山下敦弘監督「水深ゼロメートルから」を見る。
「アルプススタンドのはしの方」の好評を受けて
高校演劇の映画化という新たなジャンルの萌芽が興味深い。
山下監督による本作も「水のないプール」という、
演劇的な空間のなかで、映画的なきらめきと
高揚感を与えてくれる良き映画でした。
この映画の舞台である「水のないプール」。
プールの底には、砂粒が多く積もっていて、
主人公の女子たちはプールの授業を
休んだペナルティーで掃除をさせられる。
このプールの砂は、グランドの野球部の練習のせいで
降りそそいできたものだ。この砂の意味はなにか。
野球部の男子たちが排出したものを
女子たちが片付ける構図を考えれば明らかだろう。
そんな主人公たちに、夕立の雨が降りそそぐ。
悩みも鬱屈もすべて洗い流そうとする雨。
思いきり濡れながらも、きりりと前を向く彼女たち。
ここにきらめきが、そして高揚感が、ある。
夏休みの学校。
人気(ひとけ)のない校舎が出てくる映画は、
それだけで、いい映画になると思いたい。
山下監督。お見事です。