竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

再読、今日のみそひと謌 金

2017年06月30日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 金

集歌1116 烏玉之 吾黒髪尓 落名積 天之露霜 取者消乍
訓読 ぬばたまし吾が黒髪に降りなづむ天し露(つゆ)霜(しも)取れば消(け)につつ
私訳 漆黒の私の黒髪に降り積もる、その天空からの白い露霜を貴方の手が撫で取れば、見る間に露と濡れ消えていくでしょう。
注意 「落名積 天之露霜」の表現に難しいものがあります。髪に降る雪ではありません。なお、野暮ですので若白髪を抜く風情とは見ていません。

集歌1117 嶋廻為等 礒尓見之花 風吹而 波者雖縁 不取不止
訓読 島廻(しまみ)すと磯に見し花風吹きに波は寄すとも取らずは止(や)まじ
私訳 島廻りをして磯に見た桜の花、その花に風が吹いくので磯に波が打ち寄せたとしても、枝を折り取らないではいられない。

集歌1118 古尓 有險人母 如吾等架 弥和乃檜尓 插頭折兼
訓読 古(いにしへ)にありけむ人も吾がごとか三輪の檜原(ひはら)に挿頭(かざし)折(を)りけむ
私訳 昔にいらしたと云われる伊邪那岐命も、私と同じでしょうか。三輪の檜原で鬘(かづら)を断ち切って、偲ぶ思いを断ち切ったのでしょうか。
注意 伊邪那岐命の黄泉国神話の黒鬘から「古尓 有險人」として見ています。

集歌1119 往川之 過去人之 手不折者 裏觸立 三和之檜原者
試訓 往(ゆ)く川し過ぎにし人し手折(たを)らねばうらぶれ立てり三輪し檜原は
試訳 流れいく川のように過去へと過ぎ去ってしまった人に手を合わせて冥福を祈ることをしないと、寂しそうに立っています。三輪の檜原の木々は。

集歌1120 三芳野之 青根我峯之 蘿蓆 誰将織 經緯無二
訓読 み吉野し青根(あをね)が峯(たけ)し蘿蓆(こけむしろ)誰れか織りけむ経緯(たてきぬ)なみに
私訳 美しい吉野の青根ヶ峰の苔むしろは、誰が織ったのでしょうか。経糸も横糸もないのに。

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再読、今日のみそひと謌 木

2017年06月29日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 木

集歌1111 古毛 如此聞乍哉 偲兼 此古河之 清瀬之音矣
訓読 古(いにしへ)もかく聞きつつか偲(しの)ひけむこの布留川し清瀬し音(おと)を
私訳 昔もこのように瀬音を聞きながら愛でてきたのでしょう。この布留川の清らかな瀬の音を。
注意 布留川は龍王山を源として、天理市の西方の平野部に流れ、西流して初瀬川と合流します。

集歌1112 波祢蘰 今為妹乎 浦若三 去来率去河之 音之清左
訓読 はね蘰(かづら)今する妹をうら若(わか)みいざ率川(いざかは)し音し清(さや)けさ
私訳 娘女と成った証のつる草の髪飾りを、今、着ける、その愛しい貴女が初々しいと思い、いざいざ(=さあさあ)と貴女を誘う、その言葉のひびきのような率川の瀬音が清かなことです。
注意 率川は奈良公園内を流れる菩提川の上流部を指し、春日山(御蓋山)を源とします。

集歌1113 此小川 白氣結 瀧至 八信井上尓 事上不為友
訓読 この小川霧(きり)ぞ結べる瀧(たぎ)ちゆく走井(はしゐ)し上(うへ)に事(こと)挙(あ)げせねども
私訳 この小川に人の気持ちの表れと云う霧がかかっている。しぶきをあげて流れいく走井のほとりで、神に恋の願いをまだ掛けてもいないのに。
注意 走井を地名と見るか、水を汲む小川の特定の場所と見るかで景色は変わります。ここでは水を汲む場所としています。

