竹取翁と万葉集のお勉強

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万葉集 長歌を鑑賞する 集歌3と5

2014年08月31日 | 万葉集 長歌を楽しむ
万葉集 長歌を鑑賞する 集歌3と5

天皇遊獦内野之時、中皇命使間人連老獻謌
標訓 天皇の内野に遊獦(みかり)し時に、中(なかの)皇命(すめらみこと)の間人(はしひとの)連(むらじ)老(おゆ)を使(つか)はして獻(たてまつ)りしし謌

集歌3 八隅知之 我大王乃 朝庭 取撫賜 夕庭 伊縁立之 御執乃 梓弓之 奈加弭乃 音為奈利 朝獦尓 今立須良思 暮獦尓 今他田渚良之 御執 梓能弓之 奈加弭乃 音為奈里

西本願寺本万葉集の原文を忠実に訓むときの解釈
私訓 八隅(やすみ)知(し)し 我が大王(おほきみ)の 朝(あした)には 取り撫でたまひ 夕には い寄り立たしし 御(み)執(と)らしの 梓弓し 中弭(なかはず)の 音(おと)すなり 朝猟(あさかり)に 今立たすらし 暮猟(ゆふかり)に 今立たすらし 御(み)執(と)らしの 梓の弓し 中弭の 音すなり

私訳 天下をあまねく統治なされる吾らの大王が、朝には手に取って撫でなされ、夕べには傍らに寄り立って、ご愛用になられる神事の梓の弓の、その中弭の音が聞こえる。朝狩りに今出立されるようです。夕狩りに今出立されるようです。ご愛用になられた梓の弓の、その中弭の音が聞こえる。

西本願寺本万葉集の原文「御執 梓能弓之」は、一般に「御執能 梓弓之」と文字位置と句切れが変更されています。ただし、歌意は変わりません。


幸讃岐國安益郡之時、軍王見山作謌
標訓 讃岐國の安益(やすの)郡(こほり)に幸(いでま)しし時に、軍(いくさの)王(おほきみ)の山を見て作れる謌

集歌5 霞立 長春日乃 晩家流 和豆肝之良受 村肝乃 心乎痛見 奴要子鳥 卜歎居者 珠手次 懸乃宜久 遠神 吾大王乃 行幸能 山越風乃 獨居 吾衣手尓 朝夕尓 還比奴礼婆 大夫登 念有我母 草枕 客尓之有者 思遣 鶴寸乎白土 網能浦之 海處女等之 焼塩乃 念曽所焼 吾下情

西本願寺本万葉集の原文を忠実に訓むときの解釈
私訓 霞立つ 長き春日の 暮れにける 被(かづ)きも知らず 村肝(むらきも)の 心を痛み ぬえこ鳥 うら泣け居(を)れば 玉たすき 懸(か)けのよろしく 遠つ神 吾(わ)が大王(おほきみ)の 行幸(いでまし)の 山越す風の ひとり居(を)る 吾が衣手に 朝夕(あさよひ)に 返らひぬれば 大夫(ますらを)と 念(おも)へる我れも 草枕 旅にしあれば 思ひ遣(や)る 方法(たづき)を知らに 網の浦の 海(あま)処女(をとめ)らし 焼く塩の 思ひぞ焼くる 吾が下情(したこころ)

私訳 霞が立つ朧げな長い春の一日が暮れて逝った。気持ちを覆い隠すことも知らず、身に潜めた心が痛み、ぬえ鳥のようにひそかに泣いていると、美しい襷を懸けるように山容を彩る、遠くは神であり、今は吾らの大王がお出ましになられた、この山を越す風が、独りで座っている私の袖に、朝夕にひるがえすので、立派な男子と思っているこの私も、草を枕にするような苦しい旅の途中なので、愛しい貴女へ思いを送る方法も知らないので、網の入り江で漁師の娘女たちが焼く塩のように、恋心を焼く。そんな私の心の内です。

