「いやん、うふふ」
なんとも不穏な声がした。
ここは東京メトロの中。仕事に追われ、
疲労困憊で帰宅途中だと思いねえ。
さほど混んでいない車内で、
上のような甘ったるい声を出している女と、
それをじぃーっと見つめる男。
そのベタつきぶりといったら、もう子作りせんばかりの状態というか。
なぜ取り締まらないのだ。
こういう公序良俗に反する輩を野放しにしておいていいのか。
思わずフトコロからチェーンソー(持ってないけど)を取り出して
惨殺してやろうかと思ったが、かろうじて踏みとどまる。
そうこうしているうちに、
とある駅に着き、男だけが降りた。
そこに女が声をかけた。
「また半年後ね」
え。そうなの。ひょっとして遠距離ですか。
すまんすまん。そりゃあ子作りのひとつやふたつしておかないと。
そんなヨコシマなコトを思いながら、
心のチェーンソーをそっとフトコロに仕舞うのでした。