キム・チョヒ監督
「チャンシルさんには福が多いね」を見る。
40歳の女性プロデューサーが、
盟友だった監督の急死で、はたと自分の人生に気がつき、
それまで犠牲にしてきたものを取り戻そうする物語。
ほんわかしたコメディ演出が、
結果的に、主人公の心の奥底にまで迫っている印象。
失われた青春を取り戻そうと、
意中の仏語教師に果敢にアプローチする主人公。
一緒に酒を飲みながら語り合うシーンで、
小津安二郎が退屈だと言った彼に向かって、
ムキになって反論する。
「ちょっと、チャンシルさん、
そんなコトいったら振られるよ〜」
と思わず映画館で声を出すところだった。
映画の好みなんて、人それぞれなのだから、
たとえ大好きな小津をけなされても、
苦笑する程度にしておけばいいのだけど、
我慢できないのがこの主人公なのだろう。
そのあたりの不器用さは、大いに共感できるというか。
レスリー・チャン似(といっても全然似てないのが楽しい)の
幽霊みたいな男が主人公の守護霊として、
ゆっくり優しく彼女の背中を押すところ。
映画のせいで人生を台無しにしたと
思い込んでいる主人公に、
いちばん大事なものは何かということを諭してくれる。
ほろ苦くも、じんわりとした結末に安堵するのでした。
キム・チョヒ監督は、ホ・サンス監督の
プロデューサーをずっとつとめている人で、
実体験をもとにしているんだろうと
下品な想像をしながら見るのもひとつの見方だと思う。
「はちどり」「82年生まれ、キム・ジヨン」などと同じく、
韓国でも女性監督がいい映画をどんどんつくっていて、
なんとも頼もしい限り。
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