竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

再読、今日のみそひと謌 木

2018年05月31日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 木

集歌2342 如夢 君乎相見而 天霧之 落来雪之 可消所念
訓読 夢しごと君を相見に天(あま)霧(き)らし落(ふ)りくる雪し消(け)ぬべく念(おも)ほゆ
私訳 夢で逢うように貴方と共に夜を過ごしてからは、天空を白く覆って降り来る雪が消え失せるように、この身が消え失せるほどに熱く恋い焦がれています。

集歌2343 吾背子之 言愛美 出去者 裳引将知 雪勿零
訓読 吾が背子し言(こと)愛(うつく)しみ出(い)で去(い)かば裳引きしるけむ雪な降りそね
私訳 私の愛しい貴方の愛の誓いを嬉しく想い、帰って行く貴方を追って家から出て行けば、私の裳を引く跡を他の人が知るでしょう。雪よ、そんなに降らないで。

集歌2344 梅花 其跡毛不所見 零雪之 市白兼名 間使遣者
訓読 梅し花それとも見えず降(ふ)る雪しいちしろけむな間(ま)使(つかひ)遣(や)らば
私訳 梅の花が、それがどこにあるのか判らないほどに降る雪。その降る雪がはっきりと見えるように、きっと、人目に付くでしょうね。妻問いの使いを貴女の許に送ると。

集歌2345 天霧相 零来雪之 消友 於君合常 流經度
訓読 天(あま)霧(き)らひ降(ふ)りくる雪し消(け)えぬとも君し逢はむとながらへ渡る
私訳 天空を白く覆って降り来る雪のように、この命が消えてしまうとしても、貴方に逢いたいと想い、降り来れば消えゆく雪がそれでも貴方へと降り届くように、日々を暮しています。

集歌2346 窺良布 跡見山雪之 灼然 戀者妹名 人将知可聞
訓読 窺(うかが)らふ跡見山(とみやま)雪しいちしろく恋ひば妹し名(な)人知らむかも
私訳 得物を窺うと云う、その名を持つ跡見山の雪がはっきり見えるように、人目に鮮やかに恋をすると、貴女の噂を人々は知ってしまうでしょう。
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再読、今日のみそひと謌 水

2018年05月30日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 水

集歌2337 小竹葉尓 薄太礼零覆 消名羽鴨 将忘云者 益所念
訓読 小竹(しの)し葉にはだれ降り覆(お)ひ消(け)なばかも忘れむ云へばましにそ念(おも)ゆ
私訳 「笹の葉に雪がまだらに降り覆い、やがて季節に融け消えて行くならば、人はその雪を忘れるように、やがて貴方は私のことを捨てるでしょう」と貴女が云うならば、貴女に対して私は一層に恋い焦がれます。

集歌2338 霰落 板敢風吹 寒夜也 旗野尓今夜 吾獨寐牟
訓読 霰(あられ)落(ふ)り塡(は)むこ風吹き寒き夜や旗野(はたの)に今夜(こよひ)吾(あ)が独り寝(ね)む
私訳 霰が降り、風が粗末な小屋の板の間から吹き込み寒い夜です。貴女が私の訪れを許してくれないと、この旗野で今夜は、私は独り野宿するのでしょう。
注意 原歌の「板敢風吹」の「敢」は、一般に「玖」の誤記として「いたく風吹き」と訓みます。ただし、板聞(イタモ)、板敢(サカヘ)、板暇(イタマ)等の別訓があります。ここでは、原歌を尊重して音韻での「敢」の反切上字の「古」から「板敢」を「はむこ=塡むこ」と訓み、意味としては板の隙間から強いて取り込むとします。

集歌2339 吉名張乃 野木尓零覆 白雪乃 市白霜 将戀吾鴨
訓読 吉隠(よなばり)の野木(のき)に降り覆(おほ)ふ白雪のいちしろくしも恋ひむ吾かも
私訳 吉隠の野の木々に降り覆う白雪がはっきり見えるように、はっきりと人目に付くように貴女を恋い慕う、そんな私です。

