桜井昌司『獄外記』

布川事件というえん罪を背負って44年。その異常な体験をしたからこそ、感じられるもの、判るものがあるようです。

園部典生検事

2013-04-24 | Weblog
布川事件の再審が開始されたのは、当時の水戸地検三席で布川の担当をした園部検事の功績が大きい。
再審請求書を提出したらば、程なく布川弁護団の一人を水戸地検に招き、「桜井は、初めからスラスラと喋ってるんですよ」と、ニヤニヤと笑いながら「録音テープ」を渡した。
この録音テープは、裁判で「そのような録音はしていない」と、警察官が偽証して隠していた物だった。
この録音テープが改ざんされていると証明されて、俺たちの「自白」は信用出来ないと判って貰えたし、当時の警察官の偽証も証明された。なぜ園部検事が自ら提出したかは判らないが、俺たちの訴えが正しいと判って貰えたのは、あの録音テープが開示されたお蔭だ。
園部検事には、もう一つ特筆出来る功績がある。
事件現場から採取された毛髪に付いて、裁判所に嘘の回答書を提出したことだ。検察は汚くて、無実が明らかになりそうな証拠は「不見当」(ふけんとう)と答えて提出しない。「見当たらない」と言う。「ない」と答えてしまうと、後で、あったことがバレたとき、嘘を言ったことになるから、見当たらないと言って責任回避した上、真実を隠してしまう。実に巧妙と言えるし、汚い。
ところが、園部検事は、存在する「毛髪鑑定書」を「存在しない」と、書面で裁判所に回答したのだが、その後、あることが判ってしまい、結局、嘘を言ったことが明らかになったのだ。この二つの出来事は、裁判官の心証に大きな影響があったはずで、その意味で園部検事は布川事件の勝利の功労者だ。
その園部検事の人事が新聞に掲載された。東京地検公判部長から東京高検公判部長に栄転していた。
関わりのあった人が、たとえ検察官と言え左遷と聞くのは気の毒。高検公判部長は良かったねえ、と思うが、正直に言えば、検察庁ってこの程度なんだなぁ!と思ったね。
園部さんも布川再審で学んで証拠隠し術が上達し、この昇進なのだろうか。

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