藤元明緒監督「海辺の彼女たち」を見る。
ベトナムから日本にやってきた
技能実習生の若い女性たちの労働と生活。
彼女たちの一挙手一投足をじっと見ていたら、
いつのまにか打ちひしがれていたという。
映画の力をまざまざと見せつけられた88分。

日本に出稼ぎに来た
3人のベトナム人女性たちの労働現場を描く本作。
台詞を追いかけていくうちに
おぼろげながら彼女たちの置かれた立場がわかってくる。
不法就労であること、人権を無視した労働を課せられていること。
それでも故郷に仕送りを欠かせないこと。
休みの日には、他愛のない話をしながら、
私は医者と結婚したいとか、韓流スターみたいな人がいいとか
恋バナのようなものが出ること。
彼女たちの一人、フォンという女性が
妊娠していることがわかったあたりから、
映画はいきなり動き出す。
不法滞在だから外国人の在留カードもないし、
保険証もないので、病院にかかることもできない。
フォンは大金をはたいて偽造カードをつくり、
病院でお腹の赤ちゃんを診てもらうシーンに、
これまでの彼女の人生と、置かれた過酷な環境と
生きることと死ぬことと、命の大切さと儚さが交差する。
日本のどこか北の地で、
静かに静かに聞こえる叫び、そして悲しみ。
社会に向けて告発するための映画であることは明らか。
でも、その前に映画としての力に圧倒される。傑作。