歌番号 260
詞書 屏風のゑに、仏名の所
詠人 かねもり
原文 比止者以左 遠可之也寸良无 布由久礼者 止之乃三川毛留 由幾止己曽美礼
和歌 ひとはいさ をかしやすらむ ふゆくれは としのみつもる ゆきとこそみれ
読下 人はいさをかしやすらん冬くれは年のみつもるゆきとこそ見れ
解釈 他の人はどうかは知らないが、仏の罪を犯かしたかもしれない。冬の季節が来ると、歳月ばかりが積もる、その言葉の響きではないが、年の内ばかりに積もる雪のようなものと思えます。(仏名の法会で、春に雪が融け消えるように、仏の罪も消えるでしょう。)
歌番号 261 拾遺抄記載
詞書 斎院の屏風に、十二月つこもりの夜
詠人 かねもり
原文 加曽布礼者 和可身尓川毛留 止之川幾遠 於久利无加布止 奈尓以曽久良无
和歌 かそふれは わかみにつもる としつきを おくりむかふと なにいそくらむ
読下 かそふれはわか身につもる年月を送り迎ふとなにいそくらん
解釈 数えてみると、我が身の上に積もる年月を大晦日や新年だとして送り迎えることを、どうして、急ぐ必要があるのだろうか。
歌番号 262 拾遺抄記載
詞書 百首歌の中に
詠人 源重之
原文 由幾徒毛累 於乃可止之遠者 志良寸之天 者累遠者安寸止 幾久曽宇礼之幾
和歌 ゆきつもる おのかとしをは しらすして はるをはあすと きくそうれしき
読下 ゆきつもるおのか年をはしらすしてはるをはあすときくそうれしき
解釈 雪が積もるように、己が年を積もった歳月に気が付かずに、新春の日は明日だと聞くことは心嬉しいものがあります。
注意 一休禅師「正月は冥土の旅の一里塚目出度くも目出度くもなし」と同じ境地でしょうか。