竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

後撰和歌集 巻12 歌番号875から879まで

2024年01月31日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻12
歌番号八七五
詞書 安留飛止乃武寸女安万多安利个留遠安祢与利波之女天
以比者部利个礼止幾可佐利个礼者美川尓安多留
武寸女尓川可者之个留
読下 ある人の女あまたありけるを姉よりはじめて
言ひ侍りけれど聞かざりければ、三にあたる
女につかはしける

詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 世幾也万乃美祢乃寸幾武良寸幾由个止安不美者奈保曽者留个可利个留
和歌 せきやまの みねのすきむら すきゆけと あふみはなほそ はるけかりける
読下 関山の峯の杉村過ぎ行けど近江はなほぞはるけかりける
解釈 関に守られている山の峯の杉、その杉の生える村を過ぎて行く、その言葉のような、「むら」立つ貴女の姉妹に文を届けることに時は過ぎ行きましたが、村を越えた先の近江が遠いように、貴女に逢う身となることは、まだまだ、先のようです。

歌番号八七六
詞書 安佐多々乃安曾无飛佐之宇遠止毛世天布美遠己世天
者部利个礼者
読下 朝忠朝臣久しう音もせで文おこせて
侍りければ

詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 於毛比以天々遠止川礼之个留也万比己乃己多部尓己利奴己々呂奈尓奈利
和歌 おもひいてて おとつれしける やまひこの こたへにこりぬ こころなになり
読下 思ひ出でて訪れしける山彦の答へに懲りぬ心なになり
解釈 思い出すかのような返事の声の訪れをする山彦の答えの声のような、相当に間延びをした貴方からの手紙を貰って、一向に懲りずに心をときめかす私の気持ちは、一体、何になのでしょうか。

歌番号八七七
詞書 以止志乃比天万可利安利幾天
読下 いと忍びてまかり歩きて

詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 満止呂万奴毛乃可良宇多天志可寸可尓宇川々尓毛安良奴己々知乃美春留
和歌 まとろまぬ ものからうたて しかすかに うつつにもあらぬ ここちのみする
読下 まどろまぬものからうたてしかすがにうつつにもあらぬ心地のみする
解釈 貴女との共寝でまどろみもしてはいないのですが、嘆かわしいことに、確かに貴女と共寝をしたはずなのに、それが本当にあった出来事とは思えない心地がします。

歌番号八七八
詞書 可部之
読下 返し

詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 宇川々尓毛安良奴己々呂者由女奈礼也三天毛者可奈幾毛乃遠於毛部者
和歌 うつつにも あらぬこころは ゆめなれや みてもはかなき ものをおもへは
読下 うつつにもあらぬ心は夢なれや見てもはかなきものを思へば
解釈 私との共寝の夜が現実ではないような思いをされるなら、それは夢なのでしょう。私も夢を見るように、貴方との共寝をしても、今、ここに貴方はいない、その逢瀬が果敢ないものと感じていますから。

歌番号八七九
詞書 宇徒万左和多利尓多以布可者部利个留尓徒可者之个留
読下 太秦わたりに大輔が侍りけるにつかはしける

詠人 遠乃々美知加世乃安曾无
読下 小野道風朝臣

原文 加幾利奈久於毛日以利衣乃止毛尓乃三尓之乃也万部遠奈可女也留加奈
和歌 かきりなく おもひいりひの ともにのみ にしのやまへを なかめやるかな
読下 限りなく思ひ入り日のともにのみ西の山辺をながめやるかな
解釈 貴女のことを限りなく気にかけて、夕暮れの入り日と共に、貴女が住む西の山辺を恋慕い眺めています。

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後撰和歌集 巻12 歌番号870から874まで

2024年01月30日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻12
歌番号八七〇
詞書 飛止乃毛止尓満可利天安之多尓川可者之个留
読下 人のもとにまかりて朝につかはしける

詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 満知久良春比者寸可乃祢尓於毛本衣天安不与之毛奈止多万乃遠奈良无
和歌 まちくらす ひはすかのねに おもほえて あふよしもなと たまのをならむ
読下 待ち暮らす日は菅の根に思ほえて逢ふよしもなど玉の緒ならん
解釈 妻問ひをする夕べを待ち暮らす日中は菅の根のようにとても長く感じるのに、貴女に逢っての様々なことは、どうして、玉を結ぶ緒のように短いのでしょうか。それでも二つの紐を結ぶ玉の緒のように、貴女と結び合いたいものです。

歌番号八七一
詞書 於保衣乃知左止満可利加与比个留於无奈遠於毛比
加礼可多尓奈利天止遠幾止己呂尓万可利多利止以者世天
飛左之宇万可良寸奈利尓个利己乃於无奈於毛比和比天
祢多留与乃由女尓満宇天幾多利止三衣个礼者
宇多可比尓川可者之个留
読下 大江千里、まかり通ひける女を思ひ
かれがたになりて、遠き所にまかりにたりと言はせて、
久しうまからずなりにけり。この女思ひわびて
寝たる夜の夢に、まうで来たりと見えければ、
疑ひにつかはしける

詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 波可奈可留由女乃志留之尓者可良礼天宇川々尓万久留三止也奈利奈无
和歌 はかなかる ゆめのしるしに はかられて うつつにまくる みとやなりなむ
読下 はかなかる夢のしるしにはかられてうつつに負くる身とやなりなん
解釈 儚いものとされる夢の、その夢占いのお告げに騙されて、現実には貴方が恋しいと思うような、貴方との恋の駆け引きに負けるような私となったのでしょうか。貴方に逢いたい。

歌番号八七二
詞書 加久天徒可者之多利个礼者知左止三者部利天
奈遠左里尓満己止仁遠止々比奈无加部里末宇天己之可止
己々知乃奈也万之久天奈无安利川留止者可利以比遠久里天
侍个礼者加左祢天徒可者之个留
読下 かくてつかはしたりければ、千里見侍りて
なほざりに、まことに一昨日なん帰りまうで来しかど、
心地の悩ましくてなんありつるとばかり言ひ送りて
侍りければ、重ねてつかはしける

詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 於毛比祢乃由女止以比天毛也美奈末之奈加/\奈尓々安利止志利个无
和歌 おもひねの ゆめといひても やみなまし なかなかなにに ありとしりけむ
読下 思ひ寝の夢と言ひてもやみなましなかなか何に有りと知りけん
解釈 恋焦がれ、貴方を思って寝た夜、その貴方に逢う夢を見たといっても、それで私の心の内のことと済んだでしょうに、どうして、地方に出かけたはずの貴方が、貴方からの便りにより京の都に居たことを、このように、私は知ってしまったのでしょうか。

歌番号八七三
詞書 也万止乃加美尓者部利个留止幾加乃久尓乃寸个布知八良乃幾与比天可
武寸女遠武可部武止知幾利天於本也計己止尓与利天
安可良佐万尓美也己尓乃本利多利个留本止尓
己乃武須免志无衣无保宇之尓武可部良礼天万可利尓个礼八
久尓々加部利天多川祢天徒可者之遣留
読下 大和守に侍りける時、かの国の介藤原清秀が
女を迎へむと契りて、公事によりて
あからさまに京に上りたりけるほどに、
この女、真延法師に迎へられてまかりにければ、
国に帰りて尋ねてつかはしける

詠人 多々不左乃安曾无
読下 忠房朝臣(藤原忠房)

