オーストリアだけでなく、もう一度行きたい国(や町)はたくさんある。サンクトペテルブルグ、ニューオルリーンズ、ヘルシンキなどなど。中でもチェコのプラハはその最たる街だ。
王宮の影を写すモルダウ川に架かる威厳に満ちたカレル橋・・・、夜中の12時にもこの橋を歩いたが、多くの人に混じって老夫婦が腕を組み胸を張って渡っていた。何ともいえない美しい風景であった。
チェコの国技といわれる人形劇も見た。その卓抜した技術もさることながら、モーツアルトそっくりの人形も指揮者として出てくるオペラ『ドン・ジョバンニ』は文句なしに楽しかった。諸外国の支配を受け続けたチェコは、自国語も語れなかった時代を経験するが、その中で民衆は、人形劇の中で自国語を語り支配層を批判し続けたという。
500年の歴史を持つ有名なビアホール『ウ・フレクー』も忘れがたい。観光客も多く、私の席もフランス人やベルギー人など国際交流の場となったが、なんといっても自醸の黒ビールがおいしい。われわれは片言英語で交際交流を深めながら、たっぷり飲んで心行くまで堪能した。
第一、ビールの出し方が気に入った。店に入って空いてるテーブルに着席するやいなやウエイターが、黒ビールがなみなみと注がれたジョッキを運んできて、われわれの前にドンと並べた。それは「この店に来たからには先ずこのビールを飲め。注文はそれからだ」と言っているかに見えた。しかもわれわれメンバーの中には未成年の子供が一人いたが、その子の前にも当然のごとくジョッキが置かれた。この大らかさが何ともよい。もちろん、そのジョッキは私が干したが。
その店のかんぱん商品には、それくらいの自信を持って欲しいものだ。