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竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌3126から集歌3130まで

2022年04月29日 | 新訓 万葉集
集歌3126 纒向之 病足乃山尓 雲居乍 雨者雖零 所沽乍為来
試訓 纒向(まきむく)し穴師(あなし)の山に雲(くも)居(ゐ)つつ雨は降れども恋(こひ)つつ来(こ)しそ
試訳 纏向の穴師の山に雲が居座って雨は降りますが、それでも恋い焦がれ貴女を手に入れようとやって来ました。
注意 原文の「所沽乍為来」の「沽」は、一般には「沾」の誤字として「所沾乍焉来」と記し「濡れつつぞ来し」と訓みます。ここでは原文の「沽」の漢字の意味を尊重して、ままに訓んでいます。そのため、歌意が違います。
右二首

羈旅發思
標訓 羈旅に思を発せる
集歌3127 度會 大川邊 若歴木 吾久在者 妹戀鴨
訓読 度会(わたらひ)し大川し辺(へ)し若(わか)歴木(ひさぎ)吾(わ)が久(ひさ)ならば妹恋ひむかも
私訳 度会の大川の岸にある若い櫟。私が無事ならば、あの愛しい人は私に恋をするかな。

集歌3128 吾妹子 夢見来 倭路 度瀬別 手向吾為
訓読 吾妹子し夢し見え来(こ)し大和路(やまとぢ)し渡り瀬ごとに手向(たむけ)けぞ吾(あ)がする
私訳 私の愛しい恋人が夢に出て来いと、大和へ帰る道の川の渡瀬ごとに神にお願いを私はします。

集歌3129 櫻花 開哉散 乃見 誰此所 見散行
訓読 桜花咲(さき)かも散ると見るまでに誰かも此処し見えて散り行く
私訳 この桜の花が咲いて散っていくのを見るのは誰でしょうか。ここに来られて桜の花のように散って逝かれた。

集歌3130 豊洲 聞濱松 心裳 何妹 相云始
訓読 豊国(とよくに)し企救(きく)し浜松根もころに何しか妹し相(あひ)云(い)ひ始(し)けむ
私訳 貴女の思い出を聞く、その豊国の企救の浜松。御方が石戸を開けてお出ましになる時を待つと云うその気持ちに、どのように貴女に言葉を掛けましょうか。
右四首、柿本朝臣人麻呂歌集出。
注訓 右の四首は、柿本朝臣人麻呂の歌集に出づ。
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万葉集 集歌3121から集歌3125まで

2022年04月28日 | 新訓 万葉集
集歌3121 吾背子之 使乎待跡 笠不著 出乍曽見之 雨零尓
訓読 吾が背子し使(つかひ)を待つと笠も着ず出でつつぞ見し雨し降らくに
私訳 私の愛しい貴方からの使いがやって来るのを待とうと、笠も着ないで何度も家から出て来て見守っていました。雨が降っているのですが。

集歌3122 無心 雨尓毛有鹿 人目守 乏妹尓 今日谷相牟
訓読 心なき雨にもあるか人目(ひとめ)守(も)り乏(とも)しき妹に今日だに逢はむ
私訳 なんと、思いやりのない雨なのでしょうね。人の目の様子を窺いながら、そんなかわいそうな愛しい貴女に、今日だけでも逢いたいものです。
右二首

集歌3123 直獨 宿杼宿不得而 白細 袖乎笠尓著 沾乍曽来
訓読 ただひとり寝(ね)れど寝(ね)かねて白栲し袖を笠に着濡れつつぞ来し
私訳 ただ、私、独りで寝るに寝られなくて、白い栲の夜着の袖を頭にかざして、雨に濡れながらもやって来ました。

集歌3124 雨毛零 夜毛更深利 今更 君将行哉 紐解設名
試訓 雨も降り夜も更けにけり今さらし君去なめやも紐解(と)き設(ま)けな
試訳 雨も降り、夜も更けました。今さらに、貴方はお帰りになるなんてないでしょうね。ねえ。貴方。この私の下着の紐を解いて、この身を抱いて下さい。
注意 原文の「紐解設名」の「設」は、漢字の意味のままに訳しています。それで一般の歌意と男女の関係が逆転しています。
右二首

集歌3125 久堅乃 雨零日乎 我門尓 蓑笠不蒙而 来有人哉誰
訓読 ひさかたの雨し降る日を我が門に蓑笠(みのかさ)着ずて来る人や誰れ
私訳 天空の遥か彼方から雨が降る日に、私の家の門の前に蓑笠を着ることなくやって来た人は、誰ですか。

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万葉集 集歌3116から集歌3120まで

2022年04月27日 | 新訓 万葉集
集歌3116 我故尓 痛勿和備曽 後遂 不相登要之 言毛不有尓
訓読 我がゆゑにいたくなわびそ後(のち)つひに逢はじと誓ひしこともあらなくに
私訳 私のために、そんなにひどく嘆きなされるな。「いつまでたっても逢いません」と貴方に、はっきりと申し渡したことはありませんのに。
注意 原文の「不相登要之」の「要」は、一般には「云ふ」と訓みます。ここでは漢字の意味を尊重して「誓ふ」と訓んでいます。
右二首

集歌3117 門立而 戸毛閇而有乎 何處従鹿 妹之入来而 夢所見鶴
訓読 門(かど)立(た)てて戸も閉(さ)したるを何処(いづく)ゆか妹し入り来て夢し見えつる
私訳 屋敷の入り口を閉じ、戸のカギをかけたのに、どこからか愛しい貴女が入って来て、夢に見えたのだろうか。

