昨夜、岩手の酒蔵「南部美人」の久慈蔵元の、“海外日本酒事情”とも言うべき話を聞いた。この蔵は、日本酒の低迷が続く中で販売量が急速に伸びている蔵の一つで、その一要因を輸出の増加に負っている。すでに30数カ国に輸出しており、その量は同社の販売量の10%に及んでいるという。
久慈蔵元は月に何回も世界中を飛び回り、イベントをやり試飲会を重ね、世界各地に日本酒を宣伝している。近時の日本食ブームとあいまって各地に和食の店がふえて、そこで各国の人々が日本酒を飲んでいる姿がたくさん紹介された。久慈氏も、日本酒はかくも好まれている、と胸を張っていた。
しかし、確かに日本酒の輸出量は伸びており「2007年実績は1万1千kl(6万石強)に達しているが、これは国内消費量の1.6%に過ぎない」(フルネット社JIZAKE TOPICS 08.11.26発行号)。ダイエット志向から日本食を好む外国人も相当に居るはずだし、この程度の“日本酒好き外国人”は当然いるのではないか。久慈氏などの奮闘により、日本酒の良さがようやく世界にみとめられつつある、その端緒に着いたというべきだろう。
日本でも、美味しい和食はそっちのけでフランス料理やイタリア料理を食べながら輸入ワインを専ら飲んでいる日本人がゴマンといる。中華料理を食べるときは詔興酒を飲んでいるし、中には輸入ウィスキーの水割りで寿司を食っている者までいる。ウィスキーの水割りと寿司が合うとはとても思えないが、フランス・イタリア料理にはワインが合い、中華料理に詔興酒が合うのは当然で、これらは至極当たり前のことであろう。
ただ一つ言えることは、アル添三増酒花やかりし時代では今のような日本酒ブームは起きなかったであろうということだ。地酒ブームを経て、純米酒を中心に日本酒の質が格段に向上したことが大前提となっていると思う。今の純米吟醸酒、特別純米酒などは、外国の白ワインなどに比して決して引けをとらない。酒の面でも、日本は世界の仲間入りを果たしてきたと言えよう。
問題は、前掲『JIZAKE TOPICS』も指摘しているように、日本酒の輸出量は1.6%に過ぎず、「99%近くを占める国内消費量は、海外への輸出量の10倍近い数量が毎年減少しているのである」(同3ページ)
質を高めてきた純米酒が、そのシェアーを高めてはいるが、絶対量から見れば横ばいに過ぎない。
わが日本酒は何処(いずこ)へ向かおうとしているのか・・・?