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Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

見えないものを見ようとして

2025年06月24日 | 映画など
早川千絵監督「ルノワール」を見る。
「お引っ越し」とか「こちらあみ子」とか、
少女を主人公にした映画で、たまにものすごい傑作が出る。
本作もそうかどうかはともかく、
どうしてこんな映画をつくることができるんだろう。
だって、作っているのは大人だよ。
子供のピュアな目を通して大人の社会を描く的な、
そんな紋切り型な言葉では、
この映画は到底語れないような気がするわけで。


主人公のフキ(鈴木唯)は11歳の小学生。
生と死を超越したような作文を書いたり、
超常現象みたいなものに敏感だったり、
身体が少し宙に浮いているような女の子だ。
とはいえ、ふつうに学校に通い、友だちもいる。
母親(石田ゆり子)との関係も悪くない。

そんなどこにでもいる、
というか、少し変わったタイプの女の子が、
がんで余命幾ばくもない父親(リリー・フランキー)とは
不思議なくらい波長を合わせていく。
父親に対する愛情というよりは、
死のにおいと交信している感じというか。
母親と浮気をする男(中島歩)の
罪深さみたいなものにも反応を示す。

少女の無垢な目というのとも違うし、
周りの大人とのかかわりを経て成長していく、
というありきたりな描き方でもない。
ただただ不思議なんだけど、嫌悪感はまったくない。

唯一、目を塞ぎたくなったのは、
伝言ダイヤルで見知らぬ男と会い、
その男の家に連れ込まれる場面だ。
やめてほしいと思いながら見ていると、
そこで男がフキに向かって
「口がくさいよ」という台詞にたまげる。
嗅覚を感じさせる映画は
それだけで傑作だと断じてしまう
アホなシネフィルとしては驚愕するばかり。

ポスターにある、
人生の始まりを祝福されたかのような
船上のパーティーの場面で、フキは踊る。
生きているあいだに起こるさまざまな出来事に対して
踊りながら受けとめたり撥ね付けたりする。
それこそが人生なのでないだろうか。

とまあ、珍しくテーマを考えながら映画を見てしまった。
そういう意味では脳味噌を使いながらも、
心に引っ掛かる映画でもあるというか。
つまりは傑作なんだろうな。うーむ。でも。

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