竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

後撰和歌集 巻20 歌番号1423から1425まで

2024年07月03日 | 後撰和歌集 現代語訳

歌番号一四二三

原文 飛止川可比者部利个留徒留乃飛止川可奈久奈利尓个礼者

止万礼留可以多久奈幾者部利个礼八安女乃布利者部利个留尓

読下 一つがひ侍りける鶴の一つが亡くなりにければ、

留まれるがいたく鳴き侍りければ、雨の降り侍りけるに

 

原文 以世

読下 伊勢

 

原文 奈久己恵尓曽比天奈美多者乃本良祢止久毛乃宇部与利安女止布留良无

和歌 なくこゑに そひてなみたは のほらねと くものうへより あめとふるらむ

読下 鳴く声に添ひて涙は上らねど雲の上より雨と降るらん

解釈 天に届くと言う鶴の鳴き声に添えて、私が声を上げて流す涙の、その鳴く声は天までは上りませんが、それでも、悲しみの涙は雲の上から雨となって降るでしょう。

注意 詩経「鶴鳴于九皐声聞于天」を引用する説がある。

 

歌番号一四二四

原文 女乃三満可利天乃止之乃志波寸乃川己毛利乃比

布留己止以比者部利个留尓

読下 妻の身まかりての年の師走のつごもりの日、

古事言ひ侍りけるに

 

原文 加祢寸个乃安曾无

読下 兼輔朝臣(藤原兼輔)

 

原文 奈幾飛止乃止毛尓之可部留止之奈良八久礼由久个不者宇礼之可良末之

和歌 なきひとの ともにしかへる としならは くれゆくけふは うれしからまし

読下 亡き人の共にし帰る年ならば暮れ行く今日はうれしからまし

解釈 亡き人が、年の気が改まる、そのように年の気のように改まって帰って来るのなら、年が暮れ行く今日は、明日に亡き人が帰って来ると思うと嬉しいのですが。

 

歌番号一四二五

原文 加部之

読下 返し

 

原文 従良由幾

読下 つらゆき(紀貫之)

 

原文 己布留満尓止之乃久礼奈者奈幾飛止乃和可礼也以止々止本久奈利奈无

和歌 こふるまに としのくれなは なきひとの わかれやいとと とほくなりなむ

読下 恋ふる間に年の暮れなば亡き人の別れやいとど遠くなりなん

解釈 亡き人を恋焦がれている間に年が暮れてしまったなら、亡き人との年忌の別れがさらに遠くになりませんか。

 

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後撰和歌集 巻20 歌番号1418から1422まで

2024年07月02日 | 後撰和歌集 現代語訳

歌番号一四一八

原文 加部之

読下 返し

 

原文 与美飛止之良寸

読下 詠み人知らす

 

原文 与曽尓於留曽天多尓飛知之布知己呂毛奈美多尓者奈毛美衣寸曽安良末之

和歌 よそにをる そてたにひちし ふちころも なみたにはなも みえすそあらまし

読下 よそに居る袖だにひちし藤衣涙に花も見えずぞあらまし

解釈 法会の場所とは違うところに居る、その私の袖でも悲しみの涙に濡れた藤衣ですから、親の法会を行う貴女は悲しみの涙にくれて、その藤の花も見えないのでしょうね。

 

歌番号一四一九

原文 堂以之良寸

読下 題知らす

 

原文 以世

読下 伊勢

 

原文 保止毛奈久多礼毛遠久礼奴与奈礼止毛止万留八由久遠加奈之止曽三留

和歌 ほともなく たれもおくれぬ よなれとも とまるはゆくを かなしとそみる

読下 ほどもなく誰れも後れぬ世なれども止まるは行くを悲しとぞ見る

解釈 死ぬのはすぐのことで、誰も死に遅れることのないこの世ですが、それでもこの世に留まっているものは、死に行く者を悲しい姿と感じます。

 

歌番号一四二〇

原文 飛止遠奈久奈之天加幾利奈久己比於毛日伊利天祢多留与乃

由女尓美衣个礼者於毛比个留飛止尓加久奈无止以比

徒可者之多利个礼八

読下 人を亡くなして、限りなく恋ひて、思ひ入りて寝たる夜の

夢に見えければ、思ひける人に、かくなん、と言ひ

つかはしたりければ

 

原文 者留可美乃安曾无乃无寸女

読下 玄上朝臣女

 

