竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

再読、今日のみそひと謌 木

2017年08月31日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 木

集歌1336 冬隠 春乃大野乎 焼人者 焼不足香文 吾情熾
訓読 冬こもり春の大野(おほの)を焼く人は焼き足(た)らねかも吾が情(こころ)焼く
私訳 冬が春の季節に隠れ行き春の大野を焼く人は、焼き足らないのか、私の恋する心を燃やす。

集歌1337 葛城乃 高間草野 早知而 標指益乎 今悔拭
訓読 葛城(かつらぎ)の高間(たかま)し草野(かやの)早知りに標(しめ)指(さ)しましを今ぞ悔しき
私訳 葛城の高間の草野を早くから知っていて、恋の誓いの標をしておけば良かった。今は、とても残念です。

集歌1338 吾屋前尓 生土針 従心毛 不想人之 衣尓須良由奈
訓読 吾(あ)が屋前(やと)に生(お)ふる土針(つちはり)心ゆも想(おも)はぬ人し衣(きぬ)に摺(す)らゆな
私訳 私の家の前庭に生える土針の草よ、お前を心底から恋い焦がれない人の衣に摺り染められないように。

集歌1339 鴨頭草丹 服色取 揩目伴 移變色登 称之苦沙
訓読 鴨頭草(つきくさ)に衣(ころも)色どり揩(す)らめども移(うつ)ろふ色と称(い)ふし苦しさ
私訳 ツユクサで衣を色取り摺り染めたのだけど、移り変わりやすい色とあてこするのが残念です。

集歌1340 紫 絲乎曽吾搓 足檜之 山橘乎 将貫跡念而
訓読 紫(むらさき)し糸をぞ吾が搓(よ)るあしひきし山(やま)橘(たちばな)を貫(ぬ)かむと念(おも)ひに
私訳 この紫色の糸を私が撚る。葦や桧の生える山の、その山橘の実を紐に刺し貫こうという想いに。

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再読、今日のみそひと謌 水

2017年08月30日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 水

集歌1331 磐疊 恐山常 知管毛 吾者戀香 同等不有尓
訓読 磐(いは)畳(たたみ)恐(かしこ)き山と知りつつも吾は恋ふるか同等(なみ)にあらなくに
私訳 巌が重なり神々しい山と知っていても、私は恋い焦がれるのか。並みなこと(ひと)ではないのだが。

集歌1332 石金之 凝木敷山尓 入始而 山名付染 出不勝鴨
訓読 石(いは)がねし凝(こご)きし山に入り始(そ)めに山なつかしみ出(い)でかてぬかも
私訳 眺めるとむき出しの岩肌のごつごつした山に入りはじめたから、今では心を惹かれて出て帰ることが出来ない。

集歌1333 佐保山乎 於凡尓見之鹿跡 今見者 山夏香思母 風吹莫勤
訓読 佐保(さほ)山(やま)を凡(おほ)に見しかど今見れば山なつかしも風吹くなゆめ
私訳 佐保山をぼんやり眺めていたけれど、今、このように眺めると佐保山に心が惹かれる。風よ吹くな、決して。

集歌1334 奥山之 於石蘿生 恐常 思情乎 何如裳勢武
訓読 奥山(おくやま)し石(いは)し蘿(こけ)生(む)し恐(かしこ)けど思ふ情(こころ)をいかにかもせむ
私訳 奥山の岩に苔むして神々しくて恐れ多い、そのように恐れ多い貴方を慕いする気持ちをどの様に顕わしたらよいでしょうか。

集歌1335 思臗 痛文為便無 玉手次 雲飛山仁 吾印結
訓読 思ひあまり甚(いた)もすべなみ玉(たま)襷(たすき)畝火(うねひ)し山に吾(あれ)標(しめ)結(ゆ)ふ
私訳 恋い焦がれてどうしようもなさに、美しい襷を掛けるような畝傍の山に私は恋を誓う証の標を結んだ。

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再読、今日のみそひと謌 火

2017年08月29日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 火

集歌1326 照左豆我 手尓纒古須 玉毛欲得 其緒者替而 吾玉尓将為
訓読 照左豆(てりさづ)が手に纏(ま)き古(ふる)す玉もがもその緒は替(か)へに吾が玉にせむ
私訳 照左豆の手に巻いて古くなった玉が欲しい。その紐の緒を替えてから私の玉にしたい。

集歌1327 秋風者 継而莫吹 海底 奥在玉乎 手纒左右二
訓読 秋風は継ぎにな吹きそ海(わた)し底(そこ)奥(おき)なる玉を手し纏(ま)くさへに
私訳 秋風は次々と吹き続くな、せめて海の底の奥深くにある玉を採って手に巻くだけまでは。

集歌1328 伏膝 玉之小琴之 事無者 甚幾許 吾将戀也毛
訓読 膝(ひざ)に伏す玉し小琴(をこと)し事無くはいたく幾許(ここだく)し吾恋ひめやも
私訳 膝に置く美しい小さな琴の、(貴女の)音を聞くことが無かったならならば、これほどひどくは私は恋い焦がれるでしょうか。

