物事を余りに単純化して考えるのは危険だが、原油・為替・金利の三点セットで、経済の動きを観察することを続けている。
最近、金や銀相場が値上がりしている。今朝のWSJ紙によると、アメリカ時間火曜日のNYマーカンタイル取引所で、金の8月物相場が、オンス当たり前日比4.40ドル高、984.40ドル、銀先物相場が、同じくオンス22セント高の15.955ドルで8月以来の高値で取引を終了した。プラチナもオンス22.80ドル上げて1,246.90ドル、パラジウムもオンス7.60ドル上げて251.35ドルで取引を終了した。原油相場は横ばいのバレル68ドル台をキープした。
同じWSJ紙に、ガイトナー米財務長官が、2日間の中国訪問の際の話として、中国は、アメリカ経済に自信をもっていることと、世界経済浮揚のために中国自身が景気刺激策を実行していることを称賛したと出ていた。
ガイトナー財務長官は、米議会の長官承認を受ける際の公聴会で、中国の為替政策を厳しく非難したことで、中国政府を怒らせた経緯がある。今回の中国訪問で、米中間で、実際具体的に何が話し合われたのか、新聞記事を鵜呑みに出来ない。しかし、記事に現れたところでは、米国が提案した弾力的な為替政策に対して、中国は理解を示したとガイトナー長官は語ったと出ていた。
金や銀相場がなぜ値上がりしているのか。WSJ紙はドル先安とマーケットが見ているからだと解説している。ガイトナー長官が記者会見でどのように発言しても、マーケットは彼の言葉を信用していないことを、相場が正直に教えている。
日本人には相場嫌いの人が多い。日本人は、基本的に、動くものが嫌いである。臨機応変に物事に対応することを必ずしもよしとしない。一端決めたらテコでも動かない人の方がむしろ評価される。神戸に風見鶏で有名な観光スポットがある。全国から見物に大勢訪れる。しかし、風見鶏は、信用できない代名詞のように使われる。
NY外国為替市場で、ドルが引き続き売られ、1ユーロ=1.4307ドルと、対ユーロで、昨年12月29日来のドル安ユーロ高とWSJ紙は書いた。ドルは対円では、1ドル=95.60~65円前後で取引された。ドルを対日本円だけでみているとドルが売られているようには見えないが、騙されないことだろう。
アメリカ経済は世界経済の機関車だから、注目されて当然である。しかし、アメリカ経済より、問題含みの東ヨーロッパを抱えているヨーロッパ経済の方が病気でいえば症状が重いことは、日本ではあまり取り上げられない。ユーロは、その大いに問題をかかえているユーロ圏の通貨である。そのユーロに対して、ドルが売られている現実を鳥の目になって眺めている方が、いろいろ難しい講釈を聞かされるよりわかりやすい。ガイトナー米財務長官が、中国政府との会談で、双方の意見が一致したとの「声明」を出しても、鳥は信用していないことを教えている。
3月末時点で、中国は8000億ドル近い米国債を手持ちしていることになっている。現在、6月がスタートしたところだが、そろりそろりと、ドルのウエートを下げていっている可能性は大いにある。猟師は獲物の風上から近づかない。風下から、アメリカに気づかれないように用心深くドルを他の通貨にシフトしていることは十分想像できる。
新聞に載っていたから正しいと欧米人は考えない。テレビに出た人が優秀だと思う人も少ない。こういう書き方をすると、欧米かぶれと日本人は嫌がるが、物事は本来自分自身で考え、自分で考えて生きていくものだと、子供の時から親や兄弟から教えられて育つ人が欧米人に比較的多いことだけは確かである。
6月2日火曜日のNY株式市場は、前日の大幅高のあとでもあり、薄商いの中、小動きに推移、NYダウは、前日比19ドル高い、8,740ドルで取引を終了した。ナスダックは8.12ポイント高い1,836.80ポイントで取引を終了した。
現在世界を席巻している金融危機や、景気後退はそもそも米国の住宅バブル崩壊が原因である。その住宅に関するデータのひとつの4月の米中古住宅販売高が予測の0.5%増を大きく上回る6.7%増との発表がマーケットに安心感を与えたようだと今朝のNHK「おはよう世界」の経済情報で解説していた。
同じ「おはよう世界」が紹介したブルームバーグ二ユースでは、NY証券取引所の出来高が少なかった。出来高学の内訳が、買いが53%、売りが47%と売り買いが拮抗していると解説していた。平たく言えば、集まってくる鳥もいれば、逃げる鳥もほぼ同数いることを教えてくれているのであろう。極めて興味深い。(了)