Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

いまの僕はあの頃の僕よりずっと若い

2009年03月08日 | 読んでいろいろ思うところが
川本三郎『マイ・バック・ページ ある60年代の物語』を読む。
1969年「週刊朝日」の記者になった著者が
自分の目で見て、足でかせいで、体験した熱い日々。



ベトナム戦争。全共闘運動。そしてあさま山荘。
社会も政治も、そして人間も体温が高かったあの時代。
新米ジャーナリストとして、信念を持って時代にぶつかった
若き日の川本三郎が、ある過激派の殺人に関与したせいで
逮捕され、朝日新聞社を解雇されるまでを綴る。

そこにあるものは、
自分たちが信じていたものが間違っていたという
取り返しのつかない敗北感というか挫折感だ。

あの時代に、多少の憧れを持つ自分としては、
川本三郎が語る敗北は、ある意味、
美しいものだったと感じてしまう。

何も戦うものがない。
そもそも敵が誰かわからない。
そんな時代に生きた自分としては、少し羨ましい。

この本で書かれているような体験があったからこそ
負け犬の若者ばかりを描いたアメリカンニューシネマに
限りない愛情を注いだ名著『朝日のようにさわやかに』があるのだろうし、
敗戦、という未曾有の体験が日本人にあったからこそ、
50年代の日本映画は黄金期を迎えたという分析をして、
『君うるわしく 戦後日本映画女優賛』という
出色のインタビュー集にまとめることができたのは、
この人しかできない仕事だと思う。

負けること。
何かを失うこと。

そこから得られる何かがあり、
苦しみながら生まれてくるものも、ある。
川本三郎の本を読むと、いつもそう思う。
その原点がこの『マイ・バック・ページ』だ。

残念ながら、いま絶版になっている。
近く映画化されるというから、たぶん再版されるはず。




コメント (2)
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