Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

絶望の果てのその先に

2014年08月30日 | 映画など

呉美保監督「そこのみにて光輝く」を見る。

おお。ショットのひとつひとつに力がみなぎっている。

絶望に満ちた映画ではあるけれど、限りなくいとおしくて、美しい。

 

仕事を辞め、無為な日々を過ごす主人公の達夫(綾野剛)が、

海辺のバラックに住む姉弟と知り合い、交流していくうちに

姉の千夏(池脇千鶴)と惹かれ合う。

だけど彼女の置かれた状況が

ひどく苛酷なものだと判明して…というストーリー。

 

淡々とした描写のなかに、感情がほとばしる演出に目を見張る。

特に、達夫と千夏が海に入り、抱擁しあうシーンは、

感情のうねりが海に乗り移ったかのようなスペクタクル。

 

舞台は函館。海があり、山があり、街では信号が点滅し、

路面電車が行き交う。そのノイジーなところも感情を揺り動かす。

ロケーションの勝利なのだろう。

 

綾野剛のやさぐれた青年もいいが、

池脇千鶴が素晴らしい。汚れ役と言ってもいいほどだけど、

それでもどこか毅然とした美しさがある。

女優冥利に尽きる役なのでは、と。

 

原作は佐藤泰志の唯一の長編。若くして自死したこの作家、

著作が人気を呼んでいるみたいで、まさにブーム。

人間を冷徹に見つめ、それでも最後の最後は優しいというか、

救済の手を伸べるような作風が映画の作り手たちの

琴線に触れるのだろうか。

熊切和嘉監督の「海炭市叙景」が同じ佐藤泰志原作だったけど、

本作はそれに負けず劣らずの傑作だと思う。

 

監督は神様(宮崎あおい)と大竹しのぶが

母娘を演じた佳作「オカンの嫁入り」を撮った呉美保。

本作で化けたというか、ブレイクしたというか。

 

 

 

 

 

 

コメント (2)
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