是枝裕和監督「怪物」を見る。
うわわ。あれれ。おお。
本作の感想をオノマトペで書くとこんな感じです。
そして。そうか。そうなのか。
これはラブストーリーなのか、と。
うわわ。
えらく怖いんですけど。
登場人物がみんな怖い。
息子がDVを受けていると抗議する安藤サクラも、
それに対応する校長の田中裕子も。DV教師の永山瑛太も。
殺気立っているか、魂の抜け殻のような佇まい。
およそ人間らしくない人物が蠢きつつ、
伏線を張るような謎めいた描写があちこちに。
あれれ。
いきなり安藤サクラの視点から瑛太の視点に変わり、
時制もさかのぼる構成に。シネフィルはきっとここで
黒澤の「羅生門」とかタランティーノ映画を思い出すことだろう。
ともあれ、安藤サクラの視点とはまったく異なる見え方に
首をかしげながら、そして頭をひねりながら
スクリーンを見つめるかない。
瑛太の恋人役の高畑充希、薄情な感じが
絶妙に上手いなあと感心したりする。
瑛太と安藤サクラが、台風のなか、子供たちを探そうと
廃車となったバスの天窓を開けようとする場面。
バスの中から捉えた窓のショットの美しさは本作の白眉だ。
おお。
3部構成の最後。そうなのか。
窓のショットがあまりにも美しいので、
何が始まるのかと思ったら、
少年たちのラブストーリーが始まるとは。
ひねくれた構成と、回収されたかどうか
今ひとつ判明しない伏線の数々を乗り越えて、
なんとも清々しい少年たちの交わりを目の当たりにする。
そういえば「怪物」ってなんだろうと
映画館をあとにした観客に
考えさせようとする是枝監督、
ずいぶん観客を挑発するなあ、と。
坂本龍一の訃報を聞いた直後であり、
どうしても音楽に耳を澄ませてしまう。
でも、音楽。良かった。とても。