「村田? 村田だよな?」
「おお。しばらく」
「しばらくどころじゃないよ。
だってもう20年ぐらいになるんじゃないか」
「そうかもな」
「お前、変わらないな。昔と同じ」
「そっちはだいぶおっさんになった」
「そりゃあそうさ」
「年は取るもんだな」
「お前は昔のままだ」
「まあいろいろあったからな」
「急に行方不明になったから、びっくりしたんだよ」
「ああ」
「実家に電話しても要領を得ないし、
藤江はお前が宗教に走ったんじゃないかって」
「おお。藤江か。懐かしいな。あいつはどうしてるんだ?」
「フリーターだな。あいつはエンジニアだから、
派遣で仕事したりプラプラしたり」
「いいご身分だな。お前はどうしてるんだ」
「俺は相変わらずだよ。ライターとか編集とか」
「まだやってたんだ」
「それしかできないからな。安い金でこき使われてるよ」
「儲からない?」
「ああ」
「そうか」
「お前はどうなんだよ。仕事してるのか?」
「うーん。どうかな」
「やっぱり宗教関係なのか。そういえばこのあいだ」
「ああ。死刑になったみたいだな」
「まさかお前も」
「そんなわけないだろう」
「だったらいいんだけど」
「お、時間が。じゃあな」
「そうなのか? どこ行くんだ?」
「それは言えない。
俺はそもそもこのあたりにいる人間じゃないんだ」
「どこに住んでる?」
「それも言えない。まあ縁があったらまた会おう。
藤江によろしく言っておいてくれ」
「そうか。時間があれば一杯やろうと思ったけど」
「お前は相変わらずだな。そういうところ」
「まあ。なんかずっとこんな感じだ。だいぶガタは来てるけど」
「元気でやってくれ」
「ああ。じゃあな」
「また」
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