万天幾天毛乃奈止以日天
加部利天
読下 かれにける男の思ひ出でて、まで来て、物など言ひて
帰りて
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 加川良幾也久女知尓和多寸以者々之乃奈可/\尓天毛可部利奴留加奈
和歌 かつらきや くめちにわたす いははしの なかなかにても かへりぬるかな
読下 葛木や久米路にわたす岩橋のなかなかにても帰りぬるかな
解釈 役行者が作らせたと言う葛木山の久米路に渡す岩橋が、途中までしかできなかったように、その言葉の響きではありませんが、私も貴女の屋敷の路の中ほどまで来ましたが、なぜか引き返して帰ってしまいました。
原文 越止己乃加礼者天奴尓己止於止己遠安飛之利天
者部利个留尓毛止乃於止己乃安川万部万可利个留遠幾々天
徒可者之个留
読下 男のかれ果てぬに、異男をあひ知りて
侍りけるに、元の男の東へまかりけるを聞きて
つかはしける
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 安利止多尓幾久部幾毛乃遠安不左可乃世幾乃安奈多曽者留計加利个留
和歌 ありとたに きくへきものを あふさかの せきのあなたそ はるけかりける
読下 有りとだに聞くべきものを相坂の関のあなたぞはるけかりける
解釈 都に居るとばかりに噂を聞くはずのものですが、東下りでの相坂の関の彼方である、東の国は遥かなのでしょう。(もう、噂も聞くことも出来ず、逢うための坂を急いた貴方は、もう、遥か彼方ですね。)
歌番号九八二
原文 可部之
読下 返し
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 世幾毛利可安良多万留天不安不左可乃由不川計止利者奈幾川々曽由久
和歌 せきもりか あらたまるてふ あふさかの ゆふつけとりは なきつつそゆく
読下 関守があらたまるてふ相坂のゆふつけ鳥は鳴きつつぞ行く
解釈 関守が新しい人に変わるらしい、相坂の関に神の木綿(ゆふ)を付けた鶏が居て鳴くように、私は、貴女には、もう、私と変わって身を守る人が居て、それを悲しみ泣きながら東に下って行きます。
注意 古今和歌集「相坂の木綿付け鶏も我がごとく人や恋しき音のみなくらむ」を引用している。
歌番号九八三
原文 満多於无奈乃川可者之个留
読下 又、女のつかはしける
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 由幾加部利幾天毛幾可奈无安不左可乃世幾尓加者礼留飛止毛安利也止
和歌 ゆきかへり きてもきなかむ あふさかの せきにかはれる ひともありやと
読下 行き帰り来ても聞かなん相坂の関にかはれる人も有りやと
解釈 泣き泣き行くと言いますが、東に行き、また、都に帰り来て、私に聞き尋ねてみたらどうですか、相坂の関守に新しく入れ替わった人が居たかどうかと。
歌番号九八四
原文 可部之
読下 返し
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 毛留飛止乃安留止八幾計止安不左可乃世幾毛止々女奴和可奈美多加奈
和歌 もるひとの あるとはきけと あふさかの せきもととめぬ わかなみたかな
読下 守る人のあるとは聞けど相坂の関も止めぬ我が涙かな
解釈 関守のように厳重に貴女の身を守る、私以外の人がいると噂に聞いていますが、その逢坂の堰も、止めることが出来ない私の別れの悲しみに泣く涙です。
歌番号九八五
原文 加礼尓个留於止己乃於毛比以天々万天幾天毛乃奈止以日天
加部利天
読下 かれにける男の思ひ出でて、まで来て、物など言ひて
帰りて
原文 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 加川良幾也久女知尓和多寸以者々之乃奈可/\尓天毛可部利奴留加奈
和歌 かつらきや くめちにわたす いははしの なかなかにても かへりぬるかな
読下 葛木や久米路にわたす岩橋のなかなかにても帰りぬるかな
解釈 役行者が作らせたと言う葛木山の久米路に渡す岩橋が、途中までしかできなかったように、その言葉の響きではありませんが、私も貴女の屋敷の路の中ほどまで来ましたが、なぜか引き返して帰ってしまいました。