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竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

拾遺和歌集 巻17 歌番号1152から1156まで

2025年05月28日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻17

歌番号 1152

詞書 雪をしましまのかたにつくりて見侍りけるに、やうやうきえ侍りけれは

詠人 中務のみこ

原文 和多川美毛 由幾个乃美川者 万佐利个利 遠知乃之万/\ 美恵寸奈利由久

和歌 わたつみも ゆきけのみつは まさりけり をちのしましま みえすなりゆく

読下 わたつみもゆきけの水はまさりけりをちのしましま見えすなりゆく

解釈 大船を渡すような大きな海、その海でも雪解けの水で水嵩を増すでしょう、そのような海の彼方の島々が見えなくなっていきます。

 

歌番号 1153

詞書 雪をしましまのかたにつくりて見侍りけるに、やうやうきえ侍りけれは

詠人 中務のみこ

原文 毛与由日尓 布利曽不由幾乃 志徒久尓八 万久良乃志多尓 奈美曽多知遣流

和歌 もとゆひに ふりそふゆきの しつくには まくらのしたに なみそたちける

読下 もとゆひにふりそふ雪のしつくには枕のしたに浪そたちける

解釈 頭の元結に降り添える雪、そのような白髪頭からの雫、そのようなおびただしく老いを嘆いて流す涙の枕の下に海が出来て浪が立っている。

 

歌番号 1154

詞書 東宮の御屏風に、冬野やく所

詠人 藤原通頼

原文 佐王良比也 志多尓毛由良无 志毛可礼乃 々波良乃个布利 者留女幾尓个利

和歌 さわらひや したにもゆらむ しもかれの のはらのけふり はるめきにけり

読下 さわらひやしたにもゆらんしもかれののはらの煙春めきにけり

解釈 早蕨よ、野を焼いた下に萌え出でているでしょう、霜枯れの野原を焼く煙をみると春めいて来ました。

 

歌番号 1155

詞書 しはすのつこもりころに、身のうへをなけきて

詠人 つらゆき

原文 之毛加礼尓 美恵己之武女者 左幾尓个利 者留尓者和可三 安者武止者寸也

和歌 しもかれに みえこしうめは さきにけり はるにはわかみ あはむとはすや

読下 霜かれに見えこし梅はさきにけり春にはわか身あはむとはすや

解釈 霜枯れと眺めて来ていた梅は咲きました、この春には、我が身も花咲くような出来事に合わないでしょうか。

 

歌番号 1156

詞書 西なるとなりにすみて、かくちかとなりにありけることなと、いひおこせ侍りて

詠人 三統元夏

原文 武女乃者奈 尓保比乃不可久 美恵川留者 々留乃止奈利乃 知可幾奈利个里

和歌 うめのはな にほひのふかく みえつるは はるのとなりの ちかきなりけり

読下 梅の花匂の深く見えつるは春の隣のちかきなりけり

解釈 貴方の屋敷の梅の花、香りが深く感じられるのは、(貴方の屋敷の)春の隣近くに住んで居るからでしょうか。

 

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拾遺和歌集 巻17 歌番号1147から1151まで

2025年05月27日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻17

歌番号 1147 拾遺抄記載

詞書 祭の使にまかりいてける人のもとより、すりはかま、すりにつかはしけるを、をそしとせめければ

詠人 東宮女蔵人左近

原文 可幾利奈久 止久止者寸礼止 安之飛幾乃 也万為乃美川者 奈本曽己本礼留

和歌 かきりなく とくとはすれと あしひきの やまゐのみつは なほそこほれる

読下 限なくとくとはすれと葦引の山井の水は猶そこほれる

解釈 出来る限りは早くはしますが、足を曳くような険しい山の湧き出す清水の水は、今なお、凍っています。(だから、早くに袴を摺り染にすることが出来ないのです)

 

歌番号 1148 拾遺抄記載

詞書 をみにあたりたる人のもとにまかりたりけれは、女とも、さかつきにひかけをそへていたしたりけれは

詠人 よしのふ

原文 安利安遣乃 己々地己曽寸礼 左可川幾尓 比加計毛曽比天 以天奴止於毛部八

和歌 ありあけの ここちこそすれ さかつきに ひかけもそひて いてぬとおもへは

読下 ありあけの心地こそすれ杯に日かけもそひていてぬとおもへは

解釈 (小忌の役職の人の許で、それを拝見すると)有明時の神事の気持ちがします、盃に日陰葛も添えて、差し出された、その様を見ると。

 

歌番号 1149 拾遺抄記載

詞書 右大臣恒佐家屏風に、臨時祭かきたる所に

詠人 つらゆき

原文 安之比幾乃 也万為尓寸礼留 己呂毛遠者 加美尓川可不留 志留之止曽遠毛飛

和歌 あしひきの やまゐにすれる ころもをは かみにつかふる しるしとそおもふ

読下 あしひきの山ゐにすれる衣をは神につかふるしるしとそ思ふ

解釈 葦や檜の生える山に生える山藍で摺り染した衣を、神に仕える者の印と思ってみます。

注意 古式による摺り染の衣を御衣と言い、神事で着る伝統の衣装のことを意味します。

 

歌番号 1150

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 知者也布留 加美乃以可幾尓 由幾布利天 曽良与利加々留 由不尓曽安利个留

和歌 ちはやふる かみのいかきに ゆきふりて そらよりかかる ゆふにそありける

読下 ちはやふる神のいかきに事ふりてそらよりかかるゆふにそありける

解釈 磐戸を破って現れた神の社の神聖な垣根に雪が降って、まるで空から懸かっている注連の木綿(ゆふ)のような景色でした。

 

歌番号 1151 拾遺抄記載

詞書 題しらす

詠人 つらゆき

原文 飛止利祢者 久留之幾毛乃止 己利与止也 多比奈留世之毛 由幾乃布留良无

和歌 ひとりねは くるしきものと こりよとや たひなるよしも ゆきのふるらむ

読下 ひとりねはくるしき物とこりよとや旅なる夜しも雪のふるらん

解釈 独り寝は辛いものと思い知り、それに懲りよと言うのでしょうか、旅の途中の夜でも雪が降りそうな空模様です。

 

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拾遺和歌集 巻17 歌番号1142から1146まで

2025年05月26日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻17

歌番号 1142 拾遺抄記載

詞書 御返し

詠人 天暦御製

原文 武可之与利 奈堂可幾也止乃 己止乃者々 己乃毛止尓己曽 於知川毛留天部

和歌 むかしより なたかきやとの ことのはは このもとにこそ おちつもるてへ

読下 昔より名たかきやとの事のははこの本にこそおちつもるてへ

解釈 昔から歌人として名高い伊勢の屋敷で、その伊勢の言の葉は、紅葉した葉が落ちて積もるように、子の許には落ち積もると聞いています。

 

歌番号 1143 拾遺抄記載

詞書 権中納言義懐、入道してのち、むすめの斎院にやしなひたまひけるかもとより、ひんかしの院に侍りけるあねのもとに、十月はかりにつかはしける

詠人 権中納言義懐のむすめ

原文 也万加徒乃 加幾本和多利遠 以可尓曽止 志毛加礼/\尓 止不比止毛奈之

和歌 やまかつの かきほわたりを いかにそと しもかれかれに とふひともなし

読下 山かつのかきほわたりをいかにそとしもかれかれにとふ人もなし

解釈 山で稼ぐ人の垣根の辺りを、今はどのようですかと、霜に枯れに枯れたその山里を尋ねる人もいません。(それと同じで離れに離れとなった私の許を問う人はいません)

 

歌番号 1144

詞書 三百六十首の中に

詠人 曾禰好忠

原文 美也万木遠 安佐奈由不奈尓 己利川女天 佐武左遠己不留 遠乃々寸美也幾

和歌 みやまきを あさなゆふなに こりつめて さむさをこふる をののすみやき

読下 み山木をあさなゆふなにこりつめてさむさをこふるをののすみやき

解釈 山の木を朝に夕に切って集めて、これからの冬の寒さを願う、小野の炭焼きよ。

 

歌番号 1145

詞書 三百六十首の中に

詠人 曾禰好忠

原文 尓保止利乃 己保利乃施幾尓 止知良礼天 多麻毛乃也止遠 加礼也志奴良无

和歌 にほとりの こほりのせきに とちられて たまものやとを かれやしぬらむ

読下 にほとりの氷の関にとちられて玉ものやとをかれやしぬらん

解釈 池に住む鳰鳥が氷の関に閉じ込められて、美しい藻の住処を離れてしまっただろうか。

 

歌番号 1146

詞書 高岳相如か家に、冬のよの月おもしろう侍りける夜、まかりて

詠人 もとすけ

原文 伊左加久天 越里安可之天无 布由乃川幾 者留乃者奈尓毛 於止良佐利个利

和歌 いさかくて をりあかしてむ ふゆのつき はるのはなにも おとらさりけり

読下 いさかくてをりあかしてん冬の月春の花にもおとらさりけり

解釈 さぁこのようにして、この屋敷に居て夜を明かしましょう、冬の月は春の花にも風流では劣りません。

 

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拾遺和歌集 巻17 歌番号1132から1136まで

2025年05月23日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻17

歌番号 1132

詞書 斎院御屏風に

詠人 みつね

原文 美川乃於毛乃 不可久安左久毛 美由留可奈 毛美知乃恵呂也 布知世奈留良无

和歌 みつのおもの ふかくあさくも みゆるかな もみちのいろや ふちせなるらむ

読下 水のおもの深く浅くも見ゆるかな紅葉の色やふちせなるらん

解釈 川の流れが深くも浅くも見えます、流れの中の紅葉した葉の色が淵や瀬の水の深さとして見えるのでしょう。

 

歌番号 1133 拾遺抄記載

詞書 内裏御屏風に

詠人 清原元輔

原文 川幾可个乃 堂奈可美可者尓 幾与个礼者 安之呂尓比於乃 与留毛美恵个利

和歌 つきかけの たなかみかはに きよけれは あしろにひをの よるもみえけり

読下 月影のたなかみ河にきよけれは綱代にひをのよるも見えけり

解釈 月の光の田上川に、月の明りも川の流れもが清ければ、網代に氷魚の寄り来るのが見えます。

 

歌番号 1134 拾遺抄記載

詞書 蔵人所にさふらひける人の、ひをのつかひにまかりにけるとて、京に侍りなから、おともし侍らさりけれは

詠人 修理

原文 以可天奈本 安之呂乃飛於尓 己止々者武 奈尓々与利天可 和礼遠止者奴止

和歌 いかてなほ あしろのひをに こととはむ なにによりてか われをとはぬと

読下 いかて猶あしろのひをに事とはむなにによりてか我をとはぬと

解釈 どうにかして、やはりなお、御用のはずのその網代の氷魚に聞いてみたいものです、どういう訳で、(御用に行かなくて京に居ながらも)私の許を訪ねなかったのかと。

 

歌番号 1135

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 者不利己可 以者不也之呂乃 毛美知者毛 志女遠者己恵天 知留止以不毛乃遠

和歌 はふりこか いはふやしろの もみちはも しめをはこえて ちるといふものを

読下 はふりこかいはふ社のもみちはもしめをはこえてちるといふものを

解釈 祝子(はふりこ)が祭祀する神の社の紅葉した葉も、越えてはいけないとされる結界の注連縄を越えて散ると言うではないか。(さぁ、一線を越えて、愛し合いましょう。貴女)

 

歌番号 1136

詞書 九月つこもりの日、をとこ女野にあそひてもみちを見る

詠人 源したかふ

原文 以可奈礼者 毛三知尓毛万多 安可奈久尓 安幾者天奴止者 个不遠以不良无

和歌 いかなれは もみちにもまた あかなくに あきはてぬとは けふをいふらむ

読下 いかなれはもみちにもまたあかなくに秋はてぬとはけふをいふらん

解釈 どうしたら、紅葉にもまだ見飽きることも無いのに、飽きてしまったではないが、秋は果ててしまったと、今日のこの景色を言うのだろうか。

 

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拾遺和歌集 巻17 歌番号1137から1141まで

2025年05月23日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻17

歌番号 1137

詞書 十月ついたちの日、殿上のをのこともさかのにまかりて侍るともによはれて

詠人 清原元輔

原文 安幾毛末多 止遠久毛安良奴尓 以可天奈本 多知可部礼止毛 川計仁也良末之

和歌 あきもまた とほくもあらぬに いかてなほ たちかへれとも つけにやらまし

読下 秋もまたとほくもあらぬにいかて猶たちかへれともつけにやらまし

解釈 十月一日の今日、秋もまだ遠くに行っているわけでもだろうから、どうにかして、猶なお、立ち返れと、告げに遣りたいものです。

 

歌番号 1138

詞書 時雨を

詠人 よしのふ

原文 曽万也万尓 堂川个不利己曽 加美奈川幾 之久礼遠久多寸 久毛止奈利个礼

和歌 そまやまに たつけふりこそ かみなつき しくれをくたす くもとなりけれ

読下 そま山にたつけふりこそ神な月時雨をくたすくもとなりけれ

解釈 杣山に立つ煙こそは、神無月の時雨を降り下す、その雲となったのだな。

 

歌番号 1139

詞書 十月、しかの山こえしける人人

詠人 源したかふ

原文 名遠幾計者 武可之奈可良乃 也万奈礼止 志久留々己呂八 恵呂加者利个利

和歌 なをきけは むかしなからの やまなれと しくるるころは いろかはりけり

読下 名をきけは昔なからの山なれとしくるるころは色かはりけり

解釈 名前を聞けば、昔からの志賀の長等山ではあるが、時雨が降るころは紅葉して山の色合いが変わります。

 

歌番号 1140 拾遺抄記載

詞書 冬、おやのさうにあひて侍りける法師のもとにつかはしける

詠人 みつね

原文 毛美知者也 多毛止奈留良无 加美奈川幾 志久留々己止尓 恵呂乃万佐礼八

和歌 もみちはや たもとなるらむ かみなつき しくるることに いろのまされは

読下 もみちはやたもとなるらん神な月しくるることに色のまされは

解釈 紅葉する葉が袂にあるのでしょうか、神無月の時雨れるごとに色がさらに優るように、(悲しみを聞いて流す涙で袖が色変わりします。)

注意 詞書の季節感や内容と歌がかみ合わない不思議なものになっています。

 

歌番号 1141 拾遺抄記載

詞書 天暦御時、伊勢か家の集めしたりけれは、まゐらすとて

詠人 中務

原文 志久礼川々 布利尓之也止乃 己止乃者々 加幾安川武礼止 々末良左利个利

和歌 しくれつつ ふりにしやとの ことのはは かきあつむれと とまらさりけり

読下 しくれつつふりにしやとの言の葉はかきあつむれととまらさりけり

解釈 時雨の中、雨が降るその古びた私の屋敷で、家にある言の葉を書き集めて歌集としても、心に残るものはありませんでした。

注意 伊勢と中務とは親子関係で、母親の伊勢が詠った歌を歌集として提出せよとの勅に応じた時に歌集に付けた歌です。

 

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