原文 止幾乃満毛奈久佐女川良无佐女奴万者由女尓多尓美奴和礼曽加奈之幾

和歌 ときのまも なくさめつらむ さめぬまは ゆめにたにみぬ われそかなしき

読下 時の間もなく覚めつらん覚めぬ間は夢にだに見ぬ我ぞ悲しき

解釈 ほんのわずかの間もなく寝覚めてしまいました、寝ていてのその寝覚めない、その間でも人を亡くした悲しみで夢さえ見れない、我が身は辛いものがあります。

 

歌番号一四二一

原文 加部之

読下 返し

 

原文 多以布

読下 大輔

 

原文 加奈之佐乃奈久佐武部久毛安良左利徒由女乃宇知尓毛由女止美由礼八

和歌 かなしさの なくさむへくも あらさりつ ゆめのうちにも ゆめとみゆれは

読下 悲しさの慰むべくもあらざりつ夢のうちにも夢と見ゆれば

解釈 貴女の悲しみへ慰めることが出来るはずはありません、夢の内にも、あれは現実ではない、夢だったと思えればいいのですが、(その夢が見られないとすると。)

 

歌番号一四二二

原文 安利八良乃止之者留可三万可利尓个留遠幾々天

読下 在原利春が身まかりにけるを聞きて

 

原文 以世

読下 伊勢

 

原文 加遣天多尓和可三乃宇部止於毛比幾也己武止之者留乃者奈遠美之止八

和歌 かけてたに わかみのうへと おもひきや こむとしはるの はなをみしとは

読下 かけてだに我が身の上と思ひきや来む年春の花を見じとは

解釈 すこしでも我が身の周りに起きることと思ったでしょうか、貴方が亡くなられ、やって来る春の花を、もう、見ることが出来ないとは、思いもよりませんでした。

 

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後撰和歌集 巻20 歌番号1413から1417まで

2024年07月01日 | 後撰和歌集 現代語訳

歌番号一四一三

原文 飛止乃止不良日尓満宇天幾多利个留尓者也久奈久奈利尓幾

止以比者部利个礼者加衣天乃毛美知尓加幾川个者部利个留

読下 人の訪ぶらひにまうで来たりけるに、早く亡くなりにき、

と言ひ侍りければ、楓の紅葉に書きつけ侍りける

 

原文 可為世无保宇之

読下 戒仙法師

 

原文 春幾尓个留飛止遠安幾之毛止不可良尓曽天者毛美知乃以呂尓己曽奈礼

和歌 すきにける ひとをあきしも とふからに そてはもみちの いろにこそなれ

読下 過ぎにける人を秋しも問ふからに袖は紅葉の色にこそなれ

解釈 亡くなった人を知らずに、秋になったとして訪問したけれど、その訪問で私の袖は悲しみに流す涙で、紅葉の色にだけになったのです。

 

歌番号一四一四

原文 奈久奈利天者部利个留飛止乃以美尓己毛利天者部利个留尓

安女乃布留比々止乃止比天者部利个礼八

読下 亡くなりて侍りける人の忌みに籠もりて侍りけるに、

雨の降る日、人の訪ひて侍りければ

 

原文 与美飛止之良寸

読下 詠み人知らす

 

原文 曽天加者久止幾奈可利川留和可三尓者布留遠安女止毛於毛者左利个利

和歌 そてかわく ときなかりつる わかみには ふるをあめとも おもはさりけり

読下 袖乾く時なかりつる我が身には降るを雨とも思はざりけり

解釈 悲しみで流す涙で濡れた袖が乾くときがない我が身には、貴方が、いま、雨が降ると言うが、降るとは涙だけと思い、雨のこととは気が付きませんでした。

 

歌番号一四一五

原文 飛止乃以美者天々毛止乃以部尓加部利个留比

読下 人の忌み果てて、もとの家に帰りける日

 

原文 与美飛止之良寸

読下 詠み人知らす

 

原文 布留左止尓幾美者以川良止満知止者々以川礼乃曽良乃可寸美止以者末之

和歌 ふるさとに きみはいつらと まちとはは いつれのそらの かすみといはまし

読下 ふるさとに君はいづらと待ち問はばいづれの空の霞と言はまし

解釈 住み慣れた元の屋敷に帰ったとき、あなたの主の君は、どこに行ったのですかと、人が私を待って問い聞いたなら、どこの空の霞となったと答えたらいいのでしょうか。

 

歌番号一四一六

原文 安徒多々乃安曾无三満可利天万多乃止之加乃安曾无乃

遠乃奈留以部美武止天己礼可礼万可利天毛乃可多利

之者部利个留川以天尓与三者部利个留

読下 敦忠朝臣身まかりて、又の年、かの朝臣の

小野なる家見むとて、これかれまかりて、物語

し侍りけるついでによみ侍りける

 