原文 以徒之可乃祢尓奈幾加部利己之可止毛能部能安左地者以呂川幾尓个利
和歌 いつしかの ねになきかへり こしかとも のへのあさちは いろつきにけり
読下 いつしかの音に泣きかへり来しかども野辺の浅茅は色づきにけり
解釈 貴女の、何時までですか、との問いの言葉の響きのような、神に仕える鹿が妻を啼き呼ぶ声のように、貴女の身の上の噂を聞いて泣きながら帰って来ましたが、野辺の浅茅が色付くように、貴女の身の上は色が付いてしまったのですね。

歌番号八七四
詞書 世宇曽己徒加者之遣留武寸女乃加部之己止尓万女也可尓
之毛安良之奈止以比天者部利个礼者
読下 消息つかはしける女の返事に、まめやかに
しもあらじなど言ひて侍りければ

詠人 多々不左乃安曾无
読下 忠房朝臣(藤原忠房)

原文 飛幾万由乃加久布多己毛利世万本之美久波己幾多礼天奈久遠三世者也
和歌 ひきまゆの かくふたこもり せまほしみ くはこきたれて なくをみせはや
読下 ひきまゆのかくふた籠りせまほしみ桑こきたれて泣くを見せばや
解釈 引き眉の貴女の言葉のような、一匹の蚕が入っている狭い繭に、二匹の蚕が籠ってみたいと思い、桑の葉を掻き寄せてあたりの葉がなくなってしまう、その言葉の響きのような、恋の苦しみに涙を絞り出して泣いている私の様を見せたいものです。

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後撰和歌集 巻12 歌番号865から869まで

2024年01月29日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻12
歌番号八六五
詞書 飛止乃武春女乃毛止尓志乃比川々加与比者部利个留遠
於也幾々川个天以止以多久以比个礼者加部利天
徒可者之遣留
読下 人の女のもとに忍びつつ通ひ侍りけるを、
親聞きつけて、いといたく言ひければ、帰りて
つかはしける

詠人 従良由幾
読下 貫之(紀貫之)

原文 加世遠以多美久由留个无利乃多知以天々毛奈保己利寸万乃宇良曽己日之幾
和歌 かせをいたみ くゆるけふりの たちいてても なほこりすまの うらそこひしき
読下 風をいたみくゆる煙の立ち出でてもなほこりすまの浦ぞ恋しき
解釈 風が速いので燻ぶる煙が立つ、その言葉の響きのように、貴女の親の叱責がひどいので、気持ちが燻る思いのままに出で帰りましたが、それでも海人が燃やす須磨の煙が恋しいように、懲りないままに、私の心根は貴女が恋しいです。

歌番号八六六
詞書 者之女天於无奈能毛止尓川可八之个留
読下 初めて女のもとにつかはしける

詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 伊者祢止毛和可々幾利奈幾己々呂遠者久毛為尓止遠幾飛止毛志良奈无
和歌 いはねとも わかかきりなき こころをは くもゐにとほき ひともしらなむ
読下 言はねども我が限りなき心をば雲居に遠き人も知らなん
解釈 口に出して言いませんが、私の貴女への限りない恋慕う気持ちを、雲居の立場である貴女にも知って欲しいものです。

歌番号八六七
詞書 堂以之良春
読下 題知らす

詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 幾美可祢尓久良不乃也万乃保止々幾寸以川礼安多奈留己恵万左留良无
和歌 きみかねに くらふのやまの ほとときす いつれあたなる こゑまさるらむ
読下 君が音にくらふの山の郭公いづれあだなる声まさるらん
解釈 貴方に立つ評判の声、それと比べる暗部の山に鳴くホトトギスと、どちらが真実身はないとの評判が勝るでしょうか。

歌番号八六八
詞書 世宇曽己加与者之遣留於无奈遠呂加奈留左万尓
三衣者部利个礼者
読下 消息通はしける女、おろかなるさまに
見え侍りければ

詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 己飛天奴留由女知尓加与不堂万之比乃奈留々加比奈久宇止幾々美可奈
和歌 こひてぬる ゆめちにかよふ たましひの なるるかひなく うとききみかな
読下 恋ひて寝る夢路に通ふたましひの馴るるかひなくうとき君かな
解釈 貴女を恋慕って寝る、その夢路に行き通う私の心持が慣れ親しんだのですが、その甲斐も無く、どうも、なれなれしい振る舞いが疎ましく思える貴女です。

