竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

再読、今日のみそひと謌 金

2018年08月31日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 金

集歌2672 此山之 嶺尓近跡 吾見鶴 月之空有 戀毛為鴨
訓読 この山し嶺(みね)に近しと吾(あ)が見つる月し空なる恋もするかも
私訳 この山の峰に近いと私が眺めている月が大空にあるように、とらえどころのない恋をしたのでしょうか。

集歌2673 烏玉乃 夜渡月之 湯移去者 更哉妹尓 吾戀将居
訓読 ぬばたまの夜(よ)渡る月し移(ゆつ)りなばさらにや妹に吾(あ)が恋ひ居(を)らむ
私訳 漆黒の夜を一晩中照らす月が天空を渡って行ったなら、そうすれば、愛しい貴女を私は床で抱き伏せましょう。

集歌2674 朽網山 夕居雲 薄徃者 余者将戀名 公之目乎欲
訓読 朽網山(たくみやま)夕(ゆふ)居(を)る雲し薄れゆかば余(あ)は恋ひむな公(きみ)し目を欲(ほ)り
私訳 朽網山に夕刻に懸かる雲が薄れていけば、私は抱かれたいと願うでしょう。貴方が欲しい。
注意 古代、薄い棚雲は霊魂の現れと信じたようです。棚雲が薄れるのは互いの気持ちが薄れたと云う意が背景にあります。

集歌2675 君之服 三笠之山尓 居雲乃 立者継流 戀為鴨
訓読 君し着る三笠し山に居(ゐ)る雲の立てば継がるる恋もするかも
私訳 貴方が身に着ける立派な笠の、その言葉のような三笠の山に懸かる雲が立ち上っては後に続くように、後から後からと終わりのない夜の営みをしましょう。

集歌2676 久堅之 天飛雲尓 在而然 君相見 落日莫死
訓読 ひさかたし天飛ぶ雲にありにしか君をば相見むおつる日なしに
私訳 遥か彼方の大空を飛ぶ雲であったなら、貴方に逢えるでしょう。一日も欠くことなく。

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再読、今日のみそひと謌 木

2018年08月30日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 木

集歌2667 真袖持 床打拂 君待跡 居之間尓 月傾
訓読 真袖(まそで)持ち床(とこ)うち掃(は)ひ君待つと居(を)りし間(あひだ)に月かたぶきぬ
私訳 美しい袖で貴方との夜床を払い清めて、貴方の訪れを待ってると部屋にたたずんでいる間に、月が傾いてしまった。

集歌2668 二上尓 隠經月之 雖惜 妹之田本乎 加流類比来
訓読 二上(ふたかみ)に隠(かく)らふ月し惜(を)しけども妹し手本(たもと)を離(か)るるこのころ
私訳 二上山に隠れてしまうだろう月は眺める心に残念なように、愛しい貴女の手枕から遠ざかるこの頃です。

集歌2669 吾背子之 振放見乍 将嘆 清月夜尓 雲莫田名引
訓読 吾が背子し振り放(さ)け見つつ嘆くらむ清(きよ)き月夜(つくよ)に雲なたなびくき
私訳 私の愛しい貴方が仰ぎ見て、物思いに、きっと、ため息をつくでしょう。この清らかな月夜に、雲よ、棚引かないで。

集歌2670 真素鏡 清月夜之 湯徒去者 念者不止 戀社益
訓読 真澄鏡(まそかがみ)清き月夜(つくよ)し移(ゆつ)りなば念(おも)ひは止(や)まず恋こそまさめ
私訳 願うと見たいものを見せると云う真澄鏡のような、この清らかな満月の夜が天空を動いて行ったなら、貴女への想いは止むことなく、恋心だけが募るでしょう。

集歌2671 今夜之 在開月夜 在乍文 公叨置者 待人無  (叨は、口+リの当字)
訓読 今し夜し有明(ありあけ)月夜(つくよ)ありつつも公(きみ)をおきては待つ人もなし
私訳 今日、この夜は有明の月夜。有明の月夜に私は寝ることなく起きて居ますが、貴方をおいて、待つ人はいません。
注意 原歌の「在開月夜」には、女性の「毎月の忌み籠り」が明けたの意味もあると思われます。また、四句目「置者」は「起きている」と「措いて」との掛け言葉です。

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再読、今日のみそひと謌 水

2018年08月29日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 水

集歌2662 吾妹兒 又毛相等 千羽八振 神社乎 不祷日者無
訓読 吾妹子にまたも逢はむとちはやぶる神し社(やしろ)を祈(の)らぬ日はなし
私訳 愛しい私の貴女に、また再び逢わせてくださいと岩戸を押し開いて現れた神の社を祈らない日はありません。

集歌2663 千葉破 神之伊垣毛 可越 今者吾名之 惜無
訓読 ちはやぶる神し斎垣(いかき)も越えぬべし今は吾(あ)が名し惜(を)しけくもなし
私訳 岩戸を押し開いて現れた神の厳かな結界も(神罰を恐れずに)越えてしまおう。今はこの世の私の名跡など、惜しくもない。

集歌2664 暮月夜 暁闇夜乃 朝影尓 吾身者成奴 汝乎念金丹
訓読 夕(ゆふ)月夜(つくよ)暁(あかとき)闇(やみ)の朝影(あさかげ)に吾(あ)が身はなりぬ汝(な)を念(おも)ひかねに
私訳 煌々と輝く夕刻に登る月夜の月が暁に闇に沈むような朝の月の光のように私は痩せ細ってしまった。貴女への想いに耐えかねて。
注意 中医学で「金丹」と云う言葉は女陰を指します。歌は「奴」や「金丹」と云う特別な用字を行っています。

