歌番号八七五
詞書 安留飛止乃武寸女安万多安利个留遠安祢与利波之女天
以比者部利个礼止幾可佐利个礼者美川尓安多留
武寸女尓川可者之个留
読下 ある人の女あまたありけるを姉よりはじめて
言ひ侍りけれど聞かざりければ、三にあたる
女につかはしける
詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 世幾也万乃美祢乃寸幾武良寸幾由个止安不美者奈保曽者留个可利个留
和歌 せきやまの みねのすきむら すきゆけと あふみはなほそ はるけかりける
読下 関山の峯の杉村過ぎ行けど近江はなほぞはるけかりける
解釈 関に守られている山の峯の杉、その杉の生える村を過ぎて行く、その言葉のような、「むら」立つ貴女の姉妹に文を届けることに時は過ぎ行きましたが、村を越えた先の近江が遠いように、貴女に逢う身となることは、まだまだ、先のようです。
歌番号八七六
詞書 安佐多々乃安曾无飛佐之宇遠止毛世天布美遠己世天
者部利个礼者
読下 朝忠朝臣久しう音もせで文おこせて
侍りければ
詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 於毛比以天々遠止川礼之个留也万比己乃己多部尓己利奴己々呂奈尓奈利
和歌 おもひいてて おとつれしける やまひこの こたへにこりぬ こころなになり
読下 思ひ出でて訪れしける山彦の答へに懲りぬ心なになり
解釈 思い出すかのような返事の声の訪れをする山彦の答えの声のような、相当に間延びをした貴方からの手紙を貰って、一向に懲りずに心をときめかす私の気持ちは、一体、何になのでしょうか。
歌番号八七七
詞書 以止志乃比天万可利安利幾天
読下 いと忍びてまかり歩きて
詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 満止呂万奴毛乃可良宇多天志可寸可尓宇川々尓毛安良奴己々知乃美春留
和歌 まとろまぬ ものからうたて しかすかに うつつにもあらぬ ここちのみする
読下 まどろまぬものからうたてしかすがにうつつにもあらぬ心地のみする
解釈 貴女との共寝でまどろみもしてはいないのですが、嘆かわしいことに、確かに貴女と共寝をしたはずなのに、それが本当にあった出来事とは思えない心地がします。
歌番号八七八
詞書 可部之
読下 返し
詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 宇川々尓毛安良奴己々呂者由女奈礼也三天毛者可奈幾毛乃遠於毛部者
和歌 うつつにも あらぬこころは ゆめなれや みてもはかなき ものをおもへは
読下 うつつにもあらぬ心は夢なれや見てもはかなきものを思へば
解釈 私との共寝の夜が現実ではないような思いをされるなら、それは夢なのでしょう。私も夢を見るように、貴方との共寝をしても、今、ここに貴方はいない、その逢瀬が果敢ないものと感じていますから。
歌番号八七九
詞書 宇徒万左和多利尓多以布可者部利个留尓徒可者之个留
読下 太秦わたりに大輔が侍りけるにつかはしける
詠人 遠乃々美知加世乃安曾无
読下 小野道風朝臣
原文 加幾利奈久於毛日以利衣乃止毛尓乃三尓之乃也万部遠奈可女也留加奈
和歌 かきりなく おもひいりひの ともにのみ にしのやまへを なかめやるかな
読下 限りなく思ひ入り日のともにのみ西の山辺をながめやるかな
解釈 貴女のことを限りなく気にかけて、夕暮れの入り日と共に、貴女が住む西の山辺を恋慕い眺めています。
詞書 安留飛止乃武寸女安万多安利个留遠安祢与利波之女天
以比者部利个礼止幾可佐利个礼者美川尓安多留
武寸女尓川可者之个留
読下 ある人の女あまたありけるを姉よりはじめて
言ひ侍りけれど聞かざりければ、三にあたる
女につかはしける
詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 世幾也万乃美祢乃寸幾武良寸幾由个止安不美者奈保曽者留个可利个留
和歌 せきやまの みねのすきむら すきゆけと あふみはなほそ はるけかりける
読下 関山の峯の杉村過ぎ行けど近江はなほぞはるけかりける
解釈 関に守られている山の峯の杉、その杉の生える村を過ぎて行く、その言葉のような、「むら」立つ貴女の姉妹に文を届けることに時は過ぎ行きましたが、村を越えた先の近江が遠いように、貴女に逢う身となることは、まだまだ、先のようです。
歌番号八七六
詞書 安佐多々乃安曾无飛佐之宇遠止毛世天布美遠己世天
者部利个礼者
読下 朝忠朝臣久しう音もせで文おこせて
侍りければ
詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 於毛比以天々遠止川礼之个留也万比己乃己多部尓己利奴己々呂奈尓奈利
和歌 おもひいてて おとつれしける やまひこの こたへにこりぬ こころなになり
読下 思ひ出でて訪れしける山彦の答へに懲りぬ心なになり
解釈 思い出すかのような返事の声の訪れをする山彦の答えの声のような、相当に間延びをした貴方からの手紙を貰って、一向に懲りずに心をときめかす私の気持ちは、一体、何になのでしょうか。
歌番号八七七
詞書 以止志乃比天万可利安利幾天
読下 いと忍びてまかり歩きて
詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 満止呂万奴毛乃可良宇多天志可寸可尓宇川々尓毛安良奴己々知乃美春留
和歌 まとろまぬ ものからうたて しかすかに うつつにもあらぬ ここちのみする
読下 まどろまぬものからうたてしかすがにうつつにもあらぬ心地のみする
解釈 貴女との共寝でまどろみもしてはいないのですが、嘆かわしいことに、確かに貴女と共寝をしたはずなのに、それが本当にあった出来事とは思えない心地がします。
歌番号八七八
詞書 可部之
読下 返し
詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず
原文 宇川々尓毛安良奴己々呂者由女奈礼也三天毛者可奈幾毛乃遠於毛部者
和歌 うつつにも あらぬこころは ゆめなれや みてもはかなき ものをおもへは
読下 うつつにもあらぬ心は夢なれや見てもはかなきものを思へば
解釈 私との共寝の夜が現実ではないような思いをされるなら、それは夢なのでしょう。私も夢を見るように、貴方との共寝をしても、今、ここに貴方はいない、その逢瀬が果敢ないものと感じていますから。
歌番号八七九
詞書 宇徒万左和多利尓多以布可者部利个留尓徒可者之个留
読下 太秦わたりに大輔が侍りけるにつかはしける
詠人 遠乃々美知加世乃安曾无
読下 小野道風朝臣
原文 加幾利奈久於毛日以利衣乃止毛尓乃三尓之乃也万部遠奈可女也留加奈
和歌 かきりなく おもひいりひの ともにのみ にしのやまへを なかめやるかな
読下 限りなく思ひ入り日のともにのみ西の山辺をながめやるかな
解釈 貴女のことを限りなく気にかけて、夕暮れの入り日と共に、貴女が住む西の山辺を恋慕い眺めています。