集歌1114 吾紐乎 妹手以而 結八川 又還見 万代左右荷
訓読 吾が紐を妹し手もちに結八川(ゆふやかは)また還(かへ)り見む万代(よろづよ)までに
私訳 私の衣の紐を愛しい貴女が手ずから結ぶ、その言葉のひびきのような結八川よ。また、やって来て眺めましょう。後々までも。
注意 結八川は未詳の川です。なお、葛城市の高田市側の低地帯に八川と云う地名と川が存在します。

集歌1115 妹之紐 結八川内乎 古之 并人見等 此乎誰知
訓読 妹し紐(ひも)結八(ゆふや)河内(かふち)を古(いにしへ)しみな人見しとこを誰れ知る
私訳 愛しい貴女の衣の紐を結ぶ、その言葉のひびきのような結八川の河の流れを、昔の人は皆が眺めたと云う。さて、このことを、今、誰が知っているでしょうか。
注意 結八川は未詳の川です。なお、葛城市の高田市側の低地帯に八川と云う地名と川が存在します。
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再読、今日のみそひと謌 水

2017年06月28日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 水

集歌1106 河豆鳴 清川原乎 今日見而者 何時可越来而 見乍偲食
訓読 かはづ鳴く清(きよ)き川原を今日(けふ)見(み)にはいつか越え来て見つつ偲(しの)はむ
私訳 カジカ蛙の鳴く清らかな川原を今日眺めたからには、さて、今度はいつ山を越えて来てこの景色を眺めながら愛でましょうか。

集歌1107 泊瀬川 白木綿花尓 堕多藝都 瀬清跡 見尓来之吾乎
訓読 泊瀬川(はつせかは)白木綿(しらゆふ)花に落ち激(たぎ)つ瀬し清(さや)けしと見に来(こ)し吾を
私訳 泊瀬川に白い木綿の花が落ちたようなしぶきをあげる激流を「清らかだ」と云うので、眺めにやって来た私です。
注意 木綿は古語では「ゆふ」と訓じ、楮(こうぞ)や麻の晒して白くなった繊維を示し、そこから神事で使う玉串や大麻の麻苧を木綿(ゆう)と呼びます。白木綿花はその白い繊維で作った造花ではないかとします。

集歌1108 泊瀬川 流水尾之 湍乎早 井提越浪之 音之清久
訓読 泊瀬川(はつせかは)流るる水脈(みを)し瀬を早みゐで越す浪し音し清(さや)けく
私訳 泊瀬川の流れる川筋の瀬が急流なので、流れを堰き止める自然に出来た井堤を越す水浪の音が清らかです。

集歌1109 佐檜乃熊 檜隅川之 瀬乎早 君之手取者 将縁言毳
訓読 さ檜(ひ)の隈(くま)檜隈(ひのくま)川し瀬を早み君し手取らば言(こと)寄せむかも
私訳 檜の隈を流れる檜隈川の瀬が早いので、貴方の手にすがったら、貴方は私に愛の誓いをよせるでしょうか。
注意 檜隈川は奈良県高市郡明日香村檜前の付近を流れる川です。

集歌1110 湯種蒔 荒木之小田矣 求跡 足結出所沾 此水之湍尓
訓読 湯種(ゆたね)蒔く新墾(あらき)し小田(おた)を求めむと足結(あゆ)ひ出(い)でそ濡(ぬ)るこの川し瀬に
私訳 湯に漬け選別した稲種を蒔く、その新しく開墾する小さな田を探そうと、足結いをして家を出て来たのに、その足結いが濡れてしまった。この川の早い瀬に。

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再読、今日のみそひと謌 火

2017年06月27日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 火

集歌1101 黒玉之 夜去来者 巻向之 川音高之母 荒足鴨疾
訓読 ぬばたまし夜さり来れば巻向し川音(かはと)高しも嵐かも疾き
私訳 星明かりも隠す漆黒の闇夜がやって来るからか、巻向の川音が高いようだ。嵐かのように風足が疾い。