注意 原文の「獨居」の「居」は、一般に「座」の誤記として「独りをるに」と訓みます。その時、作歌者か大王かの相違があります。

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今日のみそひと歌 金曜日

2014年08月28日 | 万葉 みそひと謌
今日のみそひと歌 金曜日

集歌4139 春苑 紅尓保布 桃花 下照道尓 出立感嬬 (感は女+感の当字)
訓読 春し苑紅(くれなゐ)にほふ桃し花下照る道に出で立つ感嬬(おとめ)
私訳 春の庭園の紅色に輝く桃の花の下の光輝く道に出で立つ官女の少女。

集歌4140 吾園之 李花可 庭尓落 波太礼能未 遣在可母
訓読 吾が園し李(すもも)し花か庭に降るはだれのいまだ残りたるかも
私訳 私の庭園の李の花弁でしょうか。庭に降った斑雪が未だに残っているのでしょうか。

集歌4141 春儲而 悲尓 三更而 羽振鳴志藝 誰田尓加須牟
訓読 春まけに悲しむるにさ夜更けて羽振(はぶ)き鳴く鴫(しぎ)誰が田にか住む
私訳 春になるから淋しままに夜が更けて、羽ばたきして鳴く鴫。いったい、誰の田にいるのだろうか。

集歌4142 春日尓 張流柳乎 取持而 見者京之 大路所思
訓読 春し日に張れる柳を取り持ちに見れば都し大路(おほぢ)し思(おも)ほゆ
私訳 春の日光を浴びてふくらむ柳の枝を手折って取り持って眺めると、都の大路を思い出される。

集歌4143 物部能 八十乃感嬬等之 挹乱 寺井之於乃 堅香子之花 (感は女+感の当字)
訓読 物部(もののふ)の八十(やそ)の感嬬等(をとめ)し汲み乱(まが)ふ寺井し上の堅香子(かたかご)し花
私訳 大王にお仕えするたくさんの官女の少女たちが入り乱れて水を汲む、寺井のほとりの堅香子の花よ。

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今日のみそひと歌 木曜日

2014年08月27日 | 万葉 みそひと謌
今日のみそひと歌 木曜日

集歌3182 白妙之 袖之別者 雖借 思乱而 赦鶴鴨
訓読 白栲し袖し別れは借(し)くけども思ひ乱れに許しつるかも
私訳 床で交わした白い栲の夜着の袖の別れを世の定めとしてひと時は預けますが、それでも心は乱れてこの別れを認めてしまった。

集歌3183 京師邊 君者去之乎 孰解可 言紐緒乃 結手懈毛
訓読 都辺(みやこへ)し君は去(い)にしを誰が解(と)けか言(こと)紐し緒の結ふ手たゆきも
私訳 奈良の都へと貴方は旅立って行ってしまったので、誰が解くと云うのでしょうか。貴方との操を神に誓ったこの下紐を結ぶ、この手がやるせない。

集歌3184 草枕 谷去君乎 人目多 袖不振為而 安萬田悔毛
訓読 草枕谷行く君を人目多(た)み袖振らずせにあまた悔(くや)しも
私訳 草を枕にするような、都へと辛そうに谷間を行く貴方を人目が多いので魂を呼び戻すと云う袖を振らなかった、それがとても悔やまれる。

集歌3185 白銅鏡 手二取持而 見常不足 君尓所贈而 生跡文無
訓読 真澄鏡(まそかがみ)手に取り持ちに見れど飽かぬ君に贈りに生(い)けりともなし
私訳 願うとそれを見せてくれると云う真澄鏡、それを手に取り持って見るが、何度見ても飽きることのない。その貴方に里に残された私の思いを贈っても、便りもなく生きている気がしません。

集歌3186 陰夜之 田時毛不知 山越而 徃座君者 何時将待
訓読 曇り夜したどきも知らぬ山越えに往(い)ます君をば何時(いつ)とか待たむ
私訳 曇りの夜のようにおぼつかなく不案内の山を越えて去って行く貴方を、次は何時かと待っていましょう。

