早川千絵監督「ルノワール」を見る。
「お引っ越し」とか「こちらあみ子」とか、
少女を主人公にした映画で、たまにものすごい傑作が出る。
本作もそうかどうかはともかく、
どうしてこんな映画をつくることができるんだろう。
だって、作っているのは大人だよ。
子供のピュアな目を通して大人の社会を描く的な、
そんな紋切り型な言葉では、
この映画は到底語れないような気がするわけで。

主人公のフキ(鈴木唯)は11歳の小学生。
生と死を超越したような作文を書いたり、
超常現象みたいなものに敏感だったり、
身体が少し宙に浮いているような女の子だ。
とはいえ、ふつうに学校に通い、友だちもいる。
母親(石田ゆり子)との関係も悪くない。
そんなどこにでもいる、
というか、少し変わったタイプの女の子が、
がんで余命幾ばくもない父親(リリー・フランキー)とは
不思議なくらい波長を合わせていく。
父親に対する愛情というよりは、
死のにおいと交信している感じというか。
母親と浮気をする男(中島歩)の
罪深さみたいなものにも反応を示す。
少女の無垢な目というのとも違うし、
周りの大人とのかかわりを経て成長していく、
というありきたりな描き方でもない。
ただただ不思議なんだけど、嫌悪感はまったくない。
唯一、目を塞ぎたくなったのは、
伝言ダイヤルで見知らぬ男と会い、
その男の家に連れ込まれる場面だ。
やめてほしいと思いながら見ていると、
そこで男がフキに向かって
「口がくさいよ」という台詞にたまげる。
嗅覚を感じさせる映画は
それだけで傑作だと断じてしまう
アホなシネフィルとしては驚愕するばかり。
ポスターにある、
人生の始まりを祝福されたかのような
船上のパーティーの場面で、フキは踊る。
生きているあいだに起こるさまざまな出来事に対して
踊りながら受けとめたり撥ね付けたりする。
それこそが人生なのでないだろうか。
とまあ、珍しくテーマを考えながら映画を見てしまった。
そういう意味では脳味噌を使いながらも、
心に引っ掛かる映画でもあるというか。
つまりは傑作なんだろうな。うーむ。でも。
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