竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

拾遺和歌集 巻6 歌番号351から353まで

2024年10月11日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻6

歌番号 351 拾遺抄記載

詞書 なかされ侍りてのち、いひおこせて侍りける

詠人 贈太政大臣

原文 幾美可者留 也止乃己須恵乃 由久/\止 加久留々万天尓 加部利美之者也

和歌 きみかすむ やとのこすゑの ゆくゆくと かくるるまてに かへりみしはや

読下 君かすむやとのこすゑのゆくゆくとかくるるまてにかへりみしはや

解釈 貴女が住む屋敷の高い梢が、旅路を下って行くにしたがって、隠れてしまうまで、何度も振り返って見つめました。

注意 贈太政大臣とは菅原道真のことで、権太宰帥としての都落ちの場面です。

 

歌番号 352

詞書 かさのかなをかか、もろこしにわたりて侍りける時、めのなか、うたよみて侍りける返し

詠人 かなをか

原文 奈美乃宇部尓 美恵之己之万乃 志万可久礼 由久曽良毛奈之 幾美尓和可礼天

和歌 なみのうへに みえしこしまの しまかくれ ゆくそらもなし きみにわかれて

読下 浪のうへに見えしこしまのしまかくれゆくそらもなしきみにわかれて

解釈 遣唐の旅路に見た、浪の上に見えた小島が島隠れする姿も、雲が流れ行く広大な空も、私の眼中にはありません、貴女と別れてしまっては。

 

歌番号 353

詞書 もろこしにて

詠人 かきのもとの人まろ

原文 安満止不也 加利乃徒可比尓 以徒之可毛 奈良乃美也己尓 己止川天也良无

和歌 あまとふや かりのつかひに いつしかも ならのみやこに ことつてやらむ

読下 あまとふやかりのつかひにいつしかもならのみやこにことつてやらん

解釈 空を飛ぶ、雁書の故事の雁の使いに託して、いつかは、奈良の都に言伝を送りたいものです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

拾遺和歌集 巻6 歌番号346から350まで

2024年10月10日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻6

歌番号 346 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 幾美遠乃美 己飛川々多比乃 久左万久良 川由之計可良奴 安可川幾曽奈幾

和歌 きみをのみ こひつつたひの くさまくら つゆしけからぬ あかつきそなき

読下 君をのみこひつつたひの草枕つゆしけからぬあか月そなき

解釈 貴女だけを恋焦がれて、旅路の草枕、流す涙で露気っぽくならない暁の朝はありません。

 

歌番号 347

詞書 源公貞か、大隅へまかりくたりけるに、せきとの院にて、月のあかかりけるに、わかれをしみ侍りて

詠人 平兼盛

原文 者累可奈留 堂比乃曽良尓毛 於久礼祢八 宇良也万之幾八 安幾乃与乃川幾

和歌 はるかなる たひのそらにも おくれねは うらやましきは あきのよのつき

読下 はるかなるたひのそらにもおくれねはうら山しきは秋のよの月

解釈 これからの西への遥かな旅路の空にも貴方について行って取り残されることの無い、それが、この秋の夜の月です。

 

歌番号 348

詞書 秋、たひにまかりけるに、いなみのにやとりて

詠人 よしのふ

原文 遠美奈部之 和礼尓也止可世 以奈美乃々 以奈止以不止毛 己々遠寸幾女也

和歌 をみなへし われにやとかせ いなみのの いなといふとも ここをすきめや

読下 をみなへし我にやとかせいなみののいなといふともここをすきめや

解釈 女郎花、私に宿を貸して下さい、印南野の、その言葉の響きでありませんが、否と言っても、ここを通り過ぎることが出来るでしょうか。

 

歌番号 349

詞書 つくしへくたりけるみちにて

詠人 重之

原文 布奈地尓者 久左乃万久良毛 武寸者祢者 於幾奈可良己曽 由女毛美衛个礼

和歌 ふなちには くさのまくらも むすはねは おきなからこそ ゆめもみえけれ

読下 ふなちには草の枕もむすはねはおきなからこそ夢も見えけれ

解釈 船路にあっては旅寝の草枕を結ぶ訳でもありませんが、沖に居ながらの言葉遊びではありませんが、起きながら夢も見るでしょう。

 

歌番号 350

詞書 帥伊周、つくしへまかりけるに、かはしりはなれ侍りけるによみ侍りける

詠人 ゆけのよしとき

原文 遠毛飛以天毛 奈幾布留佐止乃 也万奈礼止 加久礼由久者多 安者礼奈利个利

和歌 おもひいても なきふるさとの やまなれと かくれゆくはた あはれなりけり

読下 思ひいてもなきふるさとの山なれとかくれゆくはたあはれなりけり

解釈 思い出しても格別に思い出も無い古き里の山ではありますが、船が進むにつれ、隠れ往くのは、考え深いものがあります。

注意 藤原伊周が長徳元年の政変で失脚し、翌年、太宰帥としての都落ちの場面です。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

