サンクト・ペテルブルグに行くにあたって、プーシキンを三冊読んだ。『スペードの女王』『ペールキン物語』『エブゲニー・オネーギン』で、高校時代に開いた記憶があるが、殆ど忘れてしまっていた本であった。なぜ読もうと思ったかといえば、プーシキンの舞台がほとんどサンクト・ペテルブルグであるからだ。
彼はこの愛する町を、いたるところで、「ネヴァ河の河畔の町」と表現している。また『エフゲニー・オネーギン』の中では、愛するタチアーナを「ネヴァ河の女神」と表現する場面がある。(池田健太郎訳 岩波文庫版145頁) つまりプーシキンにとって、サンクト・ペテルブルグはネヴァ河とともにあったのであろう。いや、詩人にとってこの町はネヴァ河そのものであったのではなかろうか。
世界に、水の都とか川とともに呼ばれる都市は多い。ドナウの真珠と言われるブダペストや、アドリア海の女王と呼ばれるヴェネツィアなど。しかし、ネヴァ河と一体化したサンクト・ペテルグルグの美しさは、そのどれにも引けをとらない。特にネヴァ河に沿って建てられたエルミタージュ美術館の景観はすばらしい。大理石のつくりで淡緑色の冬宮をはじめ、三つの離宮とエルミタージュ劇場が連なり、全長1キロに及ぶ。この三階建に制限された建物が、ネヴァ河と調和して美しい。
詩人プーシキンの詩情を、どんなにかきたてたことであっただろうか・・・。
背景はネヴァ河とエルミタージュ