竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

今日の古今 みそひと歌 木

2016年03月31日 | 古今 みそひと歌
今日の古今 みそひと歌 木

題しらず 紀有朋
歌番六六
原歌 さくらいろにころもはふかくそめてきむはなのちりなむのちのかたみに
標準 さくらいろにに衣はふかくそめてきむ花のちりなむのちのかたみに
解釈 「桜色に衣は深く染めて着む、花の散りなむ後の形見に」のままです。ただ、桜色は紅花染で行う場合は薄染の部類に入りますから、「ころもはふかくそめて」は誇張となります。これらは古今和歌集以降の歌はおおむね座敷の中での歌と云うところから来る特徴でしょうか。

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今日の古今 みそひと歌 水

2016年03月30日 | 古今 みそひと歌
今日の古今 みそひと歌 水

題しらず よみ人しらず
歌番六五
原歌 をりとらはをしけにもあるかさくらはないさやとかりてちるまてはみむ
標準 をりとらばをしげにもあるか桜花いざやどりかりてちるまでは見む
解釈 「折り取らば惜しげにもあるか、桜花、いざ宿借りて散るまでは見む」のままです。
注意 為にする鑑賞では、句頭「をりとらは」は「居り捉らは」や「居り捕らは」などと解釈することが出来ます。そのとき「をりとらはをしけに」の句は「ここに居て桜の姿をずっと眺めていると実に名残惜しい」とも解釈が出来ることになります。ただし、伝統からすると、これは実に為にする解釈となります。
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今日の古今 みそひと歌 火

2016年03月29日 | 古今 みそひと歌
今日の古今 みそひと歌 火

題しらず よみ人しらず
歌番六四
原歌 ちりぬれはこひふれとしるしなきものをけふこそさくらをらはをりてめ
標準 ちりぬればこふれどしるしなき物をけふこそさくらをらばをりてめ
解釈 「散りぬれば恋ふれどしるしなき物を、今日こそ桜、をらば折りてめ」のままです。
注意 一般には「をらはをりてめ」は「折らは折りてめ」とし「散る桜なら、その前に手折ってしまおう」と鑑賞します。ただ、一夜、気に掛けていた、昨日、野で見た桜がまだ散り残っているならば、今日、再び出かけて行って風に散らされないように手折って部屋に飾りたいという雰囲気もあります。その場合、「をらは」は「居らは」ですので「居らば折りてめ」となります。さて、どちらの風景でしょうか。

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今日の古今 みそひと歌 月

2016年03月28日 | 古今 みそひと歌
今日の古今 みそひと歌 月

返し 業平朝臣
歌番六三
原歌 けふこすはあすはゆきとそふりなましきえすはありともはなとみましや
標準 けふこずはあすは雪とぞふりなましきえずはありとも花と見ましや
釈A 今日来なければ、明日は雪と降って散ってしまうであろう、消えずにあるといってもそんなものを誰が花と見ようか。
釈B 今日逢いに行かなくても明日は逢いに行くだろう。私が貴女を素気無くしたとは思わないで。私が貴女に信頼を寄せることはあっても。だから咲く桜を私が逢いに行く兆しと思いましたか。
注意 歌は歌番六二への返しのものです。標準的な釈Aの解釈とは別に、歌を粋に解釈しますと「ふりなまし」の言葉は「振りなまし」としましょうか。このとき「振る」と云う古語には「すげなくする」と云う意味合いもありますから「振れなまし」は「素気無くするとは思わないでくれ」と解釈が出来ます。すると、「きえす」は信頼を寄せると云う「帰依す」と云う言葉でしょうし、「はな」は「端」の意味合いから「物事のきざし」と云う解釈も成り立ちます。それで、女歌の詞書では男女は逢っていることになっています。このように歌番六二と六三は非常に高度な言葉遊びでの相聞和歌です。ただ、釈Bは素人考えですので相手にしないでください。

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万葉集 長歌を鑑賞する 集歌1020と集歌1021の歌

2016年03月27日 | 万葉集 長歌を楽しむ
万葉集 長歌を鑑賞する 集歌1020と集歌1021の歌

<集歌1020と集歌1021の歌の扱いに注意が必要です>
集歌1021 繋巻裳 湯々石恐石 住吉乃 荒人神 舡舳尓 牛吐賜 付賜将 嶋之埼前 依賜将 礒乃埼前 荒浪 風尓不合遇 草管見 身疾不有 急 令變賜根 本國部尓