集歌3118 門立而 戸者雖闔 盗人之 穿穴従 入而所見牟
訓読 門(かど)立(た)てて戸は閉(さ)したれど盗人(ぬすひと)し穿(ほ)れる穴より入りてし見けむ
私訳 屋敷の入り口を閉じ、戸のカギをかけたのでしょうが、私の夢姿は、きっと泥棒が開けた穴から入って貴方に見えたのでしょう。
右二首

集歌3119 従明日者 戀乍将去 今夕弾 速初夜従 綏解我妹
訓読 明日よりは恋ひつつ行かむ今夜(こよひ)だに早く初夜(よひ)より綏(ひも)解(と)け我妹(わぎも)
私訳 明日からは、お前を抱いてから旅立って行こう。今夜だけは、早速、宵口から下着の紐を解け。私の愛しい貴女。

集歌3120 今更 将寐哉我背子 荒田麻之 全夜毛不落 夢所見欲
訓読 今さらし寝(ね)めや我が背子新夜(あらたを)し一夜(ひとよ)もおちず夢(いめ)し見えこそ
私訳 今夜一夜の今になって、「早く寝よう」ですか。愛しい貴方。それより、明日からの夜毎、夜毎に一晩も欠かさずに、私の夢に姿を見せて下さい。
右二首

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万葉集 集歌3111から集歌3115まで

2022年04月26日 | 新訓 万葉集
集歌3111 為便毛無 片戀乎為登 比日尓 吾可死者 夢所見哉
訓読 すべもなき片恋を為(す)とこの頃に吾が死ぬべきは夢(いめ)し見えきや
私訳 どうしようもない片思いの恋をしていると、この頃には私が死んでしまいそうなのを、貴方は夢に見えましたか。

集歌3112 夢見而 衣乎取服 装束間尓 妹之使曽 先尓来
訓読 夢(いめ)し見て衣(ころも)を取り着(き)装(よそ)ふ間(ま)に妹し使(つかひ)ぞ先に来しける
私訳 夢で貴女の姿を見て、貴女の許へ出かける着物を取りそろえ着装う間に、愛しい貴女からの使いが、先に来てしまいました。
右二首

集歌3113 在有而 後毛将相登 言耳乎 堅要管 相者無尓
訓読 ありありて後も逢はむと言(こと)のみを堅く誓いつ逢ふとはなしに
私訳 今のままに仲を守って、後にも逢いましょうと約束の言葉を堅く誓っていても、貴女に逢う機会がなくて。
注意 原文の「堅要管」の「要」を、一般には「云ふ」と訓みます。ここでは漢字の意味を尊重して「誓ふ」と訓んでいます。

集歌3114 極而 吾毛相登 思友 人之言社 繁君尓有
訓読 極(きは)まりて吾(われ)も逢はむと思へども人し言(こと)こそ繁き君にあれ
私訳 この上もなく、私もお逢いしたいと思いますが、世の人の噂話がひどく立つ貴方です。
右二首

集歌3115 氣緒尓 言氣築之 妹尚乎 人妻有跡 聞者悲毛
訓読 息し緒に言(こと)息づきし妹すらを人妻なりと聞けば悲しも
私訳 深いため息のもとに愛の誓いの言葉も空しい。愛しい貴女なのに「お前の思いのままにならない娘」だと聞くと、悲しいことです。
注意 原文の「言氣築之」を、一般には「言」を「吾」の意味として「吾(あ)が息づきし」と訓みます。ここでは原文のままに訓んでいます。
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万葉集 集歌3106から集歌3110まで

2022年04月25日 | 新訓 万葉集
集歌3106 相見 欲為者 従君毛 吾曽益而 伊布可思美為也
訓読 相見まく欲(ほ)りしきしためは君よりも吾(われ)こそまさりて訝(いふか)しみする
私訳 お逢いしたい(貴方に抱かれたい)と願う気持ちは、貴方よりも私の方が勝っていますので、貴方がおいでにならないのが気がかりです。
右二首

集歌3107 空蝉之 人目乎繁 不相而 年之經者 生跡毛奈思
訓読 うつせみし人目を繁み逢はずして年し経ぬれば生けりともなし
私訳 生きているこの世で、人目が多いので貴女に逢わないままに年が経ってしまうと、この世に生きているとは感じられません。

集歌3108 空蝉之 人目繁者 夜干玉之 夜夢乎 次而所見欲
訓読 うつせみし人目繁くはぬばたまし夜(よひ)し夢(いめ)しを継ぎて見えこそ
私訳 生きているこの世で人目が多いと云うならば、漆黒の闇夜の夢の中に、いつもその貴方のお姿を見せて欲しい。
右二首

集歌3109 慇懃 憶吾妹乎 人言之 繁尓因而 不通比日可聞
訓読 ねもころし憶(おも)ふ吾妹(わぎも)を人言(ひとこと)し繁きによりてよどむころかも
私訳 心からねんごろに懐かしく思う私の愛しい貴女よ。貴女への人の噂話がうるさいので、訪問が途絶えがちの今日この頃です。

集歌3110 人言之 繁思有者 君毛吾毛 将絶常云而 相之物鴨
訓読 人言(ひとこと)し繁くしあらば君も吾(あ)も絶えむと云ひて逢ひしものかも
私訳 恋とは「人の噂話がうるさくなったならば、貴方も私も共に、二人の仲は絶えて終わり」と決めて逢うようなものでしょうか。
右二首
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