Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

いろんな荒野があるもので

2008年11月01日 | 映画など
ショーン・ペン監督『イントゥ・ザ・ワイルド』を見る。
物質文明の極地ともいえるアメリカだからこそ、
人知の及ばない荒野に憧れを抱く人が多いのだろう。
だが、単に「自然回帰」を目指す映画ではなく、
一筋縄ではいかない展開に目が離せなくなる。


Into the Wild(2007)

主人公のクリス(エミール・ハーシュ)は、
大学を優秀な成績で卒業しながらも、
アラスカの山奥に入り、捨てられたバスの中で、
たった一人で生活する道を選ぶ。

裕福だが欺瞞に満ちた両親に反発して
放浪の旅に出る途中で出会う人々──。
ヒッピーの夫婦や、コミューンで出会った美しい少女。
忘れがたい貴重な体験を得ていく場面は、
アメリカの広大な風景とともに、
ハリウッド映画のいちばん良質な部分を感じることができる。

一筋縄でいかないのは、時間軸をずらして、
アラスカで木の実を取り、野生動物を狩って食料にし、
バスの中で日記を綴る生活が
カットバックされる構成になっているところだ。
自由だが、ひどく孤独で過酷な自然の生活。

これが果たしてクリスが目指していたモノなのか。
本当の意味で、心の平穏と自由をつかむことができたのか。
バスの中で思索に耽るクリスは幸せだったのか。
アメリカ人が夢見る「自然と自由」の意味は何だったのか。

甘美でありながら、シビアで残酷。
見るものを陶酔させておきながら、
頭から水をぶっかけるような展開。
こんな映画はあまりお目にかかったことはない。

ショーン・ペンはアメリカ映画界で、当代随一の俳優だが、
監督としてはかなり異端なポジションにいる。
観客の感情をいちいち逆撫でするようなヘンテコ(褒め言葉)な映画を撮る。
知らなくていいようなこと、知っていたとしても
あまり心に留めておきたくないようなものを好んで描く人だ。
そういう意味で、貴重な映画作家だと思う。








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