さがしものは見つかりましたか？

瀬々敬久監督『ユダ』を見る。
ユダとは、キリストを裏切ったあの人のことで、
それが現代の日本では、性同一性障害の青年として登場する。
知的障害のある少年と、夫のDVから逃げてきた主婦が織りなす、
ほんのささやかな幸福の日々と、その崩壊を描く。



ユダと呼ばれる青年が探し求める「何か」。
その正体をつきとめようとするのが、この映画のメインストーリーだ。
だが、いわゆる「答え」として観客には提示されない。
観客は、スクリーンの中の登場人物たちと一緒に、探すのである。
その一体感というか、緊張感を共にする。
それがこの映画の正しい味わい方という気がする。



恐ろしいまでのシャープなカット割りと疾走感。
映像としての強度は、かなりのものがあり、
それがこの監督の持ち味だ。これだけの強さを持つ
映画を撮る人はあまりいない、と思う。