集歌2340 一眼見之 人尓戀良久 天霧之 零来雪之 可消所念
訓読 一目見し人に恋ふらく天(あま)霧(き)らし降りくる雪し消(け)ぬべく念(おも)ほゆ
私訳 一度だけ体を許したあの人に恋い焦がれる、天空を白く覆って降り来る雪が消えてしまうように、この命が消えてしまうほどに貴方をお慕いしています。

集歌2341 思出 時者為便無 豊國之 木綿山雪之 可消可念
訓読 思(も)ひ出(い)づる時はすべなみ豊国(とよくに)し木綿山(ゆふやま)雪し消(け)ぬべく念(おも)べく
私訳 貴女への想いは湧き出ます。時の移ろいはどうしようもありません。豊国にある火を噴く由布山に降る雪がすぐに消えてしまうように、想いに命が消えて失せてしまうほどに恋い焦がれでしょう。

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再読、今日のみそひと謌 火

2018年05月29日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 火

集歌2332 左夜深者 出来牟月乎 高山之 峯白雲 将隠鴨
訓読 さ夜更(ふ)けば出(い)で来(こ)む月を香具山(かぐやま)し峯し白雲隠すらむかも
私訳 夜が更けて行くと登って来るでしょう月を、天の香具山の嶺に掛かる白雲が隠してしまうかもしれません。

集歌2333 零雪 虚空可消 雖戀 相依無 月経在
訓読 降る雪し虚空(そら)し消(け)ぬべく恋ふれども逢ふよし無(な)みし月し経(へ)にける
私訳 降る雪が途中で空に消えるように、ひたすら貴女を慕っているのですが、このように空しく逢う機会が無いままに月日が経ってしまった。

集歌2334 沫雪 千里零敷 戀為来 食永我 見偲
訓読 沫雪(あはゆき)し千里(ちり)し降りしけ恋ひしくし日(け)長き我し見つつ偲(しの)はむ
私訳 沫雪はすべての里に降り積もれ、貴女を恋い慕ってきた、所在無い私は降り積もる雪をみて昔に白い栲の衣を着た貴女を偲びましょう。

集歌2335 咲出照 梅之下枝 置露之 可消於妹 戀頃者
訓読 咲き出(い)照(て)し梅し下枝(したゑだ)置く露し消(け)ぬべく妹し恋ふるこのころ
私訳 花が咲き出して輝く梅の下枝、その枝に置く露が消えゆくように、私の命も消えていくでしょう、そんな、梅の花のように輝く貴女に恋い焦がれる今日この頃です。

集歌2336 甚毛 夜深勿行 道邊之 湯小竹之於尓 霜降夜焉
訓読 はなはだも夜(よ)更(ふ)けな行きし道し辺(へ)し斎(ゆ)小竹(しの)し上(うへ)に霜し降る夜を
私訳 これほどひどく夜が更けてから帰って行かないで、帰って行く道の道端の笹の上に霜の降る夜中を。
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再読、今日のみそひと謌 月

2018年05月28日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 月

集歌2327 誰苑之 梅尓可有家武 幾許毛 開有可毛 見我欲左右手二
訓読 誰(た)が苑(その)し梅にかありけむ幾許(ここだ)くも咲きにあるかも見が欲(ほ)しさふてに
私訳 誰の庭の梅の花なのでしょうか。花びらが散り舞って、たくさんに咲いているのでしょうか。誰かに眺めて貰いたいほどに。

集歌2328 来可視 人毛不有尓 吾家有 梅早花 落十方吉
訓読 来て見べき人もあらなくに吾家(わがへ)なる梅し早花(はつはな)散りぬともよし
私訳 訪れて来て眺めるような人もいるわけでもないのだから、私の家にある梅の初花よ、散ってしまっても良いよ。

集歌2329 雪寒三 咲者不開 梅花 縦比来者 然而毛有金
訓読 雪寒(さぶ)み咲きには咲かぬ梅し花縦(よ)しこの頃(ころ)はさにもあるがね
私訳 雪を寒がって咲きそうで咲かない梅の花、えい、それならば、しばらくはこのまま咲かないままでいなさい。

集歌2330 為妹 末枝梅乎 手折登波 下枝之露尓 沾家類可聞
訓読 妹しため末枝(ほつゑ)し梅を手(た)折(お)るとは下枝(しづゑ)し露に濡れにけるかも
私訳 愛しい貴女のために枝先の梅の花を手折ろうとして、下枝の露に濡れてしまいました。

集歌2331 八田乃野之 淺茅色付 有乳山 峯之沫雪 零良之
訓読 八田(やた)の野そ浅茅(あさぢ)色づく有乳山(あらちやま)峯し沫雪(あはゆき)降(ふ)ららしし
私訳 大和にある八田の野で浅茅が色付く、きっともう敦賀にある有乳山の嶺の沫雪は淡く降っていることでしょう。

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万葉集 長歌を鑑賞する 集歌3333 

2018年05月27日 | 万葉集 長歌を楽しむ
万葉集 長歌を鑑賞する 集歌3333 

集歌3333 王之 御命恐 秋津嶋 倭雄過而 大伴之 御津之濱邊従 大舟尓 真梶繁貫 旦名伎尓 水干之音為乍 夕名寸尓 梶音為乍 行師君 何時来座登 大夕卜置而 齊度尓 抂言哉 人之言釣 我心 盡之山之 黄葉之 散過去常 公之正香乎

<標準的な解釈(「萬葉集 釋注」伊藤博、集英社文庫)>
訓読 大君(おほきみ)の 命(みこと)畏(かしこ)み 蜻蛉島(あきつしま) 大和を過ぎて 大伴の 御津の浜辺ゆ 大船に 真梶(まかじ)しじ貫(ぬ)き 朝なぎに 水手(かこ)の声(こゑ)しつつ 夕なぎに 梶の音(おと)しつつ 行きし君 いつ来(き)まさむと 占(うら)置きて 斎(いは)ひわたるに たはことか 人の言ひつる 我が心 筑紫(つくし)の山の 黄葉(もみちは)の 散りて過ぎぬと 君が直香(ただか)を
標準 大君の仰せを恐れ承って、蜻蛉島大和をあとにして、大伴の御津の浜辺から、大船の櫂をびっしりと貫き並べ、朝凪に水夫の掛け声も高く、夕凪に賑やかに船出していかれた君、その我が君はいつ帰って来られるのかと、構えて占いをし身を浄め続けてお待ちしていたのに、とんでもないでたらめを人が言ったのであろうか、我が心を尽くすという筑紫の山の黄葉が散るように、散り去ってしまったという、まがいもないあの方の現身が。

<西本願寺本万葉集の原文を忠実に訓むときの解釈>
訓読 王(おほきみ)の 御命(みこと)恐(かしこ)み 蜻蛉島(あきつしま) 大和を過ぎて 大伴の 御津の浜辺ゆ 大船に 真梶(まかじ)繁(しじ)貫(ぬ)き 朝凪に 水(みづ)干(ひ)の音(ね)しつ 夕凪に 梶の音(ね)しつつ 行きし君 何時(いつ)来(き)まさむと 大夕卜(おほうら)置きて 斎(いは)ひ渡るに 抂言(たはごと)か 人の言ひつる 我が心 筑紫(つくし)の山の 黄葉(もみちは)の 散りて過ぎぬと 君が正香(ただか)を
私訳 王のご命令を謹んで承り、蜻蛉島の大和を行き過ぎて大伴の御津の浜辺から、大船に立派な舵を貫き挿し、朝の凪に潮が引く音がし、夕凪に梶の音をさせて出発された貴方は、何時帰って来られると、夕べに占いをして、神に貴方のお帰りをお祈りするに、事実とは違う話でしょうか、人が言うには、私が心を尽くして慕っている貴方は「筑紫の山の黄葉のように命を尽くし果たして散ってしまわれた」と。貴方の御噂を。

注意 原文の「抂言哉」は、一般に「狂言哉」と記し「狂言(たはごと)や」と訓みます。
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