歌番号八六九
詞書 於无奈尓徒可者之遣流
読下 女につかはしける

詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 加々利比尓安良奴於毛比乃以可奈礼者奈美多乃加者尓宇幾天毛由良无
和歌 かかりひに あらぬおもひの いかなれは なみたのかはに うきてもゆらむ
読下 篝火にあらぬ思ひのいかなれば涙の河に浮きて燃ゆらん
解釈 篝火ではないはずの、私の貴女を恋慕う思いの火が、どういう訳なのか、恋しく流す涙の河に浮いて燃えています。

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後撰和歌集 巻12 歌番号860から864まで

2024年01月26日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻12
歌番号八六〇
詞書 无寸女乃毛止尓川可八之个留
読下 女のもとにつかはしける

詠人 与之乃安曾无
読下 よしの朝臣(源善)

原文 安之比幾乃也万志多美川乃己可久礼天多幾川己々呂遠世幾曽加祢川留
和歌 あしひきの やましたみつの こかくれて たきつこころを せきそかねつる
読下 あしひきの山下水の木隠れてたぎつ心をせきぞかねつる
解釈 葦や檜の茂る山の裾を流れる川が木々に隠れながらも音を立てるように、貴女に逢いたいというたぎる気持ちは、留めることが出来ません。

歌番号八六一
詞書 可部之
読下 返し

詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 己加久礼天太幾川也万美川以川礼可者女尓之毛三由留遠止尓己曽幾計
和歌 こかくれて たきつやまみつ いつれかは めにしもみゆる おとにこそきけ
読下 木隠れてたぎつ山水いづれかは目にしも見ゆる音にこそ聞け
解釈 木々に隠れながらも音を立てて流れる山の川は、どこならば目にはっきりと見えるでしょうか。ただ、瀬音は聞けますが。(ところで、貴方はどうにかして私の許に姿を見せますか。)

歌番号八六二
詞書 飛止乃毛止与利加部利天川可者之个留
読下 人のもとより帰りてつかはしける

詠人 従良由幾
読下 貫之(紀貫之)

原文 安加川幾乃奈可良満之可者之良川由乃越幾天和比之幾王加礼世万之也
和歌 あかつきの なからましかは しらつゆの おきてわひしき わかれせましや
読下 暁のなからましかば白露の置きてわびしき別れせましや
解釈 暁の訪れが無かったなら、白露を置くような、朝に起きての淋しい別れをすることも無いのに。

歌番号八六三
詞書 可部之
読下 返し

詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 越幾天由久飛止乃己々呂遠志良川由乃王礼己曽万徒八於毛比幾衣奴礼
和歌 おきてゆく ひとのこころを しらつゆの われこそまつは おもひきえぬれ
読下 起きて行く人の心を白露の我こそまづは思ひ消えぬれ
解釈 朝早くにさっそくに起きて帰って行く、その人の気持ちが知れない、置く白露が朝日に消えるより先に、私の方こそ、白けて、昨夜の思いも消えてしまいます。

歌番号八六四
詞書 於无奈乃毛止尓於止己加久志川々与遠也川久左武
堂可佐己乃止以不己止遠以比川可者之多利个礼八
読下 女のもとに、男、かくしつつ世をやつくさむ
高砂の、といふ事を言ひつかはしたりければ

詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 堂可佐己乃万川止以飛川々止之遠部天加者良奴以呂止幾加者多乃万武
和歌 たかさこの まつといひつつ としをへて かはらぬいろと きかはたのまむ
読下 高砂の松と言ひつつ年を経て変らぬ色と聞かば頼まむ
解釈 高砂の松、その言葉のように、貴方を待つと言いながら年を過ごしてきましたので、常盤の松の葉の色が変わらないように、貴方の心変わりはしないとの誓いの言葉を聞いたら貴方を信じましょう。