拾遺和歌集 巻6 歌番号341から345まで

2024年10月09日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻6

歌番号 341 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 堂比由可者 曽天己曽奴留礼 毛留也万乃 志徒久尓乃美八 於保世佐良奈无

和歌 たひゆかは そてこそぬるれ もるやまの しつくにのみは おほせさらなむ

読下 たひゆかはそてこそぬるれもる山のしつくにのみはおほせさらなん

解釈 旅路を行くと草葉の露を払って袖はきっと濡れるでしょう、守山、その言葉の響きではありませんが、別れの涙で袖が漏れる、その漏る雫にだけに袖が濡れる理由を負わせません。別れが悲しいのです。

 

歌番号 342

詞書 恒徳公家の障子に

詠人 かねもり

原文 志本美天留 保止尓由幾可不 堂比々止也 者万奈乃者之止 奈川計曽女个无

和歌 しほみてる ほとにゆきかふ たひひとや はまなのはしと なつけそめけむ

読下 しほみてるほとにゆきかふ旅人やはまなのはしとなつけそめけん

解釈 潮が満ちている間に舟で行き交った旅人は、今はそこを浜名の橋と名付け出しました。

注意 浜名湖の出口に架かる浜名の橋は平安時代の貞観4年(862)に架けられました。1005年ごろの成立の拾遺和歌集からすると、それほどには時間が経っていません。

 

歌番号 343

詞書 たみののしまのほとりにて雨にあひて

詠人 つらゆき

原文 安女尓与利 堂美乃々志万遠 和个由計止 名尓八加久礼奴 毛乃尓曽安利个留

和歌 あめにより たみののしまを わけゆけと なにはかくれぬ ものにそありける

読下 雨によりたみののしまをわけゆけと名にはかくれぬ物にそ有りける

解釈 雨により田蓑を被るではありませんが、田蓑の島の萱原を分け行くと難波の景色は雨で隠れてしまう、その風情です。

 

歌番号 344

詞書 なにはに、はらへし侍りて、まかりかへりけるあか月に、もりの侍りけるに、郭公のなき侍りけるをききて

詠人 伊勢

原文 本止々幾須 祢久良奈可良乃 己恵幾計者 久左乃万久良曽 川由个可利个留

和歌 ほとときす ねくらなからの こゑきけは くさのまくらそ つゆけかりける

読下 郭公ねくらなからのこゑきけは草の枕そつゆけかりける

解釈 ホトトギス、旅路で寝て日を暮らす中で、その「片恋、片恋」と鳴く声を聴くと、仮寝の草の枕は、恋人を思って涙で露気ぽっくなります。

注意 万葉時代から「カッコウ、カッコウ」の鳴き声を「片恋、片恋」と聞くのが約束です。

 

歌番号 345

詞書 物へまかりけるみちにて、かりのなくをききて

詠人 よしのふ

原文 久左万久良 和礼乃美奈良寸 加利可祢毛 多比乃曽良尓曽 奈幾和多留奈留

和歌 くさまくら われのみならす かりかねも たひのそらにそ なきわたるなる

読下 草枕我のみならすかりかねもたひのそらにそなき渡るなる

解釈 旅路の草枕をする私だけではなく、遥か北へと帰って行く雁がねも、おなじように旅路の空で鳴き渡っています。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

拾遺和歌集 巻6 歌番号336から340まで

2024年10月08日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻6

歌番号 336 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 右衛門

原文 伊乃知遠曽 以可奈良无止者 於毛飛己之 以幾天和可留々 与尓己曽安利个礼

和歌 いのちをそ いかならむとは おもひこし いきてわかるる よにこそありけれ

読下 命をそいかならむとは思ひこしいきてわかるる世にこそ有りけれ

解釈 生きているこの命をどのようなものと思っているのでしょうか、死別だけでなく、生きていても別れる、このような世の中なのですね。

 

歌番号 337 拾遺抄記載

詞書 つくしへまかりける人のもとにいひつかはしける

詠人 橘倚平

原文 武可之美之 以幾乃万川者良 己止々波々 和寸礼奴比止毛 安利止己多部与

和歌 むかしみし いきのまつはら こととはは わすれぬひとも ありとこたへよ

読下 昔見しいきの松原事とははわすれぬ人も有りとこたへよ

解釈 昔眺めた博多今津の生の松原、その松原について何かを尋ねられたら、そこには私の忘れられない恋人が暮らしていると答えてください。

 

歌番号 338 拾遺抄記載

詞書 陸奥守にて、くたり侍りける時、三条太政大臣の餞し侍りけれは、よみ侍りける

詠人 藤原為順

原文 堂遣久満乃 万川遠美川々也 奈久佐女无 幾美可知止世乃 可个尓奈良日天

和歌 たけくまの まつをみつつや なくさめむ きみかちとせの かけにならひて

読下 たけくまの松を見つつやなくさめん君かちとせの影にならひて

解釈 陸奥の国の武隈の松を眺めながら、きっと、気持ちを慰めるでしょう、貴方の命が千歳でありますように、それに習うような武隈の松の姿に。

 