原文 幾与多々

読下 清正(藤原清正)

 

原文 幾美可以尓之可多也以徒礼曽之良久毛乃奴之奈幾也止々美留可加奈之左

和歌 きみかいにし かたやいつれそ しらくもの ぬしなきやとと みるかかなしさ

読下 君がいにし方やいづれぞ白雲の主なき宿と見るが悲しさ

解釈 貴方が亡くなって旅立って行った方向はどちらか、行方もしれない白雲ように、行方も判らない霧のかかった主のいない屋敷を見ることは辛いことです。

注意 古今和歌集「誰見よと花咲けるらむ白雲の立つ野と早くなりにしものを」を引用する。

 

歌番号一四一七

原文 於也乃和左之尓天良尓万宇天幾多利个留遠幾々川个天

毛呂止毛尓満宇天末之物遠止飛止乃以比个礼礼八

読下 親のわざしに寺に詣で来たりけるを聞きつけて、

もろともに詣でましものを、と人の言ひければ

 

原文 与美飛止之良寸

読下 詠み人知らす

 

原文 和比飛止乃多毛止尓幾美可宇川利世八布知乃者奈止曽以呂者美衣末之

和歌 わひひとの たもとにきみか うつりせは ふちのはなとそ いろはみえまし

読下 わび人の袂に君がうつりせば藤の花とぞ色は見えまし

解釈 (寄り添ってくれる貴方がいたら、)悲しみ嘆く者の袂を濡らす涙の水面に、その貴方の姿を映るものですと、貴方の着る藤の衣は藤の花色と見えたでしょう。

 

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後撰和歌集 巻20 歌番号1408から1412まで

2024年06月28日 | 後撰和歌集 現代語訳

歌番号一四〇八

原文 於奈之止之乃安幾

読下 同じ年の秋

 

原文 者留可美乃安曾无乃无寸女

読下 玄上朝臣女(藤原玄上朝臣女)

 

原文 毛呂止毛尓越幾為之安幾乃川由者可利加々良无毛乃止於毛日可个幾也

和歌 もろともに おきゐしあきの つゆはかり かからむものと おもひかけきや

読下 もろともにおきゐし秋の露ばかりかからん物と思ひかけきや

解釈 先坊と一緒に起居していた去年の秋には、露ほどにも、先坊が亡くなられると言う、このようなことになるとは思いもよりませんでした。

 

歌番号一四〇九

原文 幾与多々加比和乃本以万宇知幾三乃以美尓己毛利天

者部利个留尓川可八之个留

読下 清正が枇杷大臣の忌みに籠もりて

侍りけるにつかはしける

 

原文 布知八良乃毛利布三

読下 藤原守文

 

原文 与乃奈可乃加奈之幾己止遠幾久乃宇部尓遠久之良川由曽奈美多奈利个留

和歌 よのなかの かなしきことを きくのうへに おくしらつゆそ なみたなりける

読下 世の中の悲しき事を菊の上に置く白露ぞ涙なりける

解釈 世の中の悲しい出来事を聞く、その言葉の響きではありませんが、菊の花の上に置く白露、それは悲しい出来事を聞いて流した涙だったのですね。

 

歌番号一四一〇

原文 加部之

読下 返し

 

原文 幾与多々

読下 きよたた(藤原清正)

 

原文 幾久尓多尓川由个可留良无飛止乃与遠女尓見之曽天遠於毛比也良奈无

和歌 きくにたに つゆけかるらむ ひとのよを めにみしそてを おもひやらなむ

読下 きくにだに露けかるらん人の世を目に見し袖を思ひやらなん

解釈 菊の花でも置く露、その言葉の響きではありませんが、悲しい出来事を聞くだけでも涙で袖が露に濡れたようになるという、その人の世の様を目にした、この私の袖の様子を想像してください。

 

歌番号一四一一

原文 加祢寸个乃安曾无奈久奈利天乃知止左乃久尓与利

万可利乃本利天加乃安者多乃以部尓天

読下 兼輔朝臣亡くなりて後、土左の国より

まかり上りて、かの粟田の家にて

 

原文 従良由幾

読下 つらゆき(紀貫之)

 

原文 飛幾宇部之布多八乃万川八安利奈可良幾美可知止世乃奈幾曽可奈良之幾

和歌 ひきうゑし ふたはのまつは ありなから きみかちとせの なきそかなしき

読下 引き植ゑし双葉の松は有りながら君が千歳のなきぞ悲しき

解釈 根を引き抜いて植えた双葉の松は、今もここに生えていますが、貴方の千歳を祈って植えた松があるのに、貴方が千歳を得られなかったことが悲しいことです。

 

