集歌3126 纒向之 病足乃山尓 雲居乍 雨者雖零 所沽乍為来
試訓 纒向(まきむく)し穴師(あなし)の山に雲(くも)居(ゐ)つつ雨は降れども恋(こひ)つつ来(こ)しそ
試訳 纏向の穴師の山に雲が居座って雨は降りますが、それでも恋い焦がれ貴女を手に入れようとやって来ました。
注意 原文の「所沽乍為来」の「沽」は、一般には「沾」の誤字として「所沾乍焉来」と記し「濡れつつぞ来し」と訓みます。ここでは原文の「沽」の漢字の意味を尊重して、ままに訓んでいます。そのため、歌意が違います。
右二首
羈旅發思
標訓 羈旅に思を発せる
集歌3127 度會 大川邊 若歴木 吾久在者 妹戀鴨
訓読 度会(わたらひ)し大川し辺(へ)し若(わか)歴木(ひさぎ)吾(わ)が久(ひさ)ならば妹恋ひむかも
私訳 度会の大川の岸にある若い櫟。私が無事ならば、あの愛しい人は私に恋をするかな。
集歌3128 吾妹子 夢見来 倭路 度瀬別 手向吾為
訓読 吾妹子し夢し見え来(こ)し大和路(やまとぢ)し渡り瀬ごとに手向(たむけ)けぞ吾(あ)がする
私訳 私の愛しい恋人が夢に出て来いと、大和へ帰る道の川の渡瀬ごとに神にお願いを私はします。
集歌3129 櫻花 開哉散 乃見 誰此所 見散行
訓読 桜花咲(さき)かも散ると見るまでに誰かも此処し見えて散り行く
私訳 この桜の花が咲いて散っていくのを見るのは誰でしょうか。ここに来られて桜の花のように散って逝かれた。
集歌3130 豊洲 聞濱松 心裳 何妹 相云始
訓読 豊国(とよくに)し企救(きく)し浜松根もころに何しか妹し相(あひ)云(い)ひ始(し)けむ
私訳 貴女の思い出を聞く、その豊国の企救の浜松。御方が石戸を開けてお出ましになる時を待つと云うその気持ちに、どのように貴女に言葉を掛けましょうか。
右四首、柿本朝臣人麻呂歌集出。
注訓 右の四首は、柿本朝臣人麻呂の歌集に出づ。
試訓 纒向(まきむく)し穴師(あなし)の山に雲(くも)居(ゐ)つつ雨は降れども恋(こひ)つつ来(こ)しそ
試訳 纏向の穴師の山に雲が居座って雨は降りますが、それでも恋い焦がれ貴女を手に入れようとやって来ました。
注意 原文の「所沽乍為来」の「沽」は、一般には「沾」の誤字として「所沾乍焉来」と記し「濡れつつぞ来し」と訓みます。ここでは原文の「沽」の漢字の意味を尊重して、ままに訓んでいます。そのため、歌意が違います。
右二首
羈旅發思
標訓 羈旅に思を発せる
集歌3127 度會 大川邊 若歴木 吾久在者 妹戀鴨
訓読 度会(わたらひ)し大川し辺(へ)し若(わか)歴木(ひさぎ)吾(わ)が久(ひさ)ならば妹恋ひむかも
私訳 度会の大川の岸にある若い櫟。私が無事ならば、あの愛しい人は私に恋をするかな。
集歌3128 吾妹子 夢見来 倭路 度瀬別 手向吾為
訓読 吾妹子し夢し見え来(こ)し大和路(やまとぢ)し渡り瀬ごとに手向(たむけ)けぞ吾(あ)がする
私訳 私の愛しい恋人が夢に出て来いと、大和へ帰る道の川の渡瀬ごとに神にお願いを私はします。
集歌3129 櫻花 開哉散 乃見 誰此所 見散行
訓読 桜花咲(さき)かも散ると見るまでに誰かも此処し見えて散り行く
私訳 この桜の花が咲いて散っていくのを見るのは誰でしょうか。ここに来られて桜の花のように散って逝かれた。
集歌3130 豊洲 聞濱松 心裳 何妹 相云始
訓読 豊国(とよくに)し企救(きく)し浜松根もころに何しか妹し相(あひ)云(い)ひ始(し)けむ
私訳 貴女の思い出を聞く、その豊国の企救の浜松。御方が石戸を開けてお出ましになる時を待つと云うその気持ちに、どのように貴女に言葉を掛けましょうか。
右四首、柿本朝臣人麻呂歌集出。
注訓 右の四首は、柿本朝臣人麻呂の歌集に出づ。