集歌1329 陸奥之 吾田多良真弓 著絲而 引者香人之 吾乎事将成
訓読 陸奥(みちのく)し安太多良(あだたら)真弓(まゆみ)弦(つら)着(は)けに引かばか人し吾(あ)を事(こと)なさむ
私訳 陸奥の安太多良山の真弓の弦をつけて弓を引くように気を引いたからか、あの人が私に言い寄るでしょう。

集歌1330 南淵之 細川山 立檀 弓束級 人二不所知
訓読 南淵(なみふち)し細川(ほそかわ)山(やま)し立つ檀(まゆみ)弓束(ゆづか)撓(しな)ふまで人に知らそし
私訳 南淵にある細川山に立つ檀(まゆみ)の、その真弓(まゆみ)の握り手の束が撓(しな)う、その貴女が私に従(しな)い添うまで他の人に気付かさせない。

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再読、今日のみそひと謌 月

2017年08月28日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 月

集歌1321 世間 常如是耳加 結大王 白玉之緒 絶樂思者
訓読 世間(よのなか)し常かくのみか結(ゆ)ひし大王(きみ)白玉し緒し絶(た)ゆらく思へば
私訳 世の中とはこんなものでしょうか。私と契りを結ばれた貴方様。その言葉のひびきではありませんが、結んだ白玉の紐の緒が切れるように、貴方様との縁も絶えてしまうと思うと。

集歌1322 伊勢海之 白水郎之嶋津我 鰒玉 取而後毛可 戀之将繁
訓読 伊勢(いせ)海(うみ)し白水郎(あま)し島津(しまつ)が鰒(あはび)玉(たま)採りに後(のち)もか恋し繁けむ
私訳 伊勢の海の海人のいる島の入り江のアワビの中の玉よ。それを採った後にも、恋する心は一層増すでしょう。

集歌1323 海之底 奥津白玉 縁乎無三 常如此耳也 戀度味試
訓読 海(わた)し底(そこ)沖つ白玉よしをなみ常かくのみや恋ひわたりなむ
私訳 海の底深く隠れている白玉よ。それを採る方法がなくて、いつもこのように恋い焦がれる思いだけが続いていく。

集歌1324 葦根之 懃念而 結義之 玉緒云者 人将解八方
訓読 葦(あし)し根しねもころ念(も)ひに結(ゆ)ひ期しし玉し緒と云はば人解(と)かめやも
私訳 葦の根のように心を尽くして恋い慕って結び誓った玉の紐の緒ですと云ったなら、他の人があえてその紐を解くでしょうか。

集歌1325 白玉乎 手者不纒尓 匣耳 置有之人曽 玉令泳流
訓読 白玉を手には纏(ま)かずに匣(はこ)のみに置(お)けりし人ぞ玉泳(およ)がする
私訳 白玉を肌身である手に巻かずに、大切なものとして箱の中にしまって置いた人こそ、その玉を水の流れに漂わせてしまう。
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万葉集 長歌を鑑賞する 集歌3260B

2017年08月27日 | 万葉集 長歌を楽しむ
万葉集 長歌を鑑賞する 集歌3260B

集歌3260B 真杭尓波 真玉乎懸 真珠奈須 我念妹毛 鏡成 我念妹毛 有跡謂者社 國尓毛 家尓毛由可米 誰故可将行

<標準的な解釈(「萬葉集 釋注」伊藤博、集英社文庫)>
訓読 こもりくの 泊瀬の川の 上つ瀬に 斎杭(いくひ)を打ち 下つ瀬に 真杭(まくひ)を打ち 斎杭には 鏡を懸け 真杭には 真玉を懸け 真玉なす 我が思ふ妹も 鏡なす 我が思ふ妹も ありといはばこそ 国にも 家にも行かめ 誰がゆゑか行かむ
標準 隠り処の泊瀬、その泊瀬の川の上の瀬に斎杭を打ち、下の瀬に真杭を打ち、斎杭には鏡を懸け、真杭には真玉を懸けて、その真玉のように私がたいせつに思う子、その鏡のように私がたいせつに思う子、その子でもいるというのなら、郷へも家へも帰りもしよう。が、この私はいったい誰のために帰ろうというのか。

<西本願寺本万葉集の原文を忠実に訓むときの解釈>
訓読 こもりくの 泊瀬の川の 上つ瀬に 斎杭(いくひ)を打ち 下つ瀬に 真杭(まくひ)を打ち 斎杭には 鏡を懸け 真杭には 真玉を懸け 真玉なす 我が思ふ妹も 鏡なす 我が思ふ妹も ありといはばこそ 国にも 家にも行かめ 誰がゆゑか行かむ
私訳 隠口の泊瀬の川の上流の瀬に神を祝う杭を打ち、下流には立派な杭を打ち、神を祝う杭には鏡を掛け、立派な杭には美しい丸い玉を掛け、美しい丸い玉のような私が心に想う貴女も、鏡のように輝く私が心に想う貴女も、住んでいると云うからこそ、貴女の国にも、貴女の家にも行きましょう。誰の為でしょうか、私は貴女の国にも家にも行きましょう。

檢古事記曰、件歌者、木梨之軽太子自死之時所作者也。
注訓 古事記を檢(かむが)ふるに曰はく「件(くだん)の歌は、木梨の軽太子(かるのひつぎのみこ)の自(みづ)から死(みまか)りし時に作る所」と云へり。
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