集歌1102 大王之 御笠山之 帶尓為流 細谷川之 音乃清也
訓読 大王(おほきみ)し三笠し山し帯(おび)にせる細谷川(ほそたにかわ)し音の清(さや)けさ
私訳 大王がお使いになる御笠のような、その三笠山を取り巻く帯のような細谷川のせせらぎの音のさやけさよ。

集歌1103 今敷者 見目屋跡念之 三芳野之 大川余杼乎 今日見鶴鴨
訓読 今しくは見(み)めやと念(も)ひしみ吉野し大川(おほかは)淀(よど)を今日(けふ)見つるかも
私訳 今はもう見ることが出来ないと思っていた美しい吉野の吉野川の、その大きな川淀(大淀町北六田付近)を今日眺めました。

集歌1104 馬並而 三芳野河乎 欲見 打越来而曽 瀧尓遊鶴
訓読 馬並(な)めにみ吉野川を見まく欲(ほ)りうち越え来てそ瀧(たぎ)に遊びつる
私訳 馬を連ね立てて美しい吉野川を眺めたいと思い、山を越えて来て吉野の急流に風流を楽しんだ。

集歌1105 音聞 目者末見 吉野川 六田之与杼乎 今日見鶴鴨
訓読 音(おと)し聞き目にはいまだ見ぬ吉野川六田(むた)し淀を今日(けふ)見つるかも
私訳 噂には聞いても目では未だに見たことのない吉野川の六田の淀(大淀町北六田付近)を、今日眺めました。
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再読、今日のみそひと謌 月

2017年06月26日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 月

集歌1097 吾勢子乎 乞許世山登 人者雖云 君毛不来益 山之名尓有之
訓読 吾が背子を乞ふ巨勢山(こせやま)と人は云へど君も来まさず山し名にあらし
私訳 「請う背(=女子から恋人を乞い求めても良い)」と、その巨勢山の地名の由来を人々は話すが、それなのに便りも貴方もやってこない。ただ、それは山の名だけなのでしょう。

集歌1096 昔者之 事波不知乎 我見而毛 久成奴 天之香具山
訓読 いにしはしことは知らぬを我(われ)見(み)にも久しくなりぬ天し香具山
私訳 昔の人々の物語(=出来事)は知らないのですが、私が眺めることも、久しくなりました。天の香具山よ。

集歌1098 木道尓社 妹山在云櫛上 二上山母 妹許曽有来
訓読 紀道(きぢ)にこそ妹山(いもやま)ありいふ櫛(くし)上(かみ)し二上山も妹こそありけれ
私訳 紀国への道には妹山があると云うが、丸い櫛の形をした二上山も雄岳と雌岳の二山があり、同じようにここにも妹山があります。

集歌1099 片岡之 此向峯 椎蒔者 今年夏之 陰尓将比疑
訓読 片岡(かたおか)しこの向(むこ)つ峯(を)に椎(しひ)蒔(ま)かば今年し夏し蔭(かげ)に比疑(なそ)へむ
私訳 片側が切り立った丘の、この向こうの峰に椎を今、蒔いたならば、きっと若芽が育ち、それを今年の夏の面影(=思い出)としましょう。
注意 原文の「陰尓将比疑」を、一般に「陰尓将化疑」の誤記として「陰(かげ)にならむか」と訓みますが、ここでは原文のままに訓んでいます。歌に比喩を見ますと、「椎蒔」は乙女への恋の芽生えとなりますが、従来のものは植林の歌です。

集歌1100 巻向之 病足之川由 往水之 絶事無 又反将見
訓読 巻向し痛足し川ゆ往く水し絶ゆること無くまたかへり見む
私訳 巻向の痛足川を流れ往く水が絶えることがないように、なんどもなんども、その痛足川を振り返り眺めましょう。
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