Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

この地は君と僕のもの

2023年06月06日 | 映画など
ハル・アシュビー監督
「ウディ・ガスリー わが心のふるさと」を見る。
はるか昔、テレビで見たことがあるとはいえ、
砂嵐が吹き荒れる荒涼とした風景しか
覚えておらず、ほぼ初見かな、と。
ともあれ、なんという名作。
おっきなスクリーンで見せてくれてありがとう早稲田松竹。


放浪癖のある日雇い労働者だったいち青年が、
言わずと知れた米国を代表する偉大なフォーク歌手、
ウディ・ガスリーになるまでの物語だ。

大恐慌が起きていた1930年代の米国が舞台。
故郷で食い詰めた人々が、
夢の地カリフォルニアに向かう苦難の旅は、
ジョン・スタインベック、および
ジョン・フォード監督「怒りの葡萄」でも描かれたが、
本作ではこの苦難の旅は、ガスリーが歌手として成長していく糧となる。
その旅の行程こそ、王道のロードムービーであり、
本作の大きな部分を占めていて、見惚れるばかり。

アルドリッチ監督「北国の帝王」の
リー・マーヴィンのように無賃乗車で
旅を続ける放浪者(ホーボー)となるガスリーは、
したたかに食いつなぎ、カリフォルニアで歌手として成功する。
しかし、資本家たちに与することなく、
労働者のためにプロテストソングを歌うことを選び、
最愛の家族を捨てることもいとわない。

本作は、ただひたすら歌いたい歌を歌い、
放浪を続けるガスリーの姿を
ハスケル・ウェクスラーの美しい撮影と、
アシュビー監督の淡々とした演出で追いかけていく。
ついにガスリーは列車の屋根に乗り、
スクリーンの奥へどんどん遠くに行ってしまうのを
ただ見つめるばかりの幕引きに感じ入る。

ガスリーを演じたデヴィッド・キャラダインは
いまさら言うまでもないけれど、一世一代の名演でしょう。
この俳優さんの笑顔が
こんなにいいとは思わなかった。
吹き替えなしで歌っているのも素晴らしい。

コメント (2)
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