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後撰和歌集 巻12 歌番号855から859まで

2024年01月25日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻12
歌番号八五五
詞書 満多安者寸者部利个留於无奈乃毛止尓志奴部之止以部利
个礼者可部之己止尓者也志祢可之止以部利个
連者満多川可者之个留
読下 まだ逢はず侍りける女のもとに、死ぬべしと言へり
ければ、返事に、早死ねかしと言へりけ
れば、又つかはしける

詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 於奈之久者幾美止奈良比乃以个尓己曽三遠奈个川止毛飛止尓幾可世免
和歌 おなしくは きみとならひの いけにこそ みをなけつとも ひとにきかせめ
読下 同じくは君とならひの池にこそ身を投げつとも人に聞かせめ
解釈 同じ死ぬのならば、貴女と身を交わし馴れたがために、並んで池に身を投げこんだとでも、人に聞かせたいものです。

歌番号八五六
詞書 於无奈尓徒可者之遣留
読下 女につかはしける

詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 加計呂不乃本乃女幾川礼者由不久礼乃由女可止乃美曽三遠多止利川留
和歌 かけろふの ほのめきつれは ゆふくれの ゆめかとのみそ みをたとりつる
読下 かげろふのほのめきつれば夕暮れの夢かとのみぞ身をたどりつる
解釈 陽炎がゆらゆらとほのめく、そのように昼下がりにほのかな貴女との逢瀬であったので、あれは夕暮れの夢かとばかり、我が身の感触を辿りうつつのことかと確かめています。

歌番号八五七
詞書 可部之
読下 返し

詠人 与美比止之良寸
読下 詠み人知らず

原文 保乃三天毛女奈礼尓遣利止幾久可良尓布之加部利己曽之奈万本之个礼
和歌 ほのみても めなれにけりと きくからに ふしかへりこそ しなまほしけれ
読下 ほの見ても目馴れにけりと聞くからに臥し返りこそ死なまほしけれ
解釈 僅かばかりに身を交わしても目馴れてしまったと、人は言うと聞きますので、顔を見せないようにまったくに身をうつ伏せに臥した姿で「ほの見」もされないままで、愛に死んでしまいたい気持ちです。

歌番号八五八
詞書 世宇曽己志波/\徒可者之遣留遠知々波々者部利天
勢以之者部利个礼者衣安比者部良天
読下 消息しばしばつかはしけるを、父母侍りて
制し侍りければ、え逢ひはべらで

詠人 美奈毛堂乃与之乃々安曾无
読下 源よしの朝臣(源善)

原文 安不美天不加多乃志留部毛盈天之加奈三留女奈幾己止由幾天宇良美无
和歌 あふみてふ かたのしるへも えてしかな みるめなきこと ゆきてうらみむ
読下 近江てふかたのしるべも得てしがなみるめなきこと行きて恨みん
解釈 近江と言う潟、その言葉の響きのような、人に逢うというものへの道しるべを得たいものです。淡海の近江の海に海松が無いように、逢う人との見る目の機会が無いことを行って恨みたいものです。

歌番号八五九
詞書 可部之
読下 返し

詠人 者留寸美乃与之多々乃安曾无乃无寸女
読下 春澄善縄朝臣女

原文 安不左可乃世幾止毛良留々和礼奈礼者安不美天不良无加多毛之良礼寸
和歌 あふさかの せきともらるる われなれは あふみてふらむ かたもしられす
読下 相坂の関と守らるる我なれば近江てふらん方も知られず
解釈 相坂の関が関守に厳しく守られているように、逢うことが厳しく監視されている私なので、近江と言う潟の響きのような、私に逢ふ身と言うお方も知りません。

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