集歌2665 月之有者 明覧別裳 不知而 寐吾来乎 人見兼鴨
訓読 月しあれば明(あ)くらむ別(わき)も知らずしに寝(ね)て吾(あ)が来(こ)しを人見けむかも
私訳 月が照っていたので夜が明けたことにも気が付かないで、寝過ごして私があの子の許から帰って来たのを、誰か気が付いたでしょうか。

集歌2666 妹目之 見巻欲家口 久闇之 木葉隠有 月待如
訓読 妹し目し見まく欲(ほ)しけく暗闇(くらやみ)し木(こ)し葉(は)隠(こも)れる月し待つごと
私訳 愛しい貴女の顔を見たいと思う気持ちは、ずっと夕闇の中、木の葉に隠れた月が昇って来るのを待つ時のようです。

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再読、今日のみそひと謌 火

2018年08月28日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 火

集歌2657 神名火尓 紐呂寸立而 雖忌 人心者 間守不敢物
訓読 神名火(かむなひ)に神籬(ひもろぎ)立てに忌(いは)へども人し心は守(も)り敢(あ)へぬもの
私訳 神名火の甘樫の社に神離の木を立てて神に願いを立て祭っても、人の気持ちは心変わりして守りきれないものです。
注意 弊ブログでは神名火と神名備とを区分し、神名火は飛鳥の甘樫丘と考えています。

集歌2658 天雲之 八重雲隠 鳴神之 音尓耳八方 聞度南
訓読 天雲(あまくも)し八重雲(やへくも)隠(かく)り鳴る神し音(おと)に聞くやも聞き渡りなむ
私訳 天雲の八重雲に身を隠す雷神が起こす雷鳴のように、噂だけを聞くだけで過ごすのでしょうか。

集歌2659 争者 神毛悪為 縦咲八師 世副流君之 悪有莫君尓
訓読 争(あらそ)へば神も悪(にく)ますよしゑやしよそふる君し悪(にく)からなくに
私訳 野良で貴方が私を強く求めることに争(あらが)えば神も偽りの気持ちと思うでしょう。ええい、いいわ。世に評判の立つ貴方のことが嫌いではないのだから。
注意 標準的な解釈では初句「争者」は集歌2658の歌の四句目「音尓耳八方」を受けて、人の噂に対して「争」とします。弊ブログでは対面する男女での「争」としています。

集歌2660 夜並而 君乎来座跡 千石破 神社乎 不祈日者無
訓読 夜(よ)並(なら)べに君を来(き)ませとちはやぶる神し社(やしろ)を祈(の)らぬ日は無し
私訳 夜毎に、愛しい貴方をやって来させて下さいと、岩戸を押し開いて現れた神の社を祈らない日はありません。

集歌2661 霊治波布 神毛吾者 打棄乞 四恵也壽之 惜無
訓読 霊(たま)ぢはふ神も吾(あ)をば打棄(うつ)てこそしゑや命し惜(を)しけくもなし
私訳 私の霊を掌る神も、私を打ち捨ててください。えい、こんな命は、惜しくもない。

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再読、今日のみそひと謌 月

2018年08月27日 | 再読、今日のみそひと...
再読、今日のみそひと謌 月

集歌2652 妹之髪 上小竹葉野之 放駒 蕩去家良思 不合思者
訓読 妹し髪上げ小竹葉野(たかはの)し放(はな)ち駒(こま)荒(あら)びにけらし逢はなく思へば
私訳 愛しい貴女が髪を束ね上げる、その上げ小竹葉野に放たれた駒が荒々しくすさんでいるように、私の気持ちはすさんでいる。貴女に気持ちが合わず出会えないと思うと。

集歌2653 馬音之 跡杼登毛為者 松蔭尓 出曽見鶴 若君香跡
訓読 馬(うま)し音(ね)しとどともすれば松蔭(まつかげ)に出でてぞ見つるけだし君かと
私訳 馬の足音がどんどんするので松の木陰に出て行って眺めてしました。もしかすると、貴方かと思って。

集歌2654 君戀 寝不宿朝明 誰乗流 馬足音 吾聞為
訓読 君し恋ひ寝(ゐ)ねぬ朝明(あさけ)し誰が乗れる馬し足音(あしおと)吾(われ)に聞かする
私訳 貴方に恋と云う愛の営みを願い寝つけぬ朝明けに、誰が乗っている馬の足音でしょうか。私にその足音を聞かせる。

集歌2655 紅之 襴引道乎 中置而 妾哉将通 公哉将来座
訓読 紅(くれなゐ)し裾引く道を中置きに妾(われ)や通(かよ)はむ公(きみ)や来(き)まさむ
私訳 紅色の裳裾を引いて歩く道を奥の部屋に置きました(=成女式の裳着の儀式が終わりました)。もう、女となった私から貴方の許に参りましょうか、それとも、貴方からお出でになるでしょうか。
注意 大和の風習からしますと、女から男の許に通うことはありません。ただし、皇位に関係する男の場合にのみ、慣習として女から男の許に出仕する可能性はあります。歌はその身分関係を示唆するかもしれません。

集歌2656 天飛也 軽乃社之 齊槻 幾世及将有 隠嬬其毛
訓読 天飛ぶや軽の社(やしろ)し斎(いはひ)槻(つき)幾代(いくよ)まであらむ隠妻(こもりつま)そも
私訳 空を飛び渡るのか、雁よ。その言葉のひびきではないが、軽の社の厳かな槻の木がいつまでもそのままのように、何時までもこのままでしょうか。私は隠妻として。

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