「ほら、あの人」
「え? 誰ですか?」
「ええと。名前が出ないんだけど、すごく有名な」
「有名…ですか」
「誰でも知ってる人」
「誰でしょう。有名人ですよね」
「そう。あの人」
「芸能人ですか」
「うーん。芸能人というかアーティスト」
「アーティスト?」
「そうそう。すごく有名で、世界中の人が知ってる」
「何で出てこないんでしょうね。そんなに有名なのに」
「アメリカ人ですよ。すごく有名な」
「それで芸能人なんですよね」
「いや、アーティストですよ。すごい人」
「ええと。誰でしょうかね」
「そのへん歩いている人でも知ってる人」
「ミュージシャンですか」
「それもやってる。とにかく有名。ああ名前が出てこない」
「誰ですかねえ。うーん。とにかく有名なんですね」
「そうそう。ほら出るでしょう、名前」
「いや、そう言われても」
「ほら、あの人ですよ、あの人。たぶん世界でいちばん有名な」
「うーん。ええと。あ、ジャスティン・ビーバーですか」
「そうそう。ジャスティン・ビーバー!」
「名前は知ってます。詳しくは知らないんですけど」
「知らないの? みんな知ってますよ」
「あなただって名前出なかったじゃないですか」
「まあそうですけど」
「で、そのジャスティン・ビーバーがどうしたんですか」
「いや、すごい有名なんですけど、誰だっけと思って」