歌番号一四一二

原文 幾曽乃川以天尓加之己奈留飛止

読下 そのついでに、かしこなる人

 

原文 与美飛止之良寸

読下 詠み人知らす

 

原文 幾美万佐天止之者部奴礼止布留左止尓川幾世奴毛乃者奈良美多奈利个利

和歌 きみまさて としはへぬれと ふるさとに つきせぬものは なみたなりけり

読下 君まさで年は経ぬれどふるさとに尽きせぬ物は涙なりけり

解釈 兼輔朝臣の御方が亡くなってから年月は立ちますが、住み慣れた場所で、尽きないものは、命ではなく、悲しみの涙なのでしょう。

 

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後撰和歌集 巻20 歌番号1403から1407まで

2024年06月27日 | 後撰和歌集 現代語訳

歌番号一四〇三

原文 也満止尓者部利个留者々三満可利天乃知加乃久尓部

万可留止天

読下 大和に侍りける母、身まかりて後、かの国へ

まかるとて

 

原文 以世

読下 伊勢

 

原文 飛止利由久己止己曽宇个礼布留左止乃奈良乃奈良日天見之飛止毛奈三

和歌 ひとりゆく ことこそうけれ ふるさとの ならのならひて みしひともなみ

読下 一人行くことこそ憂けれふるさとの奈良のならびて見し人もなみ

解釈 独りで行くことには気が進まない、昔に関わった奈良の都で、二人して並んで景色を眺めた、母も亡くなっていないのです。

 

歌番号一四〇四

原文 保宇己宇乃美布久奈利个留止幾尓比以呂乃佐以天尓

加幾天飛止尓遠久利者部利个留

読下 法皇の御服なりける時、鈍色のさいでに

書きて人に送り侍りける

 

原文 幾与宇己久乃美也春武止己呂

読下 京極御息所

 

原文 春美曽女乃己幾毛宇寸幾毛美留止幾者加左祢天毛乃曽加奈之加利个留

和歌 すみそめの こきもうすきも みるときは かさねてものそ かなしかりける

読下 墨染めの濃きも薄きも見る時は重ねて物ぞ悲しかりける

解釈 墨染めの布の、色濃いものも色薄いものも、その御姿を見る時は、繰り返しもの悲しい気持ちになります。

 

歌番号一四〇五

原文 於无奈与川乃美己乃加久礼者部利尓个留止幾

読下 女四内親王のかくれ侍りにける時

 

原文 美幾乃於本以万宇知幾三

読下 右大臣

 

原文 幾乃不万天知与止知幾利之幾美遠和可志天乃也万知尓多川奴部幾可奈

和歌 きのふまて ちよとちきりし きみをわか してのやまちに たつぬへきかな

読下 昨日まで千代と契りし君を我が死出の山路に尋ぬべきかな

解釈 昨日まで千代に暮らすことを約束していた、その貴女を、私は貴女の死出の山路の葬列に、(貴女の身内となる夫として)尋ね同行すべきなのでしょうか。

注意 平安時代の葬列の参列者は、極、近親者だけだったようです。それが末句の表現です。

 

歌番号一四〇六

原文 左幾乃保宇々世多万日天乃者留多以布尓川可八之个留

読下 先坊失せたまひての春、大輔につかはしける

 

原文 者留可美乃安曾无乃无寸女

読下 はるかみの朝臣のむすめ(藤原玄上朝臣女)

 

原文 安良多万乃止之己衣久良之川祢毛奈幾者川宇久比寸乃祢尓曽奈可留々

和歌 あらたまの としこえくらし つねもなき はつうくひすの ねにそなかるる

読下 あらたまの年越え来らし常もなき初鴬の音にぞ泣かるる

解釈 年の気が改まる、その新しい年が期を越えてやって来るようです、いつもはいない鶯の初音のように、いつもはいらっしゃる先坊が初春の祝いの行事にいらっしゃらないので、声を上げて泣いてしまいます。

 

歌番号一四〇七

原文 加部之

読下 返し

 

原文 多以布

読下 大輔

 

原文 祢尓多天々奈可奴比者奈之宇久比寸乃无可之乃者留遠於毛比也利川

和歌 ねにたてて なかぬひはなし うくひすの むかしのはるを おもひやりつつ

読下 音に立てて泣かぬ日はなし鴬の昔の春を思ひやりつつ

解釈 私も声を上げて泣かない日々はありません、鶯の初音、その言葉の響きではありませんが、憂くに居て、昔の先坊が初春の祝いの行事にいらっしゃった時を思い出だしながら。

 

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