<標準的な解釈(「萬葉集 釋注」伊藤博、集英社文庫)>
訓読 かけまくも ゆゆし畏(かしこ)し 住吉(すみのえ)の 現人神(あらひとがみ) 船舳(ふなのへ)に うしはきたまひ 着きたまはむ 島の崎々(さきざき) 寄りたまはむ 磯の崎々 荒き波 風にあはせず 障(つつ)なく 病(やまひ)あらせず 速(すむや)けく 帰(かへ)したまはね もとの国辺(くにへ)に
意訳 御名を口にするもの恐れ多い住吉の現人神よ、君のみ船の舳先に鎮座ましまし、着き給う島の崎々で、荒い波や風に遭わせないで、故障もなく、病気もさせずに、どうか一日も早くお帰し下さい。もとの国大和の方に。

<西本願寺本万葉集の原文を忠実に訓むときの解釈>
訓読 かけまくも ゆゆし恐(かしこ)し 住吉(すみのえ)の 荒人神(あらひとがみ)し 船(ふな)し舳(へ)に 領(うしは)き賜ひ 着き賜はむ 島し崎々(さきざき) 寄り賜はむ 磯の崎々 荒き浪 風に遇(あは)せず 草慎(つつ)み 病(やまひ)あらせず 急(すむや)けく 還(かへ)し賜はね 本(もと)し国辺(くにへ)に
私訳 御名を口に出すのも甚だ畏れ多い住吉の社に居られます神功皇后の神、船の舳先に鎮座なされて、到着なされるでしょう島々の崎ごとに、立ち寄りなされるでしょうそれぞれの磯の崎ごとに、荒々しい浪や風に遭遇させることなく、田舎に慎しんでいて、病にも罹らずに、すぐにお帰り下さい。元のお国に。

または、
集歌1020/1021 王 命恐見 刺並 國尓出座耶 吾背乃公矣 繋巻裳 湯々石恐石 住吉乃 荒人神 船舳尓 牛吐賜 付賜将 嶋之埼前 依賜将 礒乃埼前 荒浪 風尓不令遇 莫管見 身疾不有 急 令變賜根 本國部尓

<標準的な解釈(「萬葉集 釋注」伊藤博、集英社文庫)>
訓読 大君(おほきみ)の 命(みこと)畏(かしこ)み さし並(なら)ぶ 国に出でます はしやしき 吾が背の君(きみ)を かけまくも ゆゆし畏(かしこ)し 住吉(すみのえ)の 現人神(あらひとがみ) 船舳(ふなのへ)に うしはきたまひ 着きたまはむ 島の崎々(さきざき) 寄りたまはむ 磯の崎々 荒き波 風にあはせず 障(つつ)みなく 病(やまひ)あらせず 速(すむや)けく 帰(かへ)したまはね もとの国辺(くにへ)に
意訳 大君のお咎めを恐れ畏んで、隣り合わせ土佐の国にお出ましになるいとしいわが背の君、ああこの君を、御名を口にするもの恐れ多い住吉の現人神よ、君のみ船の舳先に鎮座ましまし、着き給う島の崎々で、荒い波や風に遭わせないで、故障もなく、病気もさせずに、どうか一日も早くお帰し下さい。もとの国大和の方に。

<西本願寺本万葉集の原文を忠実に訓むときの解釈>
訓読 王(おほきみ)し 命(みこと)恐(かしこ)み さし並(なみ)し 国に出でます 吾が背の公(きみ)を かけまくも ゆゆし恐(かしこ)し 住吉(すみのえ)の 現人神(あらひとがみ)し 船(ふな)し舳(へ)に 領(うしは)き賜ひ 着き賜はむ 島し崎々(さきざき) 寄り賜はむ 磯の崎々 荒き浪 風に遇(あは)せず 障(つつ)み無く 病(やまひ)あらせず 急(すむや)けく 還(かへ)し賜はね 本(もと)し国辺(くにへ)に
私訳 王の御命令を謹んで承って、次ぎ次ぎと継がる遠くの国にお出かけになる、私の尊敬する御方を、御名を口に出すのも甚だ畏れ多い住吉に居られます現人神よ、船の舳先に鎮座なされて、到着なされるでしょう島々の崎ごとに、立ち寄りなされるでしょうそれぞれの磯の崎ごとに、荒々しい浪や風に遭遇させることなく、差し障りもなく、病にも罹らずに、すぐにお帰り下さい。元のお国に。
注意 この集歌1020及び集歌1021の歌は連続した長歌と扱うものと、別々の二つの長歌として扱うものとがあります。ここでは両案を同時に紹介しました。

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