黒沢清監督「タゲレオタイプの女」を見る。
すべてフランスの俳優とスタッフで撮られた最新作。
どこで撮っても、何を撮っても、
黒沢印以外の何物でもない、と思うことしきりの
ゴシックホラーでラブロマン。
タゲレオタイプとは、
大きな大きな銀盤に投射するタイプの撮影機のこと。
写真に写るためには、
被写体は器具で体を固定し、
長い時間停止していなければならない。
そんな旧式な撮影をする
カメラマンの助手をすることになった青年。
彼が目の当たりにする、異様なほどの撮影形式と、
それを撮るカメラマンの執拗さ、
そして被写体になる娘のはかなげな様子。
黒沢監督は
植物の怖さを出すのがうまい。
植物って、じわじわと根を張り、徐々に生い茂っていくわけで、
そのゆっくりとした感じというか、
いつのまにこんなに恐怖の根を張ったんだ、と。
この映画にも植物を育てる温室が出てくるし、
タゲレオタイプに写るために、器具で体を固定された娘は、
まるで植物の木と枝のようにも見える。
そんなじわじわした恐ろしさのなか、
これは、この現象は、この人は、
現実のものなのか、それともこの世にはないものなのか。
見ていてどんどん曖昧な地点に
追い込まれていく感じがするとしたら、
それはつまり、監督の術中にはまっているということなのだろう。
黒沢監督。「クリーピー」に続き、絶好調の最新作と言える。
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