歌番号 339 拾遺抄記載

詞書 みちのくにの白河関こえ侍りけるに

詠人 平兼盛

原文 堂与利安良波 以可天美也己部 徒遣也良无 个不之良可者乃 施幾者己衛奴止

和歌 たよりあらは いかてみやこへ つけやらむ けふしらかはの せきはこえぬと

読下 たよりあらはいかて宮こへつけやらむけふ白河の関はこえぬと

解釈 知らせを送る方法があったなら、どうにかして都に伝手に付けて送りましょう、今日、あの有名な白河の関を越えたと。

 

歌番号 340

詞書 実方朝臣、みちのくにへくたり侍りけるに、したくらつかはすとて

詠人 右衛門督公任

原文 安徒万地乃 己乃志多久良久 奈利由可者 美也己乃川幾遠 己比左良女也八

和歌 あつまちの このしたくらく なりゆかは みやこのつきを こひさらめやは

読下 あつまちのこのしたくらくなりゆかは宮この月をこひさらめやは

解釈 東路にあって木々の下が葉が茂って薄暗くなったなら、都の夕暮れの月を恋しくなるでしょうか。きっと、恋しくなるでしょうね。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

拾遺和歌集 巻6 歌番号331から335まで

2024年10月07日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻6

歌番号 331 拾遺抄記載

詞書 みちのくにのかみ、これともか、まかりくたりけるに、弾正のみこのかうやく、つかはしけるに

詠人 戒秀法師

原文 加免也万尓 以久々寸利乃美 安利个礼八 止々武留可多毛 奈幾和可礼可奈

和歌 かめやまに いくくすりのみ ありけれは ととむるかたも なきわかれかな

読下 かめ山にいくくすりのみ有りけれはととむる方もなき別かな

解釈 亀山に行く、生くる薬だけがあったなら、留める方法も無い別れですね。

注意 亀山とは蓬莱山の別称であり、そこから「いくくすり」とは、蓬莱山の不老長寿の薬を指します。このような知識を前提にした歌です。

 

歌番号 332 拾遺抄記載

詞書 藤原のまさたたか豊前守に侍りける時、ためよりかおほつかなしとてくたり侍りけるに、むまのはなむけし侍るとて

詠人 藤原清正

原文 遠毛飛比止 安留可多部由久 和可礼知遠 々之武己々呂曽 加川者和利奈幾

和歌 おもふひと あるかたへゆく わかれちを をしむこころそ かつはわりなき

読下 思ふ人ある方へゆくわかれちを惜む心そかつはわりなき

解釈 恋慕う人が住む方へ行く、その別れ路での別れを残念に思う気持ちは、それでも子が親に会いに行くのは道理だと思う、その理屈通りではありません。

注意 豊前守藤原雅正は藤原為頼の父親です。この親子関係が前提の歌です。

 

歌番号 333 拾遺抄記載

詞書 肥後守にて清原元輔くたり侍りけるに、源満中せんし侍りけるに、かはらけとりて

詠人 もとすけ

原文 伊可者可利 於毛飛良无止可 於毛飛良无 於以天和可留々 止遠幾和可礼遠

和歌 いかはかり おもふらむとか おもふらむ おいてわかるる とほきわかれを

読下 いかはかり思ふらむとか思ふらんおいてわかるるとほきわかれを

解釈 私がどのように思っているか、貴方は思っているのでしょうか、(二度と会えるかも判らない、)年老いて別れる、この遠い旅路への別れを。

注意 寛和二年(986)の歌で、この時、清原元輔が78歳、源満中が79歳です。両人ともに当時としては異例の長寿です。

 

歌番号 334 拾遺抄記載

詞書 返し

詠人 源満中朝臣

原文 幾美者与之 由久末恵止遠之 止末留三乃 万川本止以可々 安良无止寸良无

和歌 きみはよし ゆくすゑとほし とまるみの まつほといかか あらむとすらむ

読下 君はよし行末とほしとまる身のまつほといかかあらむとすらん

解釈 肥後守として栄転して行く貴方には問題は無いでしょう。行く末の先がまだまだありますから。でも、都に留まる我が身には、貴方の帰りを待つ間に、どのようなことが起きるか、定かではありません。

 

歌番号 335

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 遠久礼為天 和可己比遠礼者 之良久毛乃 多奈比久也万遠 个不也己由良无

和歌 おくれゐて わかこひをれは しらくもの たなひくやまを けふやこゆらむ

読下 おくれゐてわかこひをれは白雲のたなひく山をけふやこゆらん

解釈 貴方にこの都に残されて、私が貴方を恋しいと思い暮らしていると、白雲が棚引く山を、貴方は、今日、そこを越してゆくのでしょうか。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする