歌番号 1152
詞書 雪をしましまのかたにつくりて見侍りけるに、やうやうきえ侍りけれは
詠人 中務のみこ
原文 和多川美毛 由幾个乃美川者 万佐利个利 遠知乃之万/\ 美恵寸奈利由久
和歌 わたつみも ゆきけのみつは まさりけり をちのしましま みえすなりゆく
読下 わたつみもゆきけの水はまさりけりをちのしましま見えすなりゆく
解釈 大船を渡すような大きな海、その海でも雪解けの水で水嵩を増すでしょう、そのような海の彼方の島々が見えなくなっていきます。
歌番号 1153
詞書 雪をしましまのかたにつくりて見侍りけるに、やうやうきえ侍りけれは
詠人 中務のみこ
原文 毛与由日尓 布利曽不由幾乃 志徒久尓八 万久良乃志多尓 奈美曽多知遣流
和歌 もとゆひに ふりそふゆきの しつくには まくらのしたに なみそたちける
読下 もとゆひにふりそふ雪のしつくには枕のしたに浪そたちける
解釈 頭の元結に降り添える雪、そのような白髪頭からの雫、そのようなおびただしく老いを嘆いて流す涙の枕の下に海が出来て浪が立っている。
歌番号 1154
詞書 東宮の御屏風に、冬野やく所
詠人 藤原通頼
原文 佐王良比也 志多尓毛由良无 志毛可礼乃 々波良乃个布利 者留女幾尓个利
和歌 さわらひや したにもゆらむ しもかれの のはらのけふり はるめきにけり
読下 さわらひやしたにもゆらんしもかれののはらの煙春めきにけり
解釈 早蕨よ、野を焼いた下に萌え出でているでしょう、霜枯れの野原を焼く煙をみると春めいて来ました。
歌番号 1155
詞書 しはすのつこもりころに、身のうへをなけきて
詠人 つらゆき
原文 之毛加礼尓 美恵己之武女者 左幾尓个利 者留尓者和可三 安者武止者寸也
和歌 しもかれに みえこしうめは さきにけり はるにはわかみ あはむとはすや
読下 霜かれに見えこし梅はさきにけり春にはわか身あはむとはすや
解釈 霜枯れと眺めて来ていた梅は咲きました、この春には、我が身も花咲くような出来事に合わないでしょうか。
歌番号 1156
詞書 西なるとなりにすみて、かくちかとなりにありけることなと、いひおこせ侍りて
詠人 三統元夏
原文 武女乃者奈 尓保比乃不可久 美恵川留者 々留乃止奈利乃 知可幾奈利个里
和歌 うめのはな にほひのふかく みえつるは はるのとなりの ちかきなりけり
読下 梅の花匂の深く見えつるは春の隣のちかきなりけり
解釈 貴方の屋敷の梅の花、香りが深く感じられるのは、(貴方の屋敷の)春の隣近くに住んで居るからでしょうか。