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竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

拾遺和歌集 巻16 歌番号1050から1054まで

2025年04月30日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻16

歌番号 1050

詞書 清慎公家のさふらひに、ともし火のもとにさくらの花ををりてさして侍りけるをよみ侍りける

詠人 兼盛弟

原文 飛乃毛止尓 佐遣留佐久良乃 者奈美礼者 比止乃久尓々毛 安良之止曽於毛飛

和歌 ひのもとに さけるさくらの はなみれは ひとのくににも あらしとそおもふ

読下 ひのもとにさけるさくらの色見れは人のくににもあらしとそ思ふ

解釈 このお屋敷の火の明りの下に咲く桜の色合いを見ると、他の地方の国にはない景色だろうと思います。

注意 初句を「日の本」の掛詞ととし四句目の「人の国」を外国と解釈する、国粋の鑑賞もあります。

 

歌番号 1051

詞書 山さくらを見侍りて

詠人 平きむさね

原文 美也万幾乃 布多波美川波尓 毛由留末天 幾恵世奴由幾止 美恵毛寸留可奈

和歌 みやまきの ふたはみつはに もゆるまて きえせぬゆきと みえもするかな

読下 み山木のふたはみつはにもゆるまてきえせぬ雪と見えもするかな

解釈 あの山の木が二葉三葉と芽生え萌えるまで、その言葉の響きではないが、燃える火で消えもしない雪とばかりに想像できます。

 

歌番号 1052

詞書 こむくうち侍りける時に、はたやき侍りけるを見て、よみ侍りける

詠人 藤原長能

原文 加多也万尓 波多也久於乃己 加乃美由留 三也万佐久良者 与幾天者多也遣

和歌 かたやまに はたやくをのこ かのみゆる みやまさくらは よきてはたやけ

読下 かた山にはたやくをのこかの見ゆるみ山さくらはよきてはたやけ

解釈 ほんのちょっとした山で焼畑を焼く男、あの見える山桜は避けて、焼畑をしなさい。

 

歌番号 1053

詞書 石山のたうのまへに侍りけるさくらの木にかきつけ侍りける

詠人 よみ人しらす

原文 宇之呂女多 以可天加部良无 也万佐久良 安可奴尓本日遠 可世尓万可世天

和歌 うしろめた いかてかへらむ やまさくら あかぬにほひを かせにまかせて

読下 うしろめたいかてかへらん山さくらあかぬにほひを風にまかせて

解釈 後ろ髪が引かれる思いです、どうやって家に帰りましょうか、山桜よ、飽きることのない花色を風の思うように任せて揺れている。

 

歌番号 1054

詞書 敦慶式部卿のみこのむすめ、伊勢かはらに侍りけるか、ちかき所に侍るに、かめにさしたる花をおくるとて

詠人 つらゆき

原文 飛佐之可礼 安多尓知留奈止 佐久良者奈 加女尓佐世礼止 宇川呂日尓个里

和歌 ひさしかれ あたにちるなと さくらはな かめにさせれと うつろひにけり

読下 ひさしかれあたにちるなとさくら花かめにさせれとうつろひにけり

解釈 いつまでも咲いていて欲しい、無駄に散るなと、その桜花の枝を瓶に差したけど、色あせてしまいました。

 

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拾遺和歌集 巻16 歌番号1045から1049まで

2025年04月29日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻16

歌番号 1045

詞書 京極御息所、かすかにまうて侍りける時、国司のたてまつりける歌あまたありける中に

詠人 藤原忠房朝臣

原文 布累佐止尓 佐久止和比川留 佐久良者奈 己止之曽幾美尓 美恵奴部良奈留

和歌 ふるさとに さくとわひつる さくらはな ことしそきみに みえぬへらなる

読下 ふるさとにさくとわひつるさくら花ことしそ君に見えぬへらなる

解釈 古の都に咲くと見る人無く寂しく思う桜花、でも、今年こそは御幸の君にお目にかかっています。

 

歌番号 1046

詞書 京極御息所、かすかにまうて侍りける時、国司のたてまつりける歌あまたありける中に

詠人 藤原忠房朝臣

原文 者留可須美 加寸可乃々部尓 多知和多利 美知天毛美由留 美也己比止可奈

和歌 はるかすみ かすかののへに たちわたり みちてもみゆる みやこひとかな

読下 春霞かすかののへに立ちわたりみちても見ゆるみやこ人かな

解釈 春霞、春日の野辺に立ち渡り、霞が満ちる、その言葉の響きのように、野辺に人々が満ちると見える、御幸での都人達です。

 

歌番号 1047

詞書 円融院御時、三尺御屏風に、花の木のもとに人人あつまりゐたる所

詠人 かねもり

原文 与乃奈可尓 宇礼之幾毛乃者 於毛飛止知 者奈美天寸久須 己々呂奈利个利

和歌 よのなかに うれしきものは おもふとち はなみてすくす こころなりけり

読下 世の中にうれしき物は思ふとち花見てすくす心なりけり

解釈 世の中で嬉しいと思うものは、親しき友と花を眺めて過ごす、その風流の心持ちであります。

 

歌番号 1048 拾遺抄記載

詞書 清慎公家にて、池のほとりのさくらの花をよみ侍りける

詠人 もとすけ

原文 佐久良者奈 曽己奈留加遣曽 於之末留々 志川女留比止乃 者留止於毛部八

和歌 さくらはな そこなるかけそ をしまるる しつめるひとの はるとおもへは

読下 さくら花そこなるかけそをしまるるしつめる人のはるとおもへは

解釈 桜花、池の底に見える姿を残念に思われる、その姿と同じように、除目の終わった後、職得られず身を沈める人の、それが春だと思うと。

 

歌番号 1049 拾遺抄記載

詞書 上総よりのほりて侍りけるころ、源頼光か家にて人人さけたうへけるついてに

詠人 藤原長能

原文 安徒万知乃 々地乃由幾万遠 和个天幾天 安者礼美也己乃 者奈遠美留可奈

和歌 あつまちの のちのゆきまを わけてきて あはれみやこの はなをみるかな

読下 あつまちののちの雪まをわけてきてあはれ宮この花を見るかな

解釈 東路の野路の雪の間を掻き分けてこの宴に来て、感慨深くも都の花を眺めることです。

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拾遺和歌集 巻16 歌番号1040から1044まで

2025年04月28日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻16

歌番号 1040 拾遺抄記載

詞書 みつし所にさふらひけるに、蔵人所のをのことも、さくらの花をつかはしけれは

詠人 壬生忠見

原文 毛呂止毛尓 和礼之於良祢者 左久良者奈 於毛飛也利天也 者留遠久良左无

和歌 もろともに われしをらねは さくらはな おもひやりてや はるをくらさむ

読下 もろともに我しをらねは桜花思ひやりてやはるをくらさん

解釈 一緒に我が手折ったわけでもないこの桜花、貴方たちの春の野辺の様子を思い浮かべながら、この春を過ごすのでしょうか。(気を利かせて、私も野遊びに呼べよ)

 

歌番号 1041

詞書 ある人のもとにつかはしける

詠人 御導師浄蔵

原文 可須美多知 也万乃安奈多乃 左久良者奈 於毛飛也利天也 者留遠久良左武

和歌 かすみたつ やまのあなたの さくらはな おもひやりてや はるをくらさむ

読下 霞立つ山のあなたの桜花思ひやりてやはるをくらさむ

解釈 霞が立つ山の彼方の桜花、昔、貴女と楽しんだ桜の花、その時の花の様子を思い浮かべて、この春を暮らしましょう。

 

歌番号 1042

詞書 題しらす

詠人 つらゆき

原文 於知可多乃 者奈毛美留部久 之良奈美乃 止毛尓也和礼毛 多知和多良万之

和歌 をちかたの はなもみるへく しらなみの ともにやわれも たちわたらまし

読下 をち方の花も見るへく白浪のともにや我もたちわたらまし

解釈 向こう岸の花も眺めるべき、白浪の立っている流れと共に、私もこの川を渡りましょう。

 

歌番号 1043 拾遺抄記載

詞書 春、花山に亭子法皇おはしまして、かへらせたまひけれは

詠人 僧正遍昭

原文 満天止以者々 以止毛加之己之 者奈也万尓 志者之止奈可无 止利乃祢毛可奈

和歌 まてといはは いともかしこし はなやまに しはしとなかむ とりのねもかな

読下 まてといははいともかしこし花山にしはしとなかん鳥のねもかな

解釈 お帰りを待てと言うと畏れ多い、この花山にしばし留まれと、鳴く鳥の音があって欲しいものです。

 

歌番号 1044

詞書 京極御息所、かすかにまうて侍りける時、国司のたてまつりける歌あまたありける中に

詠人 藤原忠房朝臣

原文 宇久飛寸乃 奈幾川留奈部尓 加須可乃々 个不乃美由幾遠 者奈止己曽美礼

和歌 うくひすの なきつるなへに かすかのの けふのみゆきを はなとこそみれ

読下 鴬のなきつるなへにかすかののけふのみゆきを花とこそ見れ

解釈 鶯の鳴いているのにつれて、春日野の今日に降る雪を御幸を飾る華やぎの花と擬えてみなさい。

 

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拾遺和歌集 巻16 歌番号1035から1039まで

2025年04月25日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻16

歌番号 1035

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 者留可世者 々奈乃奈幾万尓 布幾者天祢 左幾奈者於毛飛 奈久天美留部久

和歌 はるかせは はなのなきまに ふきはてね さきなはおもひ なくてみるへく

読下 はる風は花のなきまにふきはてねさきなは思ひなくて見るへく

解釈 春風は花が無い季節に吹き終わって欲しい、花が咲き出したら散ることを気にしなくて眺めたいので。

 

歌番号 1036

詞書 題しらす

詠人 みつね

原文 佐可左良无 毛乃止者奈之尓 佐久良者奈 於毛可个尓乃美 万多幾美由良无

和歌 さかさらむ ものとはなしに さくらはな おもかけにのみ またきみゆらむ

読下 さかさらむ物とはなしにさくら花おもかけにのみまたき見ゆらん

解釈 いつまでも咲かないものではないのだけど、桜花よ、去年に見た姿を思い出して、あたかも咲いたと見ているのでしょう。

 

歌番号 1037

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 伊川己尓可 己乃己呂者奈乃 佐可左良无 止己呂可良己曽 太川祢良礼个礼

和歌 いつこにか このころはなの さかさらむ ところからこそ たつねられけれ

読下 いつこにかこのころ花のさかさらむ所からこそたつねられけれ

解釈 何処でしたら、この季節に花の咲いていないことがあるでしょうか、でも、この場所だからこそ、花が咲いているかと尋ねられるのだ。

 

歌番号 1038 拾遺抄記載

詞書 延喜御時月次御屏風のうた

詠人 みつね

原文 佐久良者奈 和可也止尓乃美 安利止美者 奈幾毛乃久左者 於毛八佐良末之

和歌 さくらはな わかやとにのみ ありとみは なきものくさは おもはさらまし

読下 さくら花わかやとにのみ有りと見はなき物くさはおもはさらまし

解釈 桜の花が私の屋敷だけに有るとすれば、我が身はこの世に無き物、その言葉の響きではありませんが、無き物草のように我が身がみすぼらしい姿とは思わないでしょう。

注意 四句目の「なきものくさは」は後年で意味不詳となっていて、無価値のもの、みすぼらしいものの比喩と推測しています。

 

歌番号 1039 拾遺抄記載

詞書 さくらの花さきて侍りける所に、もろともに侍りけるひとの、のちのはるほかに侍りけるに、その花ををりてつかはしける

詠人 よみ人しらす

原文 毛呂止毛尓 於利之者留乃美 己比之久天 飛止利美万宇幾 者奈左可利可奈

和歌 もろともに をりしはるのみ こひしくて ひとりみまうき はなさかりかな

読下 もろともにをりしはるのみこひしくてひとり見まうき花さかりかな

解釈 貴方と一緒に手折った花枝、その春は特別に恋しくて、独りこの花枝を眺めています、この誰もそばにいなくて辛い、この花盛りです。

 

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拾遺和歌集 巻16 歌番号1030から1034まで

2025年04月24日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻16

歌番号 1030

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 佐幾之止幾 奈本己曽美之可 毛々乃者奈 知礼者於之久曽 於毛飛奈利奴留

和歌 さきしとき なほこそみしか もものはな ちれはをしくそ おもひなりぬる

読下 さきし時猶こそ見しかももの花ちれはをしくそ思ひなりぬる

解釈 咲いたとき、だからこそ眺めた桃の花、この花が散ってしまうことは残念なことだと思うようになりました。

 

歌番号 1031

詞書 帥のみこ、人人にうたよませ侍りけるに

詠人 弓削嘉言

原文 也万佐止乃 以部為者可須美 己免多礼止 加幾祢乃也奈幾 寸恵者止尓美由

和歌 やまさとの いへゐはかすみ こめたれと かきねのやなき すゑはとにみゆ

読下 山さとの家ゐは霞こめたれとかきねの柳すゑはとに見ゆ

解釈 山里の住まいに霞が立ち籠っているが、それでも垣根の柳の枝先はその霞の先に見えます。

 

歌番号 1032 拾遺抄記載

詞書 春、物へまかりけるに、つほさうそくして侍りける女ともの野へに侍りけるを見て、なにわさするそととひけれは、ところほるなりといらへけれは

詠人 賀朝法師

原文 者累乃々尓 止己呂毛止武止 以不奈留八 布多利奴者可利 美天多利也幾三

和歌 はるののに ところもとむと いふなるは ふたりぬはかり みてたりやきみ

読下 はるののにところもとむといふなるはふたりぬはかりみてたりやきみ

解釈 春の野に野老(ところ)を探すと言うけれど、二人が寝るほどの「ところ」は見つけましたか、貴女たち。

注意 山芋を野老(ところ)と言い、その野老と女同士が野合で寝る「ところ」との言葉遊びです。この時代、僧侶は男性同士の同性愛が前提で、その裏返しの背景があります。

 

歌番号 1033 拾遺抄記載

詞書 返し

詠人 よみ人しらす

原文 者留乃々尓 保留/\美礼止 奈可利个利 与尓止己呂世幾 比止乃多女尓八

和歌 はるののに ほるほるみれと なかりけり よにところせき ひとのためには

読下 春ののにほるほる見れとなかりけり世に所せき人のためには

解釈 春の野に掘りに掘って探してみたけれど「ところ」はありませんでした、まず、世の有り様に逆らうような人のためには。

注意 「よにところせき」は、掛詞よりも単純に「世に処塞き」と解釈しただけの方が良いようです。

 

歌番号 1034

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 加幾久良之 由幾毛布良奈无 左久良者奈 満多佐可奴万者 与曽部天毛美武

和歌 かきくらし ゆきもふらなむ さくらはな またさかぬまは よそへてもみむ

読下 かきくらし雪もふらなん桜花またさかぬまはよそへても見む

解釈 空を掻き曇らせて雪も降って来ないだろうか、桜花、まだ、咲かない間は雪を枝に花のように見立てて眺めましょう。

注意 和歌の季節感とお約束は梅の花ですが、意表を突いて桜の花です。

 

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