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今日のみそひと歌 水曜日

2014年08月27日 | 万葉 みそひと謌
今日のみそひと歌 水曜日

集歌2335 咲出照 梅之下枝 置露之 可消於妹 戀頃者
訓読 咲き出(い)照(て)し梅し下枝(したゑだ)置く露し消(け)ぬべく妹し恋ふるこのころ
私訳 花が咲き出して輝く梅の下枝、その枝に置く露が消えゆくように、私の命も消えていくでしょう、そんな、梅の花のように輝く貴女に恋い焦がれる今日この頃です。

集歌2336 甚毛 夜深勿行 道邊之 湯小竹之於尓 霜降夜焉
訓読 はなはだも夜(よ)更(ふ)けな行きし道し辺(へ)し斎(ゆ)小竹(しの)し上(うへ)に霜し降る夜を
私訳 これほどひどく夜が更けてから帰って行かないで、帰って行く道の道端の笹の上に霜の降る夜中を。

集歌2337 小竹葉尓 薄太礼零覆 消名羽鴨 将忘云者 益所念
訓読 小竹(しの)し葉にはだれ降り覆(お)ひ消(け)なばかも忘れむ云へばまして念(おも)ほゆ
私訳 「笹の葉に雪がまだらに降り覆い、やがて季節に融け消えて行くならば、人はその雪を忘れるように、やがて貴方は私のことを捨てるでしょう」と貴女が云うならば、貴女に対して私は一層に恋い焦がれます。

集歌2338 霰落 板敢風吹 寒夜也 旗野尓今夜 吾獨寐牟
訓読 霰(あられ)落(ふ)り塡(は)むこ風吹き寒き夜や旗野(はたの)に今夜(こよひ)吾(あ)が独り寝(ね)む
私訳 霰が降り、風が粗末な小屋の板の間から吹き込み寒い夜です。貴女が私の訪れを許してくれないと、この旗野で今夜は、私は独り野宿するのでしょう。

集歌2339 吉名張乃 野木尓零覆 白雪乃 市白霜 将戀吾鴨
訓読 吉隠(よなばり)の野木(のき)に降り覆(おほ)ふ白雪のいちしろくしも恋ひむ吾かも
私訳 吉隠の野の木々に降り覆う白雪がはっきり見えるように、はっきりと人目に付くように貴女を恋い慕う、そんな私です。

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今日のみそひと謌 火曜日

2014年08月26日 | 万葉 みそひと謌
今日のみそひと謌 火曜日

集歌1454 波上従 所見兒嶋之 雲隠 穴氣衝之 相別去者
訓読 波し上(へ)ゆ見ゆる小島し雲(くも)隠(かく)りあな息づかし相別れなば
私訳 船が行く先の波の上に見える小島が雲に隠れる。ああ、ため息が出る。貴女と別れてしまうと。

集歌1455 玉切 命向 戀従者 公之三舶乃 梶柄母我
訓読 たまきはる命(いのち)し向ひ恋ひむゆは公し御船の梶柄(かじから)にもが
私訳 霊に限りある命に対して無事を祈ることは、貴方が乗る御船の行方を定める梶の柄になるようなものでしょうか。

集歌1456 此花乃 一与能内尓 百種乃 言曽隠有 於保呂可尓為莫
訓読 この花の一枝(ひとよ)のうちに百種(ももくさ)の言(こと)ぞ隠(こも)れる疎(おほろ)かにすな
私訳 この桜の花の一枝の中に、沢山の誓いの言葉が託されている。粗末にしないでくれ。

集歌1457 此花乃 一与能裏波 百種乃 言持不勝而 所折家良受也
訓読 この花の一枝(ひとよ)のうちは百種(ももたね)の言(こと)持ちかねに折(を)れしけらずや
私訳 この桜の花の一枝の一つは、沢山の誓いの言葉の重みを受け切れなくて折れてしまったのですか。

集歌1458 室戸在 櫻花者 今毛香聞 松風疾 地尓落良武
訓読 室戸(やと)にある桜の花は今もかも松風疾(はや)み地に落(ち)るらむ
私訳 家に咲く桜の花は、今頃は松風のはげしさに